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第1章 神奮励~チョコランタ王国編~
第4話 夕日色の出会い
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※残酷描写含みます。苦手な方はご注意下さい。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
チョコランタの城下街へ買い出しへ出掛けて戻り、お子ちゃまの私は疲れてお昼寝タイム――
獣化した“しーちゃん”という“抱きまくら兼毛布”をギュッと抱きしめ、私はウトウト眠りについた――
* * * * *
見慣れた部屋にベッドにうつ伏せで肘をつき、スマホを見てる見慣れた黒髪の少女がいる――
(ああ、そういえば異世界転生の小説が好きでよく読んでたっけ……あれ? 何で知って?)
知らないはずなのに知っている。
知っているはずなのに知らない。
このスッキリしない感覚――
思い出した事も今の私に上書きされるように、またうっすら消えていく――
(あなたは誰なの?)
その黒髪の少女が、私の声が聞こえたかのようなタイミングでこっちに振り返った。
黒い靄がかかったように顔が見えない――
(どうして……)
知っている筈の顔も名前も……今の私が上書きしていく――
(あなたは誰なの?……私は……誰なの?)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数時間後、目が覚めて私が抱きついていたしーちゃんから手を離す――
すると、すぐ獣化を解いたしーちゃんは、いつも照れくさそうに顔を背ける――
(しーちゃん、赤くなって可愛い)
思わずニンマリと微笑む――
しーちゃんは可愛いの言葉にピクっと反応して、拗ねたように無言で出掛ける準備をしていた。
今度は獣の街に行くのかもしれない。私はワクワクして自然と笑顔になる――
「やっぱり、にんげんのまちはあぶないねー」
「え!」
しーちゃんはなぜか驚きの声を上げた。
私が不思議に思ってしーちゃんを見ると、呆れた目のしーちゃんと目が合う。
「まさか、メティー………今度は獣の街に付いてくる気?」
「うん!」
「……獣の街は、人間の街より危ないよ?」
いつになく真剣なしーちゃんの顔が、ほんとに危ない事を告げている――
しーちゃんが怪我して帰ってきたのは最初の数ヶ月だけで、ここ2年ぐらいの間しーちゃんは怪我して帰ってくる事が無くなっていた。
(しーちゃんの事わかってくれたのかなって勝手に思ってたけど……違うのかな? それはそれで悲しいなぁ……。でも、引き下がれない!)
「ひちょりで“おるすばん”……こわいもん」
実際、暗くなるとほんとに怖い――
明かりはしーちゃんが拾ってきた冒険者の落し物のランプの光だけ――
(自分の影が壁に伸びてるだけってわかってても、動くと誰かいるみたいにビクッとしちゃうんだから!)
「ハイハイ………わかったから。すぐ帰ってくるようにするから大人しく待ってて」
「しーちゃ――」
「メティー」
しーちゃんは、私の駄々をこねるような呼びかけを遮るように、真剣な顔付きで私の名を呼んだ。
それは、ほんとに付いてきちゃダメって顔で、私は何も言えなくなった――
「……“おみおくり”しゅるのは、いーでちょ?」
「足場もデコボコしてて危ないから待ってて」
しーちゃんは私の頭にポンと触れたあと、振り返ることなく岩穴を出て行った。
なぜなら、頬を膨らませて拗ねた私の相手をすると、余計出発が遅くなるからだ――
ここに来てすぐの頃は、しーちゃんを弟のように可愛く思ってたけど、今では立場が逆転して、すっかり私のお兄ちゃんのよう――
私の思ってる事が聞こえるしーちゃんなら、私の中身が子供じゃない事も察しているはず――
そう考えると、しーちゃん自身も見た目より中身が大人びてるように感じる――
(両親を亡くしたから、しっかりせざる得ないのはわかるけど……もっと、私を頼ってくれていいのになぁ……)
――すると、ふと思い至る。
(そういえば、さっき夢を見た気がする……。どんな夢だったっけ? 思い出せない……)
なんて考えていたら、岩穴の横壁の上に微かに空いた小さな穴から、男の人の声が響いて聞こえてきた――
「白銀の髪と、青い瞳のガキはこんな山にいるのかよ?」
「街中隈無く探して、兵士達は民家の部屋という部屋の隠れられそうな場所を探してるらしいからな……あとは街の外しか……」
(私を探す追っ手!? ひとりなのにどうしよう……)
バクバクと心臓の音がうるさくて、緊迫した恐怖から呼吸も落ち着かず早くなって息苦しい。
(私がこんなだから、しーちゃん頼ってくれないのかも……しっかりしなきゃ! 最悪また願いの力で――)
「……今、誰を探してるって言った?」
さっきのふたりと違う男の人の声が聞こえ、背筋がゾクッとした――
(怖い! この場所に居たくない……逃げないと!)
この人は危険だと、そう本能で感じた――
この岩穴があるのは、チョコランタの城下街を出て街道を外れ木々が茂る北西に進み、山道に入りさらに進むと、町外れの教会を木々の間から見下ろせる場所に出る――
岩穴は、その場所から直線距離だと数メートルとすぐ隣りだから、声も響いて聞こえてくる。
岩穴の入口は、そこからグルっと遠回りした森の中で見つかりにくいとは思うけど、入口はひとつだけ――
(もし岩穴が見つかったら逃げ場がない……早く岩穴から出て離れないと!)
そう思い至って慌てて岩穴を出て、木の根でデコボコした森の中を転ばないように注意して走る――
(でも、どこに逃げたらいいのか――)
「――な、なんなんだよ! お前は!」
「た、助けてくれ!」
(っ! 追っ手の人達!?)
森に生い茂る草を乱暴に掻き分けながら逃げ惑う追っ手の男の人達の叫ぶ声が聞こえ、私は慌てて木の陰に隠れる。
「あの方を利用しようとする者に手を貸すクズを……野放しに出来ない」
また背筋がゾクッとする声に、怖いもの見たさなのか、自然と様子を覗うように木陰から顔をそっと出すと――
「ぐあぁぁっ!」
赤い血飛沫が飛び散り、追っ手のひとりの体が斜めに真っ二つに裂けた――
「ひっ! た、助け――」
逃げようとしたもうひとりの追っ手の首が瞬時に刎ねられ、そばに首が転がってきた――
「あ……あ……」
突然の事で一瞬何が起こったのかわからず固まり、少し遅れてガタガタと震えだし、恐怖のあまり声も出ない。むしろ、叫んだら気付かれてしまう――
(怖い怖い怖い怖い怖い!!)
それでも、恐怖から目を背ける事すら出来ず、ゆっくり後退りする――
すると、あの追っ手ふたりを斬った人の横顔が見えた――
ピンクとオレンジを混ぜた淡い夕日のようなサンセット色の髪に、冷酷な暗いオレンジの瞳の、スラッとした細身のモデル体型の男の人――
(ゾクッとした正体は、あの人の殺気を本能的に恐れてたんだ……)
普通に出会えばかっこいいイケメンと思える容姿端麗な顔も、今の状況では怖い人にしか見えなくて、私はゆっくりゆっくり後退りする――
「――きゃ!」
私はデコボコした木の根に足をとられ、ドサッと尻もちをついた――
その声と音をあの人が見逃してくれる訳もなく、瞬時に私の方へ冷たい視線がくる――
すると、あの人は驚いたような顔で目を大きく見開き、怖い殺気も消え失せる――
「……メシア……様?」
「……あ!」
名前を呼ばれ頭に触れると、恐怖で慌て逃げたからマントを着てこなかった事に今更気付く――
(っ……フード被ってれば誤魔化せたかもなのに……)
あの人が半信半疑の眼差しでゆっくり私に近付いてくる――
(……どうしよう! 見つかっちゃった!)
