colorful〜rainbow stories〜

宮来らいと

文字の大きさ
上 下
30 / 31
第1部 古金ミカ編

第3章 山吹色の夕焼けで (古金ミカ編) 後編

しおりを挟む
真瀬莉緒
「それじゃあ行きましょう。」

古金ミカ
「はい。」

僕たちは中庭に出る。中庭には星野さんと来川さんがいた。

古金ミカ
「星野さん。来川さん。どうされましたか?」

星野シキア
「ええ、今はどうしたらあなたを救えるか考えていたの。」

古金ミカ
「私を……?」

来川ナナ
「何もできないかもしれないけど、私たちはあなたのことを待っているから……!」

古金ミカ
「…………。」

星野シキア
「莉緒……あとはよろしくね。」

来川ナナ
「頑張ってね。」

そう言うと星野さんと来川さんは去っていった。

真瀬莉緒
「散歩の続きをしましょう。」

古金ミカ
「はい。」

散歩を続けると、今度は姉さんがいた。

真瀬志奈
「ミカ。元気?」

古金ミカ
「はい。私は元気ですが……?」

真瀬志奈
「ミカね。私は待つことしかできない。これを乗り越えれるのはミカ次第。私はミカを信じているからね。莉緒……頼むわよ。」

姉さんもそう言うと去っていった。

中庭の階段近くに行くと今度は月川さんと夜坂さんに会った。

月川タクト
「やあ、古金さん。こうしてお話するのは初めてだね。」

古金ミカ
「はい。そうですね。」

夜坂ケント
「俺たちは古金とはあまり接点はないが、柊木がいつも心配していてな……。俺たちの友人が心配しているんだ。こっちも応援しないとな。」

月川タクト
「そうゆうこと。古金さん。アイもそうだけど、僕たちも元の古金さんに戻るのを楽しみにしているからね。」

夜坂ケント
「ああ……。頑張れよ。」

そして2人は去っていった。

古金ミカ
「先程から皆さんは何を考えているのでしょうか?」

真瀬莉緒
「さぁ……?…………気持ちはわからなくもないですけどね。」

そう言って散歩を続けた。気がつけば遠いところまで散歩をしていた。辺りは山の上の展望台だった。

そこには柊木さんがいた。

柊木アイ
「ミカ……。」

古金ミカ
「柊木さんも同じことを言うのですか?」

柊木アイ
「…………。」

真瀬莉緒
「違うよ。アイくんはそんなことはしない。」

柊木アイ
「莉緒くん……!」

真瀬莉緒
「古金さん……いや、ミカさん。僕はどんなミカさんでも構わない。他人に性格をどうこう言われる筋合いなんてないからね。」

古金ミカ
「…………。」

真瀬莉緒
「それでね。僕がミカさんと一緒に作ってきた曲を聞いて欲しいんだ。と言っても僕が少しアレンジを加えたけれど……」

古金ミカ
「…………。」

真瀬莉緒
「それで、この曲を聞いてミカさんにどうしてもらうか決めて欲しいんだ。」

古金ミカ
「……わかりました。」

真瀬莉緒
「ありがとう。じゃあ……弾くね。」

僕はミカさんへの思いを乗せて曲を弾いていく……


古金ミカ
「これが……真瀬さんの……思い……。」

僕の思いは少なからず届いた様子だった。

真瀬莉緒
「ミカさん。これが僕たちが作ってきた曲です。この曲を生かすのも殺すのもミカさん次第です。」

古金ミカ
「……私が……?」

真瀬莉緒
「今決めなくてもいい。ミカさん、いつでも待っています。」

古金ミカ
「……私は……!私は……!」

真瀬莉緒
「ミカさん……。」

古金ミカ
「へへーんだ!!もちろん莉緒っちと一緒に作るんだもんねー!!」

真瀬莉緒
「やった……!!」

柊木アイ
「よし!!」

良かった……。前のミカさんに戻った……。
ホッとしたのか、肩の荷がおり、そのまま地べたに座り込んでしまった。その時に辺りを見ると既に夕方だった。展望台から見えるのは山吹色のきれいな夕日だった……。僕を見ていたミカさんは隣に来て地べたに座った。

