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第2章 神奮闘~マカダミア王国編~
第46話 迫る真相と不吉⑤
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(今、あっくん……“シアに会いたい?”って……言ったよね?)
メティーは思いがけない言葉にゴクリと唾を飲み込み、聞き間違いではない事を確認するように頭の中で繰り返した――
気になる点はあれども、会いたいかと聞かれれば悩む必要等なく――
「あいたい……しーちゃんにあわしぇて!」
そう言って真剣にあっくんを見つめると、あっくんは少し複雑そうな面持ちで微笑んだ――
「いーけど……たぶん、シアは望んでないし、怒る……かな……」
「っ!」
(望んでない? 怒る? っ……どう……して? やっぱり、私の事……嫌いに?)
「……先に用事済ませてくるから、メティーは心の準備でもしてて――」
あっくんは私の動揺を悟ったのか、セルフィーさんの荷物を手に取りつつそう言うと、黒い靄を出してその中へ消えた――
(っ……心の……準備――)
何を言われても私の中で“やっぱりやめる”という選択肢はなく、私はあっくんに言われるがままに動揺した心を静める努力をして、あっくんの帰りを待つのだった――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アビスは黒い靄でセルフィーの部屋へと訪れた。夜中と言えども大人ならばまだ起きている人もいるであろう時刻だったが、既にセルフィーはベッドで寝息を立てていた――
(……寝るの早。んー……ここならさすがに起きてすぐ気付くよね?)
アビスはセルフィーを起こさないようにそっと枕元に荷物を置いた。
(んっと……あとは……話の途中でまた邪魔される前に、先に覗いとこっかな――)
アビスがそう思考して再び黒い靄で移動した先はロイドがよく居る研究室で、丁度何かを小箱に詰める作業をしている所だった――
ロイドは突如視界の片隅に現れたと言えども、一際異彩を放つアビスの存在にすぐに気付いて手を止めた――
「っ…………丁度いい所に来てくれた。この荷物をチョコランタのあの方へ届けてくれないか?」
ロイドが驚きを隠しつつ平然を装って話を切り出すと、アビスは呆れるように鼻で笑った――
(……ほら、やっぱり来て正解だった)
「ねぇ、僕を便利屋か何かと勘違いしてない? 僕は配達屋ではないんだけどー?」
「それは当然わかっているとも。本来ちゃんと配達の者に頼む手筈だった。でも、丁度お前が居るなら、早くて確実で安心して任せられるだろう?」
ロイドはアビスが気だるげに面倒くさがるのを宥めるように、極力機嫌を取る言葉を選んだつもりだった、が――
アビスはロイドの“失言”にピクッと反応した――
「へぇ、そうだよね……もう、あの箱はないもんね? 今後はどうやって僕を呼ぶ気だったのかなぁ?」
アビスは冷たい眼光とは裏腹に、ケロリとした口調で嫌味ったらしく強調してニヤリと嗤った。
ロイドはその冷たい眼光からアビスが言い含めた感情が脳内に聞こえてくるようだった――
――僕がアンタのした事知らないとでも思ってんの?――
(っ……肉片が少し再生する度に壊されたら、いつまで経っても復活出来ない……。つまり、私がディザルド様を逃がす事は必然……。それをアビスが知れば怒り狂って研究所にいる異形生物を全て殺し尽くすかと思えば、生かしているし……相変わらず何を考えてるのかわからない……一体何を企んでいる!?)
ロイドはアビスの冷たい眼光を直視出来ずに焦る苛立ちを心根に零し、唇を噛み締めて黙り込んだ――
アビスはロイドの悔しげな表情で大体の心情を察したのかクスリと笑った。
「どうやら……随分必死だったみたいだね? まぁ、僕も感情任せに暴れた過去をこれでも反省してるんだよ?」
アビスが飄々とした口ぶりで微笑むと、ロイドは目を細めて“嘘放け”と物言いたげな目でアビスを見据えた――
「ったく……しょーがないなぁ……これをあげるよ」
アビスはそう言ってビー玉サイズの黒い魔力石を作り出し、親指で弾くようにロイドの方へ飛ばすと、ロイドは驚きつつも何とか両手でキャッチした――
すると、その瞬間ロイドの脳裏にこれによく似たサイズの見覚えのある石が過ぎり、当時の“若き研究員の男”の声が脳内に響いた――
――“あとは、魔力石を装着すれば完成する”――
当時、ロイドはこの“若き研究員の男”の言葉を信じたが、裏切られた――
ロイドは当時の怒りに震えながら魔力石を凝視するように深く俯いた。その姿は狂気じみた恐ろしさすらあった――
「――アビス……これの正しい使い道は?」
アビスはロイドのその姿に全く動じることなく、どこか含みのある笑みを浮かべた――
「……ただ壊せば僕に伝わる……簡単でしょ?」
アビスはロイドの声が脳内に響いて呼び出されるのは不快極まりない故に、本来の使い方を教えなかった。
とは言っても、魔力石が壊れると魔力が作り主へと戻って石は消失する原理を教えただけで、デタラメな嘘をついたわけではない――
「……壊して伝わるだけ? フハハハハ――」
「……言っとくけど、壊したらまた作らないとなんだから、くだらない事で僕を呼び出さないでよね? じゃ、僕はもう行くから――」
アビスは突然ロイドが壊れたように嗤いだしたのを見て、手早く頼まれた荷物を受け取りつつ釘を刺す。
そして、更なる面倒事に巻き込まれるのを避ける様に黒い靄の中に消えて行った――
だが、既にロイドはアビスに関心がなく、頭の中は“若き研究員の男”の事で占めていた――
「(……私はまんまと奴に騙された訳だ……裏切り者には死より重い苦しみを……)フハハハハ――」
