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千尋の過去
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突然後ろから抱きしめられ、千尋はギョッとした。心臓も服越しに一ノ瀬に伝わるんじゃないかという位、ドクドクと鳴っていた。
(……落ち着け、落ち着くんだ自分……
一ノ瀬は一体どういうつもりでこんな事……)
千尋は一ノ瀬に抱きしめられたまま、目を閉じて動かずじっとして様子を伺っていた。すると、一ノ瀬が千尋の耳元に顔を擦り寄せ、呟いてきた。
「千尋様は……私がお守りします……二人で必ず元の世界へ……」
一ノ瀬のその言葉に、千尋は先程とは違う感情で胸が高鳴った。てっきり一ノ瀬が欲望のままに襲ってくるのかと思ったが、そうでは無いようだ。一ノ瀬の事を疑って邪な感情を抱いてしまった事を密かに反省した。
一ノ瀬は主人である千尋の事を想い、身を呈して守ろうとしてくれている。一ノ瀬本人も突然この様な迷宮に転移させられ、さぞ困惑、混乱しているだろうに、元の世界にいた頃と同じく千尋を大切に想ってくれていた。千尋はその気持ちが純粋に嬉しく思った。
(一ノ瀬……ありがとう)
千尋は一ノ瀬への感謝の気持ちでいっぱいになっていると、背後から伸びている一ノ瀬の手が浴衣の中へスルスルと入っていき、千尋の胸元に直に触れてきた。
(…………ん?
まさか……な。たまたま手がズレて服の中に入ったんだな)
千尋は無理矢理納得し、引き続き寝たフリを続けた。
すると一ノ瀬の左手が千尋の胸元全体を撫で回し、 乳首の辺りで手を止めて指の腹で柔らかな状態の乳首を触り出した。
(…………! 一ノ瀬、な、何して……)
くすぐったくて何とも言えない感覚が千尋の神経を刺激した。明らかに意図的に乳首を弄っている。
指の腹で刺激を受け続け、芯をもってピンと立ち上がってしまった乳首を一ノ瀬は親指と人差し指で挟み、コリコリと弄ってきた。
「……っ……ぅっ……!」
思わず声が出てしまいそうになり、慌てて体の下側になっている右手で口を塞いだ。
先程までくすぐったかった筈なのに、芯をもった途端、指で弄られる度に胸の先から電流が走って腰の奥の方が疼きだした。
(あぁ…………この感覚……
前の、あの男にされた時と一緒……)
千尋の脳裏に昔の記憶が断片的に蘇ってきた。
小学五年の頃、千尋は下校途中に近所に住む顔見知りの男に家の中へと引きずりこまれ、体を触られた事があった。一ノ瀬と同じ様に背後から抱きしめられ、胸元を弄られ、乳首を指で執拗に弄られ挟まれ転がされた。
『気持ちいいこと、してあげる。皆には内緒だよ』
男はそう言いながら千尋を力でねじ伏せ、無理矢理触り続けた。
下は触ると気持ち良いのは少し前から分かっていたが、これまでくすぐったいとしか思っていなかった乳首が男に弄(いじ)られて気持ちが良い事にビックリした。
千尋は恐怖や嫌悪感も少なからずあったが、性的な快感の方が勝った。今まで味わった事の無い新たな刺激が衝撃的だった。
千尋はその事がきっかけとなったかどうかは不明だが、それ以来女性に興味が持てなくなった。事件の後遺症なのか、自分が女性を抱くよりも、男性のゴツゴツとした大きな手で抱かれたい、自分の身体を触って欲しい、そう思うようになっていた。
