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第8章 立ち上がライズ! ドワーフじゃーないと!
ドワーフの過去 その5 ~過去と未来~
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「ちょ、ちょっと兄ちゃん! どこ行くのさ!」
「ゴルド兄ちゃん! 待ってよ!」
弟分と妹分は、荷物を纏めているワシを引き留めようとした。
だが、ワシはその手を休めることはなく、荷造りは早々に終わった。
「ねぇ兄ちゃん!」
荷物を引きずり玄関へと向かう。
ワシを止める声も聞こえるが、それに気にも留めず、足を止めなかった。
「待ってよ兄ちゃん! この孤児院は兄ちゃんがいないと……」
「孤児院のためだ、しばらく遠くへ行って……出稼ぎに行ってくる」
「出稼ぎって……」
……この言葉に間違いはない、だが、こいつらには言えない想いがあった。
こんなところにいても、ワシは過去に捕らわれ続けるだけだ。
だったら、広い世界に出て、少しでも忘れられたら……そう考えたのだ。
「で、でもゴルド兄ちゃん! ここの運営は……」
「お前ら年長者が居れば、この施設は安泰だ、ワシみたいな年寄りが居なくても大丈夫だろう?」
「で、でも……」
「安心しろ、金なら遠くへ行っている間、毎月送ってやる……心配するな」
「お金の問題じゃないよ! もしゴルド兄ちゃんに何かあったら……」
「……ワシのことはいい」
「よくないよ! 兄ちゃん!!」
外に出る準備を終え、制止を振り切り、扉を開けたワシは、「過去」に背を向け、「未来」へと飛び出した。
……これ以降、ワシは「過去」に戻ることは無かった。
☆
「ここが……王都」
初めて足を踏み入れた王都。
笑顔で満ち溢れた人々に、活気のある市場や屋台、ワシはそれらに見とれてしまい、思わず立ち止まってしまった。
「……さて」
ひとまず、探索者ギルドで登録しなきゃな。
ワシは大きな荷物を引きずりながら、探索者ギルドへと向かった。
探索者ギルドまではそこまで時間は掛からなかった。
建物の中に入り、受付に声を掛けようとした……その時。
「お、おぉ……」
ワシは、無意識に受付に見とれてしまった。
なぜなら……。
「俺好みの……人間の女が……」
受付のところ、そこに俺好みの貫禄のある人間の女が、探索者が来るのを待っていたのだ。
……いや、その待っている探索者って言うのは……このワシだ!!
ワシは足早に、受付の元へと急いだ。
「んん! ……失礼、お嬢さん?」
「はい……え?」
「貴方のような美しい人がこんなところで受付をやっているとは何とも勿体ない……しかし、これもまた運命、ワシという王子様がお迎えに参りましたよ」
「……?」
女はワシの「甘い言葉」に困惑しているようだった。
まぁ、最初はこんなもんでいいか。
「とまぁ、貴方を連れ出すのはまたの機会にして、登録をしたいのですが、よろしいですか?」
「は、はぁ……」
……女はワシの言葉に完全に引いていた……今思うと、かなり恥ずかしい事を言っていたが、この時のワシは、完全に欲に支配されていた。
女は基本通りの仕事を行い、ワシは探索者登録を終えた。
「ゴルド兄ちゃん! 待ってよ!」
弟分と妹分は、荷物を纏めているワシを引き留めようとした。
だが、ワシはその手を休めることはなく、荷造りは早々に終わった。
「ねぇ兄ちゃん!」
荷物を引きずり玄関へと向かう。
ワシを止める声も聞こえるが、それに気にも留めず、足を止めなかった。
「待ってよ兄ちゃん! この孤児院は兄ちゃんがいないと……」
「孤児院のためだ、しばらく遠くへ行って……出稼ぎに行ってくる」
「出稼ぎって……」
……この言葉に間違いはない、だが、こいつらには言えない想いがあった。
こんなところにいても、ワシは過去に捕らわれ続けるだけだ。
だったら、広い世界に出て、少しでも忘れられたら……そう考えたのだ。
「で、でもゴルド兄ちゃん! ここの運営は……」
「お前ら年長者が居れば、この施設は安泰だ、ワシみたいな年寄りが居なくても大丈夫だろう?」
「で、でも……」
「安心しろ、金なら遠くへ行っている間、毎月送ってやる……心配するな」
「お金の問題じゃないよ! もしゴルド兄ちゃんに何かあったら……」
「……ワシのことはいい」
「よくないよ! 兄ちゃん!!」
外に出る準備を終え、制止を振り切り、扉を開けたワシは、「過去」に背を向け、「未来」へと飛び出した。
……これ以降、ワシは「過去」に戻ることは無かった。
☆
「ここが……王都」
初めて足を踏み入れた王都。
笑顔で満ち溢れた人々に、活気のある市場や屋台、ワシはそれらに見とれてしまい、思わず立ち止まってしまった。
「……さて」
ひとまず、探索者ギルドで登録しなきゃな。
ワシは大きな荷物を引きずりながら、探索者ギルドへと向かった。
探索者ギルドまではそこまで時間は掛からなかった。
建物の中に入り、受付に声を掛けようとした……その時。
「お、おぉ……」
ワシは、無意識に受付に見とれてしまった。
なぜなら……。
「俺好みの……人間の女が……」
受付のところ、そこに俺好みの貫禄のある人間の女が、探索者が来るのを待っていたのだ。
……いや、その待っている探索者って言うのは……このワシだ!!
ワシは足早に、受付の元へと急いだ。
「んん! ……失礼、お嬢さん?」
「はい……え?」
「貴方のような美しい人がこんなところで受付をやっているとは何とも勿体ない……しかし、これもまた運命、ワシという王子様がお迎えに参りましたよ」
「……?」
女はワシの「甘い言葉」に困惑しているようだった。
まぁ、最初はこんなもんでいいか。
「とまぁ、貴方を連れ出すのはまたの機会にして、登録をしたいのですが、よろしいですか?」
「は、はぁ……」
……女はワシの言葉に完全に引いていた……今思うと、かなり恥ずかしい事を言っていたが、この時のワシは、完全に欲に支配されていた。
女は基本通りの仕事を行い、ワシは探索者登録を終えた。
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