ロイドは恨みがましそうにボソリと呟くと、再び狂ったように嗤いだした声が室内に不気味に響いていた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、同時刻のマカダミアの廃墟のクロウの部屋では、クロウが収納家具の引き出しを開け、その中の何かに視線を落としていた――
クロウがその何かを取り出そうとした時、不意にクロウの背筋にゾクッと嫌な予感とも言える悪寒が走った――
「っ!」
クロウは身体を震わせ、息もみるみる荒くなり、ふらつく身体を支えるように引き出しを閉めたが、先程取り出そうとした何かが少しはみ出していた――
「……っ……はぁ……はぁ……」
クロウはふらつく足取りで何とかベッドに倒れ込むと、苦しげに蹲った――
(……まだ幼いメティーに人を殺めた事聞かせたバチが当たったかな……。本当は話す気なんてなかったのに、僕が優しいなんて言われたら、伝えずにはいれなかった……。僕を嫌ってくれてよかったのに……。メティー……どうか、僕の事は忘れて――)
クロウは朦朧とする意識の中そう思うと、そのまま気を失うように眠りに落ちた――
部屋の片隅の収納家具の引き出しからはみ出していた何か――
それは“紙切れ”で、紙の隅に手書きの文字が綴られていた――
――“L・F”と――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
同時刻のチョコランタ城の大臣の私室――
大臣は夕刻に神の捜索の定期報告に行った際のビターの態度を思い出して苛立っていた――
大臣の脳裏に、見下すように嘲笑うビターの姿が浮かぶ――
(※あくまでも大臣目線でそう見えてるだけで、ビターはちゃんと人の良さそうな笑みを浮かべてます)
「儂にはビターも知らぬ人脈があるというのに……青二才ごときが儂を見下すなんて許せん!」
大臣は苛立ちをぶつける様に机をバンと叩くと、強く叩き過ぎた故の痛みに悶える――
「っ! イタタ――」
何時ぞやのデジャブとも言えるどこかマヌケな光景は、大臣が相変わらずだと伝えている様だった――
大臣の部屋の窓の外に、そんな大臣の恥ずかしい現場を目撃した人影があった――
それは、研究所から黒い靄でチョコランタ城上空へ移動し、そこから黒い翼で窓の外まで来ていたアビスだ――
アビスは窓を叩こうとしていた手を止め、呆れた視線を大臣に送っていた――
(何してんだか……。てか、大臣の気配……アイツの気配が強くなった気がする……。タダでさえ奴らの中では一番大嫌いな部類だって言うのに――)
アビスは苛立つ気持ちを我慢しなければいけない事を憂鬱そうに大臣の部屋の窓を叩く――
すると、アビスに気付いた大臣は一気に上機嫌になり、媚びる様な胡散臭い笑みを浮かべつつ窓を開けた。
「おお! アビス! まさか、お前自ら儂の所へ来てくれるとは!……はぁ……相変わらず美しい瞳だ――」
大臣はアビスの綺麗な赤い宝石のような瞳に魅入られた様に、アビスの頬へと手を伸ばす、が――
アビスの軽蔑する様な冷たい眼光を前に、大臣の手は行き場を無くして下ろされた。
(……懸命な判断だね。もし触れてたら……その手がなくなってたと思うし――)
アビスのそんな心の声を代弁するかの冷たい視線で場は凍りつき、大臣はアビスの機嫌を損ねぬよう焦って取り繕いを始めた――
「そ、外じゃなんだから中に――」
「ここでいい。すぐ帰るし」
「そ、そうか……そ、そうだ! か、神探しは順調か?」
「…………まあまあ?」
「さ、さすがアビスだな! こ、こちらも王に報告する都合で兵や賊に探させてはいるが、当てにしていない……なんせ、お前以上に神探しに向いた者はいない……だから……た、頼りにしているぞ?」
「……ハイハイ、わかってる」
アビスは終始気だるい素っ気ない返事ばかりを繰り返し、ついに気まずい沈黙が訪れた――
「…………もう終わったんなら……はい、コレ――」
アビスはロイドに頼まれた小箱を見せると、大臣が当然受け取ろうと手を伸ばす、が――
アビスは余程大臣に手を触れられたくないのか、触れる寸前の所で小箱を渡さない攻防を何度か繰り返す――
その攻防は、遊ばれていると気付いた大臣が大人しく手の平を上向きに構える事で終わりを迎えた――
大臣はやっと手にした小箱を開けると、液体の入った小瓶を取り出し、ニヤリと嗤った――
「ついに人間用の試作品が完成したのか……喜ばしい事だが…………ケールからは何も?」
大臣には他にも“欲しているモノ”があったようで、小箱の中身が小瓶ひとつだけなのを不服そうにアビスに尋ねた。
「ん?……あー……アイツの肉片?」
アビスは何の事かわかっていたが、キョトンと考えるような素振りをしてから、ニヤリと笑っていきなり核心を突くと、大臣はわかりやすく焦りを見せた――
「……心配しなくても、アンタにはもう必要ないと思うけど?」
アビスがクスリと笑ってそう伝えると、大臣は意味を探るように黙り込んだ。
アビスはそれを見て意味深に微笑む――
「……大丈夫。いずれわかるよ――」
アビスはこれ以上の長居はしたくない思いから、その言葉を残して黒い靄の中に消えていった――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――シアに会いたい?――
――たぶん、シアは望んでないし……怒る……かな――
メティーがベッドでゴロゴロしながらあっくんを待つ間、さっきのあっくんの言葉が何度も頭の中で繰り返されていた――
しーちゃんが私に会う事を望んでないって言われたのは当然ショックだけど、それよりも引っかかるのは――
あっくんは“誰かさん”と言ったり、“しーちゃん”と言ったりして、知ってる素振りだった――
(……あっくんは間違いなくしーちゃんを知ってる。それでいて、会いたいか聞くぐらいだから居場所も心当たりあるって事だよね……)
思い返せば、しーちゃんにあっくんの事を話した時、喜ぶどころか浮かない顔をしてうわの空になっていた――
(たぶん、しーちゃんもあっくんを知ってた……のかな?)
