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第6章 さぁ、ファッションショータイムだ!

第131話 蜘蛛

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「うわぁ……なにこれ?」

 ダンジョンの中は……糸が張り巡らせた樹海のようだった。
 木々に白い糸が橋を作り、空を覆うようになっていた。
 なんていうか……気味が悪い。

「とにかく、一般人を助け出さないと……」

 こういうダンジョン……異世界小説でもあんまり見ない。
 だが、一部でこういうの見たことがある……確かその時に出た怪物って……。

「きゃああああああ! 誰か助けて! キモい!! 嫌ああああああ!!」

 ……女の子の叫び声が聞こえた。
 早く……助けなきゃ!
 私は脚を動かし、声のする方へと向かう。
 ……しばらく走っていると、女の子が糸に巻きつけられ、捕らえられているのが見えた。
 その周りを取り囲んでいたのは……。

「うわぁ……やっぱりか」

 ……『デカい蜘蛛の怪物』だった。

「誰か!! 助けて!! お願い!!」

 女の子は糸に巻き付けられながらも、必死で抵抗していた。
 いけない、早く助けないと! 正直私も蜘蛛は嫌いだけど……今はそんなこと言っている場合じゃない!

「おりゃあああああ!!」

 私は刀を振るい、女の子の周りにいた蜘蛛どもを一掃する
 私の刀攻撃で蜘蛛どもは煙となって消えていき、群れは散り散りになっていった。
 ふぅ……とりあえず一安心だ。

「……大丈夫!? ……と、糸を何とかしないと」

 私は刀で糸を切り、女の子の拘束を解き、彼女を抱きしめた

「大丈夫? 怪我は……」

 私が怪我の有無を聞こうとした、その時。

「嫌ああああああ!! 助けて!!」
「ちょ、ちょっと……」

 女の子は……私を突き飛ばし、再び叫び始めた。

「お、落ち着いて……」
「貴方誰!? 怪物の仲間!? 私をどうする気なの!?」
「落ち着いてって! 私はあの怪物じゃない! 貴方を助けに来たの!」

 私は彼女の肩を掴み、落ち着くよう促した。

「嫌! 離して!」
「もうあの蜘蛛はいない! だから落ち着いて!」
「誰か! 襲われる!!」

 女の子は再び私を突き飛ばした。
 ……どうやら完全にパニックになっているようだ。
 まぁ仕方が無いか……あんなんに襲われたらそりゃこうなる。
 ……一旦変身を解こう。
 私は変身解除した。

「ほら! 私は人間! だから落ち着いて!」

 私は女の子を抱きしめた。
 ……さっきのラピスもこうしたら落ち着いたし、きっと効果はあるんだろう。

「……本当に、私を助けに来たの?」
「そう! あの蜘蛛はもういないよ」
「本当? 本当に……? うぅ……」
「ちょ、ちょっと……」

 女の子は……安心したのか、泣き出した。

「泣かないで、もう大丈夫だから……」

 私は女の子の背中を摩り、安心させようとした……が、女の子は泣き止まなかった。
 相当怖かったみたいだね。

「怖かった……死ぬかと思った……」
「大丈夫……私がいるから……」

 女の子が泣き止むまで……私は抱きしめ続けた。
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