4 / 5
4
しおりを挟む
気づいたら勝手に足が動き出してた。スニーカーのソールが急な変化にびっくりして、ワンテンポ遅れて変形するのを足の裏に感じた。
「スイッ!?」
サクの珍しく大きい声を置き去りにして、あたしは目標をセンターに入れて猛ダッシュした。
「ドロボー!!」
あたしがたった今与えた名前には、当然なんの反応も示さずに、ドロボーはまっすぐ逃げていく。あたしの半分くらいの身長で、ギターを抱えているのにすごい速い。
町には人がまばらで逃げるドロボーと追う私を珍しそうに見るばかりで、一緒に捕まえようとしてくれる人はいない。
と、ドロボーは急に直角に曲がって細い路地に飛び込んでいった。
「やば!」
路地の汚さに一瞬気後れしたけど、すぐにあたしは隙間に体を捻じ込ませた。排気口やら窓枠やらに体をゴリゴリ擦られながら進んでいるうちにドロボーは路地を抜けて見えなくなった。ヤダヤダヤダ。無意識に呟きながらようやく路地を抜けると、いきなり丸くひらけた地面の氷の白さが目に刺さった。周囲を家の外壁に囲まれた空き地の真ん中には、さっきまで猛スピードで通り過ぎてきた他の家とほとんど変わらない木造の家が建っていた。
あたしはホッと息をついた。逃げ場はあそこしかない。ドロボーの家だと思うとちょっとビビるけど、ここで逃げるわけにはいかない。ゆっくりと正面玄関に近づく。よく見ると煙突からけむりがもくもく上がっている。ドロボーのくせにやけに開けっ広げじゃん。玄関横の小窓から中を覗いてみると、いろんな紙束とか難しそうな本とよくわからない電子機器がごちゃ混ぜになっていた。本当にドロボー?もっと敵を探ろうと、首を伸ばしかけたその時、誰かに肩を叩かれた。
「ひっ」
抵抗する自分の首を無理矢理後ろに向けると、目の前には唇に人差し指を当てたサクの顔があった。
「サクぅ」
ちょっとだけ顔を出した涙をグッと引っ込める。
「急に走ってビビらせんなよ、大丈夫?」
「あたしは大丈夫だけど、ギターが……この中には絶対いる」
「どうする?直接いくか?」
「えっ。でもなんかすごく怪しいし、この星の保安隊とかに連絡した方がいいかも」
「いいの?そんなことしてる間にあんたのギターバラバラにされて改造されちゃうかもしんないぜ」
「はっ?ふざけんなし!」
「でかい声出すなバカ!バレたらどうすんだよ!」
「あんたもでかい声出してんでしょバカ!つかバカって言うな!だいたい変なこと言い出したあんたが悪いんでしょ!」
「元はと言えばこんなとこにまでギター持ってくるスイが悪いんだろ!アホ!」
「うっさ「あの……うちに何か用かな?」
あたしとサクは掴み合いになりかけの姿勢のまま固まった。同時に玄関をみると無精髭を生やしたメガネの男が扉から半分体を出して申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。
「ドロボーー!」
あたしたち二人の声に男は一瞬目を丸くした後、「またかぁ」と小さなため息をついた。
「スイッ!?」
サクの珍しく大きい声を置き去りにして、あたしは目標をセンターに入れて猛ダッシュした。
「ドロボー!!」
あたしがたった今与えた名前には、当然なんの反応も示さずに、ドロボーはまっすぐ逃げていく。あたしの半分くらいの身長で、ギターを抱えているのにすごい速い。
町には人がまばらで逃げるドロボーと追う私を珍しそうに見るばかりで、一緒に捕まえようとしてくれる人はいない。
と、ドロボーは急に直角に曲がって細い路地に飛び込んでいった。
「やば!」
路地の汚さに一瞬気後れしたけど、すぐにあたしは隙間に体を捻じ込ませた。排気口やら窓枠やらに体をゴリゴリ擦られながら進んでいるうちにドロボーは路地を抜けて見えなくなった。ヤダヤダヤダ。無意識に呟きながらようやく路地を抜けると、いきなり丸くひらけた地面の氷の白さが目に刺さった。周囲を家の外壁に囲まれた空き地の真ん中には、さっきまで猛スピードで通り過ぎてきた他の家とほとんど変わらない木造の家が建っていた。
