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【第3章】盗賊退治も淑女の仕事ですわ! ちょっと寄り道ソボク村
番外 ロデオの使いっ走り
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北の街道を行ったアレクシスと入れ替わるように、ロデオからの使者アントニオが南の街道から村へ入る。
「相変わらず寂れてんなー、この村は」
彼はこの村の出身。貧しい生活に嫌気が差し村を飛び出し、ロデオで職に就いた。しかし土地勘があるということでたびたび離れたかった南部方面に使いっ走りさせられている。
「さぁてとっとと村長の家で仕事済ませて、また適当に寄り道してロデオに戻りますかね」
真っ先に村長の家に向かい、馬を降りてから玄関のドアを叩いた。
「村長ーいるかー、それともくたばったかー? ロデオの使者でーすーよー」
叩いているうちにドアが開いた。
「やあ、ご機嫌麗しゅう」
「お前の顔見たら機嫌が悪くなったわ。ろくでなしのアントニオめ。ちゃんと家に顔出してきただろうな?」
「行った行った。村長ってば相変わらず疑り深い」
ドアから出てきたのは不機嫌を隠そうとしない村長だった。
「前もそう言って家に帰らなかっただろう! 親御さんがどれだけ心配したか、わかってるのか、このろくでなし!」
「悪かった悪かった、あとで寄るよ。それよりも仕事の話させてくれない? 偉大なるロデオの領主、アルフォンス様からお手紙が届いております」
「ふん、どうせ税金を上げるってだけの話だろ?」
「ちがうちがう、今回はむしろお金になる話だよ? なんでも貴族の嬢ちゃんがこっかてんぷく? を企んだようで指名手配されてるんだよ。有益な情報を提供するだけでも金貨五枚と破格ときたもんだ」
手配書を渡す。そこにはアレクシスの名前と似顔絵があった。
村長はじろりと紙を睨んだ後に、
「ふん、くだらん」
びりびりと手配書を破り捨てた。
「こんな世の中舐め腐った顔した貴族の小娘なんざ知ったことか!」
過激な村長の態度に、アントニオは懐かしそうに笑顔を浮かべる。
「そうそう、だよねー。村長は昔から貴族嫌いだもんね。そう言うと思った。それじゃあ俺はちゃんと伝えたからねー、ばいばーい」
馬に飛び乗って逃げるように走りだす。
「おい、アントニオ! お前の家はそっちの方向じゃないだろう!」
「久々に帰ってきたから道わかんなくなっちゃたー」
そう言ってアントニオは村を出て行った。元来た南の街道へと姿を消した。
「あの親不孝者め……いまに天罰が下るぞ」
奥さんが家の奥から顔を出す。
「あんた……今のって……」
「……悪いな、母ちゃん。相談なしで決めちゃってよ」
「ううん、かっこよかったよ、さっきのあんたは」
金よりも大事なモノがある。夫婦はそれを再確認した。
「相変わらず寂れてんなー、この村は」
彼はこの村の出身。貧しい生活に嫌気が差し村を飛び出し、ロデオで職に就いた。しかし土地勘があるということでたびたび離れたかった南部方面に使いっ走りさせられている。
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真っ先に村長の家に向かい、馬を降りてから玄関のドアを叩いた。
「村長ーいるかー、それともくたばったかー? ロデオの使者でーすーよー」
叩いているうちにドアが開いた。
「やあ、ご機嫌麗しゅう」
「お前の顔見たら機嫌が悪くなったわ。ろくでなしのアントニオめ。ちゃんと家に顔出してきただろうな?」
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「悪かった悪かった、あとで寄るよ。それよりも仕事の話させてくれない? 偉大なるロデオの領主、アルフォンス様からお手紙が届いております」
「ふん、どうせ税金を上げるってだけの話だろ?」
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「ふん、くだらん」
びりびりと手配書を破り捨てた。
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過激な村長の態度に、アントニオは懐かしそうに笑顔を浮かべる。
「そうそう、だよねー。村長は昔から貴族嫌いだもんね。そう言うと思った。それじゃあ俺はちゃんと伝えたからねー、ばいばーい」
馬に飛び乗って逃げるように走りだす。
「おい、アントニオ! お前の家はそっちの方向じゃないだろう!」
「久々に帰ってきたから道わかんなくなっちゃたー」
そう言ってアントニオは村を出て行った。元来た南の街道へと姿を消した。
「あの親不孝者め……いまに天罰が下るぞ」
奥さんが家の奥から顔を出す。
「あんた……今のって……」
「……悪いな、母ちゃん。相談なしで決めちゃってよ」
「ううん、かっこよかったよ、さっきのあんたは」
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