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Ⅲ from A to A
第28話 遺跡の罠
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アーロン:魔法使いの助手を自称する剣士。
ソフィー:ハルモニア皇帝の妹。ソフィア・リ・ハルモニア。18歳。
ウルフィリア・ベルナルド:旅をするために爵位を手放したおっさん。32歳。
ルーナ:姉妹で傭兵業をしている剣士の女性。20歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。19歳。
ステラ:天才剣士として名高い、ルーナの妹。18歳。
エスカ・ベルナルド:旅をしている調香師の女性。ウルフィリアの妻。32歳。
クラリス:アルトの町に勤務する女性騎士。21歳。
アリア・メイザース:災厄の魔女と呼ばれる錬金術師。21歳。
アルトの遺跡、入り口。
ソフィー・ステラ 「やっと着いたぁ~」
ルーナ 「アーロン、アリア・メイザースは、本当にここにいるの?」
アーロン 「さあな」
ルーナ 「はあ?」
アーロン 「……アリアは、俺の死神の力に興味を持っていた。この遺跡は、旧ハルモニアを滅ぼした死神に関係している。それならアリアがアルトの遺跡にいる可能性は高いはずだ」
ルーナ 「……信じていいの?」
アーロン 「他に当てがあるってんなら、俺はそっちでいいぜ?」
ルーナ 「…………」
ウルフィリア 「まあ、人目のつきそうな町中よりも、遺跡の中の方が潜んでる可能性は高いよね」
エスカ 「……ここが……」
ウルフィリア 「エスカ、大丈夫か?」
エスカ 「え、ええ、少し悪寒が……」
ウルフィリア 「宿に戻るか?」
エスカ 「いえ、大丈夫、行きましょう」
(SE 足音)
クラリス 「こほん、ちょっとそこのあんたたち~?」
アーロン 「!!」
ルーナ 「……?」
ステラ 「わわっ、騎士?」
ウルフィリア 「へえ、騎士にもこんな可愛い子がいるんだね」
エスカ 「ウルフィリア?」
ウルフィリア 「すみません、自重します……」
レオンハルト 「……クラリス先輩?」
クラリス 「あれ、レオくん? その隊長姿いいね!」
レオンハルト 「あはは、恐縮です」
アーロン 「…………」
ソフィー 「そういえば、このアルトの町には、騎士の詰所があったんでしたね」
クラリス 「あなたは……」
ソフィー 「……ソフィア・リ・ハルモニアです。皇帝陛下より、極秘の命を受けているんです。しばらく、ここを調べさせていただけませんか?」
クラリス 「殿下! 知らぬこととはいえ、とんだご無礼を! どうぞ、こちらの遺跡を調査なさってください!」
ソフィー 「あ、いや! そんな、かしこまらないでください!」
ルーナ 「あら、殊勝な心がけじゃない」
ステラ 「お姉ちゃん!?」
クラリス 「……あなた、ステラさん?」
ステラ 「はい、そうですけど……」
(SE クラリスがステラの手を取る音)
クラリス 「ファンです!!」
ステラ 「うぇっ!?」
クラリス 「私よりも若いのに、その流水のようにしなやかな、それでいて星が煌めくように鋭い一閃を目にして以来、大っっファンです!!」
ステラ 「あはは、ありがとうございます」
ルーナ 「どこかでやった試合を見たの?」
クラリス 「そうです! 騎士団が定期的に開催してる大会で……」
ルーナ 「ああ、貴族上がりばかりのおめでたい連中しかいない、あのクソ大会ね」
ステラ 「いやお姉ちゃん、その大会、準々決勝くらいで負けてたよね?」
クラリス 「あ、お姉さんも出場されてたんですね」
ルーナ 「ははは、ステラのファンさんは、面白いこと言うのね」
クラリス 「へ?」
ステラ 「お姉ちゃん、目が笑ってないよ……」
アーロン 「……あー、そろそろ中に入りたいんだけど、いいか?」