古金ミカ
「莉緒っち……ありがとうね。」

真瀬莉緒
「…………うん。」

古金ミカ
「私……父親の暴力にも暴言にも負けないから。……それと父親から命令された曲だけど、それは作る。でもそれは命令じゃなく、莉緒との約束として作りたいんだ。」

真瀬莉緒
「そっか……じゃあ、明日からたくさん練習しよう!」

古金ミカ
「もっちろーん!いっぱい練習するんだから!」

再び光を取り戻したミカさんと決意をあらわにした。

そして、それを見ていたアイくんが何かを言いたそうな様子が見られた。

柊木アイ
「ちなみに……莉緒くんたちは課題はできているの?」

…………忘れていた。元々は6月を予定していたけど、例のモンスター事件の件で3月になった。しかし、今回のミカさんの件で、課題はそっちのけになっていた。

古金ミカ
「それなら問題ないわよ!この曲を課題として提出するの。それなら文句ないでしょう?」

真瀬莉緒
「僕も同じことを考えていたよ。それで行こう!」

古金ミカ
「おー!!」

柊木アイ
「……………………。」


六郭星学園 Kクラス教室


翌日……ミカさんの様子が戻ったことにクラスメイトたちはひたすら喜んでくれた。

星野シキア
「心配したのよ!……もう、本当に良かった。」

来川ナナ
「ミカ……おかえり。」

星野さんも来川さんも喜びを隠せなかった。

笛花奏
「さあ、古金さんも戻ってきたので、これからも楽しく学園生活を楽しみましょう!」

クラスメイトはそれに「はい。」と答える。本当に良かった……と思った。

柿本瑛久
「うわぁぁぁ!!やめてくださーい!!」

柿本先生の声が聞こえる。その瞬間、Kクラスの教室のドアが開くと……ミカさんの父親がいた。

古金ミカの父親
「貴様……!このワシを欺きやがって……!!」

そう言うとドアの近くにいた女子生徒の腕を掴み、喉元にスタンガンを近づける。周りのクラスメイトたちも驚き、ミカさんの父親の近くを離れた。

古金ミカ
「な……人質を取る気!?最低ね!」

古金ミカの父親
「さあ、この女がどうなってもいいのか!」

女子生徒A
「いやぁ……!助けて!」

笛花奏
「やめてください!それ以上やるなら警察を呼びますよ!」

バーン!!

