38 / 95
13.眼鏡復活計画! からの、お忍びショッピングフラグ!? 前
しおりを挟む
「あの学生は?」
放課後、ロジェ=ギルマンが自由時間を楽しむ学生の中から、適当に一人選んでわたくしに問いかけてくる。わたくしは指定された学生にじっと目を懲らした。
「水魔法……いえ、それを利用して植物学、いえ薬学の方かな? その辺りに造形が深いかと思われます」
「へえ……根拠は?」
「本人の基本属性は、青なので水です。ただ、手の辺りに……黄土って言えばいいんですかね、残滓が見えていて。あれは確か、温室で見た……土、だと思うのですよね。マンドラゴラの育成土が、あんな色をまとっていたような……」
「はあん、マンドラゴラは基本的に素材用の植物だもんな。土いじりから植物、種類から薬学……皇子サマ、合ってそうか?」
「名簿には、薬学部員って記載があったかな。得意な魔法属性も水で合っているよ」
「すげー、また当てたじゃん! 本当におもしれえなあ、その目」
今何をしていたのかといえば、精霊眼とやらの実験のようなものだ。
皇子殿下曰く、わたくしの目には他の人には見えない魔力の流れを見る力があるらしい。
だから殿下のこともまぶしく見えるのだろうとか。
いやいやそんな……と思っていたら、試しにその辺の学生を見て、光か煙を纏っていないかと尋ねられ……あの人は何色、この人は何色、とか答えていったら、横でやりとりを見守っていたロジェがさらに質問のバリエーションを増やした。
ということで、最終的に見える色からその学生がどんな魔法使いか推理する、クイズ大会のようになっていたのだ。
ちなみに答え合わせ係は殿下だけど、彼曰く独自に入手できた学生名簿の情報とやらと付き合わせているらしい。
どこにそんなものあるのだろう、なんでそんなもの持ってるんだろう、というかもしかしなくても当たり前のように丸暗記してますね? などという、いともたやすく行われるえげつないハイスペックへの突っ込みは、心の中でのみしておくことにする。
ロジェはわたくしが当てると素直に賞賛し、外すと露骨に残念なものを見る目を向けてくるので、我ながらこの短時間で随分観察力の精度が上がったように感じる。というか、わたくし自身もこんな特技が自分に備わっているなんて知らなかった。見て考えてその通りだと、非常に大きな達成感を得られる。
こめかみを軽く揉んでいると、殿下が膝の上に広げていた本をぱたんと閉じる。
「大丈夫、シャンナ? 目が痛い?」
「いえ……ただ、少し頭が重いかな? と」
「見過ぎたんだね。今日はこのぐらいにしておいた方がよさそうかな」
殿下曰く、精霊眼の持ち主は常人より視覚情報が多いため、目とか頭とかがその分疲れやすいらしい。面白がって人の色を見過ぎたりすれば、翌日激しい頭痛にさいなまれるということもあるのだとか。
今日はもうクイズができないと聞き、ロジェがため息を吐く。
「ちぇー、もう終わりかあ」
「きみも魔法訓練の時、一日に使える魔法の量は限られているでしょう? 同じことだよ」
「まあ、なんとなくイメージはしやすいけど。にしてもそんな面白いもん、なんで今まで無自覚だったんだ? どんくさいのか?」
ロジェくんは本当に、なんというかずかずか人の領分に踏み入ってくる子ですねえ……。
何故でしょう、貴族のみなさま相手だと「はいはいそうですね」と思うしかないわたくしの自覚している短所が、ロジェ=ギルマンに言われると、だんだん「そんなことないですよ、わたくしもうちょっとぐらいはできる子だもん!」と返したくなってくる不思議。
放課後、ロジェ=ギルマンが自由時間を楽しむ学生の中から、適当に一人選んでわたくしに問いかけてくる。わたくしは指定された学生にじっと目を懲らした。
「水魔法……いえ、それを利用して植物学、いえ薬学の方かな? その辺りに造形が深いかと思われます」
「へえ……根拠は?」
「本人の基本属性は、青なので水です。ただ、手の辺りに……黄土って言えばいいんですかね、残滓が見えていて。あれは確か、温室で見た……土、だと思うのですよね。マンドラゴラの育成土が、あんな色をまとっていたような……」
「はあん、マンドラゴラは基本的に素材用の植物だもんな。土いじりから植物、種類から薬学……皇子サマ、合ってそうか?」
「名簿には、薬学部員って記載があったかな。得意な魔法属性も水で合っているよ」
「すげー、また当てたじゃん! 本当におもしれえなあ、その目」
今何をしていたのかといえば、精霊眼とやらの実験のようなものだ。
皇子殿下曰く、わたくしの目には他の人には見えない魔力の流れを見る力があるらしい。
だから殿下のこともまぶしく見えるのだろうとか。
いやいやそんな……と思っていたら、試しにその辺の学生を見て、光か煙を纏っていないかと尋ねられ……あの人は何色、この人は何色、とか答えていったら、横でやりとりを見守っていたロジェがさらに質問のバリエーションを増やした。
ということで、最終的に見える色からその学生がどんな魔法使いか推理する、クイズ大会のようになっていたのだ。
ちなみに答え合わせ係は殿下だけど、彼曰く独自に入手できた学生名簿の情報とやらと付き合わせているらしい。
どこにそんなものあるのだろう、なんでそんなもの持ってるんだろう、というかもしかしなくても当たり前のように丸暗記してますね? などという、いともたやすく行われるえげつないハイスペックへの突っ込みは、心の中でのみしておくことにする。
ロジェはわたくしが当てると素直に賞賛し、外すと露骨に残念なものを見る目を向けてくるので、我ながらこの短時間で随分観察力の精度が上がったように感じる。というか、わたくし自身もこんな特技が自分に備わっているなんて知らなかった。見て考えてその通りだと、非常に大きな達成感を得られる。
こめかみを軽く揉んでいると、殿下が膝の上に広げていた本をぱたんと閉じる。
「大丈夫、シャンナ? 目が痛い?」
「いえ……ただ、少し頭が重いかな? と」
「見過ぎたんだね。今日はこのぐらいにしておいた方がよさそうかな」
殿下曰く、精霊眼の持ち主は常人より視覚情報が多いため、目とか頭とかがその分疲れやすいらしい。面白がって人の色を見過ぎたりすれば、翌日激しい頭痛にさいなまれるということもあるのだとか。
今日はもうクイズができないと聞き、ロジェがため息を吐く。
「ちぇー、もう終わりかあ」
「きみも魔法訓練の時、一日に使える魔法の量は限られているでしょう? 同じことだよ」
「まあ、なんとなくイメージはしやすいけど。にしてもそんな面白いもん、なんで今まで無自覚だったんだ? どんくさいのか?」
ロジェくんは本当に、なんというかずかずか人の領分に踏み入ってくる子ですねえ……。
何故でしょう、貴族のみなさま相手だと「はいはいそうですね」と思うしかないわたくしの自覚している短所が、ロジェ=ギルマンに言われると、だんだん「そんなことないですよ、わたくしもうちょっとぐらいはできる子だもん!」と返したくなってくる不思議。
0
お気に入りに追加
197
あなたにおすすめの小説
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く
とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。
まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。
しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。
なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう!
そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。
しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。
すると彼に
「こんな遺書じゃダメだね」
「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」
と思いっきりダメ出しをされてしまった。
それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。
「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」
これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。
そんなお話。
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる