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第1章 神奮励~チョコランタ王国編~
第15話 女神誕生祭~3年目の朝~
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――メシスくんとの出会いから3日後の朝を、いつもの岩穴で迎えた。
後に聞いてわかった事がある。メシスくんはラビくん達に、ちゃんと外に出て避難するように伝えていたらしい。
あんな威力の技だもんね……最悪の事態になる可能性だってあるわけだもんね。メシスくんは、僕は優しくないと言いつつも、やっぱり優しいと思うんだけどなぁ
街の見取り図を把握して、技を使ってピッタリ儀式の広間で止めたのは――大量の土砂が出ることもわかった上で、あの広間に繋げるのがベストだと計算されていたんだとしたら――いろいろすごすぎる!
あ! 広間でしーちゃんが狩った猪料理の準備をしていたのも、外に移動させて料理していたから、あとでちゃーんとみんなで美味しくいただきました! 大事な命を奪っておいて粗末にできないもんね!
あと、あのプライベートビーチだけど、遠浅になっていて、向かいにある無人島――その名もカカーオ島に渡って狩りが出来るんだって! 今度行ってみたいなぁ。
果たしてメシスくんはどこまでわかった上でやったのか――謎すぎる――
――謎といえば、不思議なのはしーちゃん。
最初に【メシアとメシスの絵本】を教えてくれたしーちゃんなら、きっと喜んでくれると思って、メシスくんに会った事を教えてから、うわの空でボンヤリするようになった。
それに、顔色が悪くなって辛そうになる頻度が増えている。
私が心配してそばに行くと、泣きそうな顔で縋るように抱きしめられ、何かを恐れるように怯えて震えてる。
――こんな様子のしーちゃんに、聞きたかった事を聞くのは無理だ――
――ふと、岩穴の外がザワザワと何だか賑やかになってきた。
「おしょと、なんだろー?」
「……今日は、女神誕生祭の日だよ」
ギュッとくっついていた身体を離し、行ってみたい! と言おうとして思いとどまる。
こんな状態のしーちゃんをお祭りに連れてく無理をさせられない――再びギュッとしーちゃんにしがみつく。
「……さすがに行くのは無理だけど、上からのぞいてきたら?」
「え?」
「……上から教会が見えるでしょ? そこに人間がメティーに祈りを捧げに来るんだ」
「……しーちゃんもいっちょにのぞこー?」
「……僕は待ってる。すぐそこだから、何かあれば助けに行けるし」
――そう言われてひとりで見に行くことになった。
私はフード付きマントを羽織り、フードを被って「いってきましゅ!」としーちゃんに元気よく言うと「……はしゃいで下に落ちないようにね」としーちゃんが微笑んで見送ってくれた。
いざ、教会の裏の崖上へ向かって歩き出す。
ひとりで森を歩くのは、サンセと会った日を思い出して、正直まだ怖い。サンセが怖いんじゃなく、追っ手からひとりで逃げる事の恐怖。人が斬られるのを見てしまったのが、余計恐怖に拍車をかける。
しーちゃんどうしたんだろ? 近くとはいえ、ひとりで出掛けるなんて今まで許してくれなかったのに。
それだけ身体がしんどいのかと思うと、ちょっとだけのぞいたら、すぐしーちゃんの所に帰ろう。
「あ! おはにゃだぁ! しーちゃんのおみやげつんでこ!」
崖上へ向かうまでの道に咲いていた花を詰みながら、しーちゃんがお花見て笑って元気になって欲しいと願う――
――崖上に無事到着すると『……はしゃいで下に落ちないようにね』と出発間際にしーちゃんに言われた事がよぎる。
落ちたら大怪我?……最悪死んじゃう?
そう感じる高さに足が竦む。
ギリギリに立つのは怖いから、少し離れて見ると、木々の間から教会と、その手前にもうひとつ建物が見えた。
手前の建物は何だろう? 教会があるとは聞いていたけど、実際見に来たのは初めてだからわからない。
教会に入る為の長い列が視界に入って「ほんとだぁ! ひといっぱい!」と、それだけでわからない疑問よりも、見えた興味を引くものへと関心が移ってなんだか興奮。
私の誕生を祝うお祭りというネーミング故に、たくさんの人がお祝いに来てくれてるように見えて嬉しいのかもしれない。
なぜか他人事のような感覚で実感湧かないなぁ。
あ! 今日って私がこの世界に来てちょうど3年目じゃない!? 帰ったらほんとにしーちゃんとお祝いしなくちゃね!