クラリス 「わ、すみませ……、どこかで会ったことありましたっけ?」
アーロン 「……俺のことが、わかるのか……?」
クラリス 「え?」
アーロン 「俺だ、アーロンだ。ほら、昔一緒に貴族のボンボンから、下町の子どもを助けただろ?」
クラリス 「…………すみません、わからない、です……」
アーロン 「……そう、か。はは、そりゃそうだよな」
クラリス 「……? それじゃあ、私はこれで失礼しますね。あ、この遺跡、最近物騒みたいなので、お気をつけて!」
ソフィー 「はい、ご忠告ありがとうございます」
クラリス 「……」
(SE クラリスが去る音)
エスカ 「……今の騎士とは、どういう関係なんですか?」
アーロン 「え?」
レオンハルト 「あ、僕も気になります」
アーロン 「…………いや、なんでもねえよ」
ソフィー 「いやいや、なんでもないってことはないでしょう~?」
アーロン 「……なんでもねえよ」
ソフィー 「またまた~」
アーロン 「なんでもねえっつってんだろ!!」
ソフィー 「……っ」
アーロン 「……悪い」
エスカ 「…………」
ルーナ 「アーロン……」
ウルフィリア 「まあ、中に入ろうか」
◇
アルトの遺跡、内部。
アーロン 「……地霊石が生きている」
ソフィー 「地霊石?」
アーロン 「旧ハルモニアの遺物だ。この石が光ってるってことは、どういうわけか遺跡が生きているってことらしい」
ソフィー 「へえー」
ステラ 「旧ハルモニアについての情報は、ほとんどが禁忌とされているのに、よくそんなこと知ってますね」
アーロン 「旧ハルモニアには、なにかと縁があるらしくてな」
ステラ 「そのチカラ、ですか」
アーロン 「ま、これもあるけどな」
(SE 黒いオーラがにじむ音)
ステラ 「けど……?」
アーロン 「いいや、なんでもない。それより、なんか扉が見えてきたぞ」
ルーナ 「…………」
(SE 足音)
レオンハルト 「……奥に進む道は、この扉の先でしょうね」
アーロン 「お、戻ってきたか」
レオンハルト 「はい、他の部屋を調べましたが、特に何もありませんでした」
ウルフィリア 「こっちも特になし~」
ルーナ 「おっさん、ちゃんと調べたの?」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、なんでおじさんに厳しいの~?」
ルーナ 「おっさんがおっさんだからよ」
ウルフィリア 「手厳しいっ!」
アーロン 「はは……」
エスカ 「もう、気持ちはわかるけど、あまりウルフィリアをいじめないであげて」
ウルフィリア 「気持ちはわかるのね……」
ルーナ 「善処するわ」
ウルフィリア 「本当かな……?」
ルーナ 「あ?」
ウルフィリア 「スミマセン、ナンデモナイデス」
エスカ 「それより、ルーナちゃんの方は?」
ルーナ 「あの扉以外は、特に何も」
エスカ 「そう」
ルーナ 「ええ」
ステラ 「……お姉ちゃんとエスカさん、なんか仲良い?」
ウルフィリア 「おじさんとしては、強敵が結託したって感じだけどね~」
ステラ 「ははは、そんなこと言っちゃって良かったんですか?」
エスカ 「ウルフィリア? あとで、ね?」
ウルフィリア 「──────」
ソフィー 「それで、どうします? この先、行っちゃいます?」
ステラ 「なんだか、嫌な感じがする……」
ルーナ 「魔物?」
ステラ 「魔物や人の気配は感じない、けど……」
ウルフィリア 「……どうする?」
アーロン 「ま、奥に進むには、行くしかないよな」
エスカ 「……」
レオンハルト 「大丈夫です、皆さんのことは僕の盾で守ります」
ルーナ 「ふん、できるものなら」
アーロン 「それじゃあ、行くぞ」
(SE 重い扉を開ける音)
アーロン 「…………」
ルーナ 「何も、ないわね」
ソフィー 「ふぅ……」
ウルフィリア 「……みんな、油断はしないでよ」