それに、何かに怯えるように震えて縋るように抱きしめられた事もあったっけ――
「っ! もしかちて……しーちゃんは、あっくんにあいたくなかった?」
「へぇ……メティー鋭いね」
思わずそんな仮説が口から零れると、どこからともなくあっくんの声が聞こえ、私はビクッと驚きつつ声の方向を見ると――
黒い靄からあっくんがあっけらかんと楽しげに顔を覗かせていた。時間にして、あっくんは出掛けてから15分少々で戻ってきた――
「ち、ちがうよ!? い、いまのは――」
「酷いよねぇ……シアは――」
あっくんに対して失礼な事を言ったのを訂正したかったのに、当の本人は肯定とも取れる呟きを零しながら黒い靄から出てくると、更に言葉を続けた――
「……僕が長い年月に気が狂いそうな時も、ずーーっと隠れて傍観してたんだよ?」
(……ん?)
「……僕はずーーっと探してたのに、かーーなり長いこと避けられててさ……。よっぽど僕に会いたくなかったんだろうね」
あっくんは冗談とも本気とも取れるような言い方をして、意味深な笑みを浮かべた――
私にはあっくんの言い方が冗談には聞こえず、それが数週間や数ヶ月なんて規模じゃないと思えた――
「あっくんって、なんしゃい?」
「まぁ、つい最近会っちゃったんだけど」
ほぼ同時に私とあっくんが喋り、私はあっくんの言葉を遅れて理解し、頭の中が一瞬真っ白になってからパニックになる――
(え……居場所に心当たりあるどころか――)
「しーちゃんに……あった……?」
「うん……メティーが大泣きしたあの日に……」
(っ! あの日……)
頭の中にあの日の大泣きする自分の姿を思い出すと、穴があったら入りたいぐらいの恥ずかしさが込み上げてくる――
あっくんもその時を思い出しているのか、ニヤリと笑ったあっくんと目が合った――
(っ! なんで笑うの!? もしかしてからかわれてる!? あっくんってこんな意地悪だった!? あ! これで私の聞いた事はぐらかすつもり!?)
私は恥ずかしさで赤くなった頬を膨らませて拗ねつつ、尋ねた返事を促すようにあっくんから目を逸らさなかった――
「ん? あー……僕が何歳かそんなに気になる?」
「うん!」
あっくんは私が気にする事を意外そうにクスリと笑った。私が諦めることなくあっくんを見つめ続けると、あっくんは少し困ったように溜息を吐いた――
「んー……僕、何歳なんだろ? 途中からもう数えてなかったしなぁ……。たぶん、数百年以上は生きてるとは思うけど?」
「す、すうひゃく!?」
私は予想を遥かに上回る年月に絶句する――
それと同時に、脳裏に初めてあっくんに会った時の哀しげに微笑んで抱きしめられた事や、“僕の事忘れちゃった?”と言われた事が次々過ぎっていく――
(っ……もしかしなくても、数百年以上ぶりに会えたって事!? そりゃ、あんな顔で抱きしめるのも当然だよ……。なのに、私は懐かしさ以外は何もわからないなんて…………最低過ぎる!)
「っ……ごめんねあっくん……わたち、わからなくて……」
「……なんで謝るの?」
「わたちが、はやくおもいだしぇば――」
私の中でただ漠然と、前世の自分を思い出せば、夢のあの子の正体も、この世界の事もわかる――
そんな“不確かな予感”がしていた――
あっくんは伏し目がちに伝えた私の言葉を遮るように人差し指を私の口に当てた。
ゆっくりあっくんへ視線を向けると、怖いぐらいの真剣な眼差しとぶつかる――
「…………無理に思い出さなくていいよ。それが……メティーの為でもあるから――」
「……え?」
私は言われた意味はわかるものの、どうして思い出さくていいのか、なぜそれが私の為なのかわからなかった。
けれど、これ以上聞いたらいけない空気を感じ取り、ぼんやり考え込む――
(なんだか……しーちゃんとあっくん、慰め方が正反対だなぁ……。しーちゃんは“いつか思い出せるよ”って言ってくれて、あっくんは“無理に思い出さなくていい”だもんね――)
ふと、その当時の幼いしーちゃんが哀しげに微笑んだ場面が思い浮かんだ――
ただそれだけなのに、ギュッと胸が締め付けられるようだった――
(……もしかしたら、しーちゃんは最初から私から離れるつもりだったのかな……)
当時は深く気にしていなかったけれど、しーちゃんの幼い子供と思えない何かを悟ってるかのような哀しげな微笑みに、そんな“含み”があったんじゃないかと想像して気分が沈む――
「…………心の準備……出来た?」
あっくんは私が追求してこない事を安堵するように息を吐くと、話を本題へ戻した――
正直な所、心の準備は全然出来ていない――
しーちゃんとあっくんの事で頭の中がぐるぐるしてる間に、あっくんが用事から戻ってきて、更なる衝撃発言に心が乱されたのだから――
(とにかく……まずはしーちゃんに謝らないと!)
