なんでも言うことを聞いてくれるデリヘル先生♂ 〜どんなプレイでも先生はお答えします〜

山走万奈の場合

山走万奈の無体(2)

「こうでもない……違う……これでもだめか……」

　明かりのついた夜の教室。
　段ボールをあてたりはなしたりを繰り返し試行錯誤に頭を悩ませていたのは山走万奈だった。

「精が出ますね」

　頑張る生徒の姿に思わず声をかけてしまう。

「うわあああああああああ！？　って先生かよ、驚かすな！！！　ノックくらいしろ！！」
「自分の教室なのにですか？」
「うっせうっせ！！」

　気性の荒い犬が縄張りに近づいた不審者を威嚇するように吠える。一通り吠えた後に作業に戻る。
　足立康太郎はそれを後ろから立って見守る。

「……いつまでいるつもりだ？」
「特に決めていません」
「じゃあ今すぐ出てけよ」
「着替えでもなさるんですか？」
「なわけないだろ！　気が散るから！　これをいち早く完成させたいんだよ！」
「……山走万奈さんは真面目ですね」
「あぁ！？　なんだいきなり！？」
「あなたが修繕する必要はないじゃないですか。皆さんも責めていません。なのに作られるんですね。それもお一人で」

　友達に手伝ってとも言わず。帰ったふりまでして手伝いを拒絶して。

「……悪いかよ、柄にもないことして」
「まさか。一生懸命頑張る生徒を悪いと思う先生はいませんよ。よろしければお手伝いしてもよろしいですか？　お一人で頑張るのは結構ですが、だいぶてこずっていらっしゃるようなので」
「……なあ、先生。忖度抜きで教えてくれ」
「なんでしょう」
「一人で朝までに完成させられると思うか」

　先生はわかりきったことではあるがあらゆる可能性を考えた後に答えた。

「……厳しいでしょうね」

　生徒の自主性を重んじ、一人でやり通したいと決めたのなら応援してやりたいのが教師の心情であるが現実は非情。夢物語を見せてばかりが教師の仕事ではない。

「……だよな」

　山走万奈は残業の成果を見下ろす。
　完成はせいぜい二割。それも基礎の基礎。素人が頑張ればできる範囲。
　続きはさらに難易度が高くなる。

「……先生は手先が器用なほう？　趣味で工作したりは？」
「一度だけボトルシップは組み立てたことありますね」
「うわ、待ってましたと言わんばかりの器用アピール」
「聞いてきたのはあなたじゃないですか……」
「うん、でも、ちょうどいいや。先生、手伝って」

　山走万奈は意外にもあっさりと手伝いを求めた。
　先生の人徳あってか、それとも間に合わないとわかっての焦りか。