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第二章
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しおりを挟むあの夜からしばらく三上さんに会うことはなかった。隣に住んでいるのに不思議なものだ。
しかし、ある日の夕方、買い物袋を下げた三上さんとマンションに入る所で偶然会った。
「こんにちは。」
俺から挨拶をすると三上さんはいつもの柔らかい笑顔で、
「こんにちは。」
と、挨拶を返してくれた。
二人並んでマンションへと入り、自分達の部屋まで他愛もない話をしながら歩く。
「なんか、久しぶりだね。」
「そうですね。」
「制服姿の葵くん見るの初めてかも。」
「すぐ隣に住んでるのに、全然会いませんよね。」
「よかった、元気そうで。」
俺が話す姿を見て、三上さんは優しく微笑んでそう言った。その優しい微笑みに、俺は自分の心が動き出すのを感じた。
「葵くん?どうしたの?」
俺は立ち止まって、三上さんを見つめる。
「俺、あの日、三上さんに会えてよかったです。」
「え…………?」
三上さんは、突然そんなことを言われて戸惑っていた。
「あの日、三上さんに会えてなかったら、俺はきっと今こんなに元気ではいられませんでした。」
自分でも恥ずかしいことを言っている自覚はあった。でも、言わずにはいられなかった。
「…すみません、突然変なこと言って。でも、もしまた会えたら絶対伝えたくて。」
少しずつ俺は三上さんに近づく。
「三上さんは、俺を救ってくれました。もし三上さんに何かあったら、今度は俺が三上さんを救います。絶対に、どこにいても。」
真っ直ぐ、三上さんの瞳を見つめて、言う。どうか、この言葉に嘘がないことを感じて欲しい。三上さんは、何も言わず、ただ俺の瞳をじっと見ていた。
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