こんな唐突にしーちゃんに会える日が来ると思っていなくて、それ以外の考えが出てこないまま、私は緊張の面持ちで頷いた――
あっくんは簡単に“注意事項”を説明してくれたものの、私は複雑な心境になった――
それは、私の姿や気配をあっくんの魔法で消して、その間は何があっても絶対声を出しちゃいけないというもの――
つまり、私の姿が見えているとしーちゃんが会ってくれないと言われているも同然だからだ――
「……じゃ、行こっか?」
あっくんはそう言って私に姿と気配を消す魔法をかけると、身体が徐々に消えていく過程にお子様本能が疼きだす――
「っ! わぁー……わたち、とうめいにんげん!」
私はウキウキとお子様本能爆発の大はしゃぎで、さっきまでの複雑な心境と緊張感はどこへやら――
「……そんなに喜ばれると思わなかったけど……バレちゃうから静かにね?」
「うん!」
私は気兼ねすること無く外に出れる事も重なって、すっかりハイテンションで室内を走り回った結果、あっくんの忠告も虚しく――
「っわあぁ!」
私が躓いて転びそうになるのを、あっくんがさも見えているが如く助けてくれた――
「……やっぱりやめる?」
あっくんは少し呆れ気味にそう言って揶揄う意地悪な笑みを浮かべつつ、透明化の魔法を一旦解いた――
「うぅ……こんどはじっとしてりゅからぁー」
(緊張が空回ってはしゃぎ過ぎた……ほんとお子ちゃまか!……何してんの私……)
私は子供の本能に抗えなかった自分にツッコミを入れて凹む――
「で、でも、いるばしょわかったのしゅごい!」
「…………僕は……探し慣れてるから」
ふと、頭に浮かんだ事で自身の失態を誤魔化すようにあっくんをおだてるも、あっくんはなぜか浮かない顔で答えた――
(あっくん、嬉しくなさそう。ほんとにすごい事だと思うのに……そんな顔させたかったんじゃないのに――)
やっぱり、あっくんには笑っていて欲しいという思いで、再び声を掛ける――
「……じゃあ、わたちがまいごになってもあんしんだね!」
「え?」
「だって、あっくんがぜったいみつけてくれりゅもん!」
「っ…………そーだね……」
私がにっこり笑って伝えた言葉に、あっくんは一瞬目を見開いたのも束の間、その表情は複雑そうに歪み、哀しげに微笑んで返事をした――
またしても私の予想とは違う反応で、やってしまった感が否めない気まずい空気になり、もう余計な事はしちゃいけないと悟って俯く――
「あ……ごめん……機嫌直して?」
あっくんは私を落ち込ませてしまったと思ったのか、私の目線の高さに合わせてしゃがむと、両手で優しく私の頬を包んだ――
「メティーは何も悪くないから……ね?」
あっくんはダメ押しとばかりの、許しを乞う子犬のようなどこか哀しげな目で首を傾げた――
(っ! だから近いし、破壊力半端ないんだってば!)
私はあっくんを直視出来ず、頬に添えられた手から逃れ、何度も頷いてわかった事をアピールしつつ、あっくんから少し離れた――
なんで私が離れたのかわかっていないキョトンとしたあっくんを横目に、私は火照った頬をパタパタと手で扇ぎつつ溜息を吐いた――
(私の心臓よくぞ耐えた! 褒めてつかわす!)
そんなふざけた冗談で気を紛らわせたりして、程よい緊張感が生まれた頃――
あっくんは再び私に透明化の魔法をかけてから黒い靄を出した――
私はあっくんの服の裾に捕まりつつ恐る恐る黒い靄を通ると、出た先の景色を見て思わず声を出しそうになって口を塞ぐ――
(ここ……しーちゃんと過ごした岩穴のあった所? あっくんはなんでここに……)
そう思いつつ再び周囲を眺めると、月明かりに照らされた岩壁が、岩穴が消えて泣きじゃくったあの日を思い出させて少し目が潤む――
「……シア……僕だよ。開けて?」
あっくんは叫ぶでもなく普通に語りかけた声だった、なのに――
程なくして岩壁からフッと懐かしい岩穴が現れ、私は複雑な気持ちになる――
(あの日……私の泣き叫んだ声も聞こえてた? なのに……しーちゃんは開けてくれなかった?……っ……どうして?)
泣かないように堪えた瞳は、いつ涙が零れてもおかしくない程に潤んでいた――
あっくんが歩く後を付いて行くと、そこには最後に見た7~8歳のしーちゃんではなく、少し成長した12~13歳ぐらいの血塗れのしーちゃんがいて、私の脳内はパニックになる――
(血塗れ!? 大きくなるのも早過ぎるし……一体どうなってるの――)
「あーあ……また……程々にしなよ?」
あっくんが声を掛けた内容を、私は聞き流す事が出来なかった――
(また? じゃあ前もこんな血塗れだったの?…………っ!)
懸命に駆け寄りたい衝動に耐えようと我慢したけれど、気付いた時にはしーちゃんに向かって駆け出していた――
「……しーちゃん!」
「「っ!?」」
私はあっくんとの約束を破って叫びながらしーちゃんにしがみつき、私の持てる全力でしーちゃんの傷を癒していた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
白い暖かな光がシアを包み、みるみるシアの傷が癒えていき、やがて光はおさまった――
「っ…………メティー?」
「……あーあ」
シアは姿の見えないよく知った“今も尚抱きついているぬくもり”に戸惑いつつそう呟くと、アビスはバツが悪そうに天を仰ぐ――
「アビス……どういう事?」
「…………はぁ……」
シアの追求する冷ややかな視線に、アビスは最早隠し通せる訳もなく諦めの溜息を吐いた――
アビスがメティーにかけた魔法を解くと、力を使い果たしてシアに抱き着いたまま眠るメティーの姿が現れた――
「っ!……メティー起きて……僕から離れて……」
シアはどこか不機嫌そうな顔付きで言葉ではメティーを拒絶するも、その声色は優しく無抵抗にジッとしていた――
(ったく……自分で引き剥がそうともしないでよく言うよ)
それを見たアビスが内心そう思いつつ呆れて声を掛ける――
「そのまま起きるまで寝かせてあげたら? 血塗れなシアを見たせいなんだし」
「っ…………早くメティーを連れて帰って」
シアは唇を噛み締めてから視線を逸らし、か細い声で呟いた――
「はぁ? そんな事したら僕がメティーに責められるのわかってて言ってる?」
「っ……お願いだから――」
「またそれ? 僕がその単語に弱いとでも思ってるなら、ありえないんだけど」
アビスの言葉にシアは何か思う所があるように微かに儚く微笑み、アビスはそれを見て溜息を吐いてから再び話を切り出す――
「……とりあえずさ、シアはちゃんとメティーと話せば?……てか、僕もシアの積もり積もった弁明をたっぷり聞かせてもらいたいかな……。最悪……僕の力を使ってでもね?」
アビスはそう言って、どこか哀しげにも何かに怒っているようにも見える目で、シアを射抜くように見据えた――
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
次回、メティーがずっと聞きたくても聞けなかったシアの謎が語られる!? ふたりの会話を遠目から眺めるアビスはシアと初めて再会した日の事を思い返していて!? サンセがランスの父の事を知る!? チョコランタに着いたふたりは!?
