ダンジョン最奥に住む魔王ですがこのままだと推しの勇者PTに倒されてしまいます。

田村ケンタッキー

文字の大きさ
41 / 105

50層 ゴールデンナマズ戦 後編

しおりを挟む
「助かったぜ!! テオ!!」

 落ちてきたテオをロビンはキャッチする。

「でもなんでテオクラッシャーを使わなかったんだ? あれだったら一発で仕留められたろうに」
「え? だって食い物に困ってたんだろ? あれだけデッカいナマズ生け捕り出来たら当分食い物に困らないと思ってさ」

 テオはきょとん顔で答えた。

「食わねえよ! ビクトリアさん! いつものお願いします!」

 ロビンはビクトリアの馬鹿テオというお馴染みの罵倒を待つが期待通りには行かなかった。

「テオ。いきなりだけどテオクラッシャーはもう使わないで」
「えー!? なんでだよ!!」
「ちょいちょいビクトリアさん!? それ今言う!?」

 突然の提案に二人は動揺する。

「理由は後! あんたはもう充分強くなったんだから、大技に頼らずにボスの一匹二匹倒してなさい!」
「うう、ビクトリアが言うならそうする……」

 圧の強い幼馴染に気圧されるテオ。

「いい子ね。私の言うことを聞いてたら悪いようにはしないから」

 ビクトリアは純粋で従順な少年に慈しみのある眼差しを向ける。

「にしてったよ! テオクラッシャーなしにあのナマズどう倒すんだ!? マチルドの魔法を弾いたんだぞ!? 今だってどこにいるかわかんねーし!」
「安心して。私が追えてる。あいつ、今は奥に沈んで様子を窺ってる」
「魔力探知できねえのに!? どうしてそこまでわかんだ!?」
「私が嘘ついてるとでも思う?」
「答えになっちゃねえ!」
「ロビン、ずいぶんと焦ってる様子ね? 今回の敵が大きすぎてタンクとして役割を全うできないから?」
「うぐ」

 いつになく取り乱すロビンの図星を突く。

「それと見渡す限りの水辺だし、ご自慢の盾が使えないものね」

 轟沈しかける無能のタンクを、

「ビクトリア! やめろよ!」

 テオはわざわざ大の字になって庇う。

「それ以上本当のことを言って師匠をいじめるのは許さないぞ!」

 その優しさがトドメとなる。

「ほ、ほんとうのこと……テオにまで……」

 ロビンは自信喪失状態になった。

「どうしたんだ、師匠!? 師匠ー!」
「さてと男二人は放っておくとしてマチルド。あなたまで自信喪失にはなってないわよね?」

 静かなマチルドに話しかける。自慢の炎の矢三連弾を容易く弾かれ相当ショックを受けていたと思われたが、

「まさか! あんにゃろうをどう倒すか考えてところよ!」

 マチルドはけろっとしていた。

「そう。さすがね。落ち込んでるようだったら尻を蹴飛ばしてやるところだった」
「まあ考えてみたはもののこれっぽちもアイデアは浮かんでこないんだけどね。どう倒したらいいか見当つかないわね」

 お手上げといった様子で笑い飛ばす。

「蹴飛ばそうか?」

 ビクトリアは爪先で橋を二回小突く。

「相談だけど氷魔法効くと思う?」

 マチルドは手をヒラヒラさせる。

「効くんじゃない? ダンジョンに生息する魔物って炎よりも氷に弱いことが多いし」

 ビクトリアは頷く。そして顎の端を撫でた。

「ところでビクトリアちゃん、釣りはしたことある?」
「何よ突然」
「いいから」
「ないけど?」
「じゃあコツを教えてあげるわ。くいっくいっと来たら一気に引くのよ」
「くいっくいっ……ね。わかった」

 二人が会話していると橋の直下に黒い影。死角となる絶好のポイントにゴールデンナマズは潜んでいた。
 わざわざ目立つように一度大きく飛び出したのはブラフ。
 ナマズは分け隔てなく何でも食べる。それは橋だろうとお構いなしに。
 一気に浮上し、口を広げる。悠長に会話する人間共を丸呑み……したはずだった。

