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Ⅲ from A to A
第22.5話 世界の狭間で
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アーロン・ストライフ:魔法使いの助手兼用心棒をやっている青年。21歳。
ソフィー:ハルモニア帝国第2皇女、ソフィア・リ・ハルモニア。18歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。19歳。
ソフィア:ソフィーを模して作られたホムンクルス。
光に包まれたアーロンは、この世のどことも知れないそこで、立っているでもなく座ってるでもなく、ただその場を漂っていた。不思議な光に包まれたそこは、どちらが上で、どちらが下かなんていう概念はなかった。
アーロン 「…………っ、ここは?」
ソフィア 「ここは、世界と世界の狭間にある空間です」
アーロン 「……この声、ソフィー? いや、ホムンクルスの方か……?」
ソフィア 「私は、貴方がいた世界で作られたすべてのソフィア・リ・ハルモニアを模したホムンクルスの意識を統合した存在です」
アーロン 「ソフィーのホムンクルスの意識を統合した存在?」
ソフィア 「はい、先の世界創造で魔力に変換された私たちは、精神体だけになり、いわば神と同じような存在となったのです」
アーロン 「つまり、ホムンクルスたちの幽霊が化けて出てきたってことか?」
ソフィア 「そのようなものと捉えていただいて結構です」
アーロン 「……それで、他のやつらは? 俺だけか?」
ソフィア 「貴方以外の人はもう、あちらの世界に行ってしまったようです」
アーロン 「そうか……」
ソフィア 「そこで……、アーロンさん、頼みたいことがあるんです」
アーロン 「頼みたいこと?」
ソフィア 「はい、私たちの世界を取り戻してほしいんです」
アーロン 「取り戻す?」
ソフィア 「はい、通常、世界はひとつしか存在できないのですが、今回は、アルトリウスの魔法によって世界が分岐したかたちになるので、まだ私たちの世界は、存在しているんです。しかし、その世界もいつまで存在できるか……」
アーロン 「まだ、チャンスはあるってことか」
ソフィア 「そういうことです」
アーロン 「だけど、取り戻すっつっても、何をすればいいんだよ?」
ソフィア 「それは……、すみません、私では、なんとも……」
アーロン 「そうか……」
ソフィア 「すみません」
アーロン 「謝るなって。チャンスがあるってことがわかっただけでもいいさ」
ソフィア 「……ふふ、きっとオリジナルは、貴方のそういうところが好きなのでしょうね」
アーロン 「…………」
ソフィア 「アーロンさん、オリジナルには、ちゃんと返事をしてあげてくださいね」
アーロン 「……ああ」
(SE 光が漏れだす音)
ソフィア 「……そろそろこの世界の狭間にいられる時間も終わりですね」
アーロン 「新世界、か」
ソフィア 「どうか、私たちの世界を、お願いします」
アーロン 「ああ、わかった」
ソフィア 「新世界に行ったら、オリジナルに会ってみてください。もしかしたら、糸口が見つかるかもしれません」
アーロン 「ソフィーに?」
(SE 光が増す音)
ソフィア 「はい、オリジナルには、浄化の炎があるので──────」
◇
帝都、城内、廊下。
ソフィー 「……う、ここは、城? というかこの服……」
(SE ドレスの裾をつまむ音)
(SE 足音)
ソフィー 「……あ、あそこにいるの、レオくんだ。よかった……!」
(SE ドレス姿で走る音)
ソフィー 「レオくーん!」
レオンハルト 「? ソフィア殿下、何か僕にご用ですか?」
ソフィー 「レオくん? なんか、雰囲気違うような……」
レオンハルト 「……そうでしょうか?」
ソフィー 「まあいいや。レオくん、アーロンさんたちを見なかった?」
レオンハルト 「……アーロンさん?」
ソフィー 「うん、見てない?」
レオンハルト 「申し訳ありません。アーロンという方に、心当たりがないのですが……」
ソフィー 「え? ちょっと、冗談きついよ、レオくん」
レオンハルト 「……申し訳ありません。では、僕は失礼します」
ソフィー 「あ、うん、ごめんね、引き止めて……」
(SE レオンハルトが立ち去る音)
ソフィー 「……どういう、こと……?」
つづく
ソフィー:ハルモニア帝国第2皇女、ソフィア・リ・ハルモニア。18歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団で隊長を務める青年。19歳。
ソフィア:ソフィーを模して作られたホムンクルス。
光に包まれたアーロンは、この世のどことも知れないそこで、立っているでもなく座ってるでもなく、ただその場を漂っていた。不思議な光に包まれたそこは、どちらが上で、どちらが下かなんていう概念はなかった。
アーロン 「…………っ、ここは?」
ソフィア 「ここは、世界と世界の狭間にある空間です」
アーロン 「……この声、ソフィー? いや、ホムンクルスの方か……?」
ソフィア 「私は、貴方がいた世界で作られたすべてのソフィア・リ・ハルモニアを模したホムンクルスの意識を統合した存在です」
アーロン 「ソフィーのホムンクルスの意識を統合した存在?」
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ソフィア 「そこで……、アーロンさん、頼みたいことがあるんです」
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ソフィア 「はい、私たちの世界を取り戻してほしいんです」
アーロン 「取り戻す?」
ソフィア 「はい、通常、世界はひとつしか存在できないのですが、今回は、アルトリウスの魔法によって世界が分岐したかたちになるので、まだ私たちの世界は、存在しているんです。しかし、その世界もいつまで存在できるか……」
アーロン 「まだ、チャンスはあるってことか」
ソフィア 「そういうことです」
アーロン 「だけど、取り戻すっつっても、何をすればいいんだよ?」
ソフィア 「それは……、すみません、私では、なんとも……」
アーロン 「そうか……」
ソフィア 「すみません」
アーロン 「謝るなって。チャンスがあるってことがわかっただけでもいいさ」
ソフィア 「……ふふ、きっとオリジナルは、貴方のそういうところが好きなのでしょうね」
アーロン 「…………」
ソフィア 「アーロンさん、オリジナルには、ちゃんと返事をしてあげてくださいね」
アーロン 「……ああ」
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ソフィア 「……そろそろこの世界の狭間にいられる時間も終わりですね」
アーロン 「新世界、か」
ソフィア 「どうか、私たちの世界を、お願いします」
アーロン 「ああ、わかった」
ソフィア 「新世界に行ったら、オリジナルに会ってみてください。もしかしたら、糸口が見つかるかもしれません」
アーロン 「ソフィーに?」
(SE 光が増す音)
ソフィア 「はい、オリジナルには、浄化の炎があるので──────」
◇
帝都、城内、廊下。
ソフィー 「……う、ここは、城? というかこの服……」
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ソフィー 「……あ、あそこにいるの、レオくんだ。よかった……!」
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ソフィー 「え? ちょっと、冗談きついよ、レオくん」
レオンハルト 「……申し訳ありません。では、僕は失礼します」
ソフィー 「あ、うん、ごめんね、引き止めて……」
(SE レオンハルトが立ち去る音)
ソフィー 「……どういう、こと……?」
つづく
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