【完】前世は同い年、今世は姉さん女房

いとこんドリア

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「海外に……転勤!?」
「そうなんだ。仕事の関係で……すまない、直」

 それから残念な事に、父親の仕事の関係で海外へ旅立つ事になってしまった。

 甲斐と逢えなくなる。辛い。甲斐が心配で心配で放っておけない。残りたい。そう両親に言っても両親は聞き入れてくれるわけもなく、小学五年のオレの力なんてたかが知れていた。

 だから、近所に住んでいる同級生の知り合いや、祖父母に頼んで時々甲斐の様子を見てほしいと頼んでおいた。何かあったら知らせてほしいと。あの毒両親と妹から甲斐を守ってほしいと。

 祖父母や同級生の知り合いは甲斐の糞両親のやり方に反発していたので、快く引き受けてくれた。




 そしてあれから十年――。

 甲斐と一度も逢うことなく離れ離れになっていた。
 手紙やメールでのやり取りはあったものの、生身では十年も離れていたためにオレは気が狂いそうだった。

 それでもその間、オレは必死に勉強して人脈も広げて、ハイスクールも大学も飛び級であっさり卒業。誰にも文句を言わせない地位にのぼりつめるため、15歳くらいで事業を立ち上げ、前世での知識チートをフル活用したおかげですんなりと、IT企業王やら不動産王やら大物実業家ともコンタクトがとれた。

 財政界やら社交界にも人脈を広げ、次第に人が集まってきて業績も伸び続け、自社グループはどんどん急成長。若手最大にして大物の企業家とまで言われるようになり、20歳になった頃には世界に名を残すほどのやり手と言われるようになった。

 時には好きでもない女に色を使ったり、騙し合うような汚い仕事もしたが、甲斐のためだと思って必死で頑張った結果だ。甲斐が悲しむから、出来る限り人を悲しませる犯罪には手を染めないように合理的に成り上がった。

 そして、ついに甲斐と十年ぶりの再会。
 甲斐は24歳となって大人びた女になっていた。うん、写真で見るより可愛い。

 周りは平凡地味だなんだと言うが、オレは甲斐が一番可愛く見える。前世から惚れている補正だ。他の女は全員ブスにしか見えない。母さんは除くけど。

 相変わらず甲斐は糞妹に苦労していたようで胸が痛む。

 糞妹は十年経っても性格は変わらないようで、男を手玉に取り、数々の汚い浮名を残してきたようだ。いろんな男をとっかえひっかえした結果、中絶をもう三回も経験しており、どんだけ股が緩いんだよと呆れ返ったものだ。

 その延長上に甲斐の元彼らしき野郎も略奪したようで……。

 そこだけは糞妹よくやったと褒めてやりたい。
 だって、オレがいるのに。オレともあろう者がいるのにそんな三下野郎にOKするなんて甲斐も甲斐だ。元彼との間には何もなかったとはいえ、甲斐には今度お仕置きが必要だな、うん。もちろん可愛い性的なお仕置きをするつもりである。



 甲斐と再会してすぐ、糞がオレの会社の日本支部にけしかけてきやがった。

 つまみ出して警察に突き出しても懲りずにやって来て、玄関口で大声で暴れられたり、オレの情報を流そうとしたり、社の幹部共が糞の色仕掛けに騙されたりと災難を被ったので、なかなかに扱いづらいビッチだ。

 ちなみに色仕掛けに騙された幹部共は即刻クビにしてやった。

 以前からこの糞妹は要注意人物としてブラックリストに載せてファイリングまでしてやったのに、すっかり甘い誘惑に骨抜きにされたバカ共を幹部にしてやったのが間違いだった。

 仕事はできるのに女の甘言に弱い奴はこれから徹底的に排除だ。あんな糞女の裏を見抜けない野郎などわが社にいらん。
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