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第1章 神奮励~チョコランタ王国編~
第11話 蟠り
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――ここは? 真っ暗で何も見えず、暗闇に浮いてる。
――これは夢?
浮いている事にどうしたら進むのか戸惑い、犬かきのように泳ぎながら進んでみても、果てしなく真っ暗だ。
この暗闇はまるで今の私みたい……この世界の事は少しわかってきたけど、以前の私の事はわからず、思い出しかけた記憶すらまた消えてしまう……なんで?
「アナタガ ノゾンダノニ?」
突然感情のない声が暗闇に響いた。
「え!?」
私は突然聞こえた声に驚いて振り返った。
「っ! あなたは!」
黒髪の見覚えある女の子の姿。姿を見て前にも夢で見かけたと思い出した。相変わらず顔には黒い靄がかかっている。
――この声も聞き覚えがあるのに……また忘れてしまうの?
「ウン。ダッテソレガアナタノ ノゾミ」
「っ! 私の心の中も読めるのね……」
淡々とした感情のない声。
声は知ってるのに、こんな感情のない声は知らない。
「あなたは誰? 時々よぎる記憶はあなたのものでしょ?」
「……スガタハ アナタノモノ……キオクモ アナタノモノ」
――どういう意味?……意味がわからない……あなたは誰なの?
「……ワタシハ アナタダケド、アナタジャナイ」
「……どういうこと?」
さっきから淡々と感情なく話され、私だけ混乱していく。
「……教えて!……私は死んでここに来たの?」
見覚えがある黒髪の女の子、メティーじゃなかったような違和感、時々よぎるこの世界以外の記憶――だからそんな気がした。
「……ウン」
「っ!……なんで私は死んでしまったの?」
「……シルコトハ、アナタノ ノゾミジャナイ」
黒髪の女の子は、ずっと淡々と感情のない声で意味不明な事を話す。
「わからない……わからないよ!」
私は混乱しすぎて、次第に苛立ちや、不安、恐怖が混ざってわけがわからなくなる。
「じゃあ……あなたと話したこの記憶だけは消さないで……」
――わからないからこそ、せめてこれだけは覚えていたい……じゃないと私がなんなのかわからない――
「……ワカッタ……デモ、アナタノ キオクハ、アナタノ ノゾミドオリ ケス」
最後にまた淡々と告げた後、黒髪の女の子はスッと消えてしまった。
「っ! どうして……」
じゃあ私は結局思い出しても、また忘れてしまうということで――何も残らない――
『――ティー! メティー!』
――しーちゃん?
聴き馴染みのある声に、少し安心したのも束の間で、しーちゃんの声は焦ったような声。
――どう……したの?――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――ティー……メティー起きて!」
しーちゃんの声に、いつの間にか寝ちゃったんだと寝ぼけてぼんやり目を開けると――
「ラビがいないんだ!」
「……え!?」
しーちゃんの言葉に一気に目が覚め、ガバっと起き上がる。
辺りを見渡すと寝てるのはラビくんのお父さんだけで、ラビくんが寝てた場所に私が寝かされていた。
ラビくんが寝てる私をここに運んでくれた?
「まさか……さっきの話を聞いてたんじゃ……」
ラビくんのお母さんがサーッと青ざめ震える。
確かに聞いていたら、ラビくんの為に半獣になってくれようとしてたお父さんを異形生物にした研究者達を許せないと思うだろう。
「匂い的にまだそんな遠くに行ってないな……俺が見てくる!」
「わたちもいく!」
「っ! メティー! ダメだ!」
ロウさんの言葉に続いて声をあげた私の腕を掴んだしーちゃんの顔色が、人間の街に行ってフラついた時みたいに悪い。
「しーちゃん? だいじょーぶ!?」
「……シアは寝とけ。チビは俺が代わりに守ってやるから」
ロウさんの言葉に、しーちゃんは思い詰めた表情で黙り込む。
しーちゃんは首元にある私が願いの力で作ったお守りの鈴を握り締め、顔色悪く肩で息をしてる。
しーちゃんに近付き、癒しの力で苦しいのを治そうと手に触れると手を払われた。
「……これは治らないから……もう行って」
拒絶されたみたいでショックだった。それでもなんでもない素振りで何とか「……ちゃんとやしゅんでね?」と伝え、しーちゃんのそばから逃げ出すようにラビくんの家を出て、その場に俯き立ち止まる。
しーちゃんにあんな風に手を払われたのは初めてで、あれが反抗期ってやつなのかな?
考えてみれば、しーちゃんの事もわかってるようで、私はちゃんと知らないのかもしれない。
――そういえば、さっきの夢――黒髪の女の子との記憶は……考えれるという事は、ちゃんと覚えてる事に安心する。でも、あれじゃ結局よくわかない。
――知ることはあなたの望みじゃない――私は知りたいと思うのに。
あの子がいうあなたは私じゃないということなの?
――蟠りが残る――
死んでここに来たことがハッキリわかって、その記憶が残ってるだけでも、今回は収穫があったと思うしかない。
死んで違う姿で知らない世界――つまり、俗に言う異世界転生――そんな気がすると思うのと、ハッキリわかるのとではだいぶ違うもん。
――すると、遅れて追いかけて来たロウさんに、私はひょいと軽々片手で持ち上げられ、ロウさんの肩に乗せられた。
「ひゃ!? たかい!」
ロウさん絶対身長2メートル超えてるよね!?
こんな高さの目線に普段なる事ないから、意外と怖くてロウさんの頭にしがみつく。
「チビ! それじゃ前見えねぇよ」
「しょのよびかたやーの!」
「だってチビだろ?」
「もう! ろうしゃんからみたら、みーんなちびでちょ?」
「違ぇねぇな!」
豪快にガハハと笑うロウさんに対して、私はプクッと頬を膨らませて拗ねる。
結局その後、ロウさんの頭に捕まりながらゆっくり移動して、肩車の体勢に落ち着いた。
――ザルクの地下トンネルのマカダミア国側へ出る道の方から、ラビくんの匂いがするらしい。やっぱり話を聞いていたんだね……。
ラビくんの匂いを辿り、私が怖がらない程の速度で走りながらロウさんがポツリと呟く。
「さっきの……あんま気にすんな。シアは壁を作る奴だからな。チビに対してもつーのは驚いたけど、それだけよっぽどの事があんだろ」
さっきのチビのやり取りは、ロウさんなりに元気のない私に気を使ってくれたんだとわかった。ほんとにロウさん優しいな。
それから、ラビくんを追いかけながら、この街でのしーちゃんの事を教えてもらった。
しーちゃんから話しかける事は何か頼む時ぐらいで、それ以外は近づき難いオーラを放ってる事。
前にしーちゃんが傷だらけだったのは、ロウさんのわかりにくい優しさのせいではあったけど、その割には他の獣人さんよりしーちゃんと仲良さげな事を聞くと――
「……それでも完全に心を開いてくれたわけじゃねぇ。現にチビが怪我して殺気立ってたろ? 愛されてるな?」
「……へ!? しーちゃんとはきょーだいのようなものよ?」
ロウさんは上を見上げるようにして、顔が赤くなった私をガハハと笑った。平静を装ったのに、恥ずかしさが顔に出ちゃったか――そもそも、何で急にそんな話になったの!?
抱きしめるのが獣人達の愛の告白って聞いてから調子が狂う――しーちゃんとはそんなんじゃないのに――
――そういえば、ラビくんはしーちゃんが約3年前に街に来たって言ってた。それは私がここに来た頃のはず。
――じゃあ私が来る前はどこにいたの?――
しーちゃんは獣人と人間のハーフの半獣だって……お父さんとお母さんは差別的な事で弱っていて、もう亡くなったって言ってた。
「……ろうしゃん……このまちいがいに、じゅうじんしゃんのまちはありゅの?」
「ん? 俺の知る限りじゃここしか知らねぇな……それがどうかしたか?」
「……ただきいてみただけなの……ありがとう」
胸がザワついた――しーちゃん――
『……ごめんね……』
しーちゃんが前に辛そうに謝った姿がよぎり、何に対して謝ったのかわからなかったけど……。
今不思議に思ってる事を聞かなくちゃと思うのに、聞いたらしーちゃんがどこかへ行っちゃいそうな気がして――怖い――
見えてきた出口の方から、突然ドーンとぶつかるような大きな音がした――ロウさんは急いで駆け出し、私は落ちないようにロウさんの頭にギュッとしがみついた――
――これは夢?
