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Ⅲ from A to A
第23話 すべてがうまくいった世界
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アーロン:魔法使いの助手を自称する剣士。
ソフィー:ハルモニア帝国皇帝の妹。18歳。
ウルフィリア・ベルナルド:旅をするために爵位を手放したおっさん。32歳。
ルーナ:姉妹で傭兵業をしている剣士の女性。20歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。19歳。
エドワード・ストライフ:平民街と下町をつなぐ通りにある酒場を営んでいる男性。55歳。
ステラ:ルーナの妹。天才剣士と名高い。18歳。
エスカ・ベルナルド:旅をしている調香師の女性。ウルフィリアの妻。32歳。
ジョン:エドワードの酒場の常連。44歳。
シルヴィア:平民街で繁盛している酒場の看板娘。17歳。
店主:シルヴィアが働いている酒場のマスター。
帝都郊外の森。
アーロン 「……っ、ここは……郊外の森か?」
アーロン 「……店の方に行ってみるか」
────────────
(SE 足音)
アーロン 「…………おい、ウソだろ?」
アーロン 「ここだよな? なんで店がないんだよ……!」
(SE 走る音)
────────────
帝都、平民街、酒場。
(SE 扉を開ける音)
アーロン 「はあ、はあ、……シルヴィアは?」
シルヴィア 「いらっしゃいませ! お好きな席にどうぞ~」
アーロン 「シルヴィア!」
シルヴィア 「はい、なんでしょうか?」
アーロン 「ヤツらを見なかったか?」
シルヴィア 「……ヤツら?」
アーロン 「ああ、アリアたちだよ」
シルヴィア 「アリアって、アリア・メイザースですか?」
アーロン 「メイザース?」
アーロン (あ、そうか。ここは、アルトリウスが創った世界なんだった)
アーロン 「そうだ、アリア・メイザース」
シルヴィア 「知りませんよ。そんな人。城に行けばわかるんじゃないんですか?」
アーロン 「そっか……」
(SE 扉の開閉音)
店主 「知り合い、ですか?」
シルヴィア 「さあ……?」
店主 「それにしても、あの災厄の魔女を探しているとは……」
シルヴィア 「なんか、変な人でしたね」
────────────
帝都、貴族街前の門。
アーロン 「ちっ、見張りがいて通れないか」
レオンハルト 「どうされました?」
アーロン 「ああ、いや、城にいる友人に会いに来たんだけど……」
レオンハルト 「そうですか、では──────」
アーロン 「って、レオ!? 俺だ、アーロンだ!」
レオンハルト 「はい? ……あ、アーロンさん?」
アーロン 「そうだよ。よかった、レオに会えて……!」
レオンハルト 「(小声で)ソフィア殿下が探していた人か……」
アーロン 「なんか言ったか?」
レオンハルト 「少し、待っていてください! 今、報告してきますので!」
(SE レオンハルトが走り出す音)
アーロン 「? あ、おい! ……行っちまった」
アーロン 「待ってろっつても……」
騎士 「おい、そこのお前、何をしている?」
アーロン 「あ? だから……」
騎士 「お前のような者をここに置いておくわけにはいかない。立ち去れ」
アーロン 「はあ? 今のやり取り見てなかったのかよ?」
騎士 「問答無用だ。逆らうというのなら……」
(SE 剣に手をかける音)
アーロン 「ああ、わかったわかった! 立ち去るって!」
騎士 「…………」
アーロン 「あ、レオが来たら、また来るって言っといてくれ」
騎士 「覚えていたらな」
アーロン 「はぁ……」
◇
夜。帝都、平民街と下町をつなぐ通り。
アーロン 「ちっ、夜になっちまったじゃねえか……」