「やべええ! 本当に下から橋ごと襲い掛かってきやがった!」

 テオたちは素早く不意打ちされたポイントから離れていた。ナマズの素早い動きに反応できたのは直前に受けたバフ、クイックのおかげだ。

「ゴールデンナマズ……あんた、聴覚も良ければ人語もある程度は理解できるようね……」

 ビクトリアは違和感に気付いていた。最初のフライングの攻撃も人語を理解できていなければ不可能。

「だけど相性が悪かったわね。耳が良いのはあんただけじゃないの」

「パークパクパク!!」

 それがどうしたと呼応するように橋の上を這い、

「うおお!? 追いかけてきた!?」
「走れ走れー!」
「きゃああああ!?」

 ビクトリアたちを追尾する。

「ビクトリア! もっと速く走れよ! 追いつかれるぞ!」
「ビクトリア、かけっこではいつでもビリだったよな!」

 必死で走るが徐々に距離は縮まる。
 髭をオールのようにして水を掻く。黄金の鱗を帯びた魚でありながら足の生えたビクトリアよりも足が速い。

「ちょっと! 陸に上がっても素早いのは反則でしょう! マチルド早くして!」

 マチルドは別行動で橋から降りて浅瀬に立っていた。

「用意はできたんだけど照準が定まらない! 一秒でもいいから動きを止めてくれない!?」
「おーし、そういうことなら!」

 再びテオが剣を握り、転身する。

「どおりゃあああ!!」

 脳天に一撃お見舞いする。テオの怪力をモロに受けたのだが、

「いっでー!? こいつかってー!?」

 ダメージはテオに返ってくる。黄金の鱗は伊達じゃない。剣の下で傷一つない光沢が煌めく。

「おいおい、やっぱりテオクラッシャーを使ったほうが」
「素人は黙ってなさい! マチルド! 動きは止めたわよ!」
「上出来! さっすがあたしのビクトリアちゃん!」

 象牙の杖の先に魔力が集中する。今度放つ魔法は少しばかし特殊。

「ウォーター! アイスアロー!」

 水魔法と氷魔法の同時発射。
 放たれた魔法はゴールデンナマズの顔の側面に当たる。

「もういっちょ! ウォーター! アイスアロー!」

 もう片方にも同じセットを当てる。
 じわりじわりと顔を氷が覆っていくが、

「パークパクパク!!」

 口を動かすとあっさりと氷の面は剥がれ落ちる。

「うおお!? 効いてねえぞ!?」
「どうする? 動かなくなるまで殴り続けるか?」
「ロビン、テオ。あんたたちの出る幕はもうないわよ」

 異変はすぐに起きた。

「ぱ、くぱ、く……」

 ゴールデンナマズが苦しそうにもがき始める。目と鼻の先にビクトリアがいても慌てて水中に戻る。

「パクパク!? パクパク!?」

 なおも苦しそうにもがき続ける。自身も混乱しているようだった。

「苦しい? 苦しいわよね……どうして苦しいか教えてあげたいけどあなたは人語がわかるからやめとくわ」

 ロビンはゴールデンナマズのエラに挟まる緑色を見て、ようやく何をしたか理解する。

「なんとまあ、えげつねえことを……」

 ゴールデンナマズのエラにはスゲの草が詰め込まれていた。これではエラぶたが正常に動かず、呼吸ができない。人間で例えれば口と鼻を塞がれたようなもの。

(酸欠で魔物を倒すなんて聞いたことがねえぞ……)

 ゴールデンナマズは次第に弱り、やがて水中に力なくプカリと浮かび上がるだけになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョンを探索する 配信中にレッドドラゴンを手懐けたら大バズりしました!

海夏世もみじ
ファンタジー
 旧題:動物に好かれまくる体質の少年、ダンジョン配信中にレッドドラゴン手懐けたら大バズりしました  動物に好かれまくる体質を持つ主人公、藍堂咲太《あいどう・さくた》は、友人にダンジョンカメラというものをもらった。  そのカメラで暇つぶしにダンジョン配信をしようということでダンジョンに向かったのだが、イレギュラーのレッドドラゴンが現れてしまう。  しかし主人公に攻撃は一切せず、喉を鳴らして好意的な様子。その様子が全て配信されており、拡散され、大バズりしてしまった!  戦闘力ミジンコ主人公が魔物や幻獣を手懐けながらダンジョンを進む配信のスタート!

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

二度目の勇者は救わない

銀猫
ファンタジー
 異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。  しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。  それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。  復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?  昔なろうで投稿していたものになります。

処理中です...