24 / 31
第1部 星野シキア編
第4章 若竹色の楽譜 (星野シキア編) 後編
しおりを挟む
数日後……。
オーディション会場 会場前
真瀬莉緒
「ここが……オーディション会場……シキアさん……大丈夫ですか?」
星野シキア
「ええ……今のところは。」
真瀬莉緒
「良かった……無理しないでくださいね。」
星野シキア
「ええ、でも……莉緒……あなたがいるなら大丈夫よ……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……?」
星野シキア
「莉緒……覚えてる……?私が夢を持つことをやめたことを……。」
真瀬莉緒
「ありましたね……。」
星野シキア
「でもね……今は、莉緒がいるから私は夢を持てるようになった。好きな声優さんに曲を作りたい。そんな夢を叶えたいと、そう思ったの。」
真瀬莉緒
「…………。」
星野シキア
「そして今日はその大切なオーディション。楽譜の色は若竹色。この楽譜は私が夢を叶えたい時に使うための楽譜なの。」
真瀬莉緒
「え……、それって……。」
星野シキア
「莉緒……ありがとう。私に夢を大切なものと教えてくれて……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……!」
星野シキア
「行きましょう!梶木になんか負けないから!」
真瀬莉緒
「はい!」
僕たちはオーディション会場の中に入っていった。
オーディション会場内
僕たちは受付を終えた後、控え室で待機し、名前が呼ばれて面接室のドアのベンチで待っていた。
星野シキア
「もうすぐね……。」
真瀬莉緒
「はい……。」
僕たちの出番は次だった。今か今かと前の人のオーディションが終わるのを待っている。
真瀬莉緒
「大丈夫ですよ……。きっと。」
星野シキア
「ええ……今度こそは……。」
真瀬莉緒
「はい……今度……」
ガチャとドアの開ける音が聞こえ、振り向くと前の人が出てきた……ある男と一緒に……。
??
「ほう……懲りずにまた来たのかね。」
星野シキア
「は……はあ……!」
真瀬莉緒
「あなたは……!」
目の前にいたのは梶木源蔵だった。何をしに来たかは僕らには既にわかりきっていた。
梶木源蔵
「こんなもの見なくてもわかるんだよ。ワシが正しいんだ。ワシが。」
そう言って、シキアさんの若竹色の楽譜を奪いとる。
星野シキア
「そ、それは……!!やめてください……!!」
梶木源蔵
「ふん!こんなもの……破り捨ててやるわ!!」
破り捨てられる……そう思った時、1つの手が梶木の腕を掴む。
梶木源蔵
「な……!?」
真瀬莉緒
「あなたは……!」
梶木の腕を掴んだのはシキアさんの憧れている声優さんだった。
声優さんは梶木から若竹色の楽譜を取り、警備員を呼ぶ。
梶木源蔵
「待ってくれ!!ワシはただ、ワシはただ……ストレスを発散させたくて……!!」
警備員に羽交い締めにされながら連れていかれる梶木。去り際に言った言い訳も酷い。とんでもない奴だ。
星野シキア
「あ……あの……。」
声優さんは梶木から取った若竹色の楽譜を手渡した。
星野シキア
「ありがとう……ございます。」
そして声優さんは立てるかどうかを聞き、シキアさんに手を差し出した。
星野シキア
「ありがとうございます……。」
シキアさんは少しだけ動揺しながらも、声優さんに感謝をして、面接室へ入っていった。それにつれて僕も面接室に入る。
真瀬莉緒
「失礼します。」
面接室には声優さんとほかに審査員が4人。1つ空席があり、おそらくはそこが梶木の席だろう。
審査員A
「それでは始めさせていただく前に……」
声優さん以外の審査員全員が立ち上がる。
審査員A
「大変申し訳ありませんでした!」
審査員B
「梶木さんのことで色々とご不快な思いをさせてしまい大変申し訳ありませんでした!」
そう言って審査員たちは謝罪をする。
僕とシキアさんはさすがにそれに止めに入り、落ち着いたところで今回の作曲についてのコンセプトなどを話していった。
星野シキア
「……そして、完成したのがこの曲です。1度聴いてみてください。」
審査員C
「はい。ではこちらの音源をお借りいたします。」
審査員の人はそう言ってラジカセにCDを入れた。
そして……曲が流れる……。
曲が流れ、声優さんは若竹色の楽譜を見ながら聞いていた。
…………。声優さんは何も言わない。何かを考えている様子だ。
考え終わると審査員に耳打ちをする。
審査員D
「申し訳ありませんがもう1度流させていただきます。」
もう1度……?
