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Ⅲ from A to A
第34話 反撃の時間遡行
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アーロン・ストライフ:魔法使いの助手兼用心棒をしている青年。
アリア・メイザース:帝国始まって以来の天才錬金術師。
ソフィー:元の世界のソフィー。
アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国皇帝。
────────────
アリア 「──────ようやく、その気になってくれたようだね、アーロン」
アーロン 「……!! アリア?!」
アリア 「……いきなり大きな声を出すな」
ソフィー 「やはは、どうやらうまくいったみたいですね」
アリア 「む、キミは……、ソフィア、いや、ソフィーか」
アーロン 「わかるのか?」
アリア 「ああ」
ソフィー 「説明しましょう!」
(SE ソフィーがずずいっと出てくる音)
ソフィー 「ふふん、実は、アーロンさんに会う直前、このアリアさんに出会ったんです! それで、ものは試しと思って、治癒の力に浄化の炎を乗せてみたんですよ。そうしたら……」
アリア 「キミのいう、元の世界の記憶が流れ込んできたんだ」
アーロン 「な、それじゃあ……」
アリア 「とは言っても、自分の中にもうひとり自分がいるようで違和感はもちろんある。だが──────」
アリア 「──────アーロン、キミはもう、ひとりじゃない」
アーロン 「…………!!」
ソフィー 「よかった……、それじゃあ、私はこの辺で失礼しますね」
アーロン 「ソフィー……?」
ソフィー 「やはは、この世界に来るのだけでも、かなり無茶してるんですよね。そろそろ、限界みたいです」
アリア 「ふむ、元の世界で亡くなった、ホムンクルスたちの魔力の残滓を束ねているのだから、不安定なのは無理もない」
ソフィー 「アーロンさん、アリアさん、元の世界をよろしくお願いします!!」
アーロン 「当たり前だ!!」
アリア 「ふふ、他にやることもないからね、頼まれてやらないこともない」
ソフィー 「やはは……!」
(SE ソフィーが消える音)
アーロン 「ソフィー、ありがとな……」
アリア 「…………さあアーロン、反撃といこうじゃないか」
(SE 拳と掌を打ち合わせる音)
アーロン 「ああ、アルトリウスの野郎の鼻、明かしてやろうぜ」
◇
帝都、郊外の森。
アーロン 「それでアリア、この趣味の悪いゲームを終わらせる方法はあるのかよ?」
アリア 「……今はない」
アーロン 「おい」
アリア 「まあ、最後まで話を聞け」
アーロン 「……」
アリア 「アーロン、この魔石を覚えているか?」
アーロン 「……それは、災厄の魔女としてのアリアがもってたやつか。確か、旧時代の魔法の影響を受けない石だったか」
アリア 「……キミとこの石の関係はそれだけじゃないのだが……、まあそれはいいだろう」
アーロン 「……?」
アリア 「で、この石だが、どうやら旧時代の魔法、とりわけ、皇族の魔法を記憶する石なんだよ」
アーロン 「皇族の魔法を記憶……? ちょっと待ってくれ、じゃあ、なんですでに空間転移と時間停止が使えるんだよ?」
アリア 「ふむ、それは、不思議なことにこの魔石を見つけたときから備わっていたんだ」
アーロン 「……もしかしたら、過去に同じ魔法を使えるやつがいたのかもな」
アリア 「まあ、それが可能性として高いだろうな」
アーロン 「と、話を戻そうぜ。それで、その石をどうするんだよ?」
アリア 「む、ここまで話したというのに、察しが悪い男だ」
アーロン 「あ?」
アリア 「この魔石は、皇族の魔法を記憶するんだ。つまり、アルトリウスの魔法をこの魔石で記憶し、このゲーム盤をひっくり返してやろうというわけだ」
アーロン 「!!」
アリア 「だが、これは賭けだ。しかも、アルトリウスに分のある、な。それでも、やるかい?」
アーロン 「ま、もともと勝率の低い賭けだったからな。その策がなくても、俺はまた戦うつもりだ」
アリア 「ふふ、そうか」
────────────
帝都、平民街、広場。
アルトリウス 「おや、アーロンさん、戻ってきてしまったんですか?」
アーロン 「ああ、ゲーム盤をひっくり返しに来た」
アルトリウス 「……その様子、どうやら死ぬ気はないようですね」
アーロン 「は、どうやら想定外って感じだな」
アルトリウス 「ええ、ですがやることは変わりませんよ」
(SE 世界が崩壊を始める音)
アルトリウス 「何度でも世界をやり直して、今度こそアーロンさんの心を折るだけです」
アーロン 「今だ! アリア!!」
アリア 「僭王の魔法:時間停止・起動!!」
(SE 時間が止まる音)