――しばらく眺めて、しーちゃんが心配だし早く帰ろうと振り向くと――黒髪に紺色の瞳の、全身黒で統一された服に身を包み、口元も黒い布で覆っている男の人がいた。
例えるならその見た目は、まさしく暗殺者!
いつから居たの? 全然気が付かなかった。
気配がしないとかほんとに暗殺者なのかも!
叫びたいのに怖すぎて声も出ず、震えた手は力も入らず、しーちゃんのおみやげの花がパサッと地面に落ちた。
拾い直す事も出来ずゆっくり後退る。
「……あ」
その男の人がそう呟き、走って向かって来る!
怖くて後退ろうとした足に地面が触れる事はなく、ガクッと足を滑らせ――下に落ちる!?
――しーちゃん……ごめんね――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――目覚めるとふかふかのベッドに寝かされていた。
あ……れ? 私生きてる? どこも痛くないし……。
身体を起こし辺りを見回す――どこかのお家のお部屋なのはわかるけど、当然知らない場所。
ガチャっとドアが開く音がして、自然とそっちを向くと――ピンクのゆるふわウェーブの長い髪に、ピンクの瞳の美人なお姉さんが入ってきた。
女神様だ! 女神様がいる! やっぱり死んで天国に来たのかと一瞬思ってしまった。
「あら、起きたのね! 大丈夫? どこも痛くない?」
あんまりにも綺麗すぎて緊張して声が出ず頷く。
「そう、良かった! お腹は空いてない?」
そう聞かれて、しーちゃんの事を思い出しコクリと頷き「おねーちゃ、ありがとー。かえりゃなきゃなの」と伝えると、お姉さんがキョトンと固まった。
「まぁーお姉ちゃんだなんて嬉しいわー♪でも私、大きな息子がふたりもいるし、今年孫も産まれておばあちゃんなのよ?」
「ふぇ!?」
衝撃な事実に思わず変な声が出て固まる。
その振る舞いといい、20代って言われても普通に信じる容姿なのに――女神様がおばあちゃん!?
「……メティーちゃん……よね? 話は息子のビターに聞いて知っているわ」
名前を呼ばれてビクッと驚く。
ビターさんって知り合いはいないし、何で知ってるの?
「私はモカというの。メティーちゃんにビターもグレイも会いたがっていてね……もうしばらく待っててくれるかしら?」
新たな名前が出てきて、ちびっ子頭脳はぐるぐる大忙し。
その混乱が顔に出ていたのか「グレイというのは私の旦那様よ♡」と説明してくれた。
その喋り方……ほんとにおばあちゃんに見えないよ……。
――その後、モカさんのお喋りは止まらなかった。
グレイさんは教会の神父さんで、民の祈りが終わるまで来れない事。
この場所が教会の裏にある建物で、孤児院だという事。
孤児院の子供達には私の事は当然秘密にしないといけないから、静かにしないといけない事。
カイトさんという人が私をここに連れて来て、今はビターさんに知らせに行ってる事。
――モカさん待って……そんなにいっぺんに言われたら混乱しちゃう。こうなったら【秘技子供ぶりっ子】を発動する時ね!
この秘技は、私への精神的ダメージが大きいから、あんまり使いたくなかったのに――ええい! 背に腹はかえられない!
「もかしゃーん、のどかわいちゃったのー」
モカさんの動きが止まって凝視されてる?
わざとらしくぶりっ子にしすぎたかな!? うぅ……精神ダメージが痛い! 痛すぎる!
「……もう♡ なんて可愛いのかしら♡ 用意してくるから待っててね♡」
メロメロになったモカさんが部屋を出て行き、シーンと静かな空間が訪れた。
モカさんに効いて良かった……と安堵すると――子供姿の私には情報量が多いのと、精神的ダメージのせいでなんだかどっと疲れたぁーと、再びベッドに倒れ込む。
窓が開いていて、頭を使って火照った私に心地よい風が吹く。
そういえば、崖の上から見た手前の建物は孤児院だったんだね。今孤児院にいるんなら、知らない遠くに連れてこられたんじゃなくて安心した。
トンっと音がした気がして、起き上がると――崖上で見た暗殺者がいて、驚きと恐怖で固まる。
――あの時の暗殺者がなんでここに!?――
後に聞いてわかった事がある。メシスくんはラビくん達に、ちゃんと外に出て避難するように伝えていたらしい。
あんな威力の技だもんね……最悪の事態になる可能性だってあるわけだもんね。メシスくんは、僕は優しくないと言いつつも、やっぱり優しいと思うんだけどなぁ
街の見取り図を把握して、技を使ってピッタリ儀式の広間で止めたのは――大量の土砂が出ることもわかった上で、あの広間に繋げるのがベストだと計算されていたんだとしたら――いろいろすごすぎる!