※近況ボードに次回予告についてのお詫び等色々書いてますので見て下さると嬉しいです。(近況ボードじゃなくて謝罪ボードと化していますが……苦笑)
メティーは思いがけない言葉にゴクリと唾を飲み込み、聞き間違いではない事を確認するように頭の中で繰り返した――
気になる点はあれども、会いたいかと聞かれれば悩む必要等なく――
「あいたい……しーちゃんにあわしぇて!」
そう言って真剣にあっくんを見つめると、あっくんは少し複雑そうな面持ちで微笑んだ――
「いーけど……たぶん、シアは望んでないし、怒る……かな……」
「っ!」
(望んでない? 怒る? っ……どう……して? やっぱり、私の事……嫌いに?)
「……先に用事済ませてくるから、メティーは心の準備でもしてて――」
あっくんは私の動揺を悟ったのか、セルフィーさんの荷物を手に取りつつそう言うと、黒い靄を出してその中へ消えた――
(っ……心の……準備――)
何を言われても私の中で“やっぱりやめる”という選択肢はなく、私はあっくんに言われるがままに動揺した心を静める努力をして、あっくんの帰りを待つのだった――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
アビスは黒い靄でセルフィーの部屋へと訪れた。夜中と言えども大人ならばまだ起きている人もいるであろう時刻だったが、既にセルフィーはベッドで寝息を立てていた――
(……寝るの早。んー……ここならさすがに起きてすぐ気付くよね?)
アビスはセルフィーを起こさないようにそっと枕元に荷物を置いた。
(んっと……あとは……話の途中でまた邪魔される前に、先に覗いとこっかな――)
アビスがそう思考して再び黒い靄で移動した先はロイドがよく居る研究室で、丁度何かを小箱に詰める作業をしている所だった――
ロイドは突如視界の片隅に現れたと言えども、一際異彩を放つアビスの存在にすぐに気付いて手を止めた――
「っ…………丁度いい所に来てくれた。この荷物をチョコランタのあの方へ届けてくれないか?」
ロイドが驚きを隠しつつ平然を装って話を切り出すと、アビスは呆れるように鼻で笑った――
(……ほら、やっぱり来て正解だった)
「ねぇ、僕を便利屋か何かと勘違いしてない? 僕は配達屋ではないんだけどー?」
「それは当然わかっているとも。本来ちゃんと配達の者に頼む手筈だった。でも、丁度お前が居るなら、早くて確実で安心して任せられるだろう?」
ロイドはアビスが気だるげに面倒くさがるのを宥めるように、極力機嫌を取る言葉を選んだつもりだった、が――
アビスはロイドの“失言”にピクッと反応した――
「へぇ、そうだよね……もう、あの箱はないもんね? 今後はどうやって僕を呼ぶ気だったのかなぁ?」
アビスは冷たい眼光とは裏腹に、ケロリとした口調で嫌味ったらしく強調してニヤリと嗤った。
ロイドはその冷たい眼光からアビスが言い含めた感情が脳内に聞こえてくるようだった――
――僕がアンタのした事知らないとでも思ってんの?――
(っ……肉片が少し再生する度に壊されたら、いつまで経っても復活出来ない……。つまり、私がディザルド様を逃がす事は必然……。それをアビスが知れば怒り狂って研究所にいる異形生物を全て殺し尽くすかと思えば、生かしているし……相変わらず何を考えてるのかわからない……一体何を企んでいる!?)
ロイドはアビスの冷たい眼光を直視出来ずに焦る苛立ちを心根に零し、唇を噛み締めて黙り込んだ――
アビスはロイドの悔しげな表情で大体の心情を察したのかクスリと笑った。
「どうやら……随分必死だったみたいだね? まぁ、僕も感情任せに暴れた過去をこれでも反省してるんだよ?」
アビスが飄々とした口ぶりで微笑むと、ロイドは目を細めて“嘘放け”と物言いたげな目でアビスを見据えた――
「ったく……しょーがないなぁ……これをあげるよ」
アビスはそう言ってビー玉サイズの黒い魔力石を作り出し、親指で弾くようにロイドの方へ飛ばすと、ロイドは驚きつつも何とか両手でキャッチした――
すると、その瞬間ロイドの脳裏にこれによく似たサイズの見覚えのある石が過ぎり、当時の“若き研究員の男”の声が脳内に響いた――
――“あとは、魔力石を装着すれば完成する”――
当時、ロイドはこの“若き研究員の男”の言葉を信じたが、裏切られた――
ロイドは当時の怒りに震えながら魔力石を凝視するように深く俯いた。その姿は狂気じみた恐ろしさすらあった――
「――アビス……これの正しい使い道は?」
アビスはロイドのその姿に全く動じることなく、どこか含みのある笑みを浮かべた――
「……ただ壊せば僕に伝わる……簡単でしょ?」
アビスはロイドの声が脳内に響いて呼び出されるのは不快極まりない故に、本来の使い方を教えなかった。
とは言っても、魔力石が壊れると魔力が作り主へと戻って石は消失する原理を教えただけで、デタラメな嘘をついたわけではない――
「……壊して伝わるだけ? フハハハハ――」
「……言っとくけど、壊したらまた作らないとなんだから、くだらない事で僕を呼び出さないでよね? じゃ、僕はもう行くから――」
アビスは突然ロイドが壊れたように嗤いだしたのを見て、手早く頼まれた荷物を受け取りつつ釘を刺す。
そして、更なる面倒事に巻き込まれるのを避ける様に黒い靄の中に消えて行った――
だが、既にロイドはアビスに関心がなく、頭の中は“若き研究員の男”の事で占めていた――
「(……私はまんまと奴に騙された訳だ……裏切り者には死より重い苦しみを……)フハハハハ――」
ロイドは恨みがましそうにボソリと呟くと、再び狂ったように嗤いだした声が室内に不気味に響いていた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一方、同時刻のマカダミアの廃墟のクロウの部屋では、クロウが収納家具の引き出しを開け、その中の何かに視線を落としていた――