その声優さんはこの曲を何度も何度も繰り返して聴く……審査員たちも声優さんの表情を見て何かを確信した。
審査員D
「こちらの曲には歌詞はありますでしょうか?」
歌詞……そういえば作ってなかった様な……
星野シキア
「こちらにあります。」
真瀬莉緒
「え……?」
僕が知らない間に作っていたのだろうか。シキアさんは何の迷いもなく歌詞を審査員に渡した。
シキアさん……いつの間に作っていたのだろう……?
………………。
声優さんは音楽も止めて、ただただひたすらに歌詞の書いた紙を読み続ける……。
それがようやく終わり、審査員たちを見て頷いた。
それに審査員もうんと頷く。
審査員B
「ありがとうございました。控室にてお待ちください。」
真瀬莉緒
「わかりました。失礼いたします。」
星野シキア
「失礼いたします。」
僕たちは面接室を後にし、控室にて結果を待つのみだった。
オーディション会場 控室
控室にはオーディションに参加している人たちがいた。みなさんずっと考え込んだり、祈ったりを繰り返している。
真瀬莉緒
「…………受かるといいですね。」
星野シキア
「ええ…………ねえ、莉緒。」
真瀬莉緒
「はい?」
星野シキア
「もしも合格したら……私、莉緒に言いたいことがあるの。」
真瀬莉緒
「僕に言いたいこと……?」
星野シキア
「ええ、でも受かるかどうか……不安だわ……。」
…………そう、不合格の可能性も高い。あとは本当に祈るばかりでしかない。
審査員A
「失礼いたします。」
先ほどの審査員がやってきた。
審査員A
「結果の方が出ましたので発表させていただきます。」
来た……。僕らはできる限りのことをやった。悔いはない……それでもやっぱりドキドキが止まらない……
ああ……どうか……シキアさんの夢を叶えてください……!!お願いします……!
審査員B
「結果は………………。」
真瀬莉緒
「………………。」
星野シキア
「………………。」
審査員B
「星野様!真瀬様!おめでとうございます!あなた方の曲に決まりました!」
星野シキア
「…………!……やったわ!!」
シキアさんは嬉しそうにガッツポーズをする。こんなにも嬉しそうなシキアさんを見たのは初めてかもしれない。
他のオーディション参加者も拍手をしていた。
参加者A
「おめでとうございます!あなた方の作った曲を楽しみにしています!」
参加者B
「お2人の曲はどんな曲なのか……楽しみにしています!」
星野シキア
「……ありがとうございます!とても……嬉しいです!」
審査員D
「こちらの曲はテレビ番組で生中継で歌います。日時が決まり次第連絡させていただきます!本日はありがとうございました!」
よかった……本当によかった……。僕たちは安堵し、オーディション会場を後にした。
六郭星学園 Kクラス教室
古金ミカ
「それでは……カンパーイ!!」
クラスメイト
「カンパーイ!!」
教室に戻るとクラスメイトたちに今回の結果を報告すると全員が喜びの声を上げる。
そしてお祝いパーティーをすることになり、今に至った。
クラスメイトたちは盛り上がり、のちにEクラスの姉さんたちも合流し、労いの言葉をもらった。
真瀬志奈
「莉緒!シキア!おめでとう!」
柊木アイ
「自分のことの様に嬉しいよ!本当におめでとう!」
夜坂ケント
「……おめでとう。」
星野シキア
「……ありがとう。みんな。それと……タクト。」
月川タクト
「ああ……。」
星野シキア
「ごめんなさい……そして、ありがとう……!!」
月川タクト
「……ああ!本当に良かった!おめでとう!」
