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第2章 神奮闘~マカダミア王国編~
第24話 月夜の攻防
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――メティーが魔力切れで意識を失った日――カイトがメティーを連れ帰り、カイトの気配がこの場から遠ざかって行った――
(さてと……早速問い詰めに行こうかな)
アビスは自身の魔法で消していた姿を現し、岩壁にある結界の亀裂を眺め、不敵な笑みを浮かべた。
――アビスが岩壁のそばまで来ると、突然地面から土で出来た巨大な動く手が生えてきた。土の手は頑丈な岩のような材質に変わってアビスの行く手を阻む。
「……ふーん。僕の邪魔をするつもり?」
(アイツも随分精霊に好かれてるみたいだね……)
アビスは楽しげにニヤリと笑った。
岩の手はアビス目掛けて襲いかかる――
「邪魔しないでよ」
アビスの瞳が赤く光を帯びて輝き、冷たく睨みつける――
岩の手はアビスを掴みかかろうとする体勢でピタリと動きを止めたかと思うと、一瞬にして崩れ散った。
「……この力を持つ僕には無意味だよ?」
アビスは歩みを進めながら冷たく言い捨てた。
――アビスは結界のある岩壁を近くで眺める。
(……結界の上にただの岩壁に見えるように細工してたのか。……結界に亀裂が入らなきゃ気付く事はなかったかもね)
「……ねえ、聞こえてるんでしょ? だったら、結界解いてよ」
――問い掛けになんの変化も反応もなく、アビスはまた楽しげにニヤリと笑う。
「……解かないなら力ずくで壊させてもらうよ」
アビスは結界の岩壁に触れると、自身の魔力を結界に流し始めた――
アビスの手が闇の力の黒いオーラに包まれ、触れている場所から火花のようなものがバチバチと音を立て飛び散り、アビスの頬を掠め血が流れる。
結界は、壊そうとするものにダメージを与える為だ――
結界はそれでも壊れそうで壊れない状態を維持していた。
「……まだ抵抗するんだ? 大人しく解いた方が身の為だよ?」
アビスは余裕な表情を変えることなく、呆れたように問い掛ける。
アビスが“身の為”と言うのは、結界が壊れる時は結界を作った者に今まで流された魔力が一気に降り注ぐ事を意味し、自殺行為だと言う警告――
それでもなんの変化も反応もない――
「……あーあ。どうなっても知らないよ?」
アビスは声色は楽しげにクスリと笑うが、目は冷たく前を見据え、一気に強い魔力を送り始めた――
一層火花が激しく飛び散り、その火花がアビスの身体を容赦なく血の赤に染めていく。
既にアビス自身も相当なダメージにも関わらず、余裕の笑みが消える事はない――
「……やっぱり、君が――?」
アビスの言葉はバチバチとした火花の音でかき消された。
すると、その言葉を聞いたかのタイミングで結界が解かれ、岩穴が姿を現したものの、アビスはその事に違和感を感じる――
(僕の予想通りだから必死に抵抗してたんじゃないって事?)
アビスは地面に血を滴りながら、尚も平然な顔つきで奥へと歩む――
「――っ!」
アビスが奥で目にしたのは、血塗れで倒れたシアの姿だった――
(結界が壊れてのダメージじゃないはず――)
アビスは自然とシアのそばへ駆け寄り、シアに触れようと手を伸ばすと、シアはその手をバシッと払いのけた。
シアを案じたアビスの顔つきも一瞬にして冷たい表情に変わり、ふたりの間に緊迫感が漂う――
シアは力が入らない腕で何とか起き上がり、その手は部分だけ獣化させた手で、爪は血で赤く染まり、身体にはその爪で切り裂いたような傷がいくつもあった――
「……その傷……自分でやったの?」
アビスの問いにシアは顔を背けて黙り込む――
「……メティーが知ったら、また泣いちゃうかもね?」
アビスの言葉にシアはピクリと反応した。
「……メティーには……言わないで」
シアは唇を噛み締め言葉を絞り出し、この時初めてアビスをちゃんと見た。その顔は懇願しているようで、何かを恐れているようにも見えた。
「……なら、僕の質問に答えてくれる?」
アビスの問い掛けに、シアは再び視線を逸らし黙り込んだ――
「……たしか、シアって言うんだっけ? シアは僕と同じモノ?」
――しばらく静まり返った岩穴の中で、シアは重い口を開いた。
「…………僕が君に言える事は、僕が――――に――し――――だけ」
シアが、アビスだけに聞こえるような声で哀しげに呟いた。
「……は? 何それ……質問の答えがそれなわけ?」
アビスは平然を保とうとしたものの、動揺を隠しきれず、苛立ちにも似た複雑な気持ちに声が少し震えていた。
「…………お願い」
「……お願いされても――」
アビスがそう言いかけた時、アビスは異変を感じ取った。
(……このムカつく気配……)
普段飄々としたアビスが、珍しく全身の血が沸騰するような苛立ちや、不快、嫌悪を前面に見せ殺気立つ。
「……呼ばれたから行かないと……」
「っ……大丈夫なの?」
シアも何かを感じ取っていたのか、アビスへ不安げに声を掛けた。
「へぇ? 僕の心配してくれるんだ?……もしかして……ううん、何でもない」
アビスは先程までシアに冷たい目を向けていたとは思えぬ程、何か察したように優しい目で微笑むと、シアもそれに返すように微笑んだ――
「……さっきの話はまた今度。その時は結界すぐ解いてよね……面倒だし」
(気持ち悪いし)
アビスの言葉にシアは察したようにクスリと笑い「わかった」と返すと、ふたりの纏う雰囲気は最初と打って変わって穏やかなものへと変わっていた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――ディザルド様……」
マカダミア研究所の薄暗い研究室で、宝箱のような形の鍵付きの古い木箱に入れられた【蠢く小さな塊】を見つめ、そう呟く人影があった。
「ケールの奴……また勝手に使ったようだ。私が気付いてないとでも?……やれやれ、気付いてない振りも存外面倒だ……」
長い黒髪の白衣を着た30代半ばの男が溜息を吐くと、その男の後ろに黒い靄が現れた。
「……その言葉、僕もそのまま返したいぐらいだね」
「っ! アビス……もう戻ったのか……」
気だるそうに黒い靄から出てきたアビスに、その男は焦ったように振り返り、血塗れのアビスに驚き言葉を失う。
「もうって……僕をそれで呼んだのはアンタでしょ? ただでさえ邪魔されてムカついてるのに、それで呼ばれたせいで余計腹立たしい……だから壊していい?」
アビスは木箱を睨みながら、狂気的にニヤリと嗤う。
「ま、待て! せっかくこの大きさまで再生したのに……」
「どうせ復活しようが僕がすぐ壊すんだから……いつ壊しても同じでしょ?」
アビスはそう冷たい声で言うと、凄まじい殺気を放ち、その反動で木箱のそばに置かれた試験管が粉々に砕け散った。
「っ……そ、そういえば、邪魔されたと言っていたな? 珍しく怪我してるようだし……何してたんだ?」
男はアビスの殺気に怯みながら何とか話を変えるも逆効果で、アビスの怒りの矛先が男へと移る。
「……僕がどこで何しようがアンタに関係ないでしょ?」
「そ、そうだな……」
冷や汗を浮かべ言葉を失った男に対して、アビスは呆れた溜息を吐いて殺気を鎮めた。
「…………で? 何の用?」
「……マカダミアの森に実験体を1匹放った……」
「……ああ、確かにいるね。それを壊していいって事?」
アビスはその気配を感じとってニヤリと嗤う。
「いや、データを取りたい。冒険者が居合わせれば戦わせ様子見、民間人の場合はお前が助けて手加減して戦って観察結果を教えろ」
「…………」
(偉そーに)
アビスが内心そう思いながら無言で男を冷たく睨むと、男は咳払いをして「た、頼めるか?」と上擦った声で苦笑いした。
「……了解。戻ったばっかだから、少しゆっくりしてからでいいでしょ?」
アビスは気だるく言い捨て黒い靄を出し、消えた――
「――ディザルド様……やはりアビスを引き入れたのは間違いだったのでは?」
男は古い木箱に入れられた【蠢く小さな塊】を見つめ呟いた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――黒い靄は、アビスしか知らない研究所施設周辺にあるアビスの住処へと通じていた――
アビスは、天井に人ひとり通れる程の穴が空いた地下の空洞の壁にもたれかかり、ずり落ちるように力なく座りこむ――
「……もう塞がってきた……気持ち悪」
アビスの全身を切り刻むようについたダメージは、アビスの言葉通りゆっくり塞がっていく――
(この塞がってく感覚は一生好きにはなれないね……)
「もう少しゆっくり出来ると思ったのに……」
アビスは傷の塞がる様を眺め、思った程休めないと悟り気だるく呟く。
(――また今度とは言ったけど……)
アビスはシアのお願いを思い返し、長い溜息を吐いた――
「…………どうしよっか……」
天井から差し込む月の光が、アビスの声同様に弱々しく照らしていた――
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
【おまけの会話~アビス&土の精霊ノーム~】
※その後、もし話したらのギャグ的な会話なので実際は喋ってないです
ノーム「アビス! わしが許可出した土を見せ場なく無力化しおって!」
※見た目おじいちゃんの土の精霊
アビス「えー……僕なりの優しさなんだけど?」
ノ「優しいなら見せ場くれてもいいじゃろう!?」
ア「……そーすると、痛め付けて最悪死んじゃうかもだけど……その方がよかった?」
ノ「むぐっ」
――アビスがニヤリと笑い、ノームは黙り込む――
ア「土爺が前怒ったから優しくしてあげたのになー」
――楽しげに揶揄うような笑みを浮かべるアビス――
※土爺はアビスがノームにつけたアビス風の呼び名
※前に名前すらない土の下位精霊と暇つぶしで遊んだ(戦った)結果、瀕死状態にしてノームが怒った事があるらしい
ノ「え、偉いのう! さすがアビスじゃ!」
ア「でしょ?」
――アビスの機嫌を取るように振る舞うノームに無邪気にニッコリ笑うアビス――
※風の精霊シルフの対応に関しては、メティーの件でキレてたからであって、アビスは通常時だと子供っぽい一面も持ってます
――おまけおしまい――
次回は、マカダミアへ向けて出発したメティー達……既に危険フラグが立ってるけど……どうなる!?
(さてと……早速問い詰めに行こうかな)
アビスは自身の魔法で消していた姿を現し、岩壁にある結界の亀裂を眺め、不敵な笑みを浮かべた。
――アビスが岩壁のそばまで来ると、突然地面から土で出来た巨大な動く手が生えてきた。土の手は頑丈な岩のような材質に変わってアビスの行く手を阻む。
「……ふーん。僕の邪魔をするつもり?」
(アイツも随分精霊に好かれてるみたいだね……)
アビスは楽しげにニヤリと笑った。
岩の手はアビス目掛けて襲いかかる――
「邪魔しないでよ」
アビスの瞳が赤く光を帯びて輝き、冷たく睨みつける――
岩の手はアビスを掴みかかろうとする体勢でピタリと動きを止めたかと思うと、一瞬にして崩れ散った。
「……この力を持つ僕には無意味だよ?」
アビスは歩みを進めながら冷たく言い捨てた。
――アビスは結界のある岩壁を近くで眺める。
(……結界の上にただの岩壁に見えるように細工してたのか。……結界に亀裂が入らなきゃ気付く事はなかったかもね)
「……ねえ、聞こえてるんでしょ? だったら、結界解いてよ」
――問い掛けになんの変化も反応もなく、アビスはまた楽しげにニヤリと笑う。
「……解かないなら力ずくで壊させてもらうよ」
アビスは結界の岩壁に触れると、自身の魔力を結界に流し始めた――
アビスの手が闇の力の黒いオーラに包まれ、触れている場所から火花のようなものがバチバチと音を立て飛び散り、アビスの頬を掠め血が流れる。
結界は、壊そうとするものにダメージを与える為だ――
結界はそれでも壊れそうで壊れない状態を維持していた。
「……まだ抵抗するんだ? 大人しく解いた方が身の為だよ?」
アビスは余裕な表情を変えることなく、呆れたように問い掛ける。
アビスが“身の為”と言うのは、結界が壊れる時は結界を作った者に今まで流された魔力が一気に降り注ぐ事を意味し、自殺行為だと言う警告――
それでもなんの変化も反応もない――
「……あーあ。どうなっても知らないよ?」
アビスは声色は楽しげにクスリと笑うが、目は冷たく前を見据え、一気に強い魔力を送り始めた――
一層火花が激しく飛び散り、その火花がアビスの身体を容赦なく血の赤に染めていく。
既にアビス自身も相当なダメージにも関わらず、余裕の笑みが消える事はない――
「……やっぱり、君が――?」
アビスの言葉はバチバチとした火花の音でかき消された。
すると、その言葉を聞いたかのタイミングで結界が解かれ、岩穴が姿を現したものの、アビスはその事に違和感を感じる――
(僕の予想通りだから必死に抵抗してたんじゃないって事?)
アビスは地面に血を滴りながら、尚も平然な顔つきで奥へと歩む――
「――っ!」
アビスが奥で目にしたのは、血塗れで倒れたシアの姿だった――
(結界が壊れてのダメージじゃないはず――)
アビスは自然とシアのそばへ駆け寄り、シアに触れようと手を伸ばすと、シアはその手をバシッと払いのけた。
シアを案じたアビスの顔つきも一瞬にして冷たい表情に変わり、ふたりの間に緊迫感が漂う――
シアは力が入らない腕で何とか起き上がり、その手は部分だけ獣化させた手で、爪は血で赤く染まり、身体にはその爪で切り裂いたような傷がいくつもあった――
「……その傷……自分でやったの?」
アビスの問いにシアは顔を背けて黙り込む――
「……メティーが知ったら、また泣いちゃうかもね?」
アビスの言葉にシアはピクリと反応した。
「……メティーには……言わないで」
シアは唇を噛み締め言葉を絞り出し、この時初めてアビスをちゃんと見た。その顔は懇願しているようで、何かを恐れているようにも見えた。
「……なら、僕の質問に答えてくれる?」
アビスの問い掛けに、シアは再び視線を逸らし黙り込んだ――
「……たしか、シアって言うんだっけ? シアは僕と同じモノ?」
――しばらく静まり返った岩穴の中で、シアは重い口を開いた。
「…………僕が君に言える事は、僕が――――に――し――――だけ」
シアが、アビスだけに聞こえるような声で哀しげに呟いた。
「……は? 何それ……質問の答えがそれなわけ?」
アビスは平然を保とうとしたものの、動揺を隠しきれず、苛立ちにも似た複雑な気持ちに声が少し震えていた。
「…………お願い」
「……お願いされても――」
アビスがそう言いかけた時、アビスは異変を感じ取った。
(……このムカつく気配……)
普段飄々としたアビスが、珍しく全身の血が沸騰するような苛立ちや、不快、嫌悪を前面に見せ殺気立つ。
「……呼ばれたから行かないと……」
「っ……大丈夫なの?」
シアも何かを感じ取っていたのか、アビスへ不安げに声を掛けた。
「へぇ? 僕の心配してくれるんだ?……もしかして……ううん、何でもない」
アビスは先程までシアに冷たい目を向けていたとは思えぬ程、何か察したように優しい目で微笑むと、シアもそれに返すように微笑んだ――
「……さっきの話はまた今度。その時は結界すぐ解いてよね……面倒だし」
(気持ち悪いし)
アビスの言葉にシアは察したようにクスリと笑い「わかった」と返すと、ふたりの纏う雰囲気は最初と打って変わって穏やかなものへと変わっていた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――ディザルド様……」
マカダミア研究所の薄暗い研究室で、宝箱のような形の鍵付きの古い木箱に入れられた【蠢く小さな塊】を見つめ、そう呟く人影があった。
「ケールの奴……また勝手に使ったようだ。私が気付いてないとでも?……やれやれ、気付いてない振りも存外面倒だ……」
長い黒髪の白衣を着た30代半ばの男が溜息を吐くと、その男の後ろに黒い靄が現れた。
「……その言葉、僕もそのまま返したいぐらいだね」
「っ! アビス……もう戻ったのか……」
気だるそうに黒い靄から出てきたアビスに、その男は焦ったように振り返り、血塗れのアビスに驚き言葉を失う。
「もうって……僕をそれで呼んだのはアンタでしょ? ただでさえ邪魔されてムカついてるのに、それで呼ばれたせいで余計腹立たしい……だから壊していい?」
アビスは木箱を睨みながら、狂気的にニヤリと嗤う。
「ま、待て! せっかくこの大きさまで再生したのに……」
「どうせ復活しようが僕がすぐ壊すんだから……いつ壊しても同じでしょ?」
アビスはそう冷たい声で言うと、凄まじい殺気を放ち、その反動で木箱のそばに置かれた試験管が粉々に砕け散った。
「っ……そ、そういえば、邪魔されたと言っていたな? 珍しく怪我してるようだし……何してたんだ?」
男はアビスの殺気に怯みながら何とか話を変えるも逆効果で、アビスの怒りの矛先が男へと移る。
「……僕がどこで何しようがアンタに関係ないでしょ?」
「そ、そうだな……」
冷や汗を浮かべ言葉を失った男に対して、アビスは呆れた溜息を吐いて殺気を鎮めた。
「…………で? 何の用?」
「……マカダミアの森に実験体を1匹放った……」
「……ああ、確かにいるね。それを壊していいって事?」
アビスはその気配を感じとってニヤリと嗤う。
「いや、データを取りたい。冒険者が居合わせれば戦わせ様子見、民間人の場合はお前が助けて手加減して戦って観察結果を教えろ」
「…………」
(偉そーに)
アビスが内心そう思いながら無言で男を冷たく睨むと、男は咳払いをして「た、頼めるか?」と上擦った声で苦笑いした。
「……了解。戻ったばっかだから、少しゆっくりしてからでいいでしょ?」
アビスは気だるく言い捨て黒い靄を出し、消えた――
「――ディザルド様……やはりアビスを引き入れたのは間違いだったのでは?」
男は古い木箱に入れられた【蠢く小さな塊】を見つめ呟いた――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――黒い靄は、アビスしか知らない研究所施設周辺にあるアビスの住処へと通じていた――
アビスは、天井に人ひとり通れる程の穴が空いた地下の空洞の壁にもたれかかり、ずり落ちるように力なく座りこむ――
「……もう塞がってきた……気持ち悪」
アビスの全身を切り刻むようについたダメージは、アビスの言葉通りゆっくり塞がっていく――
(この塞がってく感覚は一生好きにはなれないね……)
「もう少しゆっくり出来ると思ったのに……」
アビスは傷の塞がる様を眺め、思った程休めないと悟り気だるく呟く。
(――また今度とは言ったけど……)
アビスはシアのお願いを思い返し、長い溜息を吐いた――
「…………どうしよっか……」
天井から差し込む月の光が、アビスの声同様に弱々しく照らしていた――
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
【おまけの会話~アビス&土の精霊ノーム~】
※その後、もし話したらのギャグ的な会話なので実際は喋ってないです
ノーム「アビス! わしが許可出した土を見せ場なく無力化しおって!」
※見た目おじいちゃんの土の精霊
アビス「えー……僕なりの優しさなんだけど?」
ノ「優しいなら見せ場くれてもいいじゃろう!?」
ア「……そーすると、痛め付けて最悪死んじゃうかもだけど……その方がよかった?」
ノ「むぐっ」
――アビスがニヤリと笑い、ノームは黙り込む――
ア「土爺が前怒ったから優しくしてあげたのになー」
――楽しげに揶揄うような笑みを浮かべるアビス――
※土爺はアビスがノームにつけたアビス風の呼び名
※前に名前すらない土の下位精霊と暇つぶしで遊んだ(戦った)結果、瀕死状態にしてノームが怒った事があるらしい
ノ「え、偉いのう! さすがアビスじゃ!」
ア「でしょ?」
――アビスの機嫌を取るように振る舞うノームに無邪気にニッコリ笑うアビス――
※風の精霊シルフの対応に関しては、メティーの件でキレてたからであって、アビスは通常時だと子供っぽい一面も持ってます
――おまけおしまい――
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