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第二章
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しおりを挟む階段の前、買い物袋を手に下げた三上さんが、俺を見上げている。
「こんばんは。」
俺は階段から立ち上がって挨拶をする。
「こんばんは。」
彼女が挨拶を返す。
「…………今日も家に帰りたくないの?」
挨拶を交わした沈黙の後、彼女はそう言った。
「…………はい。」
「…………そっか。」
俺は一段、階段を降りる。
彼女が一歩、歩みを進める。
あと一歩距離を縮めたら、もう後戻りは出来ない。
きっと彼女もそれを分かっている。
彼女の優しい瞳が俺を見上げている。今、俺と彼女の間に壁はない。俺と彼女、二人だけの世界がここにある。
俺はもう一段、階段を降りる。
彼女がもう一歩、歩みを進める。
この先に待ち受けているのは、地獄かもしれない。けれど、それでも構わない。この人がいるのなら、俺はどこにだって行ける。
神様、どうか一度だけ幸せを望むことを許してください。
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