レオンハルト 「はい」
エスカ 「……」
ステラ 「……っ、なにか来ます」
(SE 魔法陣が展開される音)
(SE 魔物が召喚される音)
アーロン 「……っ、こいつは」
ウルフィリア 「まさか、バジリスクとご対面することになるなんて……」
アーロン 「ヤツとなるべく目を合わせるなよ?! 石にされんぞ!!」
ソフィー 「い、石……!?」
ウルフィリア 「青年、バジリスクとも戦ったことあるの?」
アーロン 「ああ、苦労させられた」
ウルフィリア 「倒したってこと? そりゃ、頼もしいね」
ルーナ 「ほら、おしゃべりはその辺にして、来るわよ」
バジリスク 「シャアアアアアッ!!」
(SE 大蛇が噛みつく音)
レオンハルト 「させません!!」
(SE 盾で攻撃を防ぐ音)
レオンハルト 「くっ……!」
アーロン 「ナイスだ、レオ! はあああっ!!」
(SE 剣を振る音)
(SE 剣が弾かれる音)
アーロン 「ちっ、やっぱかてぇな……!」
バジリスク 「シャアアアアアッ!!」
(SE レオンハルトが吹き飛ばされる音)
レオンハルト 「ぐああっ!!」
ソフィー 「レオくん!」
ルーナ 「ステラ!」
ステラ 「うん、お姉ちゃん!」
ルーナ 「──────叢雲……」
(SE 霧が立ち込める音)
ステラ 「──────偃月」
(SE 刀の一閃)
ステラ 「──────二の太刀」
(SE 刀の一閃)
ステラ 「──────三の太刀、奥義・オボロヅキ!」
(SE 刀の一閃)×何度か
(SE 納刀する音)
バジリスク 「キシャアアアアアッ!?」
ステラ 「浅い、か」
ルーナ 「鱗が硬すぎる……」
バジリスク 「シャアアアアアアッ!!」
(SE バジリスクの攻撃)
ルーナ 「!! ステラ!!」
(SE ルーナが駆け出す音)
ステラ 「!?」
(SE ルーナが吹き飛ばされる音)
ルーナ 「ぐはっ……!!」
ステラ 「お姉ちゃん!!」
(SE ステラが駆け寄る音)
ルーナ 「……ッ! ……ステラ!」
バジリスク 「シュルルル……ッ!」
(SE バジリスクの目が光る音)
ステラ 「え? しまっ……!」
(SE ステラが石化する音)
ルーナ 「ステラ!!」
ソフィー 「ステラちゃん!!」
(SE ルーナが駆け出す音)
ルーナ 「よくもステラを!!」
ルーナ 「──────幻月!」
(SE ルーナの分身が出現する音)
ルーナ 「──────幻月乱舞・鏡花水月!」
(SE 斬撃音)×何度か
ルーナ 「──────幻月乱舞奥義・風花雪月!!」
(SE 大量の水が爆発する音)
バジリスク 「ギシャアアアアッ!!」
ルーナ 「……っ、バジリスクの毒か……」
(SE ルーナが膝をつく音)
ウルフィリア 「エスカ、2人を診てやってくれ」
エスカ 「はい!」
(SE エスカが駆け寄る音)
エスカ 「大丈夫ですか?」
ルーナ 「……っ、私よりも、ステラを……っ」
エスカ 「……すみません、私の腕では石化は……」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、おとなしくエスカの治療を受けてくれ」
ルーナ 「……っ」
ウルフィリア 「青年、なんとかならないの、あれ」
アーロン 「……悪りぃ、前に戦ったヤツよりも大分手強いみたいだ」
レオンハルト 「……っ、あのチカラは?」
アーロン 「……試してる」
レオンハルト 「え?」
アーロン 「さっきから試してるけど、死神の力が使えねえんだ」
レオンハルト 「それじゃあ……」
アーロン (せめて、ヤツの石化さえどうにかできれば……)
ウルフィリア 「万事休すってやつ?」
アーロン 「…………」
ソフィー 「ルーナさん、ステラちゃん……」
アーロン 「! ソフィーなら……」
ウルフィリア 「何か思いついた?」
アーロン 「ああ、おっさん、ヤツの足止め、頼めるか?」