その為、千尋は中高一貫校の名門と呼ばれる男子校へと進んだが、男子校だからと言って誰もかれもがゲイという訳では無い。
元々内気な性格の千尋は友人も少なく、恋愛と呼べる事も未経験のまま高校へと進んだ。
しかし気になって目がいくのはやはり同性の男ばかりだった。
自分がゲイかもしれない。この悩みを友人にも相談出来ず、執事の一ノ瀬にも親にも当然の事ながら相談した事が無い。
ネットで相談したが良い解決策も見つからず結局今日まで一人で悩んでいた。そんな時に一ノ瀬と突然の迷宮転移。この迷宮には男しかいない。更に迷宮を進んで行く為には男とエッチな事をしなければいけない。もしその行為が受け入れられれば自分はゲイという事になる。
もしかしたら迷宮で自分の事が分かるかもしれない。そう思って千尋は悲観的にはならずに済み、前向きに頑張ろうという気になった。
千尋が昔の記憶を辿っている間も、一ノ瀬は明らかに千尋の体を意図的に性的な意味で触り続けていた。千尋は、先程一ノ瀬に対して反省した事を取り消した。一ノ瀬はやっぱり自分の事をそういう目で見ていたのだろうか。見ていたから先程も千尋の性器を触り、絶頂へと導いてくれたのか。
でも千尋にはまだ一ノ瀬を受け入れる気持ちは無い、いや、気持ちの準備がまだ出来ていないというべきだろうか。
そろそろ起きて抵抗した方が良いだろうか。千尋がそう思っていると自分の体からふっ、と一ノ瀬が離れていった。一ノ瀬はベッドから下りると隅にあるトイレの方へと入った。
(……良かった、離れてくれた……)
ホッと一安心し、小さく息を吐いた。
服の乱れをそっと直し、ベッドの中で丸くうずくまって先程の一ノ瀬の一連の行為の事を考えた。
一ノ瀬は一体どういうつもりで自分の胸、しかも乳首を触ってきたのだろうか。なんとなく? 女の代わり? 自分の事が好きで触ってくれた?
普通は男が男の胸なんて好き好んで触ったりはしない。しかも胸を撫で回された挙句、乳首まで執拗に弄られた。
一ノ瀬が一体どういうつもりで弄ってきたのか。もし自分の事が好きだったとしたら、どうしたら良いのだろうか。幼馴染みで家族同然と思ってきた執事の一ノ瀬に、恋愛感情を抱けるのだろうか。
頭でゴチャゴチャと考えているうちに徐々に睡魔に襲われ、千尋の意識は段々と途絶えていったのだった。
(……落ち着け、落ち着くんだ自分……
一ノ瀬は一体どういうつもりでこんな事……)
千尋は一ノ瀬に抱きしめられたまま、目を閉じて動かずじっとして様子を伺っていた。すると、一ノ瀬が千尋の耳元に顔を擦り寄せ、呟いてきた。
「千尋様は……私がお守りします……二人で必ず元の世界へ……」
一ノ瀬のその言葉に、千尋は先程とは違う感情で胸が高鳴った。てっきり一ノ瀬が欲望のままに襲ってくるのかと思ったが、そうでは無いようだ。一ノ瀬の事を疑って邪な感情を抱いてしまった事を密かに反省した。
一ノ瀬は主人である千尋の事を想い、身を呈して守ろうとしてくれている。一ノ瀬本人も突然この様な迷宮に転移させられ、さぞ困惑、混乱しているだろうに、元の世界にいた頃と同じく千尋を大切に想ってくれていた。千尋はその気持ちが純粋に嬉しく思った。
(一ノ瀬……ありがとう)
千尋は一ノ瀬への感謝の気持ちでいっぱいになっていると、背後から伸びている一ノ瀬の手が浴衣の中へスルスルと入っていき、千尋の胸元に直に触れてきた。
(…………ん?
まさか……な。たまたま手がズレて服の中に入ったんだな)
千尋は無理矢理納得し、引き続き寝たフリを続けた。
すると一ノ瀬の左手が千尋の胸元全体を撫で回し、 乳首の辺りで手を止めて指の腹で柔らかな状態の乳首を触り出した。
(…………! 一ノ瀬、な、何して……)
くすぐったくて何とも言えない感覚が千尋の神経を刺激した。明らかに意図的に乳首を弄っている。
指の腹で刺激を受け続け、芯をもってピンと立ち上がってしまった乳首を一ノ瀬は親指と人差し指で挟み、コリコリと弄ってきた。
「……っ……ぅっ……!」
思わず声が出てしまいそうになり、慌てて体の下側になっている右手で口を塞いだ。
先程までくすぐったかった筈なのに、芯をもった途端、指で弄られる度に胸の先から電流が走って腰の奥の方が疼きだした。
(あぁ…………この感覚……
前の、あの男にされた時と一緒……)
千尋の脳裏に昔の記憶が断片的に蘇ってきた。
小学五年の頃、千尋は下校途中に近所に住む顔見知りの男に家の中へと引きずりこまれ、体を触られた事があった。一ノ瀬と同じ様に背後から抱きしめられ、胸元を弄られ、乳首を指で執拗に弄られ挟まれ転がされた。
『気持ちいいこと、してあげる。皆には内緒だよ』
男はそう言いながら千尋を力でねじ伏せ、無理矢理触り続けた。
下は触ると気持ち良いのは少し前から分かっていたが、これまでくすぐったいとしか思っていなかった乳首が男に弄(いじ)られて気持ちが良い事にビックリした。
千尋は恐怖や嫌悪感も少なからずあったが、性的な快感の方が勝った。今まで味わった事の無い新たな刺激が衝撃的だった。
千尋はその事がきっかけとなったかどうかは不明だが、それ以来女性に興味が持てなくなった。事件の後遺症なのか、自分が女性を抱くよりも、男性のゴツゴツとした大きな手で抱かれたい、自分の身体を触って欲しい、そう思うようになっていた。
その為、千尋は中高一貫校の名門と呼ばれる男子校へと進んだが、男子校だからと言って誰もかれもがゲイという訳では無い。
元々内気な性格の千尋は友人も少なく、恋愛と呼べる事も未経験のまま高校へと進んだ。
しかし気になって目がいくのはやはり同性の男ばかりだった。
自分がゲイかもしれない。この悩みを友人にも相談出来ず、執事の一ノ瀬にも親にも当然の事ながら相談した事が無い。
ネットで相談したが良い解決策も見つからず結局今日まで一人で悩んでいた。そんな時に一ノ瀬と突然の迷宮転移。この迷宮には男しかいない。更に迷宮を進んで行く為には男とエッチな事をしなければいけない。もしその行為が受け入れられれば自分はゲイという事になる。
もしかしたら迷宮で自分の事が分かるかもしれない。そう思って千尋は悲観的にはならずに済み、前向きに頑張ろうという気になった。
千尋が昔の記憶を辿っている間も、一ノ瀬は明らかに千尋の体を意図的に性的な意味で触り続けていた。千尋は、先程一ノ瀬に対して反省した事を取り消した。一ノ瀬はやっぱり自分の事をそういう目で見ていたのだろうか。見ていたから先程も千尋の性器を触り、絶頂へと導いてくれたのか。
でも千尋にはまだ一ノ瀬を受け入れる気持ちは無い、いや、気持ちの準備がまだ出来ていないというべきだろうか。
そろそろ起きて抵抗した方が良いだろうか。千尋がそう思っていると自分の体からふっ、と一ノ瀬が離れていった。一ノ瀬はベッドから下りると隅にあるトイレの方へと入った。
(……良かった、離れてくれた……)
ホッと一安心し、小さく息を吐いた。
服の乱れをそっと直し、ベッドの中で丸くうずくまって先程の一ノ瀬の一連の行為の事を考えた。
一ノ瀬は一体どういうつもりで自分の胸、しかも乳首を触ってきたのだろうか。なんとなく? 女の代わり? 自分の事が好きで触ってくれた?
普通は男が男の胸なんて好き好んで触ったりはしない。しかも胸を撫で回された挙句、乳首まで執拗に弄られた。
一ノ瀬が一体どういうつもりで弄ってきたのか。もし自分の事が好きだったとしたら、どうしたら良いのだろうか。幼馴染みで家族同然と思ってきた執事の一ノ瀬に、恋愛感情を抱けるのだろうか。
頭でゴチャゴチャと考えているうちに徐々に睡魔に襲われ、千尋の意識は段々と途絶えていったのだった。
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