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第2話
しおりを挟む貴族の世界は、礼節と品格が全てです。
それらを失えば、その家は他家からの信頼をも失うことになる。そうなれば、たとえ350年続いた名家であっても、あっという間に信頼は地に堕ちるでしょう。
メイは、私と同じように、誰の血縁でもない、有象無象の一般庶民です。
殿方への積極的なアピールや、さりげなく体を触れ合わせたり、言葉巧みに褒めちぎったりして好感度を上げるやり方は、庶民の世界では許容され、時として持て囃されもしたかもしれません。
けれど、貴族の世界、貴族夫人の世界では、それは気品のない、下劣な行為とされます。
あのメイが、結婚したからといって、これまでのいわば癖のようになった人との関わり方を、今更改められるとは思えません。
ライル様がそんなことにも気づけなかったのは、同じように庶民の出である私を婚約者にしても、大きな問題が起きなかったからかもしれません。
でもそれは、私が貴族たちからのいびりや嘲笑に耐え、ライル様に迷惑をかけないように、と、死に物狂いで貴婦人としての所作や振る舞いを会得したからです。
ライル様は、そんな私の姿を見てすらいなかった。
そして、こんなに努力してきた私より、思うがままにライル様を誘惑した、妹のメイを選んだ。
涙が出そうです。私が選んだ婚約者は、こんな馬鹿な男だった。
自分の見る目のなさに呆れてしまいそうです。
選択の自由は、彼にありました。そして彼は、その中から一つを、メイを選んだ。
だからもう、私がライル様に関わることはないでしょう。
たとえこの先、ライル様がどんな選択をして、どんなお願いを私にしてきたとしても。
どうぞお幸せに。
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