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第4章 Open Your Eyes For The Elf's Past
閑話 エルフの過去 その4 ~突然の別れ~
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そこから、自由な時間は訓練の時間に変わった。
リンと一緒にダンジョンに潜って、ボウガンの練習を始めた。
正体がバレないよう、リンに「髪の毛の色を変えられる魔法」を教わった。
リンの髪の毛もその魔法で赤毛にしたらしい。
私は……違う誰かになりたいと考えて、外に出るときはピンク色の髪にすることにした。
一方で、ボウガンの方はというと……。
「オブオブ! しっかり狙って!」
「ね、狙ってるよ!!」
……最初は上手く行かなかった。
しっかり狙っていると思っていたのに、矢が明後日の方向に行ったり、命中したかと思ったら急所を外してピンチになったり。
ダンジョンを抜けると、必ず反省会を開いた。
「……いい? オブオブ、ボウガンは片手じゃなくて、両手で狙いを定めるの、それで……」
「……小さい敵を狙う時どうすればいい?」
「あぁ、そういう時は……」
リンが私の師匠になってくれて、ボウガンについて1から10まで教えてくれた。
……厳しい一面もあったけど、それでも、楽しい事を守りたい一心で頑張った。
「やったね! オブオブ!」
「うん!」
私たちは2人で1人、息ぴったりのコンビだった。
楽しい事を守りたいという想いでやっていけた……それなのに、悲しい事はやはり起きてしまった。
☆
……その日は突然現れた。
いつものように庭で待っていたのだが、リンの姿が一向に見えない。
おかしい……まさか、武力衝突に巻き込まれたのでは?
私はそんな不安を考えつつも待ち続けた……。
……最終的に、彼女は現れなかった。
胸騒ぎが止まらなかった、もしも彼女の身に何かあったら……そう考えた。
そして、それは的中してしまった。
ある日、お母様は街の中心部に民衆を集めた……「臨時で演説を行う」とかなんとか言って。
無論私もそれに着いていった……そして、そこで見たのは。
「……嘘……でしょ?」
……身包みをはがされ、拷問を受けたのか傷だらけのリン……そして、彼女に似た女性と男性だった。
3人は縄で縛られ、既に虫の息だった。
民衆は3人を囲うように集まり、お母様は3人の前に立って「演説」を始めた。
「皆の衆! ここにいる者たちは誰だかわかるかな? ……そう、憎きカストル氏族と友好関係にある氏族……『アルヘナ氏族』の族長とその娘だ!」
お母様が、杖で母親をつつきながらそんなことを叫んだ。
……アルヘナ氏族……リンが、その氏族の……族長の娘?
私はその言葉を聞いて……驚愕した。
だが、そんな表情をしてしまったら、民衆やお母様に違和感を持たれてしまう……私は自己暗示をかけ、無表情を貫いた。
……でも、体の震えは止まらなかった。
「つい数日前、この娘が我がラサル氏族の領内に侵入し、スパイ活動を行っていたのだ! これは許し難い行為である……よって、只今より、この2人を火炙りの刑に処する!!」
……私はお母様の演説を黙って聞くしかなった。
泣きたかった、叫びたかった、やめてと言いたかった。
……でも、そんなことはできない……それをしてしまったら……。
「アルヘナ氏族に死を!」
「クソアマが!!」
「ラサル氏族万歳!!」
民衆は3人に向かって石を投げ、3人の体をさらに傷つけた。
そうしている間に火が灯され……3人は……原型を留めなくなった。
私は悲しみを抑えるために……自分の唇を傷つけた。
そして、心の中で、リンに謝り続けた。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね……。
リンと一緒にダンジョンに潜って、ボウガンの練習を始めた。
正体がバレないよう、リンに「髪の毛の色を変えられる魔法」を教わった。
リンの髪の毛もその魔法で赤毛にしたらしい。
私は……違う誰かになりたいと考えて、外に出るときはピンク色の髪にすることにした。
一方で、ボウガンの方はというと……。
「オブオブ! しっかり狙って!」
「ね、狙ってるよ!!」
……最初は上手く行かなかった。
しっかり狙っていると思っていたのに、矢が明後日の方向に行ったり、命中したかと思ったら急所を外してピンチになったり。
ダンジョンを抜けると、必ず反省会を開いた。
「……いい? オブオブ、ボウガンは片手じゃなくて、両手で狙いを定めるの、それで……」
「……小さい敵を狙う時どうすればいい?」
「あぁ、そういう時は……」
リンが私の師匠になってくれて、ボウガンについて1から10まで教えてくれた。
……厳しい一面もあったけど、それでも、楽しい事を守りたい一心で頑張った。
「やったね! オブオブ!」
「うん!」
私たちは2人で1人、息ぴったりのコンビだった。
楽しい事を守りたいという想いでやっていけた……それなのに、悲しい事はやはり起きてしまった。
☆
……その日は突然現れた。
いつものように庭で待っていたのだが、リンの姿が一向に見えない。
おかしい……まさか、武力衝突に巻き込まれたのでは?
私はそんな不安を考えつつも待ち続けた……。
……最終的に、彼女は現れなかった。
胸騒ぎが止まらなかった、もしも彼女の身に何かあったら……そう考えた。
そして、それは的中してしまった。
ある日、お母様は街の中心部に民衆を集めた……「臨時で演説を行う」とかなんとか言って。
無論私もそれに着いていった……そして、そこで見たのは。
「……嘘……でしょ?」
……身包みをはがされ、拷問を受けたのか傷だらけのリン……そして、彼女に似た女性と男性だった。
3人は縄で縛られ、既に虫の息だった。
民衆は3人を囲うように集まり、お母様は3人の前に立って「演説」を始めた。
「皆の衆! ここにいる者たちは誰だかわかるかな? ……そう、憎きカストル氏族と友好関係にある氏族……『アルヘナ氏族』の族長とその娘だ!」
お母様が、杖で母親をつつきながらそんなことを叫んだ。
……アルヘナ氏族……リンが、その氏族の……族長の娘?
私はその言葉を聞いて……驚愕した。
だが、そんな表情をしてしまったら、民衆やお母様に違和感を持たれてしまう……私は自己暗示をかけ、無表情を貫いた。
……でも、体の震えは止まらなかった。
「つい数日前、この娘が我がラサル氏族の領内に侵入し、スパイ活動を行っていたのだ! これは許し難い行為である……よって、只今より、この2人を火炙りの刑に処する!!」
……私はお母様の演説を黙って聞くしかなった。
泣きたかった、叫びたかった、やめてと言いたかった。
……でも、そんなことはできない……それをしてしまったら……。
「アルヘナ氏族に死を!」
「クソアマが!!」
「ラサル氏族万歳!!」
民衆は3人に向かって石を投げ、3人の体をさらに傷つけた。
そうしている間に火が灯され……3人は……原型を留めなくなった。
私は悲しみを抑えるために……自分の唇を傷つけた。
そして、心の中で、リンに謝り続けた。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね、リン。
ごめんね……。
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