あ! 広間でしーちゃんが狩った猪料理の準備をしていたのも、外に移動させて料理していたから、あとでちゃーんとみんなで美味しくいただきました! 大事な命を奪っておいて粗末にできないもんね!
あと、あのプライベートビーチだけど、遠浅になっていて、向かいにある無人島――その名もカカーオ島に渡って狩りが出来るんだって! 今度行ってみたいなぁ。
果たしてメシスくんはどこまでわかった上でやったのか――謎すぎる――
――謎といえば、不思議なのはしーちゃん。
最初に【メシアとメシスの絵本】を教えてくれたしーちゃんなら、きっと喜んでくれると思って、メシスくんに会った事を教えてから、うわの空でボンヤリするようになった。
それに、顔色が悪くなって辛そうになる頻度が増えている。
私が心配してそばに行くと、泣きそうな顔で縋るように抱きしめられ、何かを恐れるように怯えて震えてる。
――こんな様子のしーちゃんに、聞きたかった事を聞くのは無理だ――
――ふと、岩穴の外がザワザワと何だか賑やかになってきた。
「おしょと、なんだろー?」
「……今日は、女神誕生祭の日だよ」
ギュッとくっついていた身体を離し、行ってみたい! と言おうとして思いとどまる。
こんな状態のしーちゃんをお祭りに連れてく無理をさせられない――再びギュッとしーちゃんにしがみつく。
「……さすがに行くのは無理だけど、上からのぞいてきたら?」
「え?」
「……上から教会が見えるでしょ? そこに人間がメティーに祈りを捧げに来るんだ」
「……しーちゃんもいっちょにのぞこー?」
「……僕は待ってる。すぐそこだから、何かあれば助けに行けるし」
――そう言われてひとりで見に行くことになった。
私はフード付きマントを羽織り、フードを被って「いってきましゅ!」としーちゃんに元気よく言うと「……はしゃいで下に落ちないようにね」としーちゃんが微笑んで見送ってくれた。
いざ、教会の裏の崖上へ向かって歩き出す。
ひとりで森を歩くのは、サンセと会った日を思い出して、正直まだ怖い。サンセが怖いんじゃなく、追っ手からひとりで逃げる事の恐怖。人が斬られるのを見てしまったのが、余計恐怖に拍車をかける。
しーちゃんどうしたんだろ? 近くとはいえ、ひとりで出掛けるなんて今まで許してくれなかったのに。
それだけ身体がしんどいのかと思うと、ちょっとだけのぞいたら、すぐしーちゃんの所に帰ろう。
「あ! おはにゃだぁ! しーちゃんのおみやげつんでこ!」
崖上へ向かうまでの道に咲いていた花を詰みながら、しーちゃんがお花見て笑って元気になって欲しいと願う――
――崖上に無事到着すると『……はしゃいで下に落ちないようにね』と出発間際にしーちゃんに言われた事がよぎる。
落ちたら大怪我?……最悪死んじゃう?
そう感じる高さに足が竦む。
ギリギリに立つのは怖いから、少し離れて見ると、木々の間から教会と、その手前にもうひとつ建物が見えた。
手前の建物は何だろう? 教会があるとは聞いていたけど、実際見に来たのは初めてだからわからない。
教会に入る為の長い列が視界に入って「ほんとだぁ! ひといっぱい!」と、それだけでわからない疑問よりも、見えた興味を引くものへと関心が移ってなんだか興奮。
私の誕生を祝うお祭りというネーミング故に、たくさんの人がお祝いに来てくれてるように見えて嬉しいのかもしれない。
なぜか他人事のような感覚で実感湧かないなぁ。
あ! 今日って私がこの世界に来てちょうど3年目じゃない!? 帰ったらほんとにしーちゃんとお祝いしなくちゃね!
