現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた

立風館幻夢/夜野一海

文字の大きさ
上 下
348 / 424
第11章 探索者、オンステージ!

閑話 研究者の過去 その5 ~助言と約束~

しおりを挟む
 女性……叔母さんは、自分の素性を明らかにした。
 昔、叔母さんも猪飼家の厳しい生活を強いられていた。
 だがある日、駄菓子屋を営んでいる男性と出会い、駆け落ちして家を出て行ったらしい。
 ……だけど、その男性は病気にかかりすぐに亡くなってしまい、それ以来駄菓子屋を引き継いでひっそりと暮らしているらしい。

「そうかい、それで瑠璃ちゃんは出て行ったわけだね」
「うん……私、家に帰りたくない」
「だろうねぇ」

 叔母さんは私の話を真摯に聞いてくれた。
 私は……それがとても嬉しかった。

「母さん酷いんだよ、異世界なんてあるわけないなんてさ」
「酷いお母さんだねぇ、本当に」

 叔母さんは私を肯定してくれたが……唯一怒ったことがあった。
 それは……。

「でもねぇ、貴方みたいな年齢の子が、1人で夜の街をほっつき歩いていたら危ないよ」
「……」

 私は……何も言えなかった。
 あの時、叔母さんが私に声を掛けなかったら、今頃どうなっていたのか……想像もしたくない。

「……ただし、『今の年齢』ならね」
「……どういうこと?」
「瑠璃ちゃん、貴方にはまだ時間がある、貴方が大人になったら、何でも自由にできるんだ……だから、その自由を満喫するためにも、色んなことを身につけなさい」
「……色んな事?」
「そうさ、例えば体を鍛えてみるとか、異世界の知識を広げるとか……色んなことができるさ、私はもう歳だからね、瑠璃ちゃんの年齢に戻って色んなことを経験したいぐらいさ」
「……」
「だから……今はお家に帰って、よく寝て、明日から色んなことを経験しなさい、わかったかい?」

 叔母さんが帰るよう促すが、私には不安があった。
 それは……。

「……で、でも、今戻ったら、怒られちゃうかも……」

 家に帰ったら、母さんが怒りで大暴れするのは目に見えていた。
 私は……それがとても怖かった。
 だが、叔母さんは……。

「じゃあ、私も一緒に行ってあげるよ」
「え?」
「私も瑠璃ちゃんの家に行くのは怖い……お互いに怖かったら、大丈夫じゃないかい?」
「……意味が分からないよ」

 叔母さんも行くのが怖い……今考えるとそれは当然だった。
 事実上勘当した家に、偶然出会った姪と一緒に行くなんて、私だったら無理だ。
 でも、叔母さんは一緒に行ってあげると言ってくれた……それがどこか、頼もしかった。

「……わかった、帰る、でも……その代わり……」
「……なんだい?」
「また……ここに来てもいい?」
「……もちろんさ! 私はいつでも待っているからね」
「……うん!」

 叔母さんの言葉を聞いて安心した私は、荷物を纏め、家へと戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

処理中です...