浮いている事にどうしたら進むのか戸惑い、犬かきのように泳ぎながら進んでみても、果てしなく真っ暗だ。
この暗闇はまるで今の私みたい……この世界の事は少しわかってきたけど、以前の私の事はわからず、思い出しかけた記憶すらまた消えてしまう……なんで?
「アナタガ ノゾンダノニ?」
突然感情のない声が暗闇に響いた。
「え!?」
私は突然聞こえた声に驚いて振り返った。
「っ! あなたは!」
黒髪の見覚えある女の子の姿。姿を見て前にも夢で見かけたと思い出した。相変わらず顔には黒い靄がかかっている。
――この声も聞き覚えがあるのに……また忘れてしまうの?
「ウン。ダッテソレガアナタノ ノゾミ」
「っ! 私の心の中も読めるのね……」
淡々とした感情のない声。
声は知ってるのに、こんな感情のない声は知らない。
「あなたは誰? 時々よぎる記憶はあなたのものでしょ?」
「……スガタハ アナタノモノ……キオクモ アナタノモノ」
――どういう意味?……意味がわからない……あなたは誰なの?
「……ワタシハ アナタダケド、アナタジャナイ」
「……どういうこと?」
さっきから淡々と感情なく話され、私だけ混乱していく。
「……教えて!……私は死んでここに来たの?」
見覚えがある黒髪の女の子、メティーじゃなかったような違和感、時々よぎるこの世界以外の記憶――だからそんな気がした。
「……ウン」
「っ!……なんで私は死んでしまったの?」
「……シルコトハ、アナタノ ノゾミジャナイ」
黒髪の女の子は、ずっと淡々と感情のない声で意味不明な事を話す。
「わからない……わからないよ!」
私は混乱しすぎて、次第に苛立ちや、不安、恐怖が混ざってわけがわからなくなる。
「じゃあ……あなたと話したこの記憶だけは消さないで……」
――わからないからこそ、せめてこれだけは覚えていたい……じゃないと私がなんなのかわからない――
「……ワカッタ……デモ、アナタノ キオクハ、アナタノ ノゾミドオリ ケス」
最後にまた淡々と告げた後、黒髪の女の子はスッと消えてしまった。
「っ! どうして……」
じゃあ私は結局思い出しても、また忘れてしまうということで――何も残らない――
『――ティー! メティー!』
――しーちゃん?
聴き馴染みのある声に、少し安心したのも束の間で、しーちゃんの声は焦ったような声。
――どう……したの?――
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――ティー……メティー起きて!」
しーちゃんの声に、いつの間にか寝ちゃったんだと寝ぼけてぼんやり目を開けると――
「ラビがいないんだ!」
「……え!?」
しーちゃんの言葉に一気に目が覚め、ガバっと起き上がる。
辺りを見渡すと寝てるのはラビくんのお父さんだけで、ラビくんが寝てた場所に私が寝かされていた。
ラビくんが寝てる私をここに運んでくれた?
「まさか……さっきの話を聞いてたんじゃ……」
ラビくんのお母さんがサーッと青ざめ震える。
確かに聞いていたら、ラビくんの為に半獣になってくれようとしてたお父さんを異形生物にした研究者達を許せないと思うだろう。
「匂い的にまだそんな遠くに行ってないな……俺が見てくる!」
「わたちもいく!」
「っ! メティー! ダメだ!」
ロウさんの言葉に続いて声をあげた私の腕を掴んだしーちゃんの顔色が、人間の街に行ってフラついた時みたいに悪い。
「しーちゃん? だいじょーぶ!?」
「……シアは寝とけ。チビは俺が代わりに守ってやるから」
ロウさんの言葉に、しーちゃんは思い詰めた表情で黙り込む。
しーちゃんは首元にある私が願いの力で作ったお守りの鈴を握り締め、顔色悪く肩で息をしてる。
しーちゃんに近付き、癒しの力で苦しいのを治そうと手に触れると手を払われた。
「……これは治らないから……もう行って」
拒絶されたみたいでショックだった。それでもなんでもない素振りで何とか「……ちゃんとやしゅんでね?」と伝え、しーちゃんのそばから逃げ出すようにラビくんの家を出て、その場に俯き立ち止まる。
しーちゃんにあんな風に手を払われたのは初めてで、あれが反抗期ってやつなのかな?
