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黎明
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「そして二つ目に願ったのが家族を殺したのは私だとバレないようにして……ははは、こんな弱くて卑怯な私が聖女か。笑っちゃうよね。笑っちゃいけないんだけど」
『……』
二つ目の願いはメフィストフェレスの機転で罪をかぶり、自分が殺したとして国中に情報をばらまいた。その影響もあり、契約者以外にはメフィストフェレスの姿はより禍々しく映り、恐怖と嫌悪を与えるようになった。特にシーザーへの影響は大きく、周囲が見えなくなるほどの復讐心を駆り立てるようになった。
「……なんであの時、私を強くしてって言えなかったんだろう。私がちゃんと、しっかりしていればああにはならなかったのに」
乳房、秘部を晒したまま、アガサは枕を顔に被せる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……お父様、お母様、お兄様……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
呪詛のような謝罪。永遠に果たされぬ贖罪を求める彼女の行いは聖女そのものではあった。
そしてそれを邪魔するのもまた悪魔の仕事。
『だいぶお疲れのようですね。夜も更けてまいりました。ごゆっくりお眠りください』
紫色の魔法陣をトンと突く。催眠魔法を発動する。
「ごめ……ん……」
強烈な眠気が襲う。
「……すー」
枕の下から静かな寝息が聞こえてくる。
『これでは息苦しいでしょう』
メフィストフェレスは枕を取る。
下には安らかな、年並みの少女の寝顔。
彼女の安眠を壊さぬよう、魔法の力でふんわりと身体を浮かせる。
乱れたシーツの汚れを舌で拭き取るとアイロンがけされた新品同然に早変わり。
綺麗に敷きなおし、聖女の身体を置く。
『へそを出したままでは風邪をひきますよ』
着ていたネグリジェ、ショーツが飛び回り、彼女の身体に自らまとわりつく。
最後の仕上げ。布団をかける行為はメフィストフェレス自らの手で行う。
『……聖女殿。最後の、三つ目のお願いを覚えておいででしょうか。共に苦しみを共有してくれる人がいてほしいと。あなたはそれすらも弱さと仰っていました。とんでもございません。それは紛れもなく強さです。ワタクシめは立場上古今東西数多のロクデナシと出会ってきました。どの方も夢を叶え短いうちに破綻する末路でした。初めてですよ、ワタクシがこんなにも永くお仕えすることは。どうかどうか、いつまでも側に置いてください。あなたとであればこの悪魔メフィストフェレス、地獄までもお付き合いいたします』
黎明。窓向こうの濃紺の空が白色が染み始める。
同時に一晩中灯っていた蝋燭の芯が尽きて火が消える。
メフィストフェレスは暗闇に溶けていった。
『……』
二つ目の願いはメフィストフェレスの機転で罪をかぶり、自分が殺したとして国中に情報をばらまいた。その影響もあり、契約者以外にはメフィストフェレスの姿はより禍々しく映り、恐怖と嫌悪を与えるようになった。特にシーザーへの影響は大きく、周囲が見えなくなるほどの復讐心を駆り立てるようになった。
「……なんであの時、私を強くしてって言えなかったんだろう。私がちゃんと、しっかりしていればああにはならなかったのに」
乳房、秘部を晒したまま、アガサは枕を顔に被せる。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……お父様、お母様、お兄様……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
呪詛のような謝罪。永遠に果たされぬ贖罪を求める彼女の行いは聖女そのものではあった。
そしてそれを邪魔するのもまた悪魔の仕事。
『だいぶお疲れのようですね。夜も更けてまいりました。ごゆっくりお眠りください』
紫色の魔法陣をトンと突く。催眠魔法を発動する。
「ごめ……ん……」
強烈な眠気が襲う。
「……すー」
枕の下から静かな寝息が聞こえてくる。
『これでは息苦しいでしょう』
メフィストフェレスは枕を取る。
下には安らかな、年並みの少女の寝顔。
彼女の安眠を壊さぬよう、魔法の力でふんわりと身体を浮かせる。
乱れたシーツの汚れを舌で拭き取るとアイロンがけされた新品同然に早変わり。
綺麗に敷きなおし、聖女の身体を置く。
『へそを出したままでは風邪をひきますよ』
着ていたネグリジェ、ショーツが飛び回り、彼女の身体に自らまとわりつく。
最後の仕上げ。布団をかける行為はメフィストフェレス自らの手で行う。
『……聖女殿。最後の、三つ目のお願いを覚えておいででしょうか。共に苦しみを共有してくれる人がいてほしいと。あなたはそれすらも弱さと仰っていました。とんでもございません。それは紛れもなく強さです。ワタクシめは立場上古今東西数多のロクデナシと出会ってきました。どの方も夢を叶え短いうちに破綻する末路でした。初めてですよ、ワタクシがこんなにも永くお仕えすることは。どうかどうか、いつまでも側に置いてください。あなたとであればこの悪魔メフィストフェレス、地獄までもお付き合いいたします』
黎明。窓向こうの濃紺の空が白色が染み始める。
同時に一晩中灯っていた蝋燭の芯が尽きて火が消える。
メフィストフェレスは暗闇に溶けていった。
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