現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた

立風館幻夢/夜野一海

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第7章 吸血鬼、日々鍛えてますから!

吸血鬼の過去 その4 ~乗船~

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 ……あれから数か月。
 私はお父さんの遺言通りに、行動を移した。
 家を出て、モーファサ王国を飛び出し、西へと進み始めた。
 他の「きょうだい」達は、私のように旅に出る者と家に残る者に分かれた。

 私は旅に出て……体を鍛えながら、各国の知識を吸収した。
 言語はお父さんから教わっていたのもあって、ある程度は話せていたんだけど……向こうから見たらカタコトなのか、通じないことも多かった。
 私は悔しくて……1から勉強をし直した。
 人と話すことは苦手だったけど、極力話すようにして、会話能力を上げた。

 そんなこんなで知識を上げる中、私は各国の武術大会に出た。
 「きょうだい」の中では一番弱かった私、きっと1回戦で敗退する……と思っていたんだけど。

『優勝は……モーファサ王国出身、キセノン!』

 私は、各国の武術大会で優勝を重ね……徐々に名が知られるようになった。
 理由は分からなかった、ただいつものように戦っていただけなのに。
 大会によっては優勝賞品として賞金も手に入ったんだけど……私はそれを丁重に断った。
 だって、私なんかよりも強い人なんて沢山いるのに、そんなものを受け取っても仕方がないと考えたからだ。

 何回か大会を重ねるうちに、今度は「弟子にしてほしい」と言ってくる人も現れた。
 私は「弟子を取るほど自分は凄くない」と言って、それも丁重に断った。

 西へ西へと歩いているうちに、私はとある出会いをする。

 ある時、港に訪れた私は知識を広げようと船を見て回った。
 ……その時、何かにぶつかって、私は立ち止まってしまった。
 下を見ると、私よりも背の小さい女の子が、険しい表情で膝を摩っていた。
 どうやらこの子にぶつかってしまったようだ……私はその場で屈み、手を差し伸べた。
 すると女の子は……私の手を弾き返した。

「いっっっっったいじゃない! 前見なさいよ!」

 女の子は、「サンルート語」で、そんなことを叫んだ。
 私は咄嗟に、サンルート語で謝った。

「ごめん……なさい」

 私はサンルート式に、手を重ね、頭を下げた。
 すると女の子は、険しい顔から一変、興味深そうな顔で、私を見つめた。

「貴方……見た感じサンルート人じゃないけど、サンルート語、話せるの?」
「えっと……一応……本で……」
「ふーん……」

 女の子は立ち上がって……私の周りを歩きながら、吟味するように見つめ始めた。
 な、なんなんだろう……。

「あんた、よく見たら、噂の『世界中の武術大会で無双してる吸血鬼』ってやつ?」
「まぁ……そう……言われて……ますけど」
「サンルート語、話せるのね、他の言語は? 話せる?」
「一応……一通り……話せます……」
「ふーん……」

 女の子は……一通り吟味した後、私の手を取った。

「……決めた、貴方、私の貿易船に乗って」
「貿易……船?」
「そう、勿論タダでとは言わないわ、報酬もたんまり用意してあげる、船で生活することになるけど、食事も寝床もある……どう? 悪い話じゃないと思うけど?」

 どうやら、彼女は貿易船を所有しているらしい……。
 うーん、これからもっと西に進もうと思ったんだけど……寄り道も、悪くないのかもしれない。
 ここは乗ってみよう。

「……分かりました……乗ります」
「そうこなくっちゃ! ちょうど通訳の奴が生活に耐えられないとかほざいてどっかに逃げたから助かるわ」

 女の子……船長は、満面の笑みで、私の腕を思い切り振った。

「それじゃ、ついて来て」
「はい……」

 私は流れるように、船へと乗り込んだ。
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