ウルフィリア 「やってみるけど、あんまり期待しないでよ?」
アーロン 「そう言いつつ、やれるのがおっさんだろ?」
ウルフィリア 「はは、そりゃどうも」
ウルフィリア 「──────風よ、彼の者の足を阻め」
(SE 風魔法が発動する音)
バジリスク 「シャアアアアア……」
アーロン 「ソフィー! ヤツの目を狙えるか?!」
ソフィー 「え? そんな、バジリスクの目を見ずになんて、どうやって狙えば!?」
アーロン 「大丈夫だ! ソフィーならできる!!」
ソフィー 「あーもう、わかりました! やってやりますよ!!」
(SE 銃声)(SE ソフィーが高速で移動する音)
バジリスク 「? シュルルルルッ……!」
(SE バジリスクの目が光る音)
ソフィー 「しまった……! 私もステラちゃんみたいに……!?」
ソフィー 「…………あれ?」
アーロン 「やっぱりな。ソフィーなら耐えられる」
ソフィー 「それなら、狙える!」
(SE 銃を構える音)
ソフィー 「──────魔弾・穿吼流撃弾!!」
(SE 水の魔力が爆発する音)
バジリスク 「ギシャアアアアアッ!?」
(SE バジリスクがのたうつ音)
ソフィー 「今です!!」
アーロン 「うおおおおおっ!!」
(SE 剣を突き刺す音)
バジリスク 「…………!!」
(SE バジリスクが消滅する音)
ソフィー 「倒せた……?」
(SE 石が砕ける音)
(SE 幻術が解ける音)
アーロン 「……! 今のは?」
ウルフィリア 「……どうやら、俺ら全員幻術にかけられてたみたいだね」
ステラ 「……う、うぅ……っ」
ルーナ 「!! ステラ!? ステラああああっ!!」
(SE ルーナがステラに抱き着く音)
ステラ 「ちょっと、お姉ちゃんっ?」
エスカ 「ああ、ルーナちゃん、毒は……? って、抜けてるみたい……」
ルーナ 「よかった、よかったああああっ!」
ステラ 「もう、お姉ちゃん、く、苦しいよ……っ」
レオンハルト 「…………こんな幻術、できる人なんて……」
ウルフィリア 「限られてるだろうね」
ルーナ 「アリア・メイザース……!!」
アリア 「ご名答」
アーロン 「アリア!?」
ルーナ 「どこにいる!? 姿を現しなさい!!」
アリア 「何やら恨みを買ってしまったみたいだな」
ルーナ 「なんですって!? ステラをあんな目にあわせておいてよくも!!」
アリア 「ふふ、用があるなら、この遺跡の最深部に来ることだ。アーロン、待っているよ」
ルーナ 「ちっ、さっさと行くわよ」
アーロン 「待て」
ルーナ 「は? なにアンタ、やっぱりアリア・メイザースの……」
アーロン 「はあ、ルーナ、ちょっとは周りを見ろっての」
ステラ 「……っ」
ソフィー 「はあ、はあ……」
レオンハルト 「くっ……」
エスカ 「今すぐ傷の手当てを……」
ルーナ 「……!」
アーロン 「頭に血が上ると周りが見えなくなるのは、あんたの悪い癖だ」
ルーナ 「…………悪かったわよ」
ウルフィリア 「うんうん、傷の治療が済んだら、奥に進もうか」
つづく
ソフィー:ハルモニア皇帝の妹。ソフィア・リ・ハルモニア。18歳。
ウルフィリア・ベルナルド:旅をするために爵位を手放したおっさん。32歳。
ルーナ:姉妹で傭兵業をしている剣士の女性。20歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。19歳。
ステラ:天才剣士として名高い、ルーナの妹。18歳。
エスカ・ベルナルド:旅をしている調香師の女性。ウルフィリアの妻。32歳。
クラリス:アルトの町に勤務する女性騎士。21歳。
アリア・メイザース:災厄の魔女と呼ばれる錬金術師。21歳。
アルトの遺跡、入り口。
ソフィー・ステラ 「やっと着いたぁ~」
ルーナ 「アーロン、アリア・メイザースは、本当にここにいるの?」
アーロン 「さあな」
ルーナ 「はあ?」
