上 下
3 / 4

第三話

しおりを挟む

会場が変な空気になってしまいました。
こんなことで、開会の時間をずらしたくはありません。早めに、真実をはっきりさせますか。

「......いい加減にしなさい、あなた」

私は強い口調を意識して、エリスに詰め寄りました。
彼女の身体がびくっと跳ねます。

「私がいじめ?あなたを?まったく覚えのないことです」
「そ、そんなことを言われても、あったものはあったんです!」

もっとスムーズに事が運ぶと思っていたのか、もはや半泣き状態のエリス。
申し訳ないですが、とどめを刺させてもらいます。

「あなたが嘘をついていることは、この方に聞けばすぐにわかります!」

私はそう叫ぶと、来客の中から一人の婦人の手を引っ張って、前に連れてきました。

「この方は、私の楽員時代の同級生で、仲良くさせていただいていたキュリーさんです。あなたも覚えているでしょう?」
「えっ?えっ?」

急に前に連れてこられて、困惑するキュリーさん。
しかし、彼女が言葉を発するより前に、エリスがヒステリックに叫びました。

「だ、駄目よ!その人も一緒になって私をいじめていたのだから、言うことを信じちゃ駄目!」

かかった。
私は、ゆっくりと落ち着いた口調で、言います。

「エリスさん。私は嘘をつきました。キュリーさんは、遠く南の国から一年前に嫁いできたばかりですよ。当時は同じ学院どころか、同じ国にすらいませんでした」

絶句するエリス。
愕然とするニード殿下。
そして、凍りついた、けれどどこかほっとしたような空気に包まれる場内。


「さあ、舞踏会を始めましょう!」


私は、高らかに宣言しました。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

婚約破棄をすると言ってきた人が、1時間後に謝りながら追いかけてきました

柚木ゆず
恋愛
「アロメリス伯爵令嬢、アンリエット。お前との婚約を破棄する」  ありもしない他令嬢への嫌がらせを理由に、わたしは大勢の前で婚約者であるフェルナン様から婚約破棄を宣告されました。  ですがその、僅か1時間後のことです。フェルナン様は必死になってわたしを追いかけてきて、謝罪をしながら改めて婚約をさせて欲しいと言い出したのでした。  嘘を吐いてまで婚約を白紙にしようとしていた人が、必死に言い訳をしながら関係を戻したいと言うだなんて。  1時間の間に、何があったのでしょうか……?

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

うるさい!お前は俺の言う事を聞いてればいいんだよ!と言われましたが

仏白目
恋愛
私達、幼馴染ってだけの関係よね? 私アマーリア.シンクレアには、ケント.モダール伯爵令息という幼馴染がいる 小さな頃から一緒に遊んだり 一緒にいた時間は長いけど あなたにそんな態度を取られるのは変だと思うの・・・ *作者ご都合主義の世界観でのフィクションです

「婚約破棄してやった!」と元婚約者が友人に自慢していましたが、最愛の人と結婚するので、今さら婚約破棄を解消してほしいなんてもう遅い

時雨
恋愛
とある伯爵家の長女、シーア・ルフェーブルは、元婚約者のリュカが「シーア嬢を婚約破棄にしてやった!」と友人に自慢げに話しているのを聞いてしまう。しかし、実際のところ、我儘だし気に入らないことがあればすぐに手が出る婚約者にシーアが愛想を尽かして、婚約破棄をするよう仕向けたのだった。 その後リュカは自分の我儘さと傲慢さに首を締められ、婚約破棄を解消して欲しいと迫ってきたが、シーアは本当に自分を愛してくれる人を見つけ、結婚していた。 だから今更もう一度婚約して欲しいなんて、もう遅いのですっ!

きちんと調べずに婚約破棄とか言うからこんなことになるんですのよ?

ルー
恋愛
婚約者の王子から婚約破棄を告げられたリーゼは真正面から対抗していく。

学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。

朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。  そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。  だけど、他の生徒は知らないのだ。  スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。  真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。

婚約者と妹に毒を盛られて殺されましたが、お忘れですか?精霊の申し子である私の身に何か起これば無事に生き残れるわけないので、ざまぁないですね。

無名 -ムメイ-
恋愛
リハビリがてら書きます。 1話で完結します。 注意:低クオリティです。

やって良かったの声「婚約破棄してきた王太子殿下にざまぁしてやりましたわ!」

家紋武範
恋愛
 ポチャ娘のミゼット公爵令嬢は突然、王太子殿下より婚約破棄を受けてしまう。殿下の後ろにはピンクブロンドの男爵令嬢。  ミゼットは余りのショックで寝込んでしまうのだった。

処理中です...