クロウがその何かを取り出そうとした時、不意にクロウの背筋にゾクッと嫌な予感とも言える悪寒が走った――
「っ!」
クロウは身体を震わせ、息もみるみる荒くなり、ふらつく身体を支えるように引き出しを閉めたが、先程取り出そうとした何かが少しはみ出していた――
「……っ……はぁ……はぁ……」
クロウはふらつく足取りで何とかベッドに倒れ込むと、苦しげに蹲った――
(……まだ幼いメティーに人を殺めた事聞かせたバチが当たったかな……。本当は話す気なんてなかったのに、僕が優しいなんて言われたら、伝えずにはいれなかった……。僕を嫌ってくれてよかったのに……。メティー……どうか、僕の事は忘れて――)
クロウは朦朧とする意識の中そう思うと、そのまま気を失うように眠りに落ちた――
部屋の片隅の収納家具の引き出しからはみ出していた何か――
それは“紙切れ”で、紙の隅に手書きの文字が綴られていた――
――“L・F”と――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
同時刻のチョコランタ城の大臣の私室――
大臣は夕刻に神の捜索の定期報告に行った際のビターの態度を思い出して苛立っていた――
大臣の脳裏に、見下すように嘲笑うビターの姿が浮かぶ――
(※あくまでも大臣目線でそう見えてるだけで、ビターはちゃんと人の良さそうな笑みを浮かべてます)
「儂にはビターも知らぬ人脈があるというのに……青二才ごときが儂を見下すなんて許せん!」
大臣は苛立ちをぶつける様に机をバンと叩くと、強く叩き過ぎた故の痛みに悶える――
「っ! イタタ――」
何時ぞやのデジャブとも言えるどこかマヌケな光景は、大臣が相変わらずだと伝えている様だった――
大臣の部屋の窓の外に、そんな大臣の恥ずかしい現場を目撃した人影があった――
それは、研究所から黒い靄でチョコランタ城上空へ移動し、そこから黒い翼で窓の外まで来ていたアビスだ――
アビスは窓を叩こうとしていた手を止め、呆れた視線を大臣に送っていた――
(何してんだか……。てか、大臣の気配……アイツの気配が強くなった気がする……。タダでさえ奴らの中では一番大嫌いな部類だって言うのに――)
アビスは苛立つ気持ちを我慢しなければいけない事を憂鬱そうに大臣の部屋の窓を叩く――
すると、アビスに気付いた大臣は一気に上機嫌になり、媚びる様な胡散臭い笑みを浮かべつつ窓を開けた。
「おお! アビス! まさか、お前自ら儂の所へ来てくれるとは!……はぁ……相変わらず美しい瞳だ――」
大臣はアビスの綺麗な赤い宝石のような瞳に魅入られた様に、アビスの頬へと手を伸ばす、が――
アビスの軽蔑する様な冷たい眼光を前に、大臣の手は行き場を無くして下ろされた。
(……懸命な判断だね。もし触れてたら……その手がなくなってたと思うし――)
アビスのそんな心の声を代弁するかの冷たい視線で場は凍りつき、大臣はアビスの機嫌を損ねぬよう焦って取り繕いを始めた――
「そ、外じゃなんだから中に――」
「ここでいい。すぐ帰るし」
「そ、そうか……そ、そうだ! か、神探しは順調か?」
「…………まあまあ?」
「さ、さすがアビスだな! こ、こちらも王に報告する都合で兵や賊に探させてはいるが、当てにしていない……なんせ、お前以上に神探しに向いた者はいない……だから……た、頼りにしているぞ?」
「……ハイハイ、わかってる」
アビスは終始気だるい素っ気ない返事ばかりを繰り返し、ついに気まずい沈黙が訪れた――
「…………もう終わったんなら……はい、コレ――」
アビスはロイドに頼まれた小箱を見せると、大臣が当然受け取ろうと手を伸ばす、が――
アビスは余程大臣に手を触れられたくないのか、触れる寸前の所で小箱を渡さない攻防を何度か繰り返す――
その攻防は、遊ばれていると気付いた大臣が大人しく手の平を上向きに構える事で終わりを迎えた――
大臣はやっと手にした小箱を開けると、液体の入った小瓶を取り出し、ニヤリと嗤った――
「ついに人間用の試作品が完成したのか……喜ばしい事だが…………ケールからは何も?」
大臣には他にも“欲しているモノ”があったようで、小箱の中身が小瓶ひとつだけなのを不服そうにアビスに尋ねた。
「ん?……あー……アイツの肉片?」
アビスは何の事かわかっていたが、キョトンと考えるような素振りをしてから、ニヤリと笑っていきなり核心を突くと、大臣はわかりやすく焦りを見せた――
「……心配しなくても、アンタにはもう必要ないと思うけど?」
アビスがクスリと笑ってそう伝えると、大臣は意味を探るように黙り込んだ。
アビスはそれを見て意味深に微笑む――
「……大丈夫。いずれわかるよ――」
アビスはこれ以上の長居はしたくない思いから、その言葉を残して黒い靄の中に消えていった――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――シアに会いたい?――
――たぶん、シアは望んでないし……怒る……かな――
メティーがベッドでゴロゴロしながらあっくんを待つ間、さっきのあっくんの言葉が何度も頭の中で繰り返されていた――
しーちゃんが私に会う事を望んでないって言われたのは当然ショックだけど、それよりも引っかかるのは――
あっくんは“誰かさん”と言ったり、“しーちゃん”と言ったりして、知ってる素振りだった――
(……あっくんは間違いなくしーちゃんを知ってる。それでいて、会いたいか聞くぐらいだから居場所も心当たりあるって事だよね……)
思い返せば、しーちゃんにあっくんの事を話した時、喜ぶどころか浮かない顔をしてうわの空になっていた――
(たぶん、しーちゃんもあっくんを知ってた……のかな?)
