近所の公園でバスケを教えていたら教え子のチャラショタに溺愛されるようになりました

田村ケンタッキー

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初めてのデート編

長男去ってまた一難

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「姉ちゃ~~~~~~~~~~~ん!!!! 行くな~~~~~~~~~!!!」
「行くのは球児のほうでしょう」

 午前十時。
 球児は両親が運転する車に乗せられて塾の合宿に連行される。彼の学業の成績は一言で表すとやばい。勉強に限らず何事も子供の意思を尊重せず強制すべきではないと両親は口癖のように語るが、その大海のような心であっても「これはいけない」と縛り付けてでも勉強を強いるほど。
 会場は山の奥深く。コンビニはもちろん自動販売機すら珍しい。人間よりも野生動物と出くわす、そんな場所。

「それじゃあお母さんたち行くけどご飯は大丈夫なのよね?」
「うん、外で食べる。約束があるから」
「そう。でも出かけるなら戸締りよろしくね。今日はにわか雨が降るかもしれないから」
「はぁい」
「姉ちゃん~~~~~姉ちゃんを置いてく姉不孝を許してくれ~~~~~」
「帰ったら好きなだけバスケに付き合ってあげるから頑張れ~」
「まじか!? 約束な!? うおっしゃあ燃えてきた~~~~!」
「そのやる気、会場まで持つといいな……」

 こうして佳子は球児を見送り、自由時間を手に入れた。
 会場は自宅から車で一時間の距離。親も夕方まで帰ってこない。
 築十五年のまだ新しさが残るマイホーム。広い家でよりがらんとした印象がはっきりとする。
 正行と神戸は七時に起床し朝食を取ってから家に帰った。ちなみに球児が起きた時間は九時半。目が覚めた頃には友達はとっくに帰っていた。

「そろそろ着替えなきゃ、だよね……」

 自室に戻り、ハンガーに掛けられた新しい衣装。
 ベッドに腰を掛けて遠目から眺める。

(かわいい……)

 かわいい。
 第一感想も最終感想もそれは変わらない。

(これを……私が……)

 ベッドから立ち上がり、服を手に取り、姿見鏡の前に立つ。

(に、似合わない……!)

 服は可愛い。それを自分が着ることにやや抵抗を感じていた。

(やっぱりいつも通りの服に……でもそれだと正行君ががっかりしそうだし……)

 興味がないと言えば嘘になる。可愛らしいと大人っぽさが両立するワンピース。自分のセンス、勇気では絶対に選べない憧れ。
 せめぎ合う二つの選択。悩ましい。約束の時間に間に合いそうにない。
 そんな時、彼女のスマートフォンが鳴った。

「正行君からだ……ワンピース楽しみにしてます、か……」

 見透かされたかのような念押しあとおし

「もう、しょがないな……」

 もう一度スマートフォンが鳴る。新たなメッセージを着信する。

「なになに……机の引き出しに誕生日プレゼントとは別にいつものお礼として別のプレゼントを用意しました……こちらもぜひ着用してデートに来てください、と……あの子のお小遣いは無限か?」

 チャラいなと思いつつ、にやけ顔を止められない。
 男子からのサプライズプレゼントはどうあれ貰ったら嬉しい。

「さてさて、チャラい君は次はどんなプレゼントを用意してくれたのかな? さすがにもう簡単には驚かないぞ」

 机に引き出しを探す。すると見覚えのない紙袋が入っていた。

「さてご開封~」

 プレゼントは、カテゴリーとしては衣服に入る。
 男女の間では比較的普通に贈られる品。
 しかし贈られた佳子はこれを見て、

「……」
 絶句。
 一難去ってまた一難。

「あ、あ……」

 悩みが解消したと思ったら新たな悩みが降ってかかる。

「あの子は~!!!」

 少しの恥じらいと照れ、そして大部分を怒りが占める絶叫は家中に響き渡った。
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