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第11章 探索者、オンステージ!
閑話 研究者の過去 その5 ~助言と約束~
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女性……叔母さんは、自分の素性を明らかにした。
昔、叔母さんも猪飼家の厳しい生活を強いられていた。
だがある日、駄菓子屋を営んでいる男性と出会い、駆け落ちして家を出て行ったらしい。
……だけど、その男性は病気にかかりすぐに亡くなってしまい、それ以来駄菓子屋を引き継いでひっそりと暮らしているらしい。
「そうかい、それで瑠璃ちゃんは出て行ったわけだね」
「うん……私、家に帰りたくない」
「だろうねぇ」
叔母さんは私の話を真摯に聞いてくれた。
私は……それがとても嬉しかった。
「母さん酷いんだよ、異世界なんてあるわけないなんてさ」
「酷いお母さんだねぇ、本当に」
叔母さんは私を肯定してくれたが……唯一怒ったことがあった。
それは……。
「でもねぇ、貴方みたいな年齢の子が、1人で夜の街をほっつき歩いていたら危ないよ」
「……」
私は……何も言えなかった。
あの時、叔母さんが私に声を掛けなかったら、今頃どうなっていたのか……想像もしたくない。
「……ただし、『今の年齢』ならね」
「……どういうこと?」
「瑠璃ちゃん、貴方にはまだ時間がある、貴方が大人になったら、何でも自由にできるんだ……だから、その自由を満喫するためにも、色んなことを身につけなさい」
「……色んな事?」
「そうさ、例えば体を鍛えてみるとか、異世界の知識を広げるとか……色んなことができるさ、私はもう歳だからね、瑠璃ちゃんの年齢に戻って色んなことを経験したいぐらいさ」
「……」
「だから……今はお家に帰って、よく寝て、明日から色んなことを経験しなさい、わかったかい?」
叔母さんが帰るよう促すが、私には不安があった。
それは……。
「……で、でも、今戻ったら、怒られちゃうかも……」
家に帰ったら、母さんが怒りで大暴れするのは目に見えていた。
私は……それがとても怖かった。
だが、叔母さんは……。
「じゃあ、私も一緒に行ってあげるよ」
「え?」
「私も瑠璃ちゃんの家に行くのは怖い……お互いに怖かったら、大丈夫じゃないかい?」
「……意味が分からないよ」
叔母さんも行くのが怖い……今考えるとそれは当然だった。
事実上勘当した家に、偶然出会った姪と一緒に行くなんて、私だったら無理だ。
でも、叔母さんは一緒に行ってあげると言ってくれた……それがどこか、頼もしかった。
「……わかった、帰る、でも……その代わり……」
「……なんだい?」
「また……ここに来てもいい?」
「……もちろんさ! 私はいつでも待っているからね」
「……うん!」
叔母さんの言葉を聞いて安心した私は、荷物を纏め、家へと戻った。
昔、叔母さんも猪飼家の厳しい生活を強いられていた。
だがある日、駄菓子屋を営んでいる男性と出会い、駆け落ちして家を出て行ったらしい。
……だけど、その男性は病気にかかりすぐに亡くなってしまい、それ以来駄菓子屋を引き継いでひっそりと暮らしているらしい。
「そうかい、それで瑠璃ちゃんは出て行ったわけだね」
「うん……私、家に帰りたくない」
「だろうねぇ」
叔母さんは私の話を真摯に聞いてくれた。
私は……それがとても嬉しかった。
「母さん酷いんだよ、異世界なんてあるわけないなんてさ」
「酷いお母さんだねぇ、本当に」
叔母さんは私を肯定してくれたが……唯一怒ったことがあった。
それは……。
「でもねぇ、貴方みたいな年齢の子が、1人で夜の街をほっつき歩いていたら危ないよ」
「……」
私は……何も言えなかった。
あの時、叔母さんが私に声を掛けなかったら、今頃どうなっていたのか……想像もしたくない。
「……ただし、『今の年齢』ならね」
「……どういうこと?」
「瑠璃ちゃん、貴方にはまだ時間がある、貴方が大人になったら、何でも自由にできるんだ……だから、その自由を満喫するためにも、色んなことを身につけなさい」
「……色んな事?」
「そうさ、例えば体を鍛えてみるとか、異世界の知識を広げるとか……色んなことができるさ、私はもう歳だからね、瑠璃ちゃんの年齢に戻って色んなことを経験したいぐらいさ」
「……」
「だから……今はお家に帰って、よく寝て、明日から色んなことを経験しなさい、わかったかい?」
叔母さんが帰るよう促すが、私には不安があった。
それは……。
「……で、でも、今戻ったら、怒られちゃうかも……」
家に帰ったら、母さんが怒りで大暴れするのは目に見えていた。
私は……それがとても怖かった。
だが、叔母さんは……。
「じゃあ、私も一緒に行ってあげるよ」
「え?」
「私も瑠璃ちゃんの家に行くのは怖い……お互いに怖かったら、大丈夫じゃないかい?」
「……意味が分からないよ」
叔母さんも行くのが怖い……今考えるとそれは当然だった。
事実上勘当した家に、偶然出会った姪と一緒に行くなんて、私だったら無理だ。
でも、叔母さんは一緒に行ってあげると言ってくれた……それがどこか、頼もしかった。
「……わかった、帰る、でも……その代わり……」
「……なんだい?」
「また……ここに来てもいい?」
「……もちろんさ! 私はいつでも待っているからね」
「……うん!」
叔母さんの言葉を聞いて安心した私は、荷物を纏め、家へと戻った。
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