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第一話

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「どうしてあんなことをしたのですか、ヘンリー様」

 私は声を震わせて、婚約者に聞きました。

「昨日のパーティーで、あなたがエリザベスさんと仲良く踊っているのを見ました。途中で2人で外に出て、2時間以上も戻ってきませんでした」

 私が詳細に様子を話すと、ヘンリーさんの顔は真っ赤になりました。

「ジェーン、お前は誤解している。エリザベスとは、結婚式のことを話し合いたかっただけだ」

 でも、私は信じられませんでした。ダンスをしている時、ヘンリー様がエリザベスさんの耳元で何かささやいているのが目に焼きついています。2人が庭に出て行くのを追いかけると、ベンチに座って顔を寄せ合っているのを見ました。ヘンリー様がエリザベスさんを抱きしめた時、私は涙を流してその場から逃げ出しました。

「情けない嘘で私を侮辱しないでください。私は目の当たりにしたのです。あなたは私の信頼を裏切り、婚約を汚しました!」

 私は泣きながら言いました。
 ヘンリー様の表情は硬くなり、怒って唇を噛みしめました。

「誤解だと言っているだろう。エリザベスは私たちの結婚式を手伝ってくれる大切な友人だ。くだらない、スキャンダルじみたことを言うな」

 私は信じられない思いで彼を見ました。どうしてこの期に及んで、そんな嘘がつけるのでしょう。婚約や結婚というものには、何の意味もないのでしょうか。私は、ヘンリー様のしらを切る予数にショックを受けました。

「大切な友人と呼ぶなら、深夜にこっそり会う必要なんてないでしょう。嘘はもう聞きたくありません!」

 ヘンリーさんの顔が醜く歪みました。

「やれやれ、ヒステリーを起こしているな。婚約は間違いだったかもしれん。私のことを信用できない人など、要らん」

「本気でそう思うのですか?」

 私は衝撃を受けて、聞き返しました。

「自分の浮気が原因で婚約を解消したいというのですか?」

「根拠のない非難で私の信頼を壊したのはお前だ!」とヘンリー様は唸るように言いました。

「婚約は解消だ。家族にも伝えておく」

 私は体温がすうっと冷えていくのを感じました。なぜ、こんなことに。しかし、崩れ落ちることだけは拒み、背筋を直して、ドアに向かいました。

「さようなら、ヘンリー様。名誉と誠実さのない男性と結婚することは、私もできません」

 私はそう言って、ドアを閉めました。

 ドアが音を立てて閉まるのが辛かった。胸が痛みましたが、このような偽りの関係は続けられないと感じました。私は、惨めな未来から逃れられたのです。決して振り返らないと、心に誓いました。
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