上 下
18 / 68

第17話 飛び出す仲間と過去

しおりを挟む
「……あの、査定……終わりましたけど……」

 ……担当している受付の人がそう言ってきた。
 私は冷静になり、カロンを突き放した。

「……二度とロープを侮辱しないで、次ロープを侮辱したら……」

 ……ぶっ倒す。
 そう言いたかったが、ロープが今にも泣きだしそうになっていたので、言葉を飲み込み、受付の人についていった。

「行こ、ロープ」
「……はい」

 ……ロープの手を掴むと、震えていた。
 カロンの奴……自分より弱いと判断した奴には容赦がない。
 ましてやこんなにかわいくて、強くて、健気な女の子を泣かせるなんて……最低。
 ……ロープ。

「……カロンの野郎が言ったことは気にしないで、ロープが強い子だっていうのは私がよく知ってるから」
「……ありがとう……ございます……ごめんなさい……私……外にいます!」
「ちょ、ちょっとロープ!」

 ロープは……私の手を振りほどいて外に飛び出してしまった。
 ……今はそっとしておいた方がいいのかな……お金貰ったら、ロープに何か買ってあげよう。

◇ ~ロープ視点~

「お前はもう追放だ、エウロプ」

 会合の席、突然開口一番、そんなことを言われた。

「……こいつは慰謝料だ、とっとと出ていけ」
「……はい、今まで、ありがとうございました」

 ……私は慰謝料を受け取って、建物を後にした。
 正直、この扱いにはもう慣れた、慰謝料を貰えるだけありがたい。

「……また、探さなきゃ」

 ……私の冒険者ジョブは格闘。
 武器を遣わず、己の肉体で戦うジョブだ……体力には自信があったので、このジョブは嬉しかった。
 ……私の種族は今まで差別され続けていた。
 私が産まれたころには大分マシにはなったが、それでも一部ではまだ偏見がある。
 親は常にこう言っていた、「私たちがやるべきことは、差別する者を憎むのではなく、差別する者ができないことを完璧にこなすことだ」と。
 だから私は……ひたすら鍛えた、己の肉体を。
 ……何故そう言う決断に至ったのかと言えば、祖母がしてくれた昔話が発端だった。

「勇者様の伝説、知ってるかい? 冒険者だった勇者様は、様々なジョブを持っていて、それはもう素晴らしい方だったんだよ」

 ……そんなことを話してくれて、私もそうなりたいと……そう考えて、まずは体力作りからだと考えたのだ。
 なんどもなんども……それはもう、筋肉が引きちぎれるくらいに。
 ……気が付くと、体力面においては、他の人には負けないくらいにはなった。
 両親は、こんなところにとどめておくのはもったいない、とかなんとか言って、王国の中心部……王都へ行け、と言ってきた。

 ……実家に居たい気持ちもあったけど、ここで行かなかったら一生行かないかもしれない、そう考えて、私は飛び出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】結婚してから三年…私は使用人扱いされました。

仰木 あん
恋愛
子爵令嬢のジュリエッタ。 彼女には兄弟がおらず、伯爵家の次男、アルフレッドと結婚して幸せに暮らしていた。 しかし、結婚から二年して、ジュリエッタの父、オリビエが亡くなると、アルフレッドは段々と本性を表して、浮気を繰り返すようになる…… そんなところから始まるお話。 フィクションです。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

閉じ込められた幼き聖女様《完結》

アーエル
ファンタジー
「ある男爵家の地下に歳をとらない少女が閉じ込められている」 ある若き当主がそう訴えた。 彼は幼き日に彼女に自然災害にあうと予知されて救われたらしい 「今度はあの方が救われる番です」 涙の訴えは聞き入れられた。 全6話 他社でも公開

処理中です...