なんでも言うことを聞いてくれるデリヘル先生♂ 〜どんなプレイでも先生はお答えします〜

田村ケンタッキー

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佐藤善子の場合

クラス委員長佐藤善子の相談(3)

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 頭をぶつけましたが大丈夫ですかと労ったり、頭を上げてくださいと気遣うこともできた。
 今まで通してきたように優等生を偽ることができるはずだった。
 しかしこの時の彼女はそれができなかった。
 ベッドに座り、腕を組み、足を組む。これにタバコが加われば悪役の貫禄が出てたであろう。
 佐藤善子は名の通り悪女ではない。悪女ではないのだが、

(本当ならここで、謝らないでくださいって言うべきなんだろうな……)

 ただ少し、意地悪ではある。

「……何を今更……」

 あくまで責任、罪は先生にあるという立場を崩せずにいた。
 いざ謝られてしまうと立つ瀬がなくなる。いや、そもそも立つ瀬などどこにもない。
 万年クラス委員長を務める彼女が仮病してまで引きこもった理由、それは本当に些細でつまらない出来事だった。



 三日前。学校中が文化祭の準備に追われ、賑わっていた。久しぶりの行事らしい学校行事。数年ぶりの開催。
 学校側も大いに盛り上げようと準備期間を多めに取り、授業時間も融通するなどバックアップした。
 しかしそれが仇となることもある。

「はあ!? また買い出し!? 今日何度目だと思ってるんだ!?」

 クラスの双頭の一人、体育会系の山走万奈やまばしりまなが吠える。女性としては高い背丈をしならせて威圧する。

「仕方がないじゃないか。足りないものは足りないのだから」

 切り返すはクラスの双頭の一人、文化系の座間鈴音ざますずね。女性としても小柄ながらも雄弁さは。

「走っては手伝わされ走っては手伝わされ、あたしはあんたの奴隷じゃないんだぞ!?」

 真っ当な主張。無計画に使いっぱしりされてはいくら運動部でも肉体的にも精神的にも限界が来る。

「休み無しはこちらも同じさ。むしろ単純作業な分、楽なのはそちらのほうでは?」

 一方の座間鈴音、歯に衣着せぬ発言で返すが一言余計多い。

「なんだとぉ!?」

 双方の主張は平行線ではあるも間違ってはいなかった。

「そもそもぉ! 文化祭なんかに力を入れ過ぎなんだよぉ!」

 クラスの出し物はお化け屋敷だった。それもとびっきり手の込んだ。
 衣装に小道具、どれも学生とは思えないクオリティを誇っていた。精巧さは当然とし、リアリティを保ちながらのグロテスクさは飛び抜けていた。作り物とわかっていても血の気が引く。
 そのどれも携わり、仕上げているのが美術部である座間鈴音だった。

「……去年の体育祭では結束力を熱弁してたのはどこの誰でしたっけ」
「おまっ!? やっぱ根に持って意趣返ししてんなあ!? そうだろ!?」
「はてさて、なんのことやら」

 二人には因縁がある。
 それは去年の体育祭のこと。
 彼女たちのクラスは時の運もあり順当に勝利し、ポイントを重ね、総合優勝を目前としていた。最高学年以外のクラスが優勝することは異例であり、次第にクラスの士気が上がり本気で優勝を目指すようになった。特に山走万奈が真剣になり、応援にも熱が入っていた。
 しかし部活対抗リレー、美術部である座間鈴音は競技中に転倒してしまいビリになってしまう。
 ビリ以外であれば加点があったのだが惜しくも僅差で優勝を逃してしまう。
 この一件があってから、山走万奈は座間鈴音に冷たく当たるようになった。

「……また始まったよ」
「……やるなら外でやってくれないかな」

 二人の喧嘩は著しくクラスの士気を下げた。
 いくら揉めても何も解決はしない。そうはわかってもいてもぶつからずにはいられなかった。
 担任である足立康太郎は職員会議で不在。
 もはや止められる者などいない。大抵が我関せずで自分の作業に戻る。
 たった一人を除いては。

(先生がいないとなると……私の出番かぁ……)

 クラス委員長の佐藤善子だった。
 一部のクラスメイトから目で止めてくれと訴えられていた彼女は、このまま放っておくとヒートアップすると判断し仕方無しに仲裁に動く。

「ふたりとも~、喧嘩はそこまで~」

 穏やかな笑顔で、敵意はないと示しながら、荒立てないように心がけながら、二人の間に割って入る。

「一旦落ち着こう? ね? ね?」

 仲裁の経験は何度もある。今回も楽に終わるだろう、そう思っていた。

「いろいろと不満はあるだろうけど、みんなで決めたことなんだから、ね? もう少し頑張ろう?」

 みんなで決めたこと。これは魔法の言葉だった。これで大抵のことは片付いてきた。
 しかし今回は違った。

「はあ!? あたしはずっと反対だったんだが!?」

 山走万奈はそう主張したために、

「……え?」

 佐藤善子は面を喰らってしまう。

「いや、だから多数決で決めたんだから、山走さんにも協力してもらわないと」
「そもそも文化祭ってのが気に入らない! 毎年体育祭でいいでしょうに!」

 佐藤善子はすぐに方向転換する。

「と、とりあえず、山走さんはくたくたのようだから、買い出しは待ってもらうってことでいいかな?」

 とにかくこの場を収める。そのためにも片方に大人になってもらわなくてはいけない。
 座間鈴音ならわかってくれる。そう思っていた。

「へえ、クラス委員長って依怙贔屓するんだ」
「……え?」

 またまた面を喰らってしまう。

「山走の味方をするんだってこと。私のことは全然助けなかったのに」
「えと、それはね、えと」

 すぐにわかった。二人の因縁、関係を知っていて冷たく当たっていると知りながらもクラス委員長として何もアクションを起こさなかったことを責められていると。

「今、それを言われると困っちゃうかな……」

 弁明しようにも運命は隙を与えない。

「そうだよ、クラス委員長! こんなしちめんどいこと決めたの、お前じゃねえかよ!」

 山走万奈がまくしたてる。

「あの日の多数決! お前が強引に決めたよな!? なあ!?」
「強引なんてやめてよ……あの時なかなか決まらなかったから仕方なく」
「それを強引っていうんだよ!」
「あ、れ~……? ぜんぶ私が悪いってことになってる……?」

 山走万奈が詰め寄ってくる。座間鈴音は冷たい視線を送ってくる。
 助けてくれる人はいない。仲裁するように仕向けたクラスメイトも知らんぷり。

「………………そっか、そーですか」

 そして佐藤善子はその場の仲裁を諦め、何もかもを放り出して帰路に着いた。
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