なんでも言うことを聞いてくれるデリヘル先生♂ 〜どんなプレイでも先生はお答えします〜

田村ケンタッキー

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山走万奈の場合

山走万奈の無体(7)

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 二人は教室に戻る。
 山走万奈は充電中のスマートフォンを手にとって画面を明るくする。

「……ちっ」

 舌打ちだけしてスマートフォンを放置し、作業に戻った。
 足立康太郎は苛立ちの原因を早々に勘付いていた。

「親御さんが心配されているのではありませんか?」
「あ、だからどうしたってんだよ」
「学校にいると知らせていていないんですか?」
「知らせたらすっ飛んでくるに決まっているだろう」
「なるほど、それもそうですね」

 納得した彼はあっさりと作業を再開する。
 山走万奈は教師としてありえない行動に思わず手を止めてしまう。
 
「……チクらないのかよ」
「……生徒の希望が第一ですから。朝まで完成させたい。しかし親御さんが来られると邪魔になってしまう。そうですよね」
「そうだけどよ……先生、普通じゃないのな」

 普通であれば生徒の健康やコンプライアンスを遵守して両親へと連絡するはずだ。
 もしもバレれば教師としての職業を続けられなくなる可能性だってある。
 それでも彼は生徒の、山走万奈を応援する。

「普通では救える生徒も救えなくなりますから」

 普段は飄々とし子供にしか見えない生徒にからかわれても笑顔を崩さない彼は、ある人から見ればとっつきやすい良い先生、またある人から見れば何も言い返さない情けない男。
 山走万奈は後者として彼を見ていたが今一瞬の彼は、瞳の奥に信念……いや執念めいた感情を滾らせていた。普段とのギャップに胸が変なリズムで高鳴り始めた。

「どうかされましたか? 手が止まっていますよ。どこか具合が悪いのですか?」
「い、いちいちうっさいな! こっちのこと見すぎ!」
「ですが見ていないと監督が務まりませんので」
「うっさいうっさい! 作業に戻れば良いんだろう、戻れば!」

 怒鳴りながら作業に戻った。



 とうに日付が変わり、午前二時に差し掛かろうとしていた。
 ようやく終りが見えてきた。
 なのに山走万奈の手は著しく遅れ始める。
 体調ではない。気分の問題だった。

「な、なあ、そろそろ、牛三つ時だよな?」
「え、えと、おそらくは?」
「おお、おおおおばけ出てきたりしないよな!?」
「まさか。出てきたとしても害はないと思いますよ?」
「おどろかしてるんじゃねーよ!!」
「脅かしたつもりはなかったのですが……」

 すると突然立てかけていたダンボールがずるりと音を立てて崩れる。

「ひいいい!!!」

 山走万奈は悲鳴を上げてその場にうずくまる。

「だからお化け屋敷なんてしたくなかったんだよ……先生も知ってるだろう、ここの怪談」
「怪談ですか?」
「大昔、ここに通っていた女生徒が屋上から投身自殺したって話! 原因はいじめじゃなくて、当時想いを寄せていた教師に告白したけど失恋したからだって」
「……」

 唐突に押し黙る足立康太郎に、

「突然黙り込むなよ、バカ教師!」

 怒鳴り散らす山走万奈。
 すると突然、教室の角の蛍光灯が異音を立てながら点滅する。

「ひいい!? やっぱり出るんだ! 怨霊がああああ」

 取り乱す山走万奈。またも作り上げた学園祭の展示物に倒れ込みそうになるが、

「あぶない!!」

 とっさに足立康太郎が抱きかかえて事なきを得る。

「せ、せんせ、この、またセクハラを」
「落ち着いてください、山走万奈さん。彼女が化けてて出てくることはありません。無関係な人に危害を加えるわけがありません」
「先生? 一体何を──」
「それに僕は教師だ。どんなことがあっても生徒を守り抜いて見せます」
「……」

 まっすぐな言葉を投げかけられ、温かな抱擁に包まれ、恐怖は跡形もなく消え去った。

「僕は、僕は、僕は!」
「暑苦しい! とっくに落ち着いたわ!」
「ゔっ!?」

 みぞおちを小突いて自ら拘束から免れる。

「……どさくさにまぎれてあちこち触りやがって、セクハラ教師め」
「あはは、すみません……」
「ほら、地面につっぷしてないでさっさと終わらせるぞ」
「あはは、ひとづかいが荒いですね……」

 こうして二十分もしないうちに展示物は完成した。

「先生」

 山走万奈は肩より高く手を上げた。

「山走万奈さん」

 足立康太郎も察する。これは挙手じゃない。彼もまた手を上げた。
 次の瞬間には互いの手をたたきあう。
 小気味のいい破裂音が鳴った。
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