現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた

立風館幻夢/夜野一海

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第11章 探索者、オンステージ!

閑話 研究者の過去 その1 ~母と姉~

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「猪飼瑠璃さん」
「はい」

 小学校の頃、テストの返却日。
 名前を呼ばれた私は教団の前へと向かった。

「猪飼さん、今回も90点台、凄いね」
「……そうですね」

 今回のテストは、ほとんどが90点台。
 間違えた問題は、どれも凡ミスと呼ばれるようなものばかりだった。

 テストの返却が終わり、それとなく残りの授業を終えた私は、とぼとぼと家へと帰った。

「はぁ……」

 玄関を開け、私は帰宅を知らせるように「ただいま」と呟いた。

「おかえりなさい、瑠璃」
「ただいま、母さん」

 家に帰ると、母が迎えてくれた。
 私はそんな母の言葉を背に、部屋へと戻ろうとした……のだが。

「瑠璃、テストを見せなさい」
「……はい」

 私は母に言われ、渋々テストを取り出した。
 テストの結果を見た母は……それを握りしめ、私の腕を掴んだ。

「痛っ! 痛いよ母さん!」
「瑠璃! なんて点数を取ってるの!? そんな子はお仕置きです!!」
「離して!!」
「……ここで反省していなさい!!」

 私は母に引っ張られ、物置小屋へと連行された。
 外型から鍵を掛けられ、私は扉を叩いた。

「母さん! お願いだから出して!! 次は100点取るから!!」

 私は命乞いをするように叫ぶも、誰も私の言葉を聞いてはくれなかった。

「お願い……出して……」

 やがて、私は力尽きてしまい、その場に倒れこんでしまった。
 もう一生ここから出られなかったら……このままこの場で死んでしまったら……。
 そんなことを考えつつ、目を閉じた。

 ……しばらく暗闇に包まれていた私だったが、そんな暗闇を照らしてくれる存在があった。

「……瑠璃!」

 それは……私の姉、「猪飼藍《いかい あい》」だ。

「やっぱりこんなところにいた! ごめんね、帰るのが遅れちゃって」
「姉……さん?」
「そうだよ! ただいま、瑠璃!」
「……姉さん!!」

 姉さんは私と歳が5歳近く離れていた。
 姉さんはそんな私を、まるで娘のように見ているようだった。

「母さんも酷いことするよね、こんなに幼い瑠璃を……」
「……いいんだよ、悪いのは私だし」
「瑠璃は悪くないよ」

 姉さんは凍えた私を抱きしめた。
 姉さんの体はまるで炬燵のように暖かく、私は暖を求め、彼女を力いっぱい抱きしめた。

「どうしてここに閉じ込められたの?」
「テストで……悪い点数を取ったから……」

 私は姉に、テストで100点を取れなかったこと、それに対して母がブチギレて私をここに閉じ込めたことを話した。
 すると姉さんは、笑顔で私の頭を撫でた。

「瑠璃! よく頑張ったね!」
「……え?」

 一通り私の頭を撫でた姉さんは、再び私を抱きしめた。

「瑠璃は悪くないよ、瑠璃は凄く頭がいいんだね」
「……え?」
「世の中に瑠璃みたいな頭のいい子はそうそういないんだよ、だから瑠璃は悪くない、寧ろすごい事なんだよ」
「……」

 私はこの時、姉さんの言っていることは分からなかったが、とりあえず褒められていることは分かった。
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