アルトリウス 「なっ!? 世界の時が止まった!?」
アリア 「世界の崩壊そのものを止めてしまえば、世界を作り変えることもできないだろう?」
アルトリウス 「……!! アリア・メイザース!? なぜ!?」
アリア 「ふふ、私は、天才だからね」
アルトリウス 「……微かに浄化の力を感じる……、ソフィアか……。あいつはいつも想定を越えてくる」
アリア 「おや、バレてしまったか」
アルトリウス 「ふ、ボクを一度でも出し抜いたのは見事でした」
アーロン 「……」
アルトリウス 「ですが、忘れていませんか? ボクの本来の力を」
(SE 剣を召喚する音)
アリア 「時間遡行、か」
アルトリウス 「ええ、完璧な力を手に入れた今のボクは、死なずとも時間遡行を発動できる」
(SE 魔力が満ちていく音)
アーロン 「はっ、アルトリウス、いつまで神様ごっこやってんだよ?」
アルトリウス 「何を言おうと無駄ですよ」
アーロン 「無視していいのか? 俺は言ったよな? ゲーム盤をひっくり返しに来た、って」
アルトリウス 「……?」
アーロン 「アルトリウスがなぜこのゲームで絶対的優位を誇っていたのか、それはあんたが無限にゲーム盤を用意できる神の位置にいるからだ」
アルトリウス 「それがどうしたのですか?」
アーロン 「なに、簡単な話さ。俺たちもその位置につけば、どっちも対等になるってことだ」
アルトリウス 「ははは、何を言い出すかと思えば、そんな世迷言を言って何になるって言うんですか?」
アーロン 「はっ、そうやっていつまでも余裕ぶってろよ」
アリア 「僭王の魔法:空間転移・起動」
(SE アリアがテレポートする音)
アルトリウス 「……!?」
アリア 「……魔石解放、術式記憶・起動!!」
アルトリウス 「くっ、どういうことだ!?」
アリア 「……はは、……く、アーロン!!」
アーロン 「ああ!」
(SE アーロンがアリアの手を掴む音)
アリア 「僭王の魔法:時間遡行・超動!!」
(SE バチバチと稲妻が走る音)
アルトリウス 「ま、まさか、そんなことが……!?」
アーロン 「はっ、神様ごっこはひとりでやってろ」
アルトリウス 「こ、こんな、こんな負け方、ボクは認めない! 認めないぞ!!」
アーロン 「何を言ってんだ? 俺は勝ったつもりなんてねえよ。俺たちがゲーム盤をひっくり返したってだけだ」
アルトリウス 「……ッ!」
アーロン 「だけど、あんたがそれを言うってことは、あんたはすでに負けてるぜ?」
アルトリウス 「く、くそおおおおおっ!!!!」
(SE アーロンとアリアが消える音)
つづく
アリア・メイザース:帝国始まって以来の天才錬金術師。
ソフィー:元の世界のソフィー。
アルトリウス・フォン・ハルモニア:ハルモニア帝国皇帝。
────────────
アリア 「──────ようやく、その気になってくれたようだね、アーロン」
アーロン 「……!! アリア?!」
アリア 「……いきなり大きな声を出すな」
ソフィー 「やはは、どうやらうまくいったみたいですね」
アリア 「む、キミは……、ソフィア、いや、ソフィーか」
アーロン 「わかるのか?」
アリア 「ああ」
ソフィー 「説明しましょう!」
(SE ソフィーがずずいっと出てくる音)
ソフィー 「ふふん、実は、アーロンさんに会う直前、このアリアさんに出会ったんです! それで、ものは試しと思って、治癒の力に浄化の炎を乗せてみたんですよ。そうしたら……」
アリア 「キミのいう、元の世界の記憶が流れ込んできたんだ」
アーロン 「な、それじゃあ……」
アリア 「とは言っても、自分の中にもうひとり自分がいるようで違和感はもちろんある。だが──────」
アリア 「──────アーロン、キミはもう、ひとりじゃない」
アーロン 「…………!!」
ソフィー 「よかった……、それじゃあ、私はこの辺で失礼しますね」
アーロン 「ソフィー……?」
ソフィー 「やはは、この世界に来るのだけでも、かなり無茶してるんですよね。そろそろ、限界みたいです」
アリア 「ふむ、元の世界で亡くなった、ホムンクルスたちの魔力の残滓を束ねているのだから、不安定なのは無理もない」
ソフィー 「アーロンさん、アリアさん、元の世界をよろしくお願いします!!」
アーロン 「当たり前だ!!」
アリア 「ふふ、他にやることもないからね、頼まれてやらないこともない」
ソフィー 「やはは……!」
(SE ソフィーが消える音)
アーロン 「ソフィー、ありがとな……」
アリア 「…………さあアーロン、反撃といこうじゃないか」
(SE 拳と掌を打ち合わせる音)
アーロン 「ああ、アルトリウスの野郎の鼻、明かしてやろうぜ」
◇
帝都、郊外の森。
アーロン 「それでアリア、この趣味の悪いゲームを終わらせる方法はあるのかよ?」
アリア 「……今はない」
アーロン 「おい」
