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第3話
しおりを挟むそして、その一ヶ月後。
私とレイモンド様の結婚式が、始まりました。
「一時はどうなることかと思ったけど、無事結婚できてよかった。エリーゼのおかげだね」「......私は、何もしていませんよ」
「またまた。君が動かなきゃ、あの大公様が前言を撤回して、謝罪するなんてあり得ないよ。本当にありがとう」
お礼を言われるようなことは、何もしていません。
私はただ、領民として大公にお願いをしただけ。それを受けて判断し、行動したのは、大公自身です。
「あら?」
私はふと、思い思いに食事や歓談を楽しんでいる披露宴の参加者たちの中に、見覚えのある人影を見つけました。
「もしかして貴方は、大公様ではありませんか?」
声をかけると、彼はフードを取って、悪戯っぽく笑いました。
「やはり、バレてしまったか」
「ええっ、大公様!?」
驚くレイモンド様のことは放っておいて、私は大公に尋ねます。
「どうしてここに?」
「うん、今回は私のことで、二人にはいろいろ迷惑をかけてしまったからな。二人が幸せになる瞬間を、この目で見届ける義務があると、そう思って.....本当はライラや妻も誘ったのだが、どうしても行きたくないと言うものだから」
そう言って苦笑いする大公の言葉には、どこか言い訳めいた雰囲気がありました。
もしかして本当は、もっと単純な理由でここに来たのでは......例えば、娘の晴れ姿を見たい、とか。
「ライラはどうしてますか?」
「しばらくは癇癪を起こしていたがね、もう収まったよ。今はなんと、マーリ王国の王子様に夢中でね、なんとか会わせろと言ってくる。私はこの国の十分の一にも満たない領土を治める、ただの大公に過ぎないというのに。まぁ、どうにかするつもりだがね」
彼なら、きっと会わせてしまうだろう。まぁその後どうなるかは、ライラ次第ですが。と言うか、多分無理でしょうが。
......無理ですよね?相手の王子様が、騙されてしまわないことを祈ります。もしそうなったら、可哀想なのはその王子様ですからね。
大公に挨拶をしてその場を離れ、私たちは他の参加者方にも挨拶をして回ります。
「幸せそうですねぇ」
「私も早く結婚したいなぁ」
なんて、羨ましがられる度に、私とレイモンド様はもう、でれでれ照れっぱなしで、恥ずかしいったらありません。
でも、私たちはとても幸せです。
大公はもしかしたら、私のことを娘だと思っているかもしれませんが。
私は今でも、自分を大公の娘だとは思いません。娘でなくてよかった、あの時追い出されてよかった、とさえ思います。
だって、私がただの庶民だったからこそ、私はレイモンド様と結婚できたのですから。
fin.
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ざまぁは…感じなかったですね。
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