それに、何かに怯えるように震えて縋るように抱きしめられた事もあったっけ――
「っ! もしかちて……しーちゃんは、あっくんにあいたくなかった?」
「へぇ……メティー鋭いね」
思わずそんな仮説が口から零れると、どこからともなくあっくんの声が聞こえ、私はビクッと驚きつつ声の方向を見ると――
黒い靄からあっくんがあっけらかんと楽しげに顔を覗かせていた。時間にして、あっくんは出掛けてから15分少々で戻ってきた――
「ち、ちがうよ!? い、いまのは――」
「酷いよねぇ……シアは――」
あっくんに対して失礼な事を言ったのを訂正したかったのに、当の本人は肯定とも取れる呟きを零しながら黒い靄から出てくると、更に言葉を続けた――
「……僕が長い年月に気が狂いそうな時も、ずーーっと隠れて傍観してたんだよ?」
(……ん?)
「……僕はずーーっと探してたのに、かーーなり長いこと避けられててさ……。よっぽど僕に会いたくなかったんだろうね」
あっくんは冗談とも本気とも取れるような言い方をして、意味深な笑みを浮かべた――
私にはあっくんの言い方が冗談には聞こえず、それが数週間や数ヶ月なんて規模じゃないと思えた――
「あっくんって、なんしゃい?」
「まぁ、つい最近会っちゃったんだけど」
ほぼ同時に私とあっくんが喋り、私はあっくんの言葉を遅れて理解し、頭の中が一瞬真っ白になってからパニックになる――
(え……居場所に心当たりあるどころか――)
「しーちゃんに……あった……?」
「うん……メティーが大泣きしたあの日に……」
(っ! あの日……)
頭の中にあの日の大泣きする自分の姿を思い出すと、穴があったら入りたいぐらいの恥ずかしさが込み上げてくる――
あっくんもその時を思い出しているのか、ニヤリと笑ったあっくんと目が合った――
(っ! なんで笑うの!? もしかしてからかわれてる!? あっくんってこんな意地悪だった!? あ! これで私の聞いた事はぐらかすつもり!?)
私は恥ずかしさで赤くなった頬を膨らませて拗ねつつ、尋ねた返事を促すようにあっくんから目を逸らさなかった――
「ん? あー……僕が何歳かそんなに気になる?」
「うん!」
あっくんは私が気にする事を意外そうにクスリと笑った。私が諦めることなくあっくんを見つめ続けると、あっくんは少し困ったように溜息を吐いた――
「んー……僕、何歳なんだろ? 途中からもう数えてなかったしなぁ……。たぶん、数百年以上は生きてるとは思うけど?」
「す、すうひゃく!?」
私は予想を遥かに上回る年月に絶句する――
それと同時に、脳裏に初めてあっくんに会った時の哀しげに微笑んで抱きしめられた事や、“僕の事忘れちゃった?”と言われた事が次々過ぎっていく――
(っ……もしかしなくても、数百年以上ぶりに会えたって事!? そりゃ、あんな顔で抱きしめるのも当然だよ……。なのに、私は懐かしさ以外は何もわからないなんて…………最低過ぎる!)
「っ……ごめんねあっくん……わたち、わからなくて……」
「……なんで謝るの?」
「わたちが、はやくおもいだしぇば――」
私の中でただ漠然と、前世の自分を思い出せば、夢のあの子の正体も、この世界の事もわかる――
そんな“不確かな予感”がしていた――
あっくんは伏し目がちに伝えた私の言葉を遮るように人差し指を私の口に当てた。
ゆっくりあっくんへ視線を向けると、怖いぐらいの真剣な眼差しとぶつかる――
「…………無理に思い出さなくていいよ。それが……メティーの為でもあるから――」
「……え?」
私は言われた意味はわかるものの、どうして思い出さくていいのか、なぜそれが私の為なのかわからなかった。
けれど、これ以上聞いたらいけない空気を感じ取り、ぼんやり考え込む――
(なんだか……しーちゃんとあっくん、慰め方が正反対だなぁ……。しーちゃんは“いつか思い出せるよ”って言ってくれて、あっくんは“無理に思い出さなくていい”だもんね――)
ふと、その当時の幼いしーちゃんが哀しげに微笑んだ場面が思い浮かんだ――
ただそれだけなのに、ギュッと胸が締め付けられるようだった――
(……もしかしたら、しーちゃんは最初から私から離れるつもりだったのかな……)
当時は深く気にしていなかったけれど、しーちゃんの幼い子供と思えない何かを悟ってるかのような哀しげな微笑みに、そんな“含み”があったんじゃないかと想像して気分が沈む――
「…………心の準備……出来た?」
あっくんは私が追求してこない事を安堵するように息を吐くと、話を本題へ戻した――
正直な所、心の準備は全然出来ていない――
しーちゃんとあっくんの事で頭の中がぐるぐるしてる間に、あっくんが用事から戻ってきて、更なる衝撃発言に心が乱されたのだから――
(とにかく……まずはしーちゃんに謝らないと!)
