現代にダンジョンが現れたので、異世界人とパーティ組んでみた

立風館幻夢/夜野一海

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第4章 Open Your Eyes For The Elf's Past

第80話 紙芝居を続ける理由

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「……というわけで、花粉を抑えることに成功し、春のうちはマスクとゴーグルをするように世界の法律で決まった! こうしてお花の世界は以前よりも快適に過ごせるようになりましたとさ、おしまい!」
「バリ面白かったよ! ルリルリ!」
「子ども向けらしいけど、なかなかおもろいやん」
「ま、楽しめたな」
「うん……花粉症……興味深い」

 楽しんでくれたようだった。
 それならこっちも嬉しい。
 私は紙芝居を片付け、食卓に再び着いた。

「まぁ、こんな風に、子どもたちには『私は大学院で世界の研究をしていて、そのためにいろんな世界を旅している』って言ってるの」
「え? ちゃうんか?」
「うーん、半分は当たりで半分は嘘」
「どういうことや?」

 ラピスの疑問に私は答えた。

「叔母さんの家に初めて来たとき……私、研究で体がボロボロだったんだ……その時、遊びに来ていた子どもたちに駆け寄られて……咄嗟にそんなことを言ったの」
「なるほど、瑠璃はんは子どもたちに夢を与えたわけやな」
「……そう言えば聞こえはいいんだけどね」

 向こうがどう思っているのかは分からないけど、結局私はあの子たちをだましている。
 正直、ちょっと複雑なんだよね、このまま続けていいものか……。

「なんや? 瑠璃はん、続けたくないんか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけどね……ただ」
「ただなんや?」
「みんな、私に期待してて、いつか……幻滅されるんじゃないかって思うんだ。本当は世界を旅していない、ただの冴えない大学院生だってさ」

 私は所詮ただの大学院生、今は偶然異世界の住民であるみんなに会えたけど……。
 そんなことを考えていると、ゴルドが立ち上がって、私に近づいてきた。

「あのよ、お前は何のためにこの紙芝居をガキどもに披露しているんだ?」
「まぁ……子どもたちを楽しませるためかな?」

 まぁ、それ以外に理由は無い……かな?

「ガキどもはそれを見てつまらなそうにしているのか?」
「それは……」

 私の紙芝居を見て、子どもたちは……。

『ねぇねぇ、るり姉、また異世界のお話聞かせて?』
『わたしも聞きたい! この間の『アイスクリームの世界』の話の続き、聞きたいな!』
『ぼ、ぼくは『テレビの世界』の話をもう一度聞きたい!』

 ……みんな、楽しそうに聞いてくれている。
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