【完】ぼくのネット友達

いとこんドリア

文字の大きさ
上 下
3 / 3

ぼくのネット友達3

しおりを挟む
 バイトが終わった後、家に帰って晩ごはんと入浴を終えてからぼくは恐る恐るスマホの電源を入れた。
 案の定、アオからのライン数件で埋め尽くされている。うう、ごめんなさい。返事しなくて。だって、本当にあうの怖くて、なんて返事したらいいかわからなくて……あ。

『もうあいたいなんて我儘言わない』

 ぼくは最後に送られてきたそのラインを見て、PCがフリーズするみたいに止まってしまった。急激に寂しさがぼくの中でわきあがる。

 はは……バカじゃん、ぼく。
 自分で会うのはよそうと言いながら残念がるなんて、浅ましいにもほどがある。自分の事は棚にあげて寂しいなんて……ほんと、ばかだね。
 ぼくは当たり障りのない返事をしてそのままベットで横になった。
 アオからのラインが来ている事に気がつかずに眠り、そして翌日。

 朝から僕はバタバタしていた。
 つい寝坊してしまい、スマホを見る暇さえもなく家から飛び出して学校に向かう。おかげで朝ごはんを食べれなかった。
 教室に入ればもう生徒はおろか先生も来ていて、頭を下げながら席に着く。すぐに授業が始まった。

 授業中では昨日のアオからのラインの事が頭から離れない。もうあいたいなんてわがまま言わないって。
 やはりあの言葉は、自分に愛想をつかしたからそう送ってきた言葉なんだろう。

 もう、ぼくの事なんてどうでもいいって事だよね……。ライン無視して送らなかった報いだって。
 僕は授業がとうの昔に終わった事すら知らず、悶々とそればかりをずっと考えていた。スマホの存在すらも頭から飛んだ状態で。

 そんな時、教室の扉が大きな音を立てて開かれた。
 生徒達の驚く声と女子生徒の黄色い悲鳴が鳴り響いているが、僕は考え事に夢中でそれに気づかない。

「もう……アオはあいたいなんて言ってくれないよね……」
 ぼくは机に伏しながら呟く。
「だからこうしてオレからあいに来たんだろ。ラインしたのにスルーするなよ」
「だけど……実際あっても僕みたいなナヨナヨした奴願い下げだって思っちゃうよ」
「そんな事はねぇよ。人間個性が大事だろ。それにカナタはオレと趣味が被るし、ラインしてて楽しいし、そう簡単にはオレは嫌いにはならないと思うぜ。ラインでだろうが、現実であろうが、好きになっちまってるんだから」
「はぅー……そうアオが言ってくれたらぼく幸せで死ねるかも~……て、え……え?」

 返ってくることのない返事に僕はやっとぎよっとして顔を上げると、前の席に柏木先輩が座って優しく微笑んでいる。

「先……輩……」
「やっと見つけたぜ、カナタ」
「あ、あの……えっと、どうしてここに……」
 ぼくは何がなんだかわからず仕草が挙動不審になっている。
「お前にあいたかったから来たんだろ。ラインのやりとりだけじゃ我慢できなかったからな」
「っ……まさか……」
 ぼくはドキりとした。
「そう、オレの名前……蒼だからアオなんだ」
「あ、アオ……!」

 目の前に……メル友のアオがいる。
 僕と同じでゲームが好きで、文面から見て男前で、やさしくて、時には叱咤激励してくれるそんなアオがここに……
 はうー……リアルでも超男前の美形イケメンだったよぉおお。
 なんか偶然過ぎてビックリしちゃって、いっぱいいっぱいで、泣けそう。

「ずっとあいたかった。お前の事探してたからな。やっぱり、思った通りの奴だった」
「せ、先ぱ「アオだ」
「え」
「アオって呼べ。敬語もラインの時みたいになし。これからもそれでいいな?」
 先輩の命令口調になんかドキドキしてしまう。おまけに優しい。
「は……はい……じゃなくて、うん、アオ」

 訂正をしてくるあたり、かなりそう呼ばれる事が気に入っているみたい。

「あと、好きだぜ」
「えっ……」
「言っただろう?お前が好きだって何度もラインで。これからはラインじゃなくて、思う存分お前の目の前で言わせてもらうからな」
「ッ……」

 ぼくの顔が真っ赤なリンゴのように染まる。

「お前は?」
「き、決まってるじゃないか。いつもラインで伝えてたし。えと、ぼくもアオの事が好き……好きだよ」
「カナタ……。それは恋愛として……だよな?」
「当然だよ。恋愛として……アオが好きだったんだから」

 いきなりの教室でのやりとりに周りは大騒ぎ。あとでいろいろクラスメートから訊かれそうだけど、たまには平凡なぼくも自慢してもいいよね。


 終

しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

小説を書ける皆様、尊敬してます!

ごちそうさまでしたぁ!!!!!(*´艸`*)!!

好きすぎて少し強引になるとか羨ましい!!

可能ならば続編とかでその後も読みたいです♡

2020.03.27 いとこんドリア

コメありがとうございます。
続編は一本準備してありますのでそのうちupすると思います( ^ω^ )

解除

あなたにおすすめの小説

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

例え何度戻ろうとも僕は悪役だ…

東間
BL
ゲームの世界に転生した留木原 夜は悪役の役目を全うした…愛した者の手によって殺害される事で…… だが、次目が覚めて鏡を見るとそこには悪役の幼い姿が…?! ゲームの世界で再び悪役を演じる夜は最後に何を手に? 攻略者したいNO1の悪魔系王子と無自覚天使系悪役公爵のすれ違い小説!

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~

青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」 その言葉を言われたのが社会人2年目の春。 あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。 だが、今はー 「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」 「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」 冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。 貴方の視界に、俺は映らないー。 2人の記念日もずっと1人で祝っている。 あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。 そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。 あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。 ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー ※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。 表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。