アーロン 「……アリアは、俺の死神の力に興味を持っていた。この遺跡は、旧ハルモニアを滅ぼした死神に関係している。それならアリアがアルトの遺跡にいる可能性は高いはずだ」
ルーナ 「……信じていいの?」
アーロン 「他に当てがあるってんなら、俺はそっちでいいぜ?」
ルーナ 「…………」
ウルフィリア 「まあ、人目のつきそうな町中よりも、遺跡の中の方が潜んでる可能性は高いよね」
エスカ 「……ここが……」
ウルフィリア 「エスカ、大丈夫か?」
エスカ 「え、ええ、少し悪寒が……」
ウルフィリア 「宿に戻るか?」
エスカ 「いえ、大丈夫、行きましょう」
(SE 足音)
クラリス 「こほん、ちょっとそこのあんたたち~?」
アーロン 「!!」
ルーナ 「……?」
ステラ 「わわっ、騎士?」
ウルフィリア 「へえ、騎士にもこんな可愛い子がいるんだね」
エスカ 「ウルフィリア?」
ウルフィリア 「すみません、自重します……」
レオンハルト 「……クラリス先輩?」
クラリス 「あれ、レオくん? その隊長姿いいね!」
レオンハルト 「あはは、恐縮です」
アーロン 「…………」
ソフィー 「そういえば、このアルトの町には、騎士の詰所があったんでしたね」
クラリス 「あなたは……」
ソフィー 「……ソフィア・リ・ハルモニアです。皇帝陛下より、極秘の命を受けているんです。しばらく、ここを調べさせていただけませんか?」
クラリス 「殿下! 知らぬこととはいえ、とんだご無礼を! どうぞ、こちらの遺跡を調査なさってください!」
ソフィー 「あ、いや! そんな、かしこまらないでください!」
ルーナ 「あら、殊勝な心がけじゃない」
ステラ 「お姉ちゃん!?」
クラリス 「……あなた、ステラさん?」
ステラ 「はい、そうですけど……」
(SE クラリスがステラの手を取る音)
クラリス 「ファンです!!」
ステラ 「うぇっ!?」
クラリス 「私よりも若いのに、その流水のようにしなやかな、それでいて星が煌めくように鋭い一閃を目にして以来、大っっファンです!!」
ステラ 「あはは、ありがとうございます」
ルーナ 「どこかでやった試合を見たの?」
クラリス 「そうです! 騎士団が定期的に開催してる大会で……」
ルーナ 「ああ、貴族上がりばかりのおめでたい連中しかいない、あのクソ大会ね」
ステラ 「いやお姉ちゃん、その大会、準々決勝くらいで負けてたよね?」
クラリス 「あ、お姉さんも出場されてたんですね」
ルーナ 「ははは、ステラのファンさんは、面白いこと言うのね」
クラリス 「へ?」
ステラ 「お姉ちゃん、目が笑ってないよ……」
アーロン 「……あー、そろそろ中に入りたいんだけど、いいか?」
クラリス 「わ、すみませ……、どこかで会ったことありましたっけ?」
アーロン 「……俺のことが、わかるのか……?」
クラリス 「え?」
アーロン 「俺だ、アーロンだ。ほら、昔一緒に貴族のボンボンから、下町の子どもを助けただろ?」
クラリス 「…………すみません、わからない、です……」
アーロン 「……そう、か。はは、そりゃそうだよな」
クラリス 「……? それじゃあ、私はこれで失礼しますね。あ、この遺跡、最近物騒みたいなので、お気をつけて!」
ソフィー 「はい、ご忠告ありがとうございます」
クラリス 「……」
(SE クラリスが去る音)
エスカ 「……今の騎士とは、どういう関係なんですか?」
アーロン 「え?」
レオンハルト 「あ、僕も気になります」
アーロン 「…………いや、なんでもねえよ」
ソフィー 「いやいや、なんでもないってことはないでしょう~?」
アーロン 「……なんでもねえよ」
ソフィー 「またまた~」
アーロン 「なんでもねえっつってんだろ!!」
ソフィー 「……っ」
アーロン 「……悪い」
エスカ 「…………」
ルーナ 「アーロン……」
ウルフィリア 「まあ、中に入ろうか」
◇