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
メティー絶体絶命!?
次回、メティーはどうなる!?
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
チョコランタの城下街へ買い出しへ出掛けて戻り、お子ちゃまの私は疲れてお昼寝タイム――
獣化した“しーちゃん”という“抱きまくら兼毛布”をギュッと抱きしめ、私はウトウト眠りについた――
* * * * *
見慣れた部屋にベッドにうつ伏せで肘をつき、スマホを見てる見慣れた黒髪の少女がいる――
(ああ、そういえば異世界転生の小説が好きでよく読んでたっけ……あれ? 何で知って?)
知らないはずなのに知っている。
知っているはずなのに知らない。
このスッキリしない感覚――
思い出した事も今の私に上書きされるように、またうっすら消えていく――
(あなたは誰なの?)
その黒髪の少女が、私の声が聞こえたかのようなタイミングでこっちに振り返った。
黒い靄がかかったように顔が見えない――
(どうして……)
知っている筈の顔も名前も……今の私が上書きしていく――
(あなたは誰なの?……私は……誰なの?)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数時間後、目が覚めて私が抱きついていたしーちゃんから手を離す――
すると、すぐ獣化を解いたしーちゃんは、いつも照れくさそうに顔を背ける――
(しーちゃん、赤くなって可愛い)
思わずニンマリと微笑む――
しーちゃんは可愛いの言葉にピクっと反応して、拗ねたように無言で出掛ける準備をしていた。
今度は獣の街に行くのかもしれない。私はワクワクして自然と笑顔になる――
「やっぱり、にんげんのまちはあぶないねー」
「え!」
しーちゃんはなぜか驚きの声を上げた。
私が不思議に思ってしーちゃんを見ると、呆れた目のしーちゃんと目が合う。
「まさか、メティー………今度は獣の街に付いてくる気?」
「うん!」
「……獣の街は、人間の街より危ないよ?」
いつになく真剣なしーちゃんの顔が、ほんとに危ない事を告げている――
しーちゃんが怪我して帰ってきたのは最初の数ヶ月だけで、ここ2年ぐらいの間しーちゃんは怪我して帰ってくる事が無くなっていた。
(しーちゃんの事わかってくれたのかなって勝手に思ってたけど……違うのかな? それはそれで悲しいなぁ……。でも、引き下がれない!)
「ひちょりで“おるすばん”……こわいもん」
実際、暗くなるとほんとに怖い――
明かりはしーちゃんが拾ってきた冒険者の落し物のランプの光だけ――
(自分の影が壁に伸びてるだけってわかってても、動くと誰かいるみたいにビクッとしちゃうんだから!)
「ハイハイ………わかったから。すぐ帰ってくるようにするから大人しく待ってて」
「しーちゃ――」
「メティー」
しーちゃんは、私の駄々をこねるような呼びかけを遮るように、真剣な顔付きで私の名を呼んだ。
それは、ほんとに付いてきちゃダメって顔で、私は何も言えなくなった――
「……“おみおくり”しゅるのは、いーでちょ?」
「足場もデコボコしてて危ないから待ってて」
しーちゃんは私の頭にポンと触れたあと、振り返ることなく岩穴を出て行った。
なぜなら、頬を膨らませて拗ねた私の相手をすると、余計出発が遅くなるからだ――
ここに来てすぐの頃は、しーちゃんを弟のように可愛く思ってたけど、今では立場が逆転して、すっかり私のお兄ちゃんのよう――
私の思ってる事が聞こえるしーちゃんなら、私の中身が子供じゃない事も察しているはず――
そう考えると、しーちゃん自身も見た目より中身が大人びてるように感じる――
(両親を亡くしたから、しっかりせざる得ないのはわかるけど……もっと、私を頼ってくれていいのになぁ……)
――すると、ふと思い至る。
(そういえば、さっき夢を見た気がする……。どんな夢だったっけ? 思い出せない……)
なんて考えていたら、岩穴の横壁の上に微かに空いた小さな穴から、男の人の声が響いて聞こえてきた――
「白銀の髪と、青い瞳のガキはこんな山にいるのかよ?」
「街中隈無く探して、兵士達は民家の部屋という部屋の隠れられそうな場所を探してるらしいからな……あとは街の外しか……」
(私を探す追っ手!? ひとりなのにどうしよう……)
バクバクと心臓の音がうるさくて、緊迫した恐怖から呼吸も落ち着かず早くなって息苦しい。
(私がこんなだから、しーちゃん頼ってくれないのかも……しっかりしなきゃ! 最悪また願いの力で――)
「……今、誰を探してるって言った?」
さっきのふたりと違う男の人の声が聞こえ、背筋がゾクッとした――
(怖い! この場所に居たくない……逃げないと!)