アーロン 「ま、レオには会えたんだ。他のみんなにも、そのうち会えるか」
ジョン 「さあて、今日もここで一杯やろうか……」
(SE 扉の開閉音)
アーロン 「!! ジョン……?」
(SE 走る音)
アーロン 「……!! 親父の店だ……!」
(SE 扉の開閉音)
(SE がやがや)
アーロン 「……めずらしく混んでるな」
エドワード 「……? お、客か。空いてる席に適当に座ってくれー」
アーロン 「親父!」
エドワード 「お? 注文か?」
アーロン 「は? いや、なんの冗談だよ。店、混んでんだから、俺もやるっての」
アーロン (そうか、親父、生きてるのか……。腕もちゃんとある。はっ、久しぶりにカウンターに立ってる親父を見たな)
エドワード 「あ? 客に仕事なんてさせるわけないだろ? おとなしく酒でも飲めって」
アーロン 「は? 客? おいおい、俺のこと、忘れちまったのか?」
エドワード 「うーん、いつもは繁盛してない酒場だから、客の顔は把握してるけど、あんたは初めてだろう? どこかで会ったか?」
アーロン 「…………」
ジョン 「ま、そういうこともあるって。ほら、席に座れって、若いの」
アーロン 「……あ、ああ」
エドワード 「で、注文は?」
アーロン 「……エールを頼む」
エドワード 「はいよ」
(SE がやがや)
ウルフィリア 「たまにはこういうところもいいだろう?」
エスカ 「そうね、こういうアットホームな雰囲気、好きよ」
ウルフィリア 「そりゃよかった」
ルーナ 「……はぁ、私はこんなところ、あまり好きじゃないわ」
ステラ 「ちょっとお姉ちゃん……!」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、厳しいねえ」
エスカ 「いいじゃない、素直で。でも、そういうことは思っていても言っちゃだめよ?」
ルーナ 「わかってるわよ」
ステラ 「もう、わかってないでしょ……。ごめんなさい、こんな姉で」
ウルフィリア 「ああ、いいよいいよ。俺たちがキミたちにお願いして、ついてきてもらってるんだから」
ルーナ 「……だけど、アンタたちも物好きね。貴族の地位を捨ててまで、旅したいなんて」
エスカ 「旅には、それくらいの魅力があるのよ」
ウルフィリア 「そういうこと」
ステラ 「でも、なんで私たちを護衛につけたんですか? ウルフィリアさんは、私たちよりも強いじゃないですか」
ウルフィリア 「旅は道連れ世は情けってね。決してキミたちが可愛いからじゃないよ?」
エスカ 「……本当かしら?」
ウルフィリア 「ほんと、ほんとだって!」
アーロン 「…………おっさん、ルーナ」
ルーナ 「は? アンタ、誰?」
アーロン 「……! そういうことかよ……!」
ルーナ 「はあ? 意味わかんないんだけど」
ウルフィリア 「まあまあ、ルーナちゃん……。どうかしたの? 青年」
アーロン 「……悪い、なんでもない」
(SE アーロンが立ち去る音)
エドワード 「あ、おい、お客さん?! エールは!?」
ウルフィリア 「……ああ、店主、悪いね、俺の連れが。こっちに回してくれる?」
エドワード 「あ、ああ」
◇
帝都、平民街、広場。
(SE 噴水の音)
アーロン 「ちくしょう。そういうことかよ。とことん気味の悪い世界だ。みんな、俺のことを忘れて……」
アーロン 「いや、知らないのか……?」
(SE 足音)
レオンハルト 「……あ、探しましたよ! どこ行ってたんですか?」
アーロン 「レオ……」
レオンハルト 「なんでソフィア殿下もあなたも僕のことをレオって……いや、それは置いておいて」
アーロン 「……?」
レオンハルト 「ソフィア殿下に確認が取れました。明日、ソフィア殿下が会ってくださるそうですよ」
アーロン 「ソフィーが?」
レオンハルト 「……よほど、親しいんですね。殿下を愛称で呼ぶなんて……」