言葉は少なくとも今まで言ってきたことに対しての謝罪と感謝がこもっている。シキアさんも夢を叶えたんだ。叶えられることができたんだ。タクトくんもそれに優しく受け入れてくれた。
月川タクト
「これからは夢を叶えていくんだろ?」
星野シキア
「もちろんよ。夢くらいなんだって叶えてやるわよ!」
シキアさんもようやく前向きになれた。これで良いんだ……。
星野シキア
「でも……こればかりは莉緒のおかげでもある。莉緒……あなたがいなければ私、あの時は立ち直れなかったかもしれない。」
真瀬莉緒
「シキアさん……。」
星野シキア
「莉緒……これからもよろしく!」
真瀬莉緒
「はい!」
古金ミカ
「ほいほい!湿っぽくならないの!パーティーなんだからもっと盛り上がらないと!!」
その後も楽しい時間が続き……数日後……
六郭星学園 大講堂
楽しい時間が終わり、いよいよ卒業式。
SクラスからKクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。
笛花奏
「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」
卒業式が始まる。1年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。
1人1人名前が呼ばれていく。
笛花奏
「真瀬莉緒」
真瀬莉緒
「はい。」
始めに男子が呼ばれる……そして、みんなの名前もそれぞれ呼ばれる。
笛花奏
「古金ミカ」
古金ミカ
「は~い。」
笛花奏
「星野シキア」
星野シキア
「はい。」
笛花奏
「来川ナナ」
来川ナナ
「はい。」
そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……
笛花奏
「以上で卒業式を終了いたします。」
そして、あっという間に卒業式が終わる。
本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。
ただ……唯一の救いは……。
古金ミカ
「うほー!みんな同じ大学に通うんだね!」
来川ナナ
「ええ、まさかテスト上位の50人全員が同じ大学に通うことになるなんて……。」
星野シキア
「現実は小説より奇なり……ね。」
そう、みんな一緒の大学。なのでほとんどは別れの挨拶などはなかった。おまけに姉さんたちも同じ大学だ。
来川ナナ
「あ、それより、今度シキアたちの曲が生中継で声優さんが歌ってくれるんでしょ?わくわくで楽しみ!」
古金ミカ
「お!そうなの!?いついつ?」
星野シキア
「ああ、それね……確かね……今月の土曜日の19時からだったわ。」
古金ミカ
「おお!それならみんなで見ようじゃないか!」
来川ナナ
「ええ、より一層楽しみだわ!」
星野シキア
「ええ、私はいいけど……莉緒は……?」
みんなで見るのか……せっかくなら多い方が良いな。
真瀬莉緒
「良いと思いますよ。みなさんで見ましょう!」
古金ミカ
「イェーイ!!」
星野シキア
「…………。」
六郭星学園 志奈・シキアの部屋
声優さんが僕たちの曲を披露する当日。僕たちはシキアさんの部屋にいた。
来川ナナ
「いよいよね。」
古金ミカ
「うひょー!楽しみだー!」
星野シキア
「…………。」
全員で見ようとなって以来、シキアさんはあまり良い表情をしていない。
真瀬莉緒
「あの……シキアさ……。」
来川ナナ
「莉緒くん!始まるよ!」
MC
「皆さまお待たせ致しました!本日はオーディションで応募し、見事に採用された曲を歌います!それではどうぞ……!!」
女性声優
「みなさん……この曲は彼女にとって大切な曲です。彼女の想いを……聞いてください……!」
そう言うと曲が流れる……彼女の想いとは……シキアさんのことだろうか。
僕は……ただその曲を聴いてみる…………。
曲が終わる。その曲を聴いた僕は……一筋の涙が出ていた……
真瀬莉緒
「あれ……僕……泣いてる……?」
星野シキア
「莉緒……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……これって……。」
星野シキア
「来て!!」
真瀬莉緒
「えっ……あっ……!」
そう大声で言うとシキアさんは僕の手を掴み裏庭へと連れて行った。
六郭星学園 裏庭
ここに来るのは3度目になる。シキアさんはどうして……いや、その前にあの歌詞……もしかして……。
真瀬莉緒
「シキアさん……あの……。」
星野シキア
「ねえ、莉緒。私のことをさん付けしないで……あと……タメ口でしゃべって……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……。」
やっぱり……僕のことを……今まで気づけなかった自分に嫌気が差す……
そう思っているとすぐにシキアさんがこう言う。
星野シキア
「私はあなたに救われた……莉緒……これからも年を老いたとしてもずっと……ずっと……そばに居てほしいです……。」
……ちょっと素直じゃないところがシキアさんっぽい。
……でも考えは一緒。僕はこれに答えないと。
真瀬莉緒
「今まで……ごめん。……シキアさん。」
星野シキア
「いいの……。それで……莉緒……。」
真瀬莉緒
「はい……。よろしくお願いします。
………………シキア。」
星野シキア
「ええ……莉緒……。」
僕たちはただただひたすらに見つめ合う…………
虹谷アヤ
「彼女は違うのね……すると……他の誰かね……他を当たりましょう。」
星野シキア編 完
オーディション会場 会場前
真瀬莉緒
「ここが……オーディション会場……シキアさん……大丈夫ですか?」
星野シキア
「ええ……今のところは。」
真瀬莉緒
「良かった……無理しないでくださいね。」
星野シキア
「ええ、でも……莉緒……あなたがいるなら大丈夫よ……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……?」
星野シキア
「莉緒……覚えてる……?私が夢を持つことをやめたことを……。」
真瀬莉緒
「ありましたね……。」
星野シキア
「でもね……今は、莉緒がいるから私は夢を持てるようになった。好きな声優さんに曲を作りたい。そんな夢を叶えたいと、そう思ったの。」
真瀬莉緒
「…………。」
星野シキア
「そして今日はその大切なオーディション。楽譜の色は若竹色。この楽譜は私が夢を叶えたい時に使うための楽譜なの。」
真瀬莉緒
「え……、それって……。」
星野シキア
「莉緒……ありがとう。私に夢を大切なものと教えてくれて……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……!」
星野シキア
「行きましょう!梶木になんか負けないから!」
真瀬莉緒
「はい!」
僕たちはオーディション会場の中に入っていった。
オーディション会場内
僕たちは受付を終えた後、控え室で待機し、名前が呼ばれて面接室のドアのベンチで待っていた。
星野シキア
「もうすぐね……。」
真瀬莉緒
「はい……。」
僕たちの出番は次だった。今か今かと前の人のオーディションが終わるのを待っている。
真瀬莉緒
「大丈夫ですよ……。きっと。」
星野シキア
「ええ……今度こそは……。」
真瀬莉緒
「はい……今度……」
ガチャとドアの開ける音が聞こえ、振り向くと前の人が出てきた……ある男と一緒に……。
??