あたしはホッと息をついた。逃げ場はあそこしかない。ドロボーの家だと思うとちょっとビビるけど、ここで逃げるわけにはいかない。ゆっくりと正面玄関に近づく。よく見ると煙突からけむりがもくもく上がっている。ドロボーのくせにやけに開けっ広げじゃん。玄関横の小窓から中を覗いてみると、いろんな紙束とか難しそうな本とよくわからない電子機器がごちゃ混ぜになっていた。本当にドロボー?もっと敵を探ろうと、首を伸ばしかけたその時、誰かに肩を叩かれた。
「ひっ」
抵抗する自分の首を無理矢理後ろに向けると、目の前には唇に人差し指を当てたサクの顔があった。
「サクぅ」
ちょっとだけ顔を出した涙をグッと引っ込める。
「急に走ってビビらせんなよ、大丈夫?」
「あたしは大丈夫だけど、ギターが……この中には絶対いる」
「どうする?直接いくか?」
「えっ。でもなんかすごく怪しいし、この星の保安隊とかに連絡した方がいいかも」
「いいの?そんなことしてる間にあんたのギターバラバラにされて改造されちゃうかもしんないぜ」
「はっ?ふざけんなし!」
「でかい声出すなバカ!バレたらどうすんだよ!」
「あんたもでかい声出してんでしょバカ!つかバカって言うな!だいたい変なこと言い出したあんたが悪いんでしょ!」
「元はと言えばこんなとこにまでギター持ってくるスイが悪いんだろ!アホ!」
「うっさ「あの……うちに何か用かな?」
あたしとサクは掴み合いになりかけの姿勢のまま固まった。同時に玄関をみると無精髭を生やしたメガネの男が扉から半分体を出して申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。
「ドロボーー!」
あたしたち二人の声に男は一瞬目を丸くした後、「またかぁ」と小さなため息をついた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。


沈まぬ大陸の世界史(UKW)「初期設定案と今後の取り組み等について」
Sigure cou
SF
0.はじめに
本作品は、実在するいかなる組織・団体・個人とも関係が無い。フィクション作品となっております。
私は皆様と一緒に、スターウォーズのレジェンズ(正史ではない方)やSCP財団のように、皆様と一緒に作っていく。仮想世界を想定して作っております。
勿論ですが、骨がなければ肉の形を保つのが難しいように、軸がなければ皆様が少しでもこの作品に興味を持ってくださって関連作品等を作ってくださろうと思っても。作品を作るのが難しくなってしまうと思われるため。
この世界線での軸(正史)を作る為にも主である私も頑張っていこうと思います。ぜひ、この作品「沈まぬ大陸の世界史(UKW)」を応援してくださると有り難いです。これからよろしくお願いいたします。少しでも興味や好感を持って頂けたら有り難いです。関連作品を作ってくださるような心優しい方が居ましたら。コメントやご連絡下さい。大変長くなりましたが、何卒これから宜しくお願いいたします。m(_ _)m
またこちらのものは私がかなり前に一年近く考えた「初期案」であり。現在までで歴史や兵器、軍隊の仕組み等に対する価値観等に少々の解釈の変更や設定の変更等が行われる可能性がありますので、あくまでもスタート0の状態であると思って頂けると幸いです。またこの下書きは一年近くかけてちょびちょび付け足していった為。文章等に多少気になるとこらがあると思います。それと同時にこちら大雑把なあらすじと言っておきながら3万字程とまぁまぁ読むと長いものとなっております。そちらの程、御理解の元読んで頂けると幸いです。
あらすじ
ムー大陸と呼ばれる現代では幻の大陸とされる太平洋に存在したと想定されている巨大な大陸。そこには古代に高度に進んだ技術を持った文明があったとされ。大規模な自然災害により。古代に1日で滅び海底に沈んでしまったとされる大陸。この大陸が沈まなかった世界線では、どのような世界線が描かれるのか。皆様と一緒に作っていく。IF世界史です。興味や好感を持てて頂けると幸いです。興味を持って下さり関連作品を作ってくださる方等が居ましたらご連絡貰えると有り難いです(コメントでも有り難いです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる