84 / 424
第4章 Open Your Eyes For The Elf's Past
第84話 「私」について
しおりを挟む
「すう……すう……」
「んん……」
ラピスとキセノンはゆっくり息をしながら目を閉じている。
2人とも気持ちよさそうに寝ているが……かくいう私は、眠れない。
やはり気になるな……北米で起きてるエルフ同士の内戦、そしてリンの故郷に対する気持ち……。
リンの故郷……ファンスウィン共和国は、共和国という名前の通り、選挙によって首長が選ばれる。
国民の総意によって首長が選ばれるはずなのに……内戦が起きている。
現実でも、そんな国が山ほどあるのは分かっている、アフリカの多くの国……例えばナイジェリアや中央アフリカ共和国はそんな感じだ。
そうなる理由は多民族故に、選挙で選ばれた大統領が自身の出身地域を優遇したり、違う民族に対して不平等な仕打ちをしたり……。
そんな問題から立ち直った国……ルワンダやコートジボワールなどの例もあるが、これらの国もまだ不平不満があるという話は聞いたことがある。
それと比べると……ファンスウィン共和国は、エルフによる単一民族の国家ではないのだろうか?
まぁ、だからと言って内戦が起こらない理由にはならないけど……。
リンから話を聞ければ早いんだけどな……。
「……ルリルリ、起きてる?」
……ふと静粛に包まれた寝室に、リンの小さな声が響く。
「リン……起きてたの?」
「うん……無理矢理寝ようと思ったけど、やっぱり眠れなかった」
横を見ると、リンは小さな笑顔で私を見ていた。
「ルリルリ……眠れない?」
「うん、ちょっと考え事してて……」
「……考え事?」
「うん、えーっとね……」
どうしよう……言いにくい……。
これ言ったら……リンに嫌われちゃうかな? それとも……怒るかな?
「何考えてたの? ……よければ、教えてくれない?」
リンは期待の眼差しで……私の手を掴んだ。
や、やめて……それされると……。
「これ……言うと、リンが不快な思いをするかも……」
「何? ……別に、アタシは何言われてもバリ気にしないよ?」
「そ、そう? じゃあ……言うよ?」
「うん……」
……私はリンの故郷のことを考えていたことを話した。
そして今、アメリカとカナダで起きているエルフ同士の内戦の事、なぜ内戦が起きているのかわからないこと、リンがそのことについて複雑な思いを抱いているのに自分は何といえばいいのかわからないこと。
私はすべてを話した。
「そっか……ごめんね、アタシのせいで、そんな思いをさせちゃって」
「いや、リンが悪いわけじゃないよ……悪いのは、内戦の大元だよ……その……差し支えなければ、なんで内戦なんかが起きてるか教えてくれない?」
「……」
……やっぱり聞かない方がよかったのだろうか? リンは複雑な表情を浮かべつつ、下を向いた。
……ここは謝ろう。
「ごめん、言いたくないなら無理に言わなくていいから……今の、忘れて」
「……」
リンは……顔を顰め、涙が出そうな表情をしている。
……私、なんてことを……。
「……本当にごめんなさい、おやすみなさい」
……どうしよう、リン、怒ってる?
私ったら、やっぱりデリカシーのないことを……。
……そんなことを考えていると、リンは私の目を見て……微笑んだ。
「……ルリルリはもう仲間だし、言わないと……ここから先、ダンジョン探索しようにもできないよね」
「リン……」
「……わかった、教えてあげる……エルフのこと、そして……『私』のことも」
「……リンのこと?」
……リンはいつもの明るい口調から……真剣な口調に変わった。
そして……息を整え、語りだした。
「んん……」
ラピスとキセノンはゆっくり息をしながら目を閉じている。
2人とも気持ちよさそうに寝ているが……かくいう私は、眠れない。
やはり気になるな……北米で起きてるエルフ同士の内戦、そしてリンの故郷に対する気持ち……。
リンの故郷……ファンスウィン共和国は、共和国という名前の通り、選挙によって首長が選ばれる。
国民の総意によって首長が選ばれるはずなのに……内戦が起きている。
現実でも、そんな国が山ほどあるのは分かっている、アフリカの多くの国……例えばナイジェリアや中央アフリカ共和国はそんな感じだ。
そうなる理由は多民族故に、選挙で選ばれた大統領が自身の出身地域を優遇したり、違う民族に対して不平等な仕打ちをしたり……。
そんな問題から立ち直った国……ルワンダやコートジボワールなどの例もあるが、これらの国もまだ不平不満があるという話は聞いたことがある。
それと比べると……ファンスウィン共和国は、エルフによる単一民族の国家ではないのだろうか?
まぁ、だからと言って内戦が起こらない理由にはならないけど……。
リンから話を聞ければ早いんだけどな……。
「……ルリルリ、起きてる?」
……ふと静粛に包まれた寝室に、リンの小さな声が響く。
「リン……起きてたの?」
「うん……無理矢理寝ようと思ったけど、やっぱり眠れなかった」
横を見ると、リンは小さな笑顔で私を見ていた。
「ルリルリ……眠れない?」
「うん、ちょっと考え事してて……」
「……考え事?」
「うん、えーっとね……」
どうしよう……言いにくい……。
これ言ったら……リンに嫌われちゃうかな? それとも……怒るかな?
「何考えてたの? ……よければ、教えてくれない?」
リンは期待の眼差しで……私の手を掴んだ。
や、やめて……それされると……。
「これ……言うと、リンが不快な思いをするかも……」
「何? ……別に、アタシは何言われてもバリ気にしないよ?」
「そ、そう? じゃあ……言うよ?」
「うん……」
……私はリンの故郷のことを考えていたことを話した。
そして今、アメリカとカナダで起きているエルフ同士の内戦の事、なぜ内戦が起きているのかわからないこと、リンがそのことについて複雑な思いを抱いているのに自分は何といえばいいのかわからないこと。
私はすべてを話した。
「そっか……ごめんね、アタシのせいで、そんな思いをさせちゃって」
「いや、リンが悪いわけじゃないよ……悪いのは、内戦の大元だよ……その……差し支えなければ、なんで内戦なんかが起きてるか教えてくれない?」
「……」
……やっぱり聞かない方がよかったのだろうか? リンは複雑な表情を浮かべつつ、下を向いた。
……ここは謝ろう。
「ごめん、言いたくないなら無理に言わなくていいから……今の、忘れて」
「……」
リンは……顔を顰め、涙が出そうな表情をしている。
……私、なんてことを……。
「……本当にごめんなさい、おやすみなさい」
……どうしよう、リン、怒ってる?
私ったら、やっぱりデリカシーのないことを……。
……そんなことを考えていると、リンは私の目を見て……微笑んだ。
「……ルリルリはもう仲間だし、言わないと……ここから先、ダンジョン探索しようにもできないよね」
「リン……」
「……わかった、教えてあげる……エルフのこと、そして……『私』のことも」
「……リンのこと?」
……リンはいつもの明るい口調から……真剣な口調に変わった。
そして……息を整え、語りだした。
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ほのぼの学園百合小説 キタコミ!
水原渉
青春
ごくごく普通の女子高生の帰り道。帰宅部の仲良し3人+1人が織り成す、青春学園物語。
ほんのりと百合の香るお話です。
ごく稀に男子が出てくることもありますが、男女の恋愛に発展することは一切ありませんのでご安心ください。
イラストはtojo様。「リアルなDカップ」を始め、たくさんの要望にパーフェクトにお応えいただきました。
★Kindle情報★
1巻:第1話~第12話、番外編『帰宅部活動』、書き下ろしを収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B098XLYJG4
2巻:第13話~第19話に、書き下ろしを2本、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09L6RM9SP
3巻:第20話~第28話、番外編『チェアリング』、書き下ろしを4本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B09VTHS1W3
4巻:第29話~第40話、番外編『芝居』、書き下ろし2本、挿絵と1P漫画を収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0BNQRN12P
5巻:第41話~第49話、番外編2本、書き下ろし2本、イラスト2枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CHFX4THL
6巻:第50話~第55話、番外編2本、書き下ろし1本、イラスト1枚収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0D9KFRSLZ
Chit-Chat!1:1話25本のネタを30話750本と、4コマを1本収録。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0CTHQX88H
★第1話『アイス』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=8hEfRp8JWwE
★番外編『帰宅部活動 1.ホームドア』朗読★
https://www.youtube.com/watch?v=98vgjHO25XI
★Chit-Chat!1★
https://www.youtube.com/watch?v=cKZypuc0R34
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる