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第3章 この猫、魔法使いで探索者!
第60話 不安と差別
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「あっちこっちに異世界の人がいる……」
通学中、なんども異世界の人……サンルート人を見るのが多かった。
白人風の人、犬猫兎……その他哺乳類をそのまま人にしたみたいな人。
みんな突然の出来事に困惑しているのか、ただ無気力に座っていたり、寝そべっていた。
貧相な恰好をしている人もいたが、高級そうな服を着ている人も同じくらいいた。
……あの人たちは、サンルートでそれなりに上の階級……所謂貴族の人たちであったのだろうか?
そういう人たちが、貧相な恰好の人たちと肩を並べて座り込み、お互いに不安を口にしていた。
「ここはどこで、私たちはどうなってしまったんだ……家も……土地も……お金も……何もかも無くなった……」
「気を落とすなよ、俺なんて元から家はあってないようなもんだぜ? それより……お袋と嫁の安否が心配だ……」
「貴方、お仕事は?」
「あぁ、一応探索者だが、どうにも稼げなくてね、遠くのダンジョンに出かけた矢先にこれだ」
「……それは大変ですね」
……こんな会話が聞こえる
もはや、彼らの中では、存在していた階級も、崩れ去ったのだろうと私は考えた。
……みんなつらいだろうな、突然得体のしれないところにやってきてしまって、家も財産も失って……何か私にできることはないだろうか?
炊き出しとか……職業支援とか……でも、そういうのって自治体がやることで、私には経済的にも到底出来そうもないかなぁ……でもなぁ……何とかしてあげたいなぁ……うーん。
そんなこと考えている中……。
「おい! お前どこの誰よ?」
「わ、私は……サンルート人です」
「あはは! 本当に猫が喋った! ウケる!」
遠くでチャラい男女の集団が携帯で撮影をしながら、猫獣人の人に話しかけていた。
おそらくあの猫獣人は……女性だろう、声や体型からしてそう見える。
猫獣人は……困っている様子だった。
私は思わず、立ち止まってしまった。
「なぁ、これ食うか? あんたにピッタリだろ?」
「た、食べ物を恵んでくださるのですか? ありがとうございます!」
遠目で見た限りだと……缶詰だろうか?
男が缶詰を開け、猫獣人に手渡した。
猫獣人はそのまま……缶詰目の中身を食べているようだった。
その様子を見て……集団は爆笑していた。
「あはははは!! 猫缶を美味そうに食ってるよ!! 超ウケるんだけど!!」
「あはは! ほんと! マジで猫じゃん!!」
必死に食べている猫獣人を見て……チャラい男女は手を叩いて笑っていた。
……なんだろう、ものすごく腹が立つ。
彼らだって心はある、お人形じゃないんだ。
どこかもわからない世界に突然やってきて困っているのに……それをまるで嘲笑うからのようにからかうなんて……許せない。
私はバッグを抱え、足早に彼らに向かった。
ちょっと怖いけど……あいつらに言ってやりたかった。
貴方達が同じ立場だったらどんな気持ちになる? 突然別の場所に転移させられて、そこの人々にからかわれて、人にされて嫌なことはするなと小学校で学ばなかったのか?
……そんなことを言ってやろうと考えていた、その時。
「う、うわぁ!? な、なに!?」
「なんなの!? これ!?」
男女の集団からちょうど私までを覆うように……足元に魔法陣が現れた。
これは……ダンジョン!?
……そんなことを考えていると、周囲が光に包まれた。
通学中、なんども異世界の人……サンルート人を見るのが多かった。
白人風の人、犬猫兎……その他哺乳類をそのまま人にしたみたいな人。
みんな突然の出来事に困惑しているのか、ただ無気力に座っていたり、寝そべっていた。
貧相な恰好をしている人もいたが、高級そうな服を着ている人も同じくらいいた。
……あの人たちは、サンルートでそれなりに上の階級……所謂貴族の人たちであったのだろうか?
そういう人たちが、貧相な恰好の人たちと肩を並べて座り込み、お互いに不安を口にしていた。
「ここはどこで、私たちはどうなってしまったんだ……家も……土地も……お金も……何もかも無くなった……」
「気を落とすなよ、俺なんて元から家はあってないようなもんだぜ? それより……お袋と嫁の安否が心配だ……」
「貴方、お仕事は?」
「あぁ、一応探索者だが、どうにも稼げなくてね、遠くのダンジョンに出かけた矢先にこれだ」
「……それは大変ですね」
……こんな会話が聞こえる
もはや、彼らの中では、存在していた階級も、崩れ去ったのだろうと私は考えた。
……みんなつらいだろうな、突然得体のしれないところにやってきてしまって、家も財産も失って……何か私にできることはないだろうか?
炊き出しとか……職業支援とか……でも、そういうのって自治体がやることで、私には経済的にも到底出来そうもないかなぁ……でもなぁ……何とかしてあげたいなぁ……うーん。
そんなこと考えている中……。
「おい! お前どこの誰よ?」
「わ、私は……サンルート人です」
「あはは! 本当に猫が喋った! ウケる!」
遠くでチャラい男女の集団が携帯で撮影をしながら、猫獣人の人に話しかけていた。
おそらくあの猫獣人は……女性だろう、声や体型からしてそう見える。
猫獣人は……困っている様子だった。
私は思わず、立ち止まってしまった。
「なぁ、これ食うか? あんたにピッタリだろ?」
「た、食べ物を恵んでくださるのですか? ありがとうございます!」
遠目で見た限りだと……缶詰だろうか?
男が缶詰を開け、猫獣人に手渡した。
猫獣人はそのまま……缶詰目の中身を食べているようだった。
その様子を見て……集団は爆笑していた。
「あはははは!! 猫缶を美味そうに食ってるよ!! 超ウケるんだけど!!」
「あはは! ほんと! マジで猫じゃん!!」
必死に食べている猫獣人を見て……チャラい男女は手を叩いて笑っていた。
……なんだろう、ものすごく腹が立つ。
彼らだって心はある、お人形じゃないんだ。
どこかもわからない世界に突然やってきて困っているのに……それをまるで嘲笑うからのようにからかうなんて……許せない。
私はバッグを抱え、足早に彼らに向かった。
ちょっと怖いけど……あいつらに言ってやりたかった。
貴方達が同じ立場だったらどんな気持ちになる? 突然別の場所に転移させられて、そこの人々にからかわれて、人にされて嫌なことはするなと小学校で学ばなかったのか?
……そんなことを言ってやろうと考えていた、その時。
「う、うわぁ!? な、なに!?」
「なんなの!? これ!?」
男女の集団からちょうど私までを覆うように……足元に魔法陣が現れた。
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……そんなことを考えていると、周囲が光に包まれた。
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