「ほう……懲りずにまた来たのかね。」
星野シキア
「は……はあ……!」
真瀬莉緒
「あなたは……!」
目の前にいたのは梶木源蔵だった。何をしに来たかは僕らには既にわかりきっていた。
梶木源蔵
「こんなもの見なくてもわかるんだよ。ワシが正しいんだ。ワシが。」
そう言って、シキアさんの若竹色の楽譜を奪いとる。
星野シキア
「そ、それは……!!やめてください……!!」
梶木源蔵
「ふん!こんなもの……破り捨ててやるわ!!」
破り捨てられる……そう思った時、1つの手が梶木の腕を掴む。
梶木源蔵
「な……!?」
真瀬莉緒
「あなたは……!」
梶木の腕を掴んだのはシキアさんの憧れている声優さんだった。
声優さんは梶木から若竹色の楽譜を取り、警備員を呼ぶ。
梶木源蔵
「待ってくれ!!ワシはただ、ワシはただ……ストレスを発散させたくて……!!」
警備員に羽交い締めにされながら連れていかれる梶木。去り際に言った言い訳も酷い。とんでもない奴だ。
星野シキア
「あ……あの……。」
声優さんは梶木から取った若竹色の楽譜を手渡した。
星野シキア
「ありがとう……ございます。」
そして声優さんは立てるかどうかを聞き、シキアさんに手を差し出した。
星野シキア
「ありがとうございます……。」
シキアさんは少しだけ動揺しながらも、声優さんに感謝をして、面接室へ入っていった。それにつれて僕も面接室に入る。
真瀬莉緒
「失礼します。」
面接室には声優さんとほかに審査員が4人。1つ空席があり、おそらくはそこが梶木の席だろう。
審査員A
「それでは始めさせていただく前に……」
声優さん以外の審査員全員が立ち上がる。
審査員A
「大変申し訳ありませんでした!」
審査員B
「梶木さんのことで色々とご不快な思いをさせてしまい大変申し訳ありませんでした!」
そう言って審査員たちは謝罪をする。
僕とシキアさんはさすがにそれに止めに入り、落ち着いたところで今回の作曲についてのコンセプトなどを話していった。
星野シキア
「……そして、完成したのがこの曲です。1度聴いてみてください。」
審査員C
「はい。ではこちらの音源をお借りいたします。」
審査員の人はそう言ってラジカセにCDを入れた。
そして……曲が流れる……。
曲が流れ、声優さんは若竹色の楽譜を見ながら聞いていた。
…………。声優さんは何も言わない。何かを考えている様子だ。
考え終わると審査員に耳打ちをする。
審査員D
「申し訳ありませんがもう1度流させていただきます。」
もう1度……?
その声優さんはこの曲を何度も何度も繰り返して聴く……審査員たちも声優さんの表情を見て何かを確信した。
審査員D
「こちらの曲には歌詞はありますでしょうか?」
歌詞……そういえば作ってなかった様な……
星野シキア
「こちらにあります。」
真瀬莉緒
「え……?」
僕が知らない間に作っていたのだろうか。シキアさんは何の迷いもなく歌詞を審査員に渡した。
シキアさん……いつの間に作っていたのだろう……?
………………。
声優さんは音楽も止めて、ただただひたすらに歌詞の書いた紙を読み続ける……。
それがようやく終わり、審査員たちを見て頷いた。
それに審査員もうんと頷く。
審査員B
「ありがとうございました。控室にてお待ちください。」
真瀬莉緒
「わかりました。失礼いたします。」
星野シキア
「失礼いたします。」
僕たちは面接室を後にし、控室にて結果を待つのみだった。
オーディション会場 控室
控室にはオーディションに参加している人たちがいた。みなさんずっと考え込んだり、祈ったりを繰り返している。
真瀬莉緒
「…………受かるといいですね。」
星野シキア
「ええ…………ねえ、莉緒。」
真瀬莉緒
「はい?」
星野シキア
「もしも合格したら……私、莉緒に言いたいことがあるの。」
真瀬莉緒
「僕に言いたいこと……?」
星野シキア
「ええ、でも受かるかどうか……不安だわ……。」
…………そう、不合格の可能性も高い。あとは本当に祈るばかりでしかない。
審査員A
「失礼いたします。」
先ほどの審査員がやってきた。
審査員A
「結果の方が出ましたので発表させていただきます。」
来た……。僕らはできる限りのことをやった。悔いはない……それでもやっぱりドキドキが止まらない……
ああ……どうか……シキアさんの夢を叶えてください……!!お願いします……!