笛花奏
「なっ……。くっ……。」

真瀬莉緒
「け、拳銃!?そんな……いくらなんでも……!」

ミカさんの父親は拳銃を持っていた。その拳銃の弾が笛花先生の肩をかすめ、笛花先生は肩から出血をしていた。

来川ナナ
「せ、先生!大丈夫ですか!?」

笛花奏
「うぅ……。」

古金ミカ
「わ、わかったから!そっちに行くからその子を離して!」

古金ミカの父親
「だったら屋上に来い!話はそこからだ!」

ミカさんの父親は人質にとった子を引っ張って屋上の方へ行った。

古金ミカ
「なんて卑怯なの……!?あいつ……!」

今まで色々な性格を見てきたがミカさんのこの怒りの様子は初めてみた……ただ、気持ちはかなりわかる。この状況で怒りを露わにしない方が不思議だ。

来川ナナ
「笛花先生のことは安心して。救急車を呼んだから。急いで屋上に向かって!」

古金ミカ
「わかったわ。先生のことをお願い!」

そう言い残し、ミカさんは屋上へと、走り出した。


六郭星学園 屋上


屋上にはミカさんの父親と、人質にされた女子生徒がいた。

古金ミカの父親
「来たな……。こっちへ来い……!」

古金ミカ
「…………はい。」

ミカさんは言われるがままに父親の方へ向かう。そしてそれと同時にクラスメイトの女子は背中を押されて、解放された。

女子生徒A
「いやぁぁ!」

クラスメイトの子は僕に抱きついた。よっぽど恐怖を感じたんだ。無理もない。

真瀬莉緒
「……大丈夫ですか?急いで先生方の方へ行ってください。」

女子生徒A
「…………はい。」

クラスメイトの子は急いで先生方の方へ戻って行った。

古金ミカの父親
「貴様……どういうことかわかっているな……!」

古金ミカ
「ええ、わかっているわよ。」

真瀬莉緒
「…………。」

僕はミカさんが親と話しているところをただ見ているだけだった。

以前のミカさんとは違い、親に対して強く言い放つ。

古金ミカ
「私は負けない……あなたになんか負けない。私はもう逃げずに戦う……!あなたなんか親でもなんでもない!!」

古金ミカの父親
「貴様…………!くたばれえぇぇぇぇ!」

ミカさんの父親はミカさんに向かって銃を構える……!

危ない…………!

助けないと……!そう思った時すでに遅く、銃声が鳴り響く……。

僕の後ろから……

古金ミカの父親
「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

ミカさんの父親は右脇腹を撃たれていた。

後ろを振り向くと、そこにはアイくんと見たことないおじさんが立っていた。

柊木アイ
「ミカ!大丈夫!?」

古金ミカ
「うん。大丈夫だけど……まだあいつが起き上がるとまずいからここを離れましょう!」

柊木アイ
「そうだね。行こう!莉緒くんも!」

真瀬莉緒
「う……うん。」


六郭星学園 Kクラス教室

ひとまずKクラスに戻ってきた。それにしてもさっきのおじさんは一体……?

柊木アイ
「あの人は警察の中井雄也(なかい ゆうや)さん。ミカのお父さんを連行するために呼んだんだ。」

真瀬莉緒
「警察……?それじゃあ……ミカさんは!」

柊木アイ
「うん。助かるよ。これからも明るい性格のままだよ。……きっとね。」

それを聞いて、ミカさんを見る。

古金ミカ
「…………イェーイ!!これでしばらくは安泰ですな!」

ミカさんはとても喜んでいた。それを見て僕はホッと肩の荷が降りた。

肩の荷が降りたと同時に、警察の中井さんがKクラスの教室に入ってきた。

中井雄也
「やつは逮捕した。いずれは柊木くんの母親も連行するがそのあたりは大丈夫か?」

柊木アイ
「大丈夫です……。もう僕も決意をしました。母親のやっていたことは許せませんので。」

中井雄也
「わかったよ。……では取り調べがあるから戻るよ……。」

そう言うと中井さんは学園を後にした。

古金ミカ
「アイ!ようやく理解したのね!」

柊木アイ
「うん。執事の東島さんに聞いたよ。許せないね。……あんなことをするなんて……。」

古金ミカ
「そう……。それでいいわ。……ありがとう。」

柊木アイ
「……で、ミカはこれからどうするの?」

古金ミカ
「ええ、複雑だけど跡を継ぐわ。これから古金グループは私が支えるの。」

柊木アイ
「……まあ、僕も柊木家を支えないとだからね……お互いに頑張ろうか。」

古金ミカ
「もっちろーん!でもいつでも合併待ってまーす!」

柊木アイ
「ははっ!ミカったら!」

真瀬莉緒
「…………。」

良かった……これでミカさんも元気になった。

その後、来川さんから連絡があり、笛花先生も命に別状もなく、すぐに退院できそうと言われたそうだ。本当に良かった……。

何もかも障壁がなくなった僕たちは課題である作曲を再び取り掛かる……!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました

Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。 どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も… これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない… そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが… 5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

処理中です...