こんな唐突にしーちゃんに会える日が来ると思っていなくて、それ以外の考えが出てこないまま、私は緊張の面持ちで頷いた――
あっくんは簡単に“注意事項”を説明してくれたものの、私は複雑な心境になった――
それは、私の姿や気配をあっくんの魔法で消して、その間は何があっても絶対声を出しちゃいけないというもの――
つまり、私の姿が見えているとしーちゃんが会ってくれないと言われているも同然だからだ――
「……じゃ、行こっか?」
あっくんはそう言って私に姿と気配を消す魔法をかけると、身体が徐々に消えていく過程にお子様本能が疼きだす――
「っ! わぁー……わたち、とうめいにんげん!」
私はウキウキとお子様本能爆発の大はしゃぎで、さっきまでの複雑な心境と緊張感はどこへやら――
「……そんなに喜ばれると思わなかったけど……バレちゃうから静かにね?」
「うん!」
私は気兼ねすること無く外に出れる事も重なって、すっかりハイテンションで室内を走り回った結果、あっくんの忠告も虚しく――
「っわあぁ!」
私が躓いて転びそうになるのを、あっくんがさも見えているが如く助けてくれた――
「……やっぱりやめる?」
あっくんは少し呆れ気味にそう言って揶揄う意地悪な笑みを浮かべつつ、透明化の魔法を一旦解いた――
「うぅ……こんどはじっとしてりゅからぁー」
(緊張が空回ってはしゃぎ過ぎた……ほんとお子ちゃまか!……何してんの私……)
私は子供の本能に抗えなかった自分にツッコミを入れて凹む――
「で、でも、いるばしょわかったのしゅごい!」
「…………僕は……探し慣れてるから」
ふと、頭に浮かんだ事で自身の失態を誤魔化すようにあっくんをおだてるも、あっくんはなぜか浮かない顔で答えた――
(あっくん、嬉しくなさそう。ほんとにすごい事だと思うのに……そんな顔させたかったんじゃないのに――)
やっぱり、あっくんには笑っていて欲しいという思いで、再び声を掛ける――
「……じゃあ、わたちがまいごになってもあんしんだね!」
「え?」
「だって、あっくんがぜったいみつけてくれりゅもん!」
「っ…………そーだね……」
私がにっこり笑って伝えた言葉に、あっくんは一瞬目を見開いたのも束の間、その表情は複雑そうに歪み、哀しげに微笑んで返事をした――
またしても私の予想とは違う反応で、やってしまった感が否めない気まずい空気になり、もう余計な事はしちゃいけないと悟って俯く――
「あ……ごめん……機嫌直して?」
あっくんは私を落ち込ませてしまったと思ったのか、私の目線の高さに合わせてしゃがむと、両手で優しく私の頬を包んだ――
「メティーは何も悪くないから……ね?」
あっくんはダメ押しとばかりの、許しを乞う子犬のようなどこか哀しげな目で首を傾げた――
(っ! だから近いし、破壊力半端ないんだってば!)
私はあっくんを直視出来ず、頬に添えられた手から逃れ、何度も頷いてわかった事をアピールしつつ、あっくんから少し離れた――
なんで私が離れたのかわかっていないキョトンとしたあっくんを横目に、私は火照った頬をパタパタと手で扇ぎつつ溜息を吐いた――
(私の心臓よくぞ耐えた! 褒めてつかわす!)
そんなふざけた冗談で気を紛らわせたりして、程よい緊張感が生まれた頃――
あっくんは再び私に透明化の魔法をかけてから黒い靄を出した――
私はあっくんの服の裾に捕まりつつ恐る恐る黒い靄を通ると、出た先の景色を見て思わず声を出しそうになって口を塞ぐ――
(ここ……しーちゃんと過ごした岩穴のあった所? あっくんはなんでここに……)
そう思いつつ再び周囲を眺めると、月明かりに照らされた岩壁が、岩穴が消えて泣きじゃくったあの日を思い出させて少し目が潤む――
「……シア……僕だよ。開けて?」
あっくんは叫ぶでもなく普通に語りかけた声だった、なのに――
程なくして岩壁からフッと懐かしい岩穴が現れ、私は複雑な気持ちになる――
(あの日……私の泣き叫んだ声も聞こえてた? なのに……しーちゃんは開けてくれなかった?……っ……どうして?)
泣かないように堪えた瞳は、いつ涙が零れてもおかしくない程に潤んでいた――
あっくんが歩く後を付いて行くと、そこには最後に見た7~8歳のしーちゃんではなく、少し成長した12~13歳ぐらいの血塗れのしーちゃんがいて、私の脳内はパニックになる――
(血塗れ!? 大きくなるのも早過ぎるし……一体どうなってるの――)
「あーあ……また……程々にしなよ?」
あっくんが声を掛けた内容を、私は聞き流す事が出来なかった――
(また? じゃあ前もこんな血塗れだったの?…………っ!)
懸命に駆け寄りたい衝動に耐えようと我慢したけれど、気付いた時にはしーちゃんに向かって駆け出していた――
「……しーちゃん!」
「「っ!?」」
私はあっくんとの約束を破って叫びながらしーちゃんにしがみつき、私の持てる全力でしーちゃんの傷を癒していた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
白い暖かな光がシアを包み、みるみるシアの傷が癒えていき、やがて光はおさまった――
「っ…………メティー?」
「……あーあ」
シアは姿の見えないよく知った“今も尚抱きついているぬくもり”に戸惑いつつそう呟くと、アビスはバツが悪そうに天を仰ぐ――
「アビス……どういう事?」
「…………はぁ……」
シアの追求する冷ややかな視線に、アビスは最早隠し通せる訳もなく諦めの溜息を吐いた――
アビスがメティーにかけた魔法を解くと、力を使い果たしてシアに抱き着いたまま眠るメティーの姿が現れた――
「っ!……メティー起きて……僕から離れて……」
シアはどこか不機嫌そうな顔付きで言葉ではメティーを拒絶するも、その声色は優しく無抵抗にジッとしていた――
(ったく……自分で引き剥がそうともしないでよく言うよ)
それを見たアビスが内心そう思いつつ呆れて声を掛ける――
「そのまま起きるまで寝かせてあげたら? 血塗れなシアを見たせいなんだし」
「っ…………早くメティーを連れて帰って」
シアは唇を噛み締めてから視線を逸らし、か細い声で呟いた――
「はぁ? そんな事したら僕がメティーに責められるのわかってて言ってる?」
「っ……お願いだから――」
「またそれ? 僕がその単語に弱いとでも思ってるなら、ありえないんだけど」
アビスの言葉にシアは何か思う所があるように微かに儚く微笑み、アビスはそれを見て溜息を吐いてから再び話を切り出す――
「……とりあえずさ、シアはちゃんとメティーと話せば?……てか、僕もシアの積もり積もった弁明をたっぷり聞かせてもらいたいかな……。最悪……僕の力を使ってでもね?」
アビスはそう言って、どこか哀しげにも何かに怒っているようにも見える目で、シアを射抜くように見据えた――
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
次回、メティーがずっと聞きたくても聞けなかったシアの謎が語られる!? ふたりの会話を遠目から眺めるアビスはシアと初めて再会した日の事を思い返していて!? サンセがランスの父の事を知る!? チョコランタに着いたふたりは!?
※近況ボードに次回予告についてのお詫び等色々書いてますので見て下さると嬉しいです。(近況ボードじゃなくて謝罪ボードと化していますが……苦笑)
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