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【第2章】物理的に飛ばされて南部。再会あり、バイオレンスあり、ロマンスあり

不時着するアレクシス嬢

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 ガガサササ!!! ガサッ! ガサアアア! ドオオオン!!
 多くの木をなぎ倒しながら鉄檻は不時着。地面を深くえぐり、泥や砂利を吹き飛ばし周囲は砂煙に包まれる。

「けほっけほっ! もう私ってばいけませんわ! 身の安全ばかりに気を取られていたばかりにお召し物に泥がついてしまいましたわ!」

 歓迎会のためだけに仕立てられたドレスに、一滴二滴ほどの泥が付着してしまった。ほかは無事。アレクシスに関してだけ言えば無傷である。

「さて、この鉄檻ともここでお別れですわ。よいしょっと」

 可愛い声、愛らしい掛け声と共に鉄格子に手を触れると、

「ふんぬ!!!」

 お嬢様らしからぬ掛け声で鉄格子を自分が通れるサイズまで曲げる。

「はあ、やはりシャバの空気は違いますわね」

 脱出を果たしたアレクシス。鉄檻の通気性は抜群なので中と外で空気に違いはないが、気分的には鉄檻の外で吸う空気は少し違う。

「あ、いけません、檻を直すのを忘れるところでしたわ」

 曲げた個所を引っ張って、まっすぐに直す。
 一息ついた後で辺りを見渡す。

「自然がいっぱいの場所ですわね~、復縁したらカルロス様とハイキングもよろしいですわね」

 時刻は夜。どこからかフクロウの鳴き声。たまにオオカミの遠吠えが聞こえる。

「……あちゃー、この陰鬱とした感じに満ち溢れるマナ……ここはもしかしなくても南部唯一の未開の地、フラッグモーリー森でしょうか」

 肉食動物だけではない、人に害をなす魔物やいたずら好きの妖精が潜む危険な場所。
 かつてこの森を人が住めるように開拓開墾と何度も試みるも失敗に終わっている。森を好んで定住するエルフですら、この森に一人として根ざしていない。
 毎年まるで風物詩のように腕試しや修行目的の無謀な冒険者が現れる。近くに住む村民が親切に忠告をするのだがこれを無視し、挑戦して帰らぬ人になっているのももはやお約束の域となっている。

「背の高い木の枝に阻まれてお空が見えませんわね。これでは星座で現在位置を確認できませんわ。仕方ありません、低そうな方向へ歩いて川を探しましょう」

 ドレス姿のまま下山を始める。

「あ、今、木に登っててっぺんから星を確認したらよいのではとお考えになられましたか? 残念、木登りなんてはしたない真似は淑女はいたしませんのよ」
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