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「婚約破棄は君のためだ」とか言ってますが、浮気してるの知ってますよ?
しおりを挟む「......なぁ、セーナ」
「はい」
「よく考えたんだが、やはり君は、私と結婚するには相応しくないのではないか」
何を言い出すかと思えば、そういうことですか。
私は感情を表に出さない婚約者、レンを冷たい目で見つめた。
私は八百屋の店番、レンは貴族のお坊っちゃま。
そういう意味では、確かに私はレンと結婚するには身分が低すぎるかもしれない。
けれど、そんなことは初めからわかっていたはず。それでも結婚したいと言ってきたのは、あなたでは?
「だって、君はあまりにものを知らないじゃないか。テーブルマナーはめちゃくちゃだし、言葉遣いも......。このままじゃ、僕のママにいじめられてしまうよ」
いや、あなたもう二十八でしょう。
その歳で「ママ」って......。まぁそれはいいとして、そんな心配は無用。
レンの「ママ」のおばあちゃんがやはり庶民の出身だったらしく、私と「ママ」との関係は良好以上。来週も一緒にランチに行く約束をしているくらいなのだ。
「それに、僕たちが結婚するとなったら、やっぱり相応の支度金を用意しなくちゃならない。君の家族に、それが出せるとは思えないよ」
その点も心配無用。
本当は女の子が欲しかった、とかで、レンの父親も何かと私に甘い。理由は正直気持ち悪いが、相手の両親が「支度金なんていらない」と言ってくれている以上、私は手ぶらで嫁に行く気満々である。
「僕は、君のことも考えて言っているんだ。このまま結婚しても、僕らは幸せになれないよ」
そう言う彼の言葉には、ちっとも感情がこもっていない。
いくら何でも、私を馬鹿にしすぎでは。あなたが婚約を破棄したい理由なんて、最初から分かってますよ。
「......『幸せになれない』?そりゃそうでしょうね。あなたがそんなことを言うのは、これが原因でしょう?」
私は彼の前に、写真を一枚ずつ並べていく。
私の友達......だった女と、レンが手を繋ぎながら、仲睦まじく歩いている様子。こっちの写真では、幸せそうにキスまでしちゃってる。
レンは私を捨てて、この女と結婚したいのだ。
さも「セーナのことも考えてますよ」的な態度をとるなんて、冗談じゃない。
顔面蒼白になるレン。
ばれていないとでも思ったんですか。このままうまく騙して、綺麗さっぱり関係を終わらせられると思ったんですか。
「婚約破棄.....してもいいですけど」
私が言うと、彼は神様、とでも言いださんばかりの笑顔でこちらを見た。
「本当か!?」
「......でも、相応の慰謝料はいただきますよ」
私は、にやりと笑った。
「ついでに、この写真も表沙汰にさせていただきます。あなたのご両親が見たら、どう思うでしょうねえ」
「ま.....待て!それだけはやめてくれ!」
追いすがるレンのことは放っておいて、私は手早く荷物をまとめると、彼の家から出ていった。
三ヶ月前にこのネタを掴んでから、いつこんなことになってもいいように、と、荷造りを始めていたのだ。
いつまで経っても言い出さないから、こっちからいってやろうと思っていたところだった。
ちなみに、あなたが結婚しようとしていたその女。
私に詰められて面倒くさくなったのか、別のボンボンに声かけてるの、この前見ましたよ。
とは、さすがに言わないでおいた。
fin.
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