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第7章 吸血鬼、日々鍛えてますから!
第158話 碧の悩みとダンジョン出現
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「そうそう! 凄い凄い!」
「……本当?」
「うん! お姉ちゃん凄いね!」
土手での空手の稽古。
自分より遥かに年下から稽古を受けたキセノンは、ものの数時間で、基礎的な動きをマスターした。
「お姉ちゃん、もしかして、空手の選手?」
「いや……今日……初めて……知識……本で……読んだだけ」
「えええ!? ほんとに!?」
キセノンに空手を教えた少女……碧は、彼女の飲み込みの早さに驚愕した。
碧はキセノンの腕を思いっきり振り、彼女を大きく称えた。
「凄いよ! 本当に……アタシなんかと比べても」
「……?」
先程までの太陽のように明るい表情から一変、碧の表情は日食が始まったように暗くなった。
「……どうしたの? もしかして……悩み……力不足が……原因?」
碧の表情に異変を感じたキセノンは目線を合わせ、彼女の悩みを聞き出す。
すると碧は、肯定するように頷いた。
「アタシさ……最近、試合で負け続きなんだ、家は空手の道場なんだけどさ……これじゃあ、父さん母さんの恥だよ」
「……」
キセノンは、碧の言葉に違和感を覚えた。
キセノンは碧の肩を掴み、語りかけた。
「……あのね……恥って……誰が……決めた? お父さん……お母さん……そう言った?」
「そ、それは……」
「誰も……決めてない……碧ちゃんが……勝手に……思ってる……だけじゃない?」
「……」
碧は、キセノンの言葉に、なんの言葉も返せなかった。
キセノンは、続けて、口を開いた。
「あのね……碧ちゃん」
……キセノンが碧に語り掛けようとした、その時。
2人の足元に、巨大な魔法陣が現れた。
「な、何!?」
碧は見たことのない模様に、驚愕の声を上げた。
キセノンは咄嗟に、碧を守るように抱きかかえた。
「お、お姉ちゃん! なにこれ!?」
「……とりあえず……落ち着いて」
……そうこうしているうちに、魔法陣から、巨大な塔が現れ、2人はそれに巻き込まれてしまった。
☆
「さ、公園へ急ぎましょう、ご家族の方とかいらっしゃるんですか?」
「まぁ……いるにはいますえ」
「……?」
いるにはいる? 公園にいるサンルート人はみんな家族みたいなものという意味であろうか?
「いやはや……周りを見ると、堕落している同胞ばかりで……私はとても悲しいねぇ……」
……老人は周りにいる横になったり道端に座っているサンルート人を見てそんなことを呟いた。
まぁ、私も同じ立場だったら、そういう感想を抱くと思う……けど。
「みんな、何もできないから、そうせざるを得ないのだと思いますよ」
「はて? それはどういうことかえ?」
「サンルートの人は仕事も家も何もかも失って……日本の政府は突然の来訪者にどうすることもできない、ゆえに彼らは食べて寝る以外は何もできないんですよ」
「なるほどえ……」
アメリカやカナダの貧困街にいるホームレスも似たような状況であるというのは聞いたことがある。
夢を持って都市部に来たはいいけど、仕事も見つからず、ホームレスになって薬物と酒を求め続け、それらを摂取したら何もせずに道端で寝るだけ……状況は違うけど、今のサンルート人はそれに近い気がする。
「それに、そういう人だけじゃないと思いますよ」
「ほえ?」
……そうだ、私はそういうサンルート人だけではないことは知っている。
「……本当?」
「うん! お姉ちゃん凄いね!」
土手での空手の稽古。
自分より遥かに年下から稽古を受けたキセノンは、ものの数時間で、基礎的な動きをマスターした。
「お姉ちゃん、もしかして、空手の選手?」
「いや……今日……初めて……知識……本で……読んだだけ」
「えええ!? ほんとに!?」
キセノンに空手を教えた少女……碧は、彼女の飲み込みの早さに驚愕した。
碧はキセノンの腕を思いっきり振り、彼女を大きく称えた。
「凄いよ! 本当に……アタシなんかと比べても」
「……?」
先程までの太陽のように明るい表情から一変、碧の表情は日食が始まったように暗くなった。
「……どうしたの? もしかして……悩み……力不足が……原因?」
碧の表情に異変を感じたキセノンは目線を合わせ、彼女の悩みを聞き出す。
すると碧は、肯定するように頷いた。
「アタシさ……最近、試合で負け続きなんだ、家は空手の道場なんだけどさ……これじゃあ、父さん母さんの恥だよ」
「……」
キセノンは、碧の言葉に違和感を覚えた。
キセノンは碧の肩を掴み、語りかけた。
「……あのね……恥って……誰が……決めた? お父さん……お母さん……そう言った?」
「そ、それは……」
「誰も……決めてない……碧ちゃんが……勝手に……思ってる……だけじゃない?」
「……」
碧は、キセノンの言葉に、なんの言葉も返せなかった。
キセノンは、続けて、口を開いた。
「あのね……碧ちゃん」
……キセノンが碧に語り掛けようとした、その時。
2人の足元に、巨大な魔法陣が現れた。
「な、何!?」
碧は見たことのない模様に、驚愕の声を上げた。
キセノンは咄嗟に、碧を守るように抱きかかえた。
「お、お姉ちゃん! なにこれ!?」
「……とりあえず……落ち着いて」
……そうこうしているうちに、魔法陣から、巨大な塔が現れ、2人はそれに巻き込まれてしまった。
☆
「さ、公園へ急ぎましょう、ご家族の方とかいらっしゃるんですか?」
「まぁ……いるにはいますえ」
「……?」
いるにはいる? 公園にいるサンルート人はみんな家族みたいなものという意味であろうか?
「いやはや……周りを見ると、堕落している同胞ばかりで……私はとても悲しいねぇ……」
……老人は周りにいる横になったり道端に座っているサンルート人を見てそんなことを呟いた。
まぁ、私も同じ立場だったら、そういう感想を抱くと思う……けど。
「みんな、何もできないから、そうせざるを得ないのだと思いますよ」
「はて? それはどういうことかえ?」
「サンルートの人は仕事も家も何もかも失って……日本の政府は突然の来訪者にどうすることもできない、ゆえに彼らは食べて寝る以外は何もできないんですよ」
「なるほどえ……」
アメリカやカナダの貧困街にいるホームレスも似たような状況であるというのは聞いたことがある。
夢を持って都市部に来たはいいけど、仕事も見つからず、ホームレスになって薬物と酒を求め続け、それらを摂取したら何もせずに道端で寝るだけ……状況は違うけど、今のサンルート人はそれに近い気がする。
「それに、そういう人だけじゃないと思いますよ」
「ほえ?」
……そうだ、私はそういうサンルート人だけではないことは知っている。
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