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第11章 探索者、オンステージ!

閑話 研究者の過去 その3 ~出会い~

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「寒い……」

 寒さに震え、私は、涙で顔を濡らした。
 何故、こんなことをしてしまったのか、私の居場所はどこなのか……それが分からなかった。

「姉さん……」

 私は姉さんの事を考えた。
 姉さんは、私を受け入れてくれた。
 私がばかなことを言っても、姉さんは真摯に受け止めてくれた。
 そんな理解者は、ほとんど家にいない。
 あそこは……私の居場所ではない。
 寂しくなった私は……幼稚園の頃からずっと一緒だったぬいぐるみを取り出した。
 姉さんがいないときも、これがあるおかげで乗り切ることができた。
 私はそれを抱きしめ……涙を浮かべた。

「ねぇ……誰か……私を受け入れて……」

 そんなことを呟き、私は目を閉じた。
 暗闇に包まれ、私はこのまま死ぬのだと思った。
 ……その時だった。

「……お嬢ちゃん、どうしたの?」

 ふと、声を掛けられたような気がして、私は頭を上げた。
 頭を上げた先では、初老の女性が私と目を合わせ、声を掛けてきたのだ。

「こんなところに居たら風邪引いちゃうよ、お家はどこだい?」
「お家……?」

 私はその言葉に、詰まってしまった。

「お家なんて、無いよ?」
「無いって……そんなわけないじゃなかい」
「無いものは無い、私にそんなものなんて……無い」
「……」

 女性は何かを察したのか、何とも言えない表情をしていた。
 変なことを言ってしまった……この女性には迷惑を掛けられないし、その場を後にしようと立ち上がった。

「ちょ、ちょっと待ちな! どこに行くんだい?」
「……どこでもいい」
「どこでもいいって……って、待ちなって!」

 女性は私の肩を掴み、制止させた。

「離してください」
「いやいや! 大人として、貴方みたいな年齢の子をそのまま見過ごすわけにはいかないよ!」
「……」

 女性は心配そうな顔をしてそんなことを訴えてきた。

「そうだ、私の家、この近くなんだよ! 駄菓子屋をやっているんだ……もう営業はとっくに終わっちゃったけど、寄って行かないかい?」

 駄菓子屋か……確かに少しお腹が空いてきたし……お腹を満たすためにも、寄ってみようかな。

「……わかった、行く」
「うん! じゃあついて来て!」

 私は女性に連れられ、駄菓子屋へと向かった。
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