現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた

第11章 探索者、オンステージ！

閑話 研究者の過去 その２ ～家出～

「……さぁ、寒かったでしょ？　私の部屋で本でも読まない？」
「……うん！」

　姉さんの部屋、それだけで私は元気になった。
　母さんにバレないように姉さんは自分の部屋に私を連れて行ってくれた。

「さぁ瑠璃、今日はどれを読みたい？」
「これ！　『悪役令嬢に転生した賢者』！」
「おお？　お目が高いね！」

　姉さんの部屋には、異世界小説がいっぱいあった。
　私が異世界小説好きになるのは必然だったと言ってもいいだろう。

「姉さん、異世界ってあるのかな？」
「異世界？」
「だって、私たちが生きているこの世界だけが全てなんて、おかしいと思わない？　もしかしたら、私たちが知らないところで、また別の世界の人たちが生活しているかもしれないって考えると、楽しいと思わない？」

　私はそれとなく持論を唱えるも……冷静になって、自分が何を言っているのかわからなくなり、恥ずかしくなってしまった。

「……ごめん、今の忘れて」
「ええ？　なんで？」
「だって……おかしいでしょ？　異世界が存在するなんて、そんなのあり得ないよ」
「そんなことない！　瑠璃はとても面白いこと考えるね！」
「……え？」

　姉さんは……私を褒めてくれた。

「きっとあるよ！　異世界！」
「そ、そうかなぁ……」
「瑠璃が信じている限り、きっと叶うよ！」
「それ、特撮のセリフ？」
「あはは、バレちゃった？」

　姉さんは特撮も大好きだった。
　異世界小説の隣には、特撮の円盤がびっしりと供えられていた。

「なんか小説読むの飽きちゃった、DVD観てもいい？」
「うん！　じゃあ一緒に観ようか！」
「わーい！」

　姉さんがDVDを用意し、私はテレビに釘付けとなった。

☆

　……そこから、しばらくして、私は小学校高学年になった。
　この頃から、私は親に反抗するようになった。
　理由は複数あるが、まず第一に、姉さんがあまり家に帰ってこなくなったことがある。

　私の実家は名門と言われている学校……『猪飼塾女子学園』を運営する一家……姉さんは、母さんの跡継ぎとして忙しくしていた。
　代々、この学校の総長は、一家の女子が継ぐものとされていた。
　故に、母もそれを引き継ぎ、父さんは他の名門校からの婿養子。
　私は除け者かと思ったが、「先祖代々一家一丸となって学園を運営するのが伝統」とかなんとか言って、私にまで学校の運営に付き合う羽目になった。
　私は、それが……なんとなく、嫌だった。

　第二に、母さんが異世界を否定したことだ。
　奴は異世界を否定したばかりか「勉強すれば分かる」とかなんとか言ってきた。
　勉強ならもう死ぬほどしている、もう沢山だ。

　……私はある日、荷物を纏めて、家を出た。
　目的地は不明、所持金も少ない、だが、ここにいるよりかはマシだと思ったのだ。
　大きな荷物を抱え、ひたすらに走り続けた。
　……やがて走り疲れた私は、道端に倒れこんでしまった。