アーロン 「……まあな」
レオンハルト 「では、明日また、貴族街前の門でお会いしましょう」
アーロン 「あ、ああ、わかった」
レオンハルト 「それでは」
(SE レオンハルトが立ち去る音)
アーロン 「……ソフィーは、俺のことを知ってるのか」
◇
翌日。帝都、城、ソフィーの私室。
(SE 扉の開閉音)
レオンハルト 「ソフィア殿下、御客人をお連れしました」
ソフィー 「……! アーロンさん!」
(SE ソフィーが抱きつく音)
レオンハルト 「殿下!?」
アーロン 「お、おい、ソフィー……」
ソフィー 「よかった、本当によかった……!」
レオンハルト 「……僕は、これで失礼します……!」
(SE 扉の開閉音)
ソフィー 「……あ、すみません、急にこんな……」
(SE ソフィーが離れる音)
ソフィー 「こほん、もう、お気づきかもしれませんが、この世界の人たちは、私たちの知っている人じゃないんです」
アーロン 「ああ、レオの他におっさんとルーナに会った」
ソフィー 「おじさんとルーナさんですか!?」
アーロン 「ああ、俺のことを覚えてな……いや、知らない様子だったな」
ソフィー 「そう、ですか……」
アーロン 「やっぱりみんな、俺らのこと、知らないんだな」
ソフィー 「はい、私たちがやってきたことがすべてなかったように……」
アーロン 「ここが、アルトリウスのいう、すべてがうまくいった世界だから、か」
ソフィー 「すべてがうまくいった世界……」
アーロン 「ああ、ルーナは妹と一緒に傭兵をやってたし、おっさんは美人な嫁さんと旅をしてた」
ソフィー 「おじさんが結婚……」
アーロン 「驚きだよな」
ソフィー 「おじさん、胡散臭いですけど、なんだかんだ良い人でしたもんね。胡散臭いですけど」
アーロン 「…………」
ソフィー 「……みんな、幸せそうですよね……」
アーロン 「ああ」
ソフィー 「……この世界のままでも、いいんじゃないでしょうか?」
アーロン 「……まあ、そうだな。俺も、この世界は理想的だと思う」
アーロン (俺の居場所がないってことを除けば、だけどな)
ソフィー 「…………アーロンさん、ずるいこと、言ってもいいですか?」
アーロン 「どうした?」
ソフィー 「……アリアさんも、きっと、アーロンさんのことを忘れちゃってると、思うんです」
アーロン 「……まあ、そうだろうな」
ソフィー 「でしたら、私に振り向いて欲しいです……!」
アーロン 「……………悪い」
ソフィー 「やはは……、わかってました……!」
アーロン 「俺は、アリアが好きだ。いくら時間が経とうと、世界が変わろうと、それは変わらない。だから、ソフィーの気持ちには応えられない。ごめんな」
ソフィー 「いいえ。……そんな、アーロンさんが好きなので」
アーロン 「……ま、でも、ソフィーに記憶があってよかった。じゃなきゃ、俺は天涯孤独だったからな」
(SE 浄化の炎が灯る音)
ソフィー 「え?」
アーロン 「浄化の炎?」
ソフィー 「なんで? まさか……!」
アーロン 「どういうことだよ?!」
ソフィー 「やはは、今の私が私でいられるタイムリミットが来てしまったみたいです」
アーロン 「!」
ソフィー 「浄化の炎は、魂に作用します。たぶん、私の魂だけが、元の世界に戻ってしまうんだと思います」
アーロン 「それじゃあ、ソフィーは……」
ソフィー 「アーロンさん、どうか、アリアさんをお願いします」
アーロン 「アリアを?」
ソフィー 「この世界では、アリアさんは災厄の魔女と呼ばれています。アリアさんだけ、幸せじゃないんです。きっと、この世界をどうにかするヒントがあると思うんです」
アーロン 「……わかった」
(SE 浄化の炎が激しくなる音)
