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駆け付けるフォルテ
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「ピアニー、大丈夫か!?」
秘密文庫でピアニーが倒れた知らせを聞いたフォルテは職務を放り投げて医務室へと駆け付けた。
「しぃー、ですよ、ぼっちゃま」
ちょうど居合わせていたケイローンが口元に指を立てて騒ぐ主人を諌める。
ピアニーはベッドの上で寝息を立てていた。ただし紅潮し息が荒い。
「ひとまず眠り薬を処方し身体を休めさせています。梯子から落ちたとのことですがルーシーがキャッチして外傷はありません。命に別状はありません。医師としてケイローンの名前に賭け、それは保証します」
「そうか……お前が言うなら、ひとまずは……」
フォルテが胸をなでおろすと、
「フォルテ様、申し訳ないニャ……」
ベッドの下から申し訳なさそうな顔でルーシーが這い出る。
「うわ、ルーシー!? いたのか!?」
「ルーシーのせいニャ……一瞬目を離したらピアニー様が……」
ルーシーは心から反省する。自分の失態で誰かが傷ついた時、彼女は必要以上に自分を責める。
「ぼっちゃま。ルーシーを責めないで上げてください」
ケイローンは庇う。
「彼女は責務を全うしております。あまりこういうことは言うべきではありませんが……責任はルーシーではなく、ピアニー様にあります」
フォルテは額を掻く。
「……おかしいと思っていたんだ。梯子から落ちたはずなのに外傷ではなく、高熱にうなされている。それも場所は秘密文庫。あくまで推測だがピアニーは呪いの書をめくったんじゃないか」
「その通りでございます。呪いの書は現在私が預かっております」
「まったく……言い聞かせたつもりだが好奇心に負けてしまったのか……」
「好奇心は猫をも殺すと言いますものね。医師として常に追求する身としては耳の痛い言葉です」
「しかし妙だ。ピアニーは魔法適正がない代わりに呪い耐性がずば抜けて高いはず。それなのになぜ……一体どうして彼女は高熱にうなされているんだ?」
「それは……患者のプライバシー観念から私からはお答えしかねます」
「はあ? なんだそりゃ。主人命令だ、答えろ」
「それよりもです、ぼっちゃま。先程私は命に別条はないとお伝えしましたね?」
「露骨に話をそらしたな……ああ、確かに言ったぞ」
「素直に白状します。この呪いは私の手には負えません。よって完治どころかこれ以上の治療も不可能です」
「なっ!? それじゃあピアニーは、一生高熱にうなされるってことか!?」
「そうなります」
「そうなりますじゃねえよ! 医者だろうが! なんとかして治せないのか! ピアニーには夢があるんだ! 自分の音楽をフーガ大陸中に聞かせたいってでっかい夢があるんだよ! 一晩だって熱にうなされている暇はないんだ!」
「病気や外傷であればこのケイローン、必ずや治療してみせましょう。しかし呪術、それも推定千五百年前もの太古に編み出されてたであろう複雑怪奇な東洋の呪い。多少の魔法の知識はありますが私の手には……」
「それでも、それでもお前は……!」
次の瞬間、ルーシーがベッドの下から這い出て、フォルテの前に立つ。
「それ以上は、よくないニャ」
「……ぐっ」
諭されたフォルテは冷静さを取り戻したものの、居ても立っても居られない気持ちは抑えきれず、
「……水を飲んでくる!」
今にも火が出そうな身体を抑えるべく、台所へと走った。
「ま、待ってください! まだ話は終わっておりません! ……行ってしまわれた」
ケイローンの尻尾がたらりと力なく垂れる。
「まだピアニー様の容体の説明が終わっていないのに……それと残された希望も」
ルーシーがケイローンの肩をぽんと叩く。
「残りの説明はルーシーに任せてほしいニャ。ケイローン様は他にやるべきことがあるニャ?」
「助かります……ぼっちゃまは優しいお方だ。さっきの手前、私と対面しづらくなっていると思われますので。庭師なのに庭仕事以外でお世話になってしまい申し訳ありません」
「気にしなくていいニャ。ルーシーは庭師だけど庭以外の仕事もこなすキャリアウーニャンニャ」
「ははは、何をおっしゃってるか一つもわかりませんが頼もしい限りです。ではフォルテ様とピアニー様のことはルーシーに任せるとして私はやるべきことをしましょう」
「治す手立てはあるのかニャ?」
「……あります。100%とは言い難いですが」
「ケイローンに治せないのにニャ」
「……私には不可能でしょう。しかし私の師なら必ずや治してくれるでしょう」
「ケイローンの師かニャ。そりゃすごいニャ。頼もしいニャ」
「……ですがあのお方の招聘は難しい。手紙を送るにしても届くかどうか。方法を考えないと」
腕を組みながらケイローンは医務室を出ようとする。