審査員B
「結果は………………。」
真瀬莉緒
「………………。」
星野シキア
「………………。」
審査員B
「星野様!真瀬様!おめでとうございます!あなた方の曲に決まりました!」
星野シキア
「…………!……やったわ!!」
シキアさんは嬉しそうにガッツポーズをする。こんなにも嬉しそうなシキアさんを見たのは初めてかもしれない。
他のオーディション参加者も拍手をしていた。
参加者A
「おめでとうございます!あなた方の作った曲を楽しみにしています!」
参加者B
「お2人の曲はどんな曲なのか……楽しみにしています!」
星野シキア
「……ありがとうございます!とても……嬉しいです!」
審査員D
「こちらの曲はテレビ番組で生中継で歌います。日時が決まり次第連絡させていただきます!本日はありがとうございました!」
よかった……本当によかった……。僕たちは安堵し、オーディション会場を後にした。
六郭星学園 Kクラス教室
古金ミカ
「それでは……カンパーイ!!」
クラスメイト
「カンパーイ!!」
教室に戻るとクラスメイトたちに今回の結果を報告すると全員が喜びの声を上げる。
そしてお祝いパーティーをすることになり、今に至った。
クラスメイトたちは盛り上がり、のちにEクラスの姉さんたちも合流し、労いの言葉をもらった。
真瀬志奈
「莉緒!シキア!おめでとう!」
柊木アイ
「自分のことの様に嬉しいよ!本当におめでとう!」
夜坂ケント
「……おめでとう。」
星野シキア
「……ありがとう。みんな。それと……タクト。」
月川タクト
「ああ……。」
星野シキア
「ごめんなさい……そして、ありがとう……!!」
月川タクト
「……ああ!本当に良かった!おめでとう!」
言葉は少なくとも今まで言ってきたことに対しての謝罪と感謝がこもっている。シキアさんも夢を叶えたんだ。叶えられることができたんだ。タクトくんもそれに優しく受け入れてくれた。
月川タクト
「これからは夢を叶えていくんだろ?」
星野シキア
「もちろんよ。夢くらいなんだって叶えてやるわよ!」
シキアさんもようやく前向きになれた。これで良いんだ……。
星野シキア
「でも……こればかりは莉緒のおかげでもある。莉緒……あなたがいなければ私、あの時は立ち直れなかったかもしれない。」
真瀬莉緒
「シキアさん……。」
星野シキア
「莉緒……これからもよろしく!」
真瀬莉緒
「はい!」
古金ミカ
「ほいほい!湿っぽくならないの!パーティーなんだからもっと盛り上がらないと!!」
その後も楽しい時間が続き……数日後……
六郭星学園 大講堂
楽しい時間が終わり、いよいよ卒業式。
SクラスからKクラスまで全クラスの生徒がずらりと並ぶ。
笛花奏
「ただいまより、六郭星学園卒業式を行います。」
卒業式が始まる。1年間ではあるが、このクラスに出会えてよかったと実感する。
1人1人名前が呼ばれていく。
笛花奏
「真瀬莉緒」
真瀬莉緒
「はい。」
始めに男子が呼ばれる……そして、みんなの名前もそれぞれ呼ばれる。
笛花奏
「古金ミカ」
古金ミカ
「は~い。」
笛花奏
「星野シキア」
星野シキア
「はい。」
笛花奏
「来川ナナ」
来川ナナ
「はい。」
そうか……卒業するんだ……。そう思うと悲しみに溢れていく……
笛花奏
「以上で卒業式を終了いたします。」
そして、あっという間に卒業式が終わる。
本当にあっという間だった。卒業式も学校生活も。
ただ……唯一の救いは……。
古金ミカ
「うほー!みんな同じ大学に通うんだね!」
来川ナナ
「ええ、まさかテスト上位の50人全員が同じ大学に通うことになるなんて……。」
星野シキア
「現実は小説より奇なり……ね。」
そう、みんな一緒の大学。なのでほとんどは別れの挨拶などはなかった。おまけに姉さんたちも同じ大学だ。
来川ナナ
「あ、それより、今度シキアたちの曲が生中継で声優さんが歌ってくれるんでしょ?わくわくで楽しみ!」
古金ミカ
「お!そうなの!?いついつ?」
星野シキア
「ああ、それね……確かね……今月の土曜日の19時からだったわ。」
古金ミカ
「おお!それならみんなで見ようじゃないか!」
来川ナナ
「ええ、より一層楽しみだわ!」
星野シキア
「ええ、私はいいけど……莉緒は……?」
みんなで見るのか……せっかくなら多い方が良いな。
真瀬莉緒
「良いと思いますよ。みなさんで見ましょう!」
古金ミカ
「イェーイ!!」
星野シキア
「…………。」
六郭星学園 志奈・シキアの部屋
声優さんが僕たちの曲を披露する当日。僕たちはシキアさんの部屋にいた。
来川ナナ
「いよいよね。」
古金ミカ
「うひょー!楽しみだー!」
星野シキア
「…………。」