アリア 「まあ、最後まで話を聞け」
アーロン 「……」
アリア 「アーロン、この魔石を覚えているか?」
アーロン 「……それは、災厄の魔女としてのアリアがもってたやつか。確か、旧時代の魔法の影響を受けない石だったか」
アリア 「……キミとこの石の関係はそれだけじゃないのだが……、まあそれはいいだろう」
アーロン 「……?」
アリア 「で、この石だが、どうやら旧時代の魔法、とりわけ、皇族の魔法を記憶する石なんだよ」
アーロン 「皇族の魔法を記憶……? ちょっと待ってくれ、じゃあ、なんですでに空間転移と時間停止が使えるんだよ?」
アリア 「ふむ、それは、不思議なことにこの魔石を見つけたときから備わっていたんだ」
アーロン 「……もしかしたら、過去に同じ魔法を使えるやつがいたのかもな」
アリア 「まあ、それが可能性として高いだろうな」
アーロン 「と、話を戻そうぜ。それで、その石をどうするんだよ?」
アリア 「む、ここまで話したというのに、察しが悪い男だ」
アーロン 「あ?」
アリア 「この魔石は、皇族の魔法を記憶するんだ。つまり、アルトリウスの魔法をこの魔石で記憶し、このゲーム盤をひっくり返してやろうというわけだ」
アーロン 「!!」
アリア 「だが、これは賭けだ。しかも、アルトリウスに分のある、な。それでも、やるかい?」
アーロン 「ま、もともと勝率の低い賭けだったからな。その策がなくても、俺はまた戦うつもりだ」
アリア 「ふふ、そうか」
────────────
帝都、平民街、広場。
アルトリウス 「おや、アーロンさん、戻ってきてしまったんですか?」
アーロン 「ああ、ゲーム盤をひっくり返しに来た」
アルトリウス 「……その様子、どうやら死ぬ気はないようですね」
アーロン 「は、どうやら想定外って感じだな」
アルトリウス 「ええ、ですがやることは変わりませんよ」
(SE 世界が崩壊を始める音)
アルトリウス 「何度でも世界をやり直して、今度こそアーロンさんの心を折るだけです」
アーロン 「今だ! アリア!!」
アリア 「僭王の魔法:時間停止・起動!!」
(SE 時間が止まる音)
アルトリウス 「なっ!? 世界の時が止まった!?」
アリア 「世界の崩壊そのものを止めてしまえば、世界を作り変えることもできないだろう?」
アルトリウス 「……!! アリア・メイザース!? なぜ!?」
アリア 「ふふ、私は、天才だからね」
アルトリウス 「……微かに浄化の力を感じる……、ソフィアか……。あいつはいつも想定を越えてくる」
アリア 「おや、バレてしまったか」
アルトリウス 「ふ、ボクを一度でも出し抜いたのは見事でした」
アーロン 「……」
アルトリウス 「ですが、忘れていませんか? ボクの本来の力を」
(SE 剣を召喚する音)
アリア 「時間遡行、か」
アルトリウス 「ええ、完璧な力を手に入れた今のボクは、死なずとも時間遡行を発動できる」
(SE 魔力が満ちていく音)
アーロン 「はっ、アルトリウス、いつまで神様ごっこやってんだよ?」
アルトリウス 「何を言おうと無駄ですよ」
アーロン 「無視していいのか? 俺は言ったよな? ゲーム盤をひっくり返しに来た、って」
アルトリウス 「……?」
アーロン 「アルトリウスがなぜこのゲームで絶対的優位を誇っていたのか、それはあんたが無限にゲーム盤を用意できる神の位置にいるからだ」
アルトリウス 「それがどうしたのですか?」
アーロン 「なに、簡単な話さ。俺たちもその位置につけば、どっちも対等になるってことだ」
アルトリウス 「ははは、何を言い出すかと思えば、そんな世迷言を言って何になるって言うんですか?」
アーロン 「はっ、そうやっていつまでも余裕ぶってろよ」
アリア 「僭王の魔法:空間転移・起動」
(SE アリアがテレポートする音)
アルトリウス 「……!?」
アリア 「……魔石解放、術式記憶・起動!!」
アルトリウス 「くっ、どういうことだ!?」
アリア 「……はは、……く、アーロン!!」
アーロン 「ああ!」
(SE アーロンがアリアの手を掴む音)
アリア 「僭王の魔法:時間遡行・超動!!」
(SE バチバチと稲妻が走る音)
アルトリウス 「ま、まさか、そんなことが……!?」
アーロン 「はっ、神様ごっこはひとりでやってろ」
アルトリウス 「こ、こんな、こんな負け方、ボクは認めない! 認めないぞ!!」
アーロン 「何を言ってんだ? 俺は勝ったつもりなんてねえよ。俺たちがゲーム盤をひっくり返したってだけだ」
アルトリウス 「……ッ!」
アーロン 「だけど、あんたがそれを言うってことは、あんたはすでに負けてるぜ?」
アルトリウス 「く、くそおおおおおっ!!!!」
(SE アーロンとアリアが消える音)
つづく
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