――しばらく眺めて、しーちゃんが心配だし早く帰ろうと振り向くと――黒髪に紺色の瞳の、全身黒で統一された服に身を包み、口元も黒い布で覆っている男の人がいた。
例えるならその見た目は、まさしく暗殺者!
いつから居たの? 全然気が付かなかった。
気配がしないとかほんとに暗殺者なのかも!
叫びたいのに怖すぎて声も出ず、震えた手は力も入らず、しーちゃんのおみやげの花がパサッと地面に落ちた。
拾い直す事も出来ずゆっくり後退る。
「……あ」
その男の人がそう呟き、走って向かって来る!
怖くて後退ろうとした足に地面が触れる事はなく、ガクッと足を滑らせ――下に落ちる!?
――しーちゃん……ごめんね――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――目覚めるとふかふかのベッドに寝かされていた。
あ……れ? 私生きてる? どこも痛くないし……。
身体を起こし辺りを見回す――どこかのお家のお部屋なのはわかるけど、当然知らない場所。
ガチャっとドアが開く音がして、自然とそっちを向くと――ピンクのゆるふわウェーブの長い髪に、ピンクの瞳の美人なお姉さんが入ってきた。
女神様だ! 女神様がいる! やっぱり死んで天国に来たのかと一瞬思ってしまった。
「あら、起きたのね! 大丈夫? どこも痛くない?」
あんまりにも綺麗すぎて緊張して声が出ず頷く。
「そう、良かった! お腹は空いてない?」
そう聞かれて、しーちゃんの事を思い出しコクリと頷き「おねーちゃ、ありがとー。かえりゃなきゃなの」と伝えると、お姉さんがキョトンと固まった。
「まぁーお姉ちゃんだなんて嬉しいわー♪でも私、大きな息子がふたりもいるし、今年孫も産まれておばあちゃんなのよ?」
「ふぇ!?」
衝撃な事実に思わず変な声が出て固まる。
その振る舞いといい、20代って言われても普通に信じる容姿なのに――女神様がおばあちゃん!?
「……メティーちゃん……よね? 話は息子のビターに聞いて知っているわ」
名前を呼ばれてビクッと驚く。
ビターさんって知り合いはいないし、何で知ってるの?
「私はモカというの。メティーちゃんにビターもグレイも会いたがっていてね……もうしばらく待っててくれるかしら?」
新たな名前が出てきて、ちびっ子頭脳はぐるぐる大忙し。
その混乱が顔に出ていたのか「グレイというのは私の旦那様よ♡」と説明してくれた。
その喋り方……ほんとにおばあちゃんに見えないよ……。
――その後、モカさんのお喋りは止まらなかった。
グレイさんは教会の神父さんで、民の祈りが終わるまで来れない事。
この場所が教会の裏にある建物で、孤児院だという事。
孤児院の子供達には私の事は当然秘密にしないといけないから、静かにしないといけない事。
カイトさんという人が私をここに連れて来て、今はビターさんに知らせに行ってる事。
――モカさん待って……そんなにいっぺんに言われたら混乱しちゃう。こうなったら【秘技子供ぶりっ子】を発動する時ね!
この秘技は、私への精神的ダメージが大きいから、あんまり使いたくなかったのに――ええい! 背に腹はかえられない!
「もかしゃーん、のどかわいちゃったのー」
モカさんの動きが止まって凝視されてる?
わざとらしくぶりっ子にしすぎたかな!? うぅ……精神ダメージが痛い! 痛すぎる!
「……もう♡ なんて可愛いのかしら♡ 用意してくるから待っててね♡」
メロメロになったモカさんが部屋を出て行き、シーンと静かな空間が訪れた。
モカさんに効いて良かった……と安堵すると――子供姿の私には情報量が多いのと、精神的ダメージのせいでなんだかどっと疲れたぁーと、再びベッドに倒れ込む。
窓が開いていて、頭を使って火照った私に心地よい風が吹く。
そういえば、崖の上から見た手前の建物は孤児院だったんだね。今孤児院にいるんなら、知らない遠くに連れてこられたんじゃなくて安心した。
トンっと音がした気がして、起き上がると――崖上で見た暗殺者がいて、驚きと恐怖で固まる。
――あの時の暗殺者がなんでここに!?――
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