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練習試合応援編
試合開始
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試合が始まる。
鏡はコートを見て気付く。
「あれ? 相手の高身長の子、ベンチスタート?」
足をガニ股におっぴろげ、前かがみになって試合を観戦している。
「こけおどしですかねえ」
「いや……温存だろうな……うちの河相と一緒よ」
「あ、そういえば彼女の名前、山添桃子って言うらしいですよ」
「名前すごく日本人だな」
互いにエースを温存した試合展開。
選手層の厚みでは佳子たちのチームが一枚も二枚も上手。
実力差は目に見えていたがポイントカード山田マホは冷静だった。
「みんな! 落ち着いて! 一本ずつ冷静に取っていこう!」
勝てる相手だと分かるとついつい調子に乗るもの。普段よりもプレーが雑になったり、ペース配分を間違えてしまう。
試合は序盤の第1クォーター。勝負を決するほどの大量得点を無理に取りに行かなくてもいい。それが彼女の判断だった。
「ひゅー! かっこいいよー! マホちゃーん!」
ベンチに座りながらもコートに共にいる感覚で声を出す佳子。
試合に集中する。そう心に決めたもののやはり気になる観客席。
ちらり、と横目で見る。
(う~~~~~~やっぱり近いまま~~~~~~~山田妹さん、お姉ちゃんが活躍してるんだからちょっとは応援したらどうなん~~~~)
もやもやが解消されないまま、第1クォーターは終了する。
「20-11……まずまずの滑り出しかな」
「鏡ちゃん、ひどーい。一生懸命頑張ったのにまずまずだなんて」
マホは汗を拭きながらぼやく。
「あぁ、すまない。今のは私の失言だ。選手のやる気をそぐ発言だった。本当にすまない」
「なーんて、先生の気持ちはわかりますよ。もしも佳子ちゃんがスタメンだったらもっと見栄えが良かったかもしれませんね」
「そんなそんな、私がいたって結果は変わりないって」
「……」
謙遜する佳子をマホは一瞥する。
「マホちゃん?」
「……さて第2クォーターも頑張りますか。いつも思うけどインターバル2分って短すぎない?」
そうチームメイトに声をかけながらコートへ向かうマホ。
佳子は違和感を感じていた。
(あれ……いま、睨まれた?)
コートが、観客席が、体育館がざわつく。
「お、もう来るのか」
コートの中心には巨人が立っていた。
第2クォーターは敵チームのスローインから始まる。
パスを回しながらじわりじわりとセンターラインへと迫る。
その一線を踏み超えた時、ボールは山添へと飛ぶ。パスと呼ぶにはあまりに高い。
高身長には高身長を。山添にはマホがマークしていたがあっさりとボールは渡ってしまう。
「たかっ……!」
高さだけではない。
ボールを受け取った瞬間に電光石火でフリースローラインに到達する。
「はやっ……!」
シュパッ。
ほぼノーマークでレイアップシュートを決める。
あまりの鮮やかな攻撃に、
「……こりゃやばいな」
鏡は舌を巻く。
彼女の予感は悪い時ばかり当たる。
山添は攻撃だけでなく守備でも活躍する。むしろ守備こそ彼女が本領発揮される。
「でか! はや! ちか!」
ゴール下に陣取られたら最後、細身の城壁が完成される。
シュートに持ち込もうとしても壁が必ず立ちはだかる。
しっかりと寄せられことごとくステップを封じられる。
「くっ……!」
チーム一の高身長のマホですら振り払えない。
強引にシュートをしてもリングの中に収まらない。
こぼれたボールは山添の手の中に。
再度攻撃の機会。
またもマホが攻めるが山添が立ちはだかる。
「マホ! パスパス!」
チームメイトがスリーポイントラインの外から声をかけるが敵チームがカットをしようと目を光らせている。
「私が……なんとかしないと……!」
しかし突破口を見いだせないまま24秒が経過してしまう。
(これは悪すぎる流れ!)
鏡はこのタイミングでタイムアウトを取る。
時間は一分。選手の休息や作戦を練るにはあまりに短い。
鏡はコートを見て気付く。
「あれ? 相手の高身長の子、ベンチスタート?」
足をガニ股におっぴろげ、前かがみになって試合を観戦している。
「こけおどしですかねえ」
「いや……温存だろうな……うちの河相と一緒よ」
「あ、そういえば彼女の名前、山添桃子って言うらしいですよ」
「名前すごく日本人だな」
互いにエースを温存した試合展開。
選手層の厚みでは佳子たちのチームが一枚も二枚も上手。
実力差は目に見えていたがポイントカード山田マホは冷静だった。
「みんな! 落ち着いて! 一本ずつ冷静に取っていこう!」
勝てる相手だと分かるとついつい調子に乗るもの。普段よりもプレーが雑になったり、ペース配分を間違えてしまう。
試合は序盤の第1クォーター。勝負を決するほどの大量得点を無理に取りに行かなくてもいい。それが彼女の判断だった。
「ひゅー! かっこいいよー! マホちゃーん!」
ベンチに座りながらもコートに共にいる感覚で声を出す佳子。
試合に集中する。そう心に決めたもののやはり気になる観客席。
ちらり、と横目で見る。
(う~~~~~~やっぱり近いまま~~~~~~~山田妹さん、お姉ちゃんが活躍してるんだからちょっとは応援したらどうなん~~~~)
もやもやが解消されないまま、第1クォーターは終了する。
「20-11……まずまずの滑り出しかな」
「鏡ちゃん、ひどーい。一生懸命頑張ったのにまずまずだなんて」
マホは汗を拭きながらぼやく。
「あぁ、すまない。今のは私の失言だ。選手のやる気をそぐ発言だった。本当にすまない」
「なーんて、先生の気持ちはわかりますよ。もしも佳子ちゃんがスタメンだったらもっと見栄えが良かったかもしれませんね」
「そんなそんな、私がいたって結果は変わりないって」
「……」
謙遜する佳子をマホは一瞥する。
「マホちゃん?」
「……さて第2クォーターも頑張りますか。いつも思うけどインターバル2分って短すぎない?」
そうチームメイトに声をかけながらコートへ向かうマホ。
佳子は違和感を感じていた。
(あれ……いま、睨まれた?)
コートが、観客席が、体育館がざわつく。
「お、もう来るのか」
コートの中心には巨人が立っていた。
第2クォーターは敵チームのスローインから始まる。
パスを回しながらじわりじわりとセンターラインへと迫る。
その一線を踏み超えた時、ボールは山添へと飛ぶ。パスと呼ぶにはあまりに高い。
高身長には高身長を。山添にはマホがマークしていたがあっさりとボールは渡ってしまう。
「たかっ……!」
高さだけではない。
ボールを受け取った瞬間に電光石火でフリースローラインに到達する。
「はやっ……!」
シュパッ。
ほぼノーマークでレイアップシュートを決める。
あまりの鮮やかな攻撃に、
「……こりゃやばいな」
鏡は舌を巻く。
彼女の予感は悪い時ばかり当たる。
山添は攻撃だけでなく守備でも活躍する。むしろ守備こそ彼女が本領発揮される。
「でか! はや! ちか!」
ゴール下に陣取られたら最後、細身の城壁が完成される。
シュートに持ち込もうとしても壁が必ず立ちはだかる。
しっかりと寄せられことごとくステップを封じられる。
「くっ……!」
チーム一の高身長のマホですら振り払えない。
強引にシュートをしてもリングの中に収まらない。
こぼれたボールは山添の手の中に。
再度攻撃の機会。
またもマホが攻めるが山添が立ちはだかる。
「マホ! パスパス!」
チームメイトがスリーポイントラインの外から声をかけるが敵チームがカットをしようと目を光らせている。
「私が……なんとかしないと……!」
しかし突破口を見いだせないまま24秒が経過してしまう。
(これは悪すぎる流れ!)
鏡はこのタイミングでタイムアウトを取る。
時間は一分。選手の休息や作戦を練るにはあまりに短い。
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