全員で見ようとなって以来、シキアさんはあまり良い表情をしていない。
真瀬莉緒
「あの……シキアさ……。」
来川ナナ
「莉緒くん!始まるよ!」
MC
「皆さまお待たせ致しました!本日はオーディションで応募し、見事に採用された曲を歌います!それではどうぞ……!!」
女性声優
「みなさん……この曲は彼女にとって大切な曲です。彼女の想いを……聞いてください……!」
そう言うと曲が流れる……彼女の想いとは……シキアさんのことだろうか。
僕は……ただその曲を聴いてみる…………。
曲が終わる。その曲を聴いた僕は……一筋の涙が出ていた……
真瀬莉緒
「あれ……僕……泣いてる……?」
星野シキア
「莉緒……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……これって……。」
星野シキア
「来て!!」
真瀬莉緒
「えっ……あっ……!」
そう大声で言うとシキアさんは僕の手を掴み裏庭へと連れて行った。
六郭星学園 裏庭
ここに来るのは3度目になる。シキアさんはどうして……いや、その前にあの歌詞……もしかして……。
真瀬莉緒
「シキアさん……あの……。」
星野シキア
「ねえ、莉緒。私のことをさん付けしないで……あと……タメ口でしゃべって……。」
真瀬莉緒
「シキアさん……。」
やっぱり……僕のことを……今まで気づけなかった自分に嫌気が差す……
そう思っているとすぐにシキアさんがこう言う。
星野シキア
「私はあなたに救われた……莉緒……これからも年を老いたとしてもずっと……ずっと……そばに居てほしいです……。」
……ちょっと素直じゃないところがシキアさんっぽい。
……でも考えは一緒。僕はこれに答えないと。
真瀬莉緒
「今まで……ごめん。……シキアさん。」
星野シキア
「いいの……。それで……莉緒……。」
真瀬莉緒
「はい……。よろしくお願いします。
………………シキア。」
星野シキア
「ええ……莉緒……。」
僕たちはただただひたすらに見つめ合う…………
虹谷アヤ
「彼女は違うのね……すると……他の誰かね……他を当たりましょう。」
星野シキア編 完
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
彼を追いかける事に疲れたので、諦める事にしました
Karamimi
恋愛
貴族学院2年、伯爵令嬢のアンリには、大好きな人がいる。それは1学年上の侯爵令息、エディソン様だ。そんな彼に振り向いて欲しくて、必死に努力してきたけれど、一向に振り向いてくれない。
どれどころか、最近では迷惑そうにあしらわれる始末。さらに同じ侯爵令嬢、ネリア様との婚約も、近々結ぶとの噂も…
これはもうダメね、ここらが潮時なのかもしれない…
そんな思いから彼を諦める事を決意したのだが…
5万文字ちょっとの短めのお話で、テンポも早めです。
よろしくお願いしますm(__)m
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。
つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。
彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。
なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか?
それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。
恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。
その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。
更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。
婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。
生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。
婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。
後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。
「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる