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第4章 Open Your Eyes For The Elf's Past
閑話 エルフの過去 その1 ~ラサル氏族~
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「ラサルの民よ! よく聞くのだ! 今日こそは、憎き『カストル氏族』の奴らを根絶やしにするのだ!! それこそ、我らがラサル氏族の使命である!!」
……お母様が、兵士たちに向かってそんなことを叫ぶ。
私は目の前にいる兵士たちを、ただ見つめていた。
「ニオブ様―!!」
「俺はニオブ様のために戦います!」
「ニオブ様のためなら私の命などいりません!!」
……『ニオブ』、私の事だ。
「……ほら、ニオブ。声援に応えろ」
私の隣にいた、「お姉様」が、そんなことを言ってきた。
……応える、と言ってもどうやって?
「……お姉様、応えると言っても、どうやって?」
「簡単だ、手を上げればいい」
「……手を」
私はお姉様の言う通りにした。
……すると、兵士たちは、まるでそれを待ち望んでいたかのように、声を上げた。
「うおおおおおおおおお!! ニオブ様!!」
「ニオブ様! ニオブ様!」
「我らが命はニオブ様のために!!」
……兵士たちは歓声を上げるが、私には、何も感じなかった。
☆
私たち、エルフは複数の氏族によって成り立っている。
その中でも大きい氏族は、ラサル、カストル、ルクバト、ポラリス、アルタイル。
この5つの氏族は、長年争いが絶えない。
カストル氏族は、かつてラサル氏族をまるで奴隷のような扱いをし、ラサル氏族がそれに対する復讐のようにカストル氏族を襲っている。
ルクバト族は、ポラリス族のかつての族長を殺害し、それに対する報復合戦が定期的に行われている。
アルタイル族はかつてエルフを統一していた歴史があり、そんな過去の栄光を取り戻そうと定期的に小さい氏族を襲撃している。
……正直、私はそんな過去に捕らわれている氏族のトップに嫌気がさしていた。
だって、それは大昔に起きたことだし、今は今で、その先にも未来があるわけでしょ?
……私こと、「ニオブ・ラサル」は、ラサル氏族の族長の娘。
故にラサル氏族の者たちからは神の子のように見られている。
……私はそんな大層な子じゃないのに。
いつも族長であるお母様から、「我らはラサル族の頂点である、頂点は、常に完璧でなければならない」、そんなことを言われていた。
常に、頂点になるための勉強、勉強、勉強、勉強……その毎日。
だから、自由な時間も少なかった。
……数少ない自由な時間、私はただ、実家の庭に佇んでいた。
外に出ても、どこかで争いが起こっていて、必ずどこかで死体が転がっているからだ。
……この庭は、様々な木が植えられていて、端から見たら森だと言うだろう……そのくらい広かった。
何故か知らないけど、ここにいると落ち着くんだ。
嫌なことも、何もかも……全てが忘れられて、無になれる。
……お母様が、兵士たちに向かってそんなことを叫ぶ。
私は目の前にいる兵士たちを、ただ見つめていた。
「ニオブ様―!!」
「俺はニオブ様のために戦います!」
「ニオブ様のためなら私の命などいりません!!」
……『ニオブ』、私の事だ。
「……ほら、ニオブ。声援に応えろ」
私の隣にいた、「お姉様」が、そんなことを言ってきた。
……応える、と言ってもどうやって?
「……お姉様、応えると言っても、どうやって?」
「簡単だ、手を上げればいい」
「……手を」
私はお姉様の言う通りにした。
……すると、兵士たちは、まるでそれを待ち望んでいたかのように、声を上げた。
「うおおおおおおおおお!! ニオブ様!!」
「ニオブ様! ニオブ様!」
「我らが命はニオブ様のために!!」
……兵士たちは歓声を上げるが、私には、何も感じなかった。
☆
私たち、エルフは複数の氏族によって成り立っている。
その中でも大きい氏族は、ラサル、カストル、ルクバト、ポラリス、アルタイル。
この5つの氏族は、長年争いが絶えない。
カストル氏族は、かつてラサル氏族をまるで奴隷のような扱いをし、ラサル氏族がそれに対する復讐のようにカストル氏族を襲っている。
ルクバト族は、ポラリス族のかつての族長を殺害し、それに対する報復合戦が定期的に行われている。
アルタイル族はかつてエルフを統一していた歴史があり、そんな過去の栄光を取り戻そうと定期的に小さい氏族を襲撃している。
……正直、私はそんな過去に捕らわれている氏族のトップに嫌気がさしていた。
だって、それは大昔に起きたことだし、今は今で、その先にも未来があるわけでしょ?
……私こと、「ニオブ・ラサル」は、ラサル氏族の族長の娘。
故にラサル氏族の者たちからは神の子のように見られている。
……私はそんな大層な子じゃないのに。
いつも族長であるお母様から、「我らはラサル族の頂点である、頂点は、常に完璧でなければならない」、そんなことを言われていた。
常に、頂点になるための勉強、勉強、勉強、勉強……その毎日。
だから、自由な時間も少なかった。
……数少ない自由な時間、私はただ、実家の庭に佇んでいた。
外に出ても、どこかで争いが起こっていて、必ずどこかで死体が転がっているからだ。
……この庭は、様々な木が植えられていて、端から見たら森だと言うだろう……そのくらい広かった。
何故か知らないけど、ここにいると落ち着くんだ。
嫌なことも、何もかも……全てが忘れられて、無になれる。
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