ソフィー 「それと、アーロンさん……! もし、アーロンさんがこの世界を選んでも、それがアーロンさんの本当の意思なら、私はそれを尊重します。だから──────」
ソフィー 「──────さようなら」
(SE 浄化の炎が消える音)
つづく
ソフィー:ハルモニア帝国皇帝の妹。18歳。
ウルフィリア・ベルナルド:旅をするために爵位を手放したおっさん。32歳。
ルーナ:姉妹で傭兵業をしている剣士の女性。20歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。19歳。
エドワード・ストライフ:平民街と下町をつなぐ通りにある酒場を営んでいる男性。55歳。
ステラ:ルーナの妹。天才剣士と名高い。18歳。
エスカ・ベルナルド:旅をしている調香師の女性。ウルフィリアの妻。32歳。
ジョン:エドワードの酒場の常連。44歳。
シルヴィア:平民街で繁盛している酒場の看板娘。17歳。
店主:シルヴィアが働いている酒場のマスター。
帝都郊外の森。
アーロン 「……っ、ここは……郊外の森か?」
アーロン 「……店の方に行ってみるか」
────────────
(SE 足音)
アーロン 「…………おい、ウソだろ?」
アーロン 「ここだよな? なんで店がないんだよ……!」
(SE 走る音)
────────────
帝都、平民街、酒場。
(SE 扉を開ける音)
アーロン 「はあ、はあ、……シルヴィアは?」
シルヴィア 「いらっしゃいませ! お好きな席にどうぞ~」
アーロン 「シルヴィア!」
シルヴィア 「はい、なんでしょうか?」
アーロン 「ヤツらを見なかったか?」
シルヴィア 「……ヤツら?」
アーロン 「ああ、アリアたちだよ」
シルヴィア 「アリアって、アリア・メイザースですか?」
アーロン 「メイザース?」
アーロン (あ、そうか。ここは、アルトリウスが創った世界なんだった)
アーロン 「そうだ、アリア・メイザース」
シルヴィア 「知りませんよ。そんな人。城に行けばわかるんじゃないんですか?」
アーロン 「そっか……」
(SE 扉の開閉音)
店主 「知り合い、ですか?」
シルヴィア 「さあ……?」
店主 「それにしても、あの災厄の魔女を探しているとは……」
シルヴィア 「なんか、変な人でしたね」
────────────
帝都、貴族街前の門。
アーロン 「ちっ、見張りがいて通れないか」
レオンハルト 「どうされました?」
アーロン 「ああ、いや、城にいる友人に会いに来たんだけど……」
レオンハルト 「そうですか、では──────」
アーロン 「って、レオ!? 俺だ、アーロンだ!」
レオンハルト 「はい? ……あ、アーロンさん?」
アーロン 「そうだよ。よかった、レオに会えて……!」
レオンハルト 「(小声で)ソフィア殿下が探していた人か……」
アーロン 「なんか言ったか?」
レオンハルト 「少し、待っていてください! 今、報告してきますので!」
(SE レオンハルトが走り出す音)
アーロン 「? あ、おい! ……行っちまった」
アーロン 「待ってろっつても……」
騎士 「おい、そこのお前、何をしている?」
アーロン 「あ? だから……」
騎士 「お前のような者をここに置いておくわけにはいかない。立ち去れ」
アーロン 「はあ? 今のやり取り見てなかったのかよ?」
騎士 「問答無用だ。逆らうというのなら……」
(SE 剣に手をかける音)
アーロン 「ああ、わかったわかった! 立ち去るって!」
騎士 「…………」
アーロン 「あ、レオが来たら、また来るって言っといてくれ」
騎士 「覚えていたらな」
アーロン 「はぁ……」
◇
夜。帝都、平民街と下町をつなぐ通り。
アーロン 「ちっ、夜になっちまったじゃねえか……」
アーロン 「ま、レオには会えたんだ。他のみんなにも、そのうち会えるか」
ジョン 「さあて、今日もここで一杯やろうか……」
(SE 扉の開閉音)
