近所の公園でバスケを教えていたら教え子のチャラショタに溺愛されるようになりました

田村ケンタッキー

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練習試合応援編

居残り練習

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「山田さん、ここのところお姉さんとの仲が良くなかったそうです」
「え、そうなの?」

 佳子は驚きながらもフリースローを決める。これで連続19本成功。
 二人はがらんとした体育館に残っていた。
 コートの半面を個人自腹で借り、居残り自主練習に勤しむ。
 ユニフォームのまま着替えずに汗を流す。

「お姉さん……マホさんが悩みを抱えていてそのストレスを当てられていたとか。これはあくまで山田さん視点の話ですが」
「マホちゃん、悩み抱えてるのか……どんな悩みなんだろう。今度聞いてみないと」
「……」
「正行君?」

 正行は黙り込み、佳子の顔をじっと見る。

(その悩みの元が佳子さんだと聞いたらショックを受けるだろうな……伸び悩む最中、同世代がぐんぐん成長していくのを見たらそりゃ苛立ちますよね……)

 その苛立ちを佳子に当てていたのも見ていてわかる。許せるか許せないかであれば許せない行いだ。
 しかし正行は女性の味方。

「いえ、心配はいらないんじゃないですか? 二人が一緒に帰る時の笑顔、佳子さんも見ましたよね?」
「あ、それもそっか。きっと練習試合の中で何か掴んだんだね。よかったよかった」
「そうですよ」

 佳子は笑顔でボールを拾い、サークルに立つ。

「よっと」

 すぱっ。
 20本目が華麗に決まる。

「よぉし! ルーティン終わり! あ、でも時間がまだ残ってるな」
「それでしたら佳子さん、僕とワンオンワンで勝負しませんか?」
「ふふん、やっぱり? わざわざ残ってるということはそういうことだと思ってたんだ。試合を見てたら自分もやりたくなるの、わかるよ」
「あ、いえ、バスケがしたいというよりは佳子さんと一緒に何かをしたいのが正確です」
「相変わらずチャラいなあ、正行君は」

 正行と呼ばれ、思わず笑顔を浮かべる。

「まあ、でも、バスケがしたいのは半分くらい正解ではありますけどね。ちゃんと運動着と専用の靴を持ってきてるんですよ」

 背負っていたブランドのリュックを下ろし中から必要品を取り出す。
 そしておもむろに上着を脱ぎだす。

「すぐに着替えますね」

 日差しの強い夏でも強力な日焼止めを全身に塗ってるために保たれる白い肌が露出される。

「きゃああ!」

 突然脱ぎだすものだから思わず佳子は叫んでしまう。

「どうかされました? 大きい虫でも飛んできましたか?」
「だって正行君……いや! なんでもありません! なんでも!」

 すぐさま背中を向ける佳子。

(もー! 正行君ってば時々小学生みたいなことするんだから! というか私もなに意識しちゃってるわけ!? さんざん見てきたのに! 意識してるってバレたらまたからかわれるし!)

 幸いにも正行は勘づかず、

「そうですか……」

 首を傾げながらも着替えを続けた。


 着替えと準備運動を終えてコートに立つ正行。

「約束、今回も適用されますか」
「約束? あぁ、二本連続で入れられたら言ったこと何でも聞くって」

 話しながらも高速でレッグスルーの練習をする。

「佳子さんが試合直後で疲れている今が千載一遇のチャンスなんですよね……こういう考え、卑怯でしょうか?」
「え? 全然!」

 佳子は朗らかに笑う。

「ハンデのうちに入らないよ」
「あはは……」

 空笑いが出る。

(事実だけど嫌味なしで素で言ってのけるんだよな、この人……)

 その佳子から二本連続でシュートを決める。
 ツーポイントでもスリーポイントでもカウントは同じ。フリースローはカウントしない。
 一見簡単そうだが一本を決めるだけでも奇跡に近い。二本連続となると神になったも同然。
 経験豊富な神戸ですら一日中挑戦してようやく一本が出るか出ないかの領域。
 正行は一か月前にようやくトータル一本目を出したばかり。その二週間前には球児が一本目を出している。
 そして誰もが二本連続には到達できていないのが現状だ。
 それだけ佳子は強く、実力差が開いているのが現実だ。

(未熟な身体でチョモランマに挑むかのような無謀だとは百も承知……でも身体が心がそうさせる。開く実力差に焦りを感じている。もうやめようという諦めを振り払ってでも追いかけたい情熱がある)

 靴ひもを固く結ぶ。
 胸の前に手を構える。

「さあ、勝負だ!」
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