イケメンに婚約破棄されましたが面食いなのでぜってえ復縁してみせますわ！

【第4章】ロデオに吹く情熱の風 フラメンコも愛も踏み込みが肝心

やんわりと丁重に断るアレクシス嬢

　アルフォンスは全てを見通したような目でいたずらっぽくウィンクする。

「僕、ずっと綺麗なお姉ちゃんが欲しかったんです。一緒に食事して、一緒に本を読んで、一緒にベッドで寝てくれる、とても優しいお姉ちゃんが」

　魔法の才に長けた彼はとっくに偽装魔法を看破しアレクシスの正体を見抜いている。

（戯れが過ぎますわよ、アルフォンス様……）

　見抜かれていることもアレクシスは察していた。

（それにしてもお顔は弟君とだけあってカルロス様にそっくりですわぁ。でもあともう少しお年を召さないとときめきにはなりませんわね）

　面食いではあるが顔だけが良ければいいというわけではない。

「アルフォンス様！」

　冗談とわからずに本気にして慌てる者もいた。

「いけませんよ、どこの馬の骨もわからない女を家族にしようなどと！」
「おや、ウーゴ、珍しいね。君が僕の決めたことに口をはさむなんて」
「あ、あの、それは……」

　口をもごもごさせるウーゴ。
　見ていられずにアレクシスは助け舟を出す。

「まあ、とっても魅力いっぱいで素敵な提案ですわね。このカリーナ・サルスエラ、空を舞うような気持ちです」
「それじゃあ！」

　アルフォンスはひまわりのように明るい笑顔を見せるが、

「ですがアルフォンス様。あなたにはもっと相応しい女性がいると思います。素敵な殿方であるあなたの側に立つに相応しい素敵な女性が」

　その言葉に秋のひまわりのように首を垂らす。

「……僕にはいないよ……」

　誰にも聞こえない声で小さく漏らした後に、

「……驚かせて悪かったね。あまりに綺麗だったからつい、声をかけちゃった。フラメンコ、楽しみにしてるよ」

　元の明るい笑顔を見せて手を振ってお別れをする。
　ウーゴが別れ際にウィンクをする。

「ドーニャ・マリカ。私のほうが君の踊りを楽しみしてるよ」
「さっさとお行き。アルフォンス様に置いてかれるよ」

　ドーニャ・マリカはうんざりした様子でウーゴを追い払った。