この人は危険だと、そう本能で感じた――
この岩穴があるのは、チョコランタの城下街を出て街道を外れ木々が茂る北西に進み、山道に入りさらに進むと、町外れの教会を木々の間から見下ろせる場所に出る――
岩穴は、その場所から直線距離だと数メートルとすぐ隣りだから、声も響いて聞こえてくる。
岩穴の入口は、そこからグルっと遠回りした森の中で見つかりにくいとは思うけど、入口はひとつだけ――
(もし岩穴が見つかったら逃げ場がない……早く岩穴から出て離れないと!)
そう思い至って慌てて岩穴を出て、木の根でデコボコした森の中を転ばないように注意して走る――
(でも、どこに逃げたらいいのか――)
「――な、なんなんだよ! お前は!」
「た、助けてくれ!」
(っ! 追っ手の人達!?)
森に生い茂る草を乱暴に掻き分けながら逃げ惑う追っ手の男の人達の叫ぶ声が聞こえ、私は慌てて木の陰に隠れる。
「あの方を利用しようとする者に手を貸すクズを……野放しに出来ない」
また背筋がゾクッとする声に、怖いもの見たさなのか、自然と様子を覗うように木陰から顔をそっと出すと――
「ぐあぁぁっ!」
赤い血飛沫が飛び散り、追っ手のひとりの体が斜めに真っ二つに裂けた――
「ひっ! た、助け――」
逃げようとしたもうひとりの追っ手の首が瞬時に刎ねられ、そばに首が転がってきた――
「あ……あ……」
突然の事で一瞬何が起こったのかわからず固まり、少し遅れてガタガタと震えだし、恐怖のあまり声も出ない。むしろ、叫んだら気付かれてしまう――
(怖い怖い怖い怖い怖い!!)
それでも、恐怖から目を背ける事すら出来ず、ゆっくり後退りする――
すると、あの追っ手ふたりを斬った人の横顔が見えた――
ピンクとオレンジを混ぜた淡い夕日のようなサンセット色の髪に、冷酷な暗いオレンジの瞳の、スラッとした細身のモデル体型の男の人――
(ゾクッとした正体は、あの人の殺気を本能的に恐れてたんだ……)
普通に出会えばかっこいいイケメンと思える容姿端麗な顔も、今の状況では怖い人にしか見えなくて、私はゆっくりゆっくり後退りする――
「――きゃ!」
私はデコボコした木の根に足をとられ、ドサッと尻もちをついた――
その声と音をあの人が見逃してくれる訳もなく、瞬時に私の方へ冷たい視線がくる――
すると、あの人は驚いたような顔で目を大きく見開き、怖い殺気も消え失せる――
「……メシア……様?」
「……あ!」
名前を呼ばれ頭に触れると、恐怖で慌て逃げたからマントを着てこなかった事に今更気付く――
(っ……フード被ってれば誤魔化せたかもなのに……)
あの人が半信半疑の眼差しでゆっくり私に近付いてくる――
(……どうしよう! 見つかっちゃった!)
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