アルトの遺跡、内部。
アーロン 「……地霊石が生きている」
ソフィー 「地霊石?」
アーロン 「旧ハルモニアの遺物だ。この石が光ってるってことは、どういうわけか遺跡が生きているってことらしい」
ソフィー 「へえー」
ステラ 「旧ハルモニアについての情報は、ほとんどが禁忌とされているのに、よくそんなこと知ってますね」
アーロン 「旧ハルモニアには、なにかと縁があるらしくてな」
ステラ 「そのチカラ、ですか」
アーロン 「ま、これもあるけどな」
(SE 黒いオーラがにじむ音)
ステラ 「けど……?」
アーロン 「いいや、なんでもない。それより、なんか扉が見えてきたぞ」
ルーナ 「…………」
(SE 足音)
レオンハルト 「……奥に進む道は、この扉の先でしょうね」
アーロン 「お、戻ってきたか」
レオンハルト 「はい、他の部屋を調べましたが、特に何もありませんでした」
ウルフィリア 「こっちも特になし~」
ルーナ 「おっさん、ちゃんと調べたの?」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、なんでおじさんに厳しいの~?」
ルーナ 「おっさんがおっさんだからよ」
ウルフィリア 「手厳しいっ!」
アーロン 「はは……」
エスカ 「もう、気持ちはわかるけど、あまりウルフィリアをいじめないであげて」
ウルフィリア 「気持ちはわかるのね……」
ルーナ 「善処するわ」
ウルフィリア 「本当かな……?」
ルーナ 「あ?」
ウルフィリア 「スミマセン、ナンデモナイデス」
エスカ 「それより、ルーナちゃんの方は?」
ルーナ 「あの扉以外は、特に何も」
エスカ 「そう」
ルーナ 「ええ」
ステラ 「……お姉ちゃんとエスカさん、なんか仲良い?」
ウルフィリア 「おじさんとしては、強敵が結託したって感じだけどね~」
ステラ 「ははは、そんなこと言っちゃって良かったんですか?」
エスカ 「ウルフィリア? あとで、ね?」
ウルフィリア 「──────」
ソフィー 「それで、どうします? この先、行っちゃいます?」
ステラ 「なんだか、嫌な感じがする……」
ルーナ 「魔物?」
ステラ 「魔物や人の気配は感じない、けど……」
ウルフィリア 「……どうする?」
アーロン 「ま、奥に進むには、行くしかないよな」
エスカ 「……」
レオンハルト 「大丈夫です、皆さんのことは僕の盾で守ります」
ルーナ 「ふん、できるものなら」
アーロン 「それじゃあ、行くぞ」
(SE 重い扉を開ける音)
アーロン 「…………」
ルーナ 「何も、ないわね」
ソフィー 「ふぅ……」
ウルフィリア 「……みんな、油断はしないでよ」
レオンハルト 「はい」
エスカ 「……」
ステラ 「……っ、なにか来ます」
(SE 魔法陣が展開される音)
(SE 魔物が召喚される音)
アーロン 「……っ、こいつは」
ウルフィリア 「まさか、バジリスクとご対面することになるなんて……」
アーロン 「ヤツとなるべく目を合わせるなよ?! 石にされんぞ!!」
ソフィー 「い、石……!?」
ウルフィリア 「青年、バジリスクとも戦ったことあるの?」
アーロン 「ああ、苦労させられた」
ウルフィリア 「倒したってこと? そりゃ、頼もしいね」
ルーナ 「ほら、おしゃべりはその辺にして、来るわよ」
バジリスク 「シャアアアアアッ!!」
(SE 大蛇が噛みつく音)
レオンハルト 「させません!!」
(SE 盾で攻撃を防ぐ音)
レオンハルト 「くっ……!」
アーロン 「ナイスだ、レオ! はあああっ!!」
(SE 剣を振る音)
(SE 剣が弾かれる音)
アーロン 「ちっ、やっぱかてぇな……!」
バジリスク 「シャアアアアアッ!!」
(SE レオンハルトが吹き飛ばされる音)
レオンハルト 「ぐああっ!!」
ソフィー 「レオくん!」
ルーナ 「ステラ!」
ステラ 「うん、お姉ちゃん!」