アーロン 「!! ジョン……?」
(SE 走る音)
アーロン 「……!! 親父の店だ……!」
(SE 扉の開閉音)
(SE がやがや)
アーロン 「……めずらしく混んでるな」
エドワード 「……? お、客か。空いてる席に適当に座ってくれー」
アーロン 「親父!」
エドワード 「お? 注文か?」
アーロン 「は? いや、なんの冗談だよ。店、混んでんだから、俺もやるっての」
アーロン (そうか、親父、生きてるのか……。腕もちゃんとある。はっ、久しぶりにカウンターに立ってる親父を見たな)
エドワード 「あ? 客に仕事なんてさせるわけないだろ? おとなしく酒でも飲めって」
アーロン 「は? 客? おいおい、俺のこと、忘れちまったのか?」
エドワード 「うーん、いつもは繁盛してない酒場だから、客の顔は把握してるけど、あんたは初めてだろう? どこかで会ったか?」
アーロン 「…………」
ジョン 「ま、そういうこともあるって。ほら、席に座れって、若いの」
アーロン 「……あ、ああ」
エドワード 「で、注文は?」
アーロン 「……エールを頼む」
エドワード 「はいよ」
(SE がやがや)
ウルフィリア 「たまにはこういうところもいいだろう?」
エスカ 「そうね、こういうアットホームな雰囲気、好きよ」
ウルフィリア 「そりゃよかった」
ルーナ 「……はぁ、私はこんなところ、あまり好きじゃないわ」
ステラ 「ちょっとお姉ちゃん……!」
ウルフィリア 「ルーナちゃん、厳しいねえ」
エスカ 「いいじゃない、素直で。でも、そういうことは思っていても言っちゃだめよ?」
ルーナ 「わかってるわよ」
ステラ 「もう、わかってないでしょ……。ごめんなさい、こんな姉で」
ウルフィリア 「ああ、いいよいいよ。俺たちがキミたちにお願いして、ついてきてもらってるんだから」
ルーナ 「……だけど、アンタたちも物好きね。貴族の地位を捨ててまで、旅したいなんて」
エスカ 「旅には、それくらいの魅力があるのよ」
ウルフィリア 「そういうこと」
ステラ 「でも、なんで私たちを護衛につけたんですか? ウルフィリアさんは、私たちよりも強いじゃないですか」
ウルフィリア 「旅は道連れ世は情けってね。決してキミたちが可愛いからじゃないよ?」
エスカ 「……本当かしら?」
ウルフィリア 「ほんと、ほんとだって!」
アーロン 「…………おっさん、ルーナ」
ルーナ 「は? アンタ、誰?」
アーロン 「……! そういうことかよ……!」
ルーナ 「はあ? 意味わかんないんだけど」
ウルフィリア 「まあまあ、ルーナちゃん……。どうかしたの? 青年」
アーロン 「……悪い、なんでもない」
(SE アーロンが立ち去る音)
エドワード 「あ、おい、お客さん?! エールは!?」
ウルフィリア 「……ああ、店主、悪いね、俺の連れが。こっちに回してくれる?」
エドワード 「あ、ああ」
◇
帝都、平民街、広場。
(SE 噴水の音)
アーロン 「ちくしょう。そういうことかよ。とことん気味の悪い世界だ。みんな、俺のことを忘れて……」
アーロン 「いや、知らないのか……?」
(SE 足音)
レオンハルト 「……あ、探しましたよ! どこ行ってたんですか?」
アーロン 「レオ……」
レオンハルト 「なんでソフィア殿下もあなたも僕のことをレオって……いや、それは置いておいて」
アーロン 「……?」
レオンハルト 「ソフィア殿下に確認が取れました。明日、ソフィア殿下が会ってくださるそうですよ」
アーロン 「ソフィーが?」
レオンハルト 「……よほど、親しいんですね。殿下を愛称で呼ぶなんて……」
アーロン 「……まあな」
レオンハルト 「では、明日また、貴族街前の門でお会いしましょう」
アーロン 「あ、ああ、わかった」
レオンハルト 「それでは」
(SE レオンハルトが立ち去る音)
