近所の公園でバスケを教えていたら教え子のチャラショタに溺愛されるようになりました

田村ケンタッキー

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告白編

告白

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「正行君いますか!?」

 玄関から上がると正行の部屋へまっしぐら。
 ノックせずにドアを開いた。

「……いない」

 明かりはついたまま。
 気配は感じられない。
 家中を捜索しても外に逃げられてしまうかもしれない。

(こうなったら罠を張るか)

 佳子はあくびをする。

「ふわぁ~。ちょっとねむたくなっちゃった~」

 ふらりふらりとベッドに倒れ込む。
 無理やり初体験を遂げた思い出の場所。
 ベッドは高級なものなのか、横たわっただけで潜めていた眠気の主張が強くなる。

(いけないいけない、寝たふり寝たふり)

 寝相は悪いままで目を閉じる。
 十分経過した頃にベッド下からもぞもぞと物音と人の気配。
 そして布が擦れる音。

(起きるなら……今!)

 ガバリ!
 佳子は目を見開き、上半身を起こす。

「うわ!? 起きてたんですか!?」

 そこには正行がいた。手には毛布。

「さっすが女性の味方。風邪引かないように毛布をかけようとしてくれたんでしょう? ほんと優しいんだから……」

 頭をなでようと手を伸ばすが、

「優しくしないでください!」

 正行は手を弾く。

「正行君……?」

 彼らしからぬ反応。手の痛みよりも彼が気がかりだった。

「私のこと……嫌いになっちゃった? そうだよね。全然恋愛経験ないし人の気持ちもわからない考えようとしないマイペースな私なんて」
「いいえ、その逆です」
「え?」
「僕は佳子さんが大好きです。今までもこれからもそこに変わりはありません」
「じゃあなんで私を避けようとするの?」
「だって……佳子さんは……僕がこんなにもあなたのことが好きなのに、恋人じゃないって……! それって僕のことは好きじゃないってことですよね!?」
「…………ん?」
「あれだけ身体を重ねたのに! それでも恋人じゃないって! 僕はそんなに取るに足りない男ですか!? 僕はこんなに愛しているのに、どうして佳子さんは愛してくれないんだ!」
「待って待って、一旦落ち着こう?」
「これが落ち着いていられますか!」
「じゃあ聞いて。正行君、私に一度でも付き合ってくださいって言った?」
「……え?」
「言ってないよね? 告白してないよね?」
「それは……そうですね」
「ほらぁ!」

 すれ違いの解決に光が見える。
 しかし溝はまだまだ深い。

「……それはそうですが、でも海外では告白しない文化が」
「ここは日本。言葉にしないと伝わらないこともあると思うんだ……あと私個人としてはね、男の子から告白されることに憧れるなーなどと」

 指をいじりながら、ちらりと上目遣い。

「うっ」

 こんな仕草をされて落ちない男はいない。

「それも……そうですね。やはり告白とは男の役割ですから」

 ベッドに座る佳子の隣に座る。
 一週間ぶりに面と向かっての意中の相手。

「あ、あれ……なんだろう、すごい緊張してきました……」

 二本勝負の二本目よりも鼓動が早い。

「ただ言葉で気持ちを伝えるだけなのに……怖い……」

 嫌な予感が前面にでしゃばってくる。
 もしも、もしも振られたらその時こそ……。
 そう思うと告白を先延ばしにするのが賢明にも思えてくる。

「佳子さん、僕はあなたのことが……す…………つき……」

 合唱大会でソロを歌ったこともあるのに緊張で喉がつぶれそう。

(どうしよう、どうしよう……こんなみっともないと佳子さんに嫌われてしまう……!)

 不甲斐なさに涙が出そうになってくる。

(それとも僕みたいな軽薄な男に、告白なんて一生できないんじゃ)

 その時、冷え切った手が温かい感触に包み込まれる。

「私を信じて」

 そのまっすぐな瞳に心を射抜かれる。心にはこれまでの分の何本もの矢が突き刺さっている。

(あぁ、やっぱり……この人には適わないなぁ……)

 縛り付けていた緊張がどこかへと消え失せる。

「佳子さん。好きです。僕と付き合ってください」
「はい、喜んで」

 余韻も風情もない即答。
 佳子は正行に抱きつき唇同士のキスをする。強引な合意のない、恋人同士なら許されるキス。
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