ルーナ 「──────叢雲……」
(SE 霧が立ち込める音)
ステラ 「──────偃月」
(SE 刀の一閃)
ステラ 「──────二の太刀」
(SE 刀の一閃)
ステラ 「──────三の太刀、奥義・オボロヅキ!」
(SE 刀の一閃)×何度か
(SE 納刀する音)
バジリスク 「キシャアアアアアッ!?」
ステラ 「浅い、か」
ルーナ 「鱗が硬すぎる……」
バジリスク 「シャアアアアアアッ!!」
(SE バジリスクの攻撃)
ルーナ 「!! ステラ!!」
(SE ルーナが駆け出す音)
ステラ 「!?」
(SE ルーナが吹き飛ばされる音)
ルーナ 「ぐはっ……!!」
ステラ 「お姉ちゃん!!」
(SE ステラが駆け寄る音)
ルーナ 「……ッ! ……ステラ!」
バジリスク 「シュルルル……ッ!」
(SE バジリスクの目が光る音)
ステラ 「え? しまっ……!」
(SE ステラが石化する音)
ルーナ 「ステラ!!」
ソフィー 「ステラちゃん!!」
(SE ルーナが駆け出す音)
ルーナ 「よくもステラを!!」
ルーナ 「──────幻月!」
(SE ルーナの分身が出現する音)
ルーナ 「──────幻月乱舞・鏡花水月!」
(SE 斬撃音)×何度か
ルーナ 「──────幻月乱舞奥義・風花雪月!!」
(SE 大量の水が爆発する音)
バジリスク 「ギシャアアアアッ!!」
ルーナ 「……っ、バジリスクの毒か……」
(SE ルーナが膝をつく音)
ウルフィリア 「エスカ、2人を診てやってくれ」
エスカ 「はい!」
(SE エスカが駆け寄る音)
エスカ 「大丈夫ですか?」
ルーナ 「……っ、私よりも、ステラを……っ」
エスカ 「……すみません、私の腕では石化は……」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、おとなしくエスカの治療を受けてくれ」
ルーナ 「……っ」
ウルフィリア 「青年、なんとかならないの、あれ」
アーロン 「……悪りぃ、前に戦ったヤツよりも大分手強いみたいだ」
レオンハルト 「……っ、あのチカラは?」
アーロン 「……試してる」
レオンハルト 「え?」
アーロン 「さっきから試してるけど、死神の力が使えねえんだ」
レオンハルト 「それじゃあ……」
アーロン (せめて、ヤツの石化さえどうにかできれば……)
ウルフィリア 「万事休すってやつ?」
アーロン 「…………」
ソフィー 「ルーナさん、ステラちゃん……」
アーロン 「! ソフィーなら……」
ウルフィリア 「何か思いついた?」
アーロン 「ああ、おっさん、ヤツの足止め、頼めるか?」
ウルフィリア 「やってみるけど、あんまり期待しないでよ?」
アーロン 「そう言いつつ、やれるのがおっさんだろ?」
ウルフィリア 「はは、そりゃどうも」
ウルフィリア 「──────風よ、彼の者の足を阻め」
(SE 風魔法が発動する音)
バジリスク 「シャアアアアア……」
アーロン 「ソフィー! ヤツの目を狙えるか?!」
ソフィー 「え? そんな、バジリスクの目を見ずになんて、どうやって狙えば!?」
アーロン 「大丈夫だ! ソフィーならできる!!」
ソフィー 「あーもう、わかりました! やってやりますよ!!」
(SE 銃声)(SE ソフィーが高速で移動する音)
バジリスク 「? シュルルルルッ……!」
(SE バジリスクの目が光る音)
ソフィー 「しまった……! 私もステラちゃんみたいに……!?」
ソフィー 「…………あれ?」
アーロン 「やっぱりな。ソフィーなら耐えられる」
ソフィー 「それなら、狙える!」
(SE 銃を構える音)
ソフィー 「──────魔弾・穿吼流撃弾!!」
(SE 水の魔力が爆発する音)
バジリスク 「ギシャアアアアアッ!?」
(SE バジリスクがのたうつ音)
ソフィー 「今です!!」
アーロン 「うおおおおおっ!!」
(SE 剣を突き刺す音)
バジリスク 「…………!!」
(SE バジリスクが消滅する音)
ソフィー 「倒せた……?」
(SE 石が砕ける音)
(SE 幻術が解ける音)
アーロン 「……! 今のは?」
ウルフィリア 「……どうやら、俺ら全員幻術にかけられてたみたいだね」
ステラ 「……う、うぅ……っ」
ルーナ 「!! ステラ!? ステラああああっ!!」
(SE ルーナがステラに抱き着く音)
ステラ 「ちょっと、お姉ちゃんっ?」
エスカ 「ああ、ルーナちゃん、毒は……? って、抜けてるみたい……」
ルーナ 「よかった、よかったああああっ!」
ステラ 「もう、お姉ちゃん、く、苦しいよ……っ」
レオンハルト 「…………こんな幻術、できる人なんて……」
ウルフィリア 「限られてるだろうね」
ルーナ 「アリア・メイザース……!!」
アリア 「ご名答」
アーロン 「アリア!?」
ルーナ 「どこにいる!? 姿を現しなさい!!」
アリア 「何やら恨みを買ってしまったみたいだな」
ルーナ 「なんですって!? ステラをあんな目にあわせておいてよくも!!」
アリア 「ふふ、用があるなら、この遺跡の最深部に来ることだ。アーロン、待っているよ」
ルーナ 「ちっ、さっさと行くわよ」
アーロン 「待て」
ルーナ 「は? なにアンタ、やっぱりアリア・メイザースの……」
アーロン 「はあ、ルーナ、ちょっとは周りを見ろっての」
ステラ 「……っ」
ソフィー 「はあ、はあ……」
レオンハルト 「くっ……」
エスカ 「今すぐ傷の手当てを……」
ルーナ 「……!」
アーロン 「頭に血が上ると周りが見えなくなるのは、あんたの悪い癖だ」
ルーナ 「…………悪かったわよ」
ウルフィリア 「うんうん、傷の治療が済んだら、奥に進もうか」
つづく
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今まで投稿した事のある一人用の声劇台本を二人用に書き直してみました。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。タイトル変更も禁止です。
※こちらの作品は男女入れ替えNGとなりますのでご注意ください。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい
声劇・シチュボ台本たち
ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。
声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。
使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります)
自作発言・過度な改変は許可していません。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
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◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜
摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。
ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m
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ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
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