アーロン 「……ソフィーは、俺のことを知ってるのか」
◇
翌日。帝都、城、ソフィーの私室。
(SE 扉の開閉音)
レオンハルト 「ソフィア殿下、御客人をお連れしました」
ソフィー 「……! アーロンさん!」
(SE ソフィーが抱きつく音)
レオンハルト 「殿下!?」
アーロン 「お、おい、ソフィー……」
ソフィー 「よかった、本当によかった……!」
レオンハルト 「……僕は、これで失礼します……!」
(SE 扉の開閉音)
ソフィー 「……あ、すみません、急にこんな……」
(SE ソフィーが離れる音)
ソフィー 「こほん、もう、お気づきかもしれませんが、この世界の人たちは、私たちの知っている人じゃないんです」
アーロン 「ああ、レオの他におっさんとルーナに会った」
ソフィー 「おじさんとルーナさんですか!?」
アーロン 「ああ、俺のことを覚えてな……いや、知らない様子だったな」
ソフィー 「そう、ですか……」
アーロン 「やっぱりみんな、俺らのこと、知らないんだな」
ソフィー 「はい、私たちがやってきたことがすべてなかったように……」
アーロン 「ここが、アルトリウスのいう、すべてがうまくいった世界だから、か」
ソフィー 「すべてがうまくいった世界……」
アーロン 「ああ、ルーナは妹と一緒に傭兵をやってたし、おっさんは美人な嫁さんと旅をしてた」
ソフィー 「おじさんが結婚……」
アーロン 「驚きだよな」
ソフィー 「おじさん、胡散臭いですけど、なんだかんだ良い人でしたもんね。胡散臭いですけど」
アーロン 「…………」
ソフィー 「……みんな、幸せそうですよね……」
アーロン 「ああ」
ソフィー 「……この世界のままでも、いいんじゃないでしょうか?」
アーロン 「……まあ、そうだな。俺も、この世界は理想的だと思う」
アーロン (俺の居場所がないってことを除けば、だけどな)
ソフィー 「…………アーロンさん、ずるいこと、言ってもいいですか?」
アーロン 「どうした?」
ソフィー 「……アリアさんも、きっと、アーロンさんのことを忘れちゃってると、思うんです」
アーロン 「……まあ、そうだろうな」
ソフィー 「でしたら、私に振り向いて欲しいです……!」
アーロン 「……………悪い」
ソフィー 「やはは……、わかってました……!」
アーロン 「俺は、アリアが好きだ。いくら時間が経とうと、世界が変わろうと、それは変わらない。だから、ソフィーの気持ちには応えられない。ごめんな」
ソフィー 「いいえ。……そんな、アーロンさんが好きなので」
アーロン 「……ま、でも、ソフィーに記憶があってよかった。じゃなきゃ、俺は天涯孤独だったからな」
(SE 浄化の炎が灯る音)
ソフィー 「え?」
アーロン 「浄化の炎?」
ソフィー 「なんで? まさか……!」
アーロン 「どういうことだよ?!」
ソフィー 「やはは、今の私が私でいられるタイムリミットが来てしまったみたいです」
アーロン 「!」
ソフィー 「浄化の炎は、魂に作用します。たぶん、私の魂だけが、元の世界に戻ってしまうんだと思います」
アーロン 「それじゃあ、ソフィーは……」
ソフィー 「アーロンさん、どうか、アリアさんをお願いします」
アーロン 「アリアを?」
ソフィー 「この世界では、アリアさんは災厄の魔女と呼ばれています。アリアさんだけ、幸せじゃないんです。きっと、この世界をどうにかするヒントがあると思うんです」
アーロン 「……わかった」
(SE 浄化の炎が激しくなる音)
ソフィー 「それと、アーロンさん……! もし、アーロンさんがこの世界を選んでも、それがアーロンさんの本当の意思なら、私はそれを尊重します。だから──────」
ソフィー 「──────さようなら」
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