考えてみれば、しーちゃんの事もわかってるようで、私はちゃんと知らないのかもしれない。
――そういえば、さっきの夢――黒髪の女の子との記憶は……考えれるという事は、ちゃんと覚えてる事に安心する。でも、あれじゃ結局よくわかない。
――知ることはあなたの望みじゃない――私は知りたいと思うのに。
あの子がいうあなたは私じゃないということなの?
――蟠りが残る――
死んでここに来たことがハッキリわかって、その記憶が残ってるだけでも、今回は収穫があったと思うしかない。
死んで違う姿で知らない世界――つまり、俗に言う異世界転生――そんな気がすると思うのと、ハッキリわかるのとではだいぶ違うもん。
――すると、遅れて追いかけて来たロウさんに、私はひょいと軽々片手で持ち上げられ、ロウさんの肩に乗せられた。
「ひゃ!? たかい!」
ロウさん絶対身長2メートル超えてるよね!?
こんな高さの目線に普段なる事ないから、意外と怖くてロウさんの頭にしがみつく。
「チビ! それじゃ前見えねぇよ」
「しょのよびかたやーの!」
「だってチビだろ?」
「もう! ろうしゃんからみたら、みーんなちびでちょ?」
「違ぇねぇな!」
豪快にガハハと笑うロウさんに対して、私はプクッと頬を膨らませて拗ねる。
結局その後、ロウさんの頭に捕まりながらゆっくり移動して、肩車の体勢に落ち着いた。
――ザルクの地下トンネルのマカダミア国側へ出る道の方から、ラビくんの匂いがするらしい。やっぱり話を聞いていたんだね……。
ラビくんの匂いを辿り、私が怖がらない程の速度で走りながらロウさんがポツリと呟く。
「さっきの……あんま気にすんな。シアは壁を作る奴だからな。チビに対してもつーのは驚いたけど、それだけよっぽどの事があんだろ」
さっきのチビのやり取りは、ロウさんなりに元気のない私に気を使ってくれたんだとわかった。ほんとにロウさん優しいな。
それから、ラビくんを追いかけながら、この街でのしーちゃんの事を教えてもらった。
しーちゃんから話しかける事は何か頼む時ぐらいで、それ以外は近づき難いオーラを放ってる事。
前にしーちゃんが傷だらけだったのは、ロウさんのわかりにくい優しさのせいではあったけど、その割には他の獣人さんよりしーちゃんと仲良さげな事を聞くと――
「……それでも完全に心を開いてくれたわけじゃねぇ。現にチビが怪我して殺気立ってたろ? 愛されてるな?」
「……へ!? しーちゃんとはきょーだいのようなものよ?」
ロウさんは上を見上げるようにして、顔が赤くなった私をガハハと笑った。平静を装ったのに、恥ずかしさが顔に出ちゃったか――そもそも、何で急にそんな話になったの!?
抱きしめるのが獣人達の愛の告白って聞いてから調子が狂う――しーちゃんとはそんなんじゃないのに――
――そういえば、ラビくんはしーちゃんが約3年前に街に来たって言ってた。それは私がここに来た頃のはず。
――じゃあ私が来る前はどこにいたの?――
しーちゃんは獣人と人間のハーフの半獣だって……お父さんとお母さんは差別的な事で弱っていて、もう亡くなったって言ってた。
「……ろうしゃん……このまちいがいに、じゅうじんしゃんのまちはありゅの?」
「ん? 俺の知る限りじゃここしか知らねぇな……それがどうかしたか?」
「……ただきいてみただけなの……ありがとう」
胸がザワついた――しーちゃん――
『……ごめんね……』
しーちゃんが前に辛そうに謝った姿がよぎり、何に対して謝ったのかわからなかったけど……。
今不思議に思ってる事を聞かなくちゃと思うのに、聞いたらしーちゃんがどこかへ行っちゃいそうな気がして――怖い――
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