「あ、危ないニャ」
ルーシーの忠告も間に合わず、
「あいたっ!?」
ケイローンの頭はドア枠にぶつかった。
秘密文庫でピアニーが倒れた知らせを聞いたフォルテは職務を放り投げて医務室へと駆け付けた。
「しぃー、ですよ、ぼっちゃま」
ちょうど居合わせていたケイローンが口元に指を立てて騒ぐ主人を諌める。
ピアニーはベッドの上で寝息を立てていた。ただし紅潮し息が荒い。
「ひとまず眠り薬を処方し身体を休めさせています。梯子から落ちたとのことですがルーシーがキャッチして外傷はありません。命に別状はありません。医師としてケイローンの名前に賭け、それは保証します」
「そうか……お前が言うなら、ひとまずは……」
フォルテが胸をなでおろすと、
「フォルテ様、申し訳ないニャ……」
ベッドの下から申し訳なさそうな顔でルーシーが這い出る。
「うわ、ルーシー!? いたのか!?」
「ルーシーのせいニャ……一瞬目を離したらピアニー様が……」
ルーシーは心から反省する。自分の失態で誰かが傷ついた時、彼女は必要以上に自分を責める。
「ぼっちゃま。ルーシーを責めないで上げてください」
ケイローンは庇う。
「彼女は責務を全うしております。あまりこういうことは言うべきではありませんが……責任はルーシーではなく、ピアニー様にあります」
フォルテは額を掻く。
「……おかしいと思っていたんだ。梯子から落ちたはずなのに外傷ではなく、高熱にうなされている。それも場所は秘密文庫。あくまで推測だがピアニーは呪いの書をめくったんじゃないか」
「その通りでございます。呪いの書は現在私が預かっております」
「まったく……言い聞かせたつもりだが好奇心に負けてしまったのか……」
「好奇心は猫をも殺すと言いますものね。医師として常に追求する身としては耳の痛い言葉です」
「しかし妙だ。ピアニーは魔法適正がない代わりに呪い耐性がずば抜けて高いはず。それなのになぜ……一体どうして彼女は高熱にうなされているんだ?」
「それは……患者のプライバシー観念から私からはお答えしかねます」
「はあ? なんだそりゃ。主人命令だ、答えろ」
「それよりもです、ぼっちゃま。先程私は命に別条はないとお伝えしましたね?」
「露骨に話をそらしたな……ああ、確かに言ったぞ」
「素直に白状します。この呪いは私の手には負えません。よって完治どころかこれ以上の治療も不可能です」
「なっ!? それじゃあピアニーは、一生高熱にうなされるってことか!?」
「そうなります」
「そうなりますじゃねえよ! 医者だろうが! なんとかして治せないのか! ピアニーには夢があるんだ! 自分の音楽をフーガ大陸中に聞かせたいってでっかい夢があるんだよ! 一晩だって熱にうなされている暇はないんだ!」
「病気や外傷であればこのケイローン、必ずや治療してみせましょう。しかし呪術、それも推定千五百年前もの太古に編み出されてたであろう複雑怪奇な東洋の呪い。多少の魔法の知識はありますが私の手には……」
「それでも、それでもお前は……!」
次の瞬間、ルーシーがベッドの下から這い出て、フォルテの前に立つ。
「それ以上は、よくないニャ」
「……ぐっ」
諭されたフォルテは冷静さを取り戻したものの、居ても立っても居られない気持ちは抑えきれず、
「……水を飲んでくる!」
今にも火が出そうな身体を抑えるべく、台所へと走った。
「ま、待ってください! まだ話は終わっておりません! ……行ってしまわれた」
ケイローンの尻尾がたらりと力なく垂れる。
「まだピアニー様の容体の説明が終わっていないのに……それと残された希望も」
ルーシーがケイローンの肩をぽんと叩く。
「残りの説明はルーシーに任せてほしいニャ。ケイローン様は他にやるべきことがあるニャ?」
「助かります……ぼっちゃまは優しいお方だ。さっきの手前、私と対面しづらくなっていると思われますので。庭師なのに庭仕事以外でお世話になってしまい申し訳ありません」
「気にしなくていいニャ。ルーシーは庭師だけど庭以外の仕事もこなすキャリアウーニャンニャ」
「ははは、何をおっしゃってるか一つもわかりませんが頼もしい限りです。ではフォルテ様とピアニー様のことはルーシーに任せるとして私はやるべきことをしましょう」
「治す手立てはあるのかニャ?」
「……あります。100%とは言い難いですが」
「ケイローンに治せないのにニャ」
「……私には不可能でしょう。しかし私の師なら必ずや治してくれるでしょう」
「ケイローンの師かニャ。そりゃすごいニャ。頼もしいニャ」
「……ですがあのお方の招聘は難しい。手紙を送るにしても届くかどうか。方法を考えないと」
腕を組みながらケイローンは医務